盗みのチャンスは一度だけ BAD END 作:muzineki
瞳が平山に捕まってから、一週間後。
平山美術館を見下ろす小高い丘に、二人の美女が立っていた。
「どう愛、中の様子はわかった?」
長身でグラマーな美女が、双眼鏡で美術館を覗きながら言った。
「全然だよ、盗聴器にも大した会話は入っていない」
ノートパソコンを操作するショートカットの少女が、元気のない声で答える。
彼女たちの名は、来生泪と来生愛。
怪盗キャッツアイ、来生三姉妹の長女と三女だ。
平山美術館へ盗みに入った日、バックアップ役であった泪と愛は、美術館の外で瞳を待っていた。
だが夜明けになっても、瞳は戻って来なかった。
逮捕を覚悟した泪と愛だったが、次の日の新聞を見て驚愕した。
そこにはキャッツアイが盗み成功させたと書かれていたからだ。
ニュース番組には、被害者としてインタビューを受ける平山の姿があった。
画面に映る太った館長は、美術館の防犯システムに問題はなく、ダイヤを盗まれたのは警察の警備に原因であると声高に主張していた。
「瞳姉、一体どうしたんだろう」
「おそらく平山に捕まったのよ、泥棒コレクションの噂は、本当だったようね」
泪の言葉に、愛の顔が青ざめる。
「落ち着きなさい、愛。それなら命を取られる心配は無いわ」
「でも……」
何かを言いかけた愛だが、そこで言葉を止めた。
爪が食い込むほどに拳を強く握る、姉の姿が見えたからだ。
「とにかく今は、瞳がどこに囚われているのかを調べましょう、動くのはそれから。何の手掛かりも無しに忍び込めば、私たちまで捕まってしまうわ」
「わかったよ、泪姉」
頷く愛だが、その表情にいつもの快活さは無い。
命の保証はあっても、それは無事とイコールであるとは限らない。
瞳がどんな目に合っているのかと考えると、それだけで胸が押しつぶされそうになる。
それは泪も同様であった。
長女として母親代わりを務めていた分、思いは愛より強い。
愛へ向けた言葉は、半分は自分へ言い聞かせたものだ。
不安と焦燥を抱えつつ、泪と愛は平山美術館の監視を続けた。
その頃、囚われの身となった瞳は、淫惨な時を過ごしていた。
『取り調べ』を名目に、恥辱と屈辱を与えられる日々。
少しでも反抗的な態度をすれば、制圧という名目でロボットの暴力が与えられる。
首輪への電気ショックや警棒による殴打は、もう何度受けたかわからない。
常に手錠を嵌められ監視される生活も辛かったが、それでも瞳は決して口を割ることなく耐え続けた。
そして今日も好色なサディストの玩具にされるため、牢屋から連れ出されるのであった。
「今日はこの部屋で取り調べをするぞホイ、キャッツアイ」
美貌に濃い疲労を浮かべた瞳は、いつもの取調室とは異なる部屋へと連れ込まれた。
足を踏み入れると同時に、背筋が凍りつく。
天井には枷の付いた鎖がぶらさがっていて、壁ぎわには人を痛めつけることを目的とした様々な道具が並べられている。
明らかに拷問部屋であった。
「口を割らねば拷問すると警告はしたぞ。今日は手荒にするから、覚悟しろホイ」
平山が言うと、ロボット達が三角木馬を運んできた。
手錠を後ろ手に嵌め直された瞳が、身を固くする。
「さあ正体を吐いて、罪を償うと誓うんだホイ。そうすれば少しは刑を軽くしてやるぞホイ」
「絶対に嫌!」
「そうか、では意地を張ってワシを楽しませてくれホイ」
ロボット達は、三角木馬の上に瞳を股がらせた。
すると木馬の脚が伸びて、瞳の身体が持ち上がった。
「あうっ!!」
鋭く尖った木馬の背が、瞳の股間へ容赦なく食い込む。
ぐっと唇を噛んで、激痛に耐える瞳。
股間にかかる重みを少しでも逃そうと、膝に力を込めて木馬を挟み込む。
だが苦痛はますます激しくなる一方だ。
「ぐぅっ! くぅぅ……」
「どうだホイ、三角木馬の乗り心地は。動くと辛いから、できるだけ動かぬことを勧めるぞホイ」
「よ、余計なお世話よ」
「いい返事だホイ」
平山は金属製の足枷を持って来ると、瞳の両足首に嵌めた。
さらに天井から吊るされた鎖を、瞳の首輪に繋ぐ。
これでどれだけ暴れようが、瞳は木馬から逃れる事はできなくなった。
「さあ正体を吐き、ワシの囚人として罪を償うと誓うんだホイ!」
「誰が、そんなこと……」
「その強がりが、いつまで続くかなホイ?」
平山は椅子に座ると、ブランデーを飲みながら瞳の足掻く様を眺めた。
しばらく時が過ぎる。
木馬の上にいる瞳は、全身に油汗を浮かべ、肩で息を始めるようになった。
「はぁ、はぁ……うぅっ……」
「そろそろ素直になったかホイ?」
「そんなわけ……ないでしょう……」
股間への激痛に耐えながら、気丈にも平山を睨みつける瞳。
すると平山は、短い鎖がついた錘を持って来た。
「まだ元気がありそうだなホイ。それならこれを付けても大丈夫だろうホイ」
「……ひっ!」
怯えの表情をする瞳の足枷に、錘が取り付けられる。
ズシッと両足に荷重がかかった瞳は、大きく目を見開き、ピンと上体を仰け反らせた。
「ぎゃっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「いい顔になってきたぞホイ」
パシャっと音がして、拷問部屋にフラッシュが光る。
平山は苦悶する瞳を、楽しそうに撮影した。
「い、いいかげんに……ギャァァァァァ!!」
瞳の声を遮るように、平山は錘を足で揺らした。
限度を超えた股間への苦痛に、瞳は激しく左右に首を振って絶叫する。
「そろそろ素直になったらどうだホイ」
「お……お断りよ!」
「強情な女だホイ。なら考えが変わるまで、他の部屋で待たせてもらうホイ」
平山は軽く肩をすくめると、瞳に背を向けた。
「キャッツアイ、時間はたっぷりとあるホイ。好きなだけ木馬の乗り心地を楽しんでくれホイ」
そう言うと平山は、監視役のロボットを残して部屋から出て行った。
暗い拷問部屋の中、瞳は一人木馬の上に取り残された。
しばらく時が過ぎた。
瞳は頭を右肩に預け、股間への苦痛にじっと耐えている。
「はぁ……はぁ……ううっ……」
整った顔立ちが歪み、苦悶の声が漏れる。
息をするだけでも、股間の痛みはどんどん増してくる。
「くぅっ……」
何とか木馬から逃れようと、身体を揺すって無駄な努力を試みる。
だがそれは、股間の痛みを激しくするだけに終わった。
汗が顎先から落ち、レオタードから露出する胸の谷間へ流れ込む。
両脚の感覚は、既に失われている。
だが陰部の痛みは、決して止むことはない。
「い、痛い……」
瞳の目から涙が溢れた。
限界は既に超えている。
「誰か……助けて……」
許しを乞う言葉が、遂に瞳の口から漏れる。
だが情けを乞うべき相手は誰もいない。
暗い拷問部屋の中、悪夢のような時間が、ただゆっくりと流れた。
涙が枯れ、悲鳴も出なくなった頃、ようやく平山が拷問部屋へと戻ってきた。
木馬の上で項垂れる瞳の意識は、既に朦朧としている。
だが扉が開く音には、敏感に反応した。
「お、おろして……お願い……」
恥も外聞もなく、瞳は平山に哀願した。
レオタードは汗に濡れ尽くし、体のラインをクッキリと浮かび上がらせている。
その姿は平山の股間を盛り上がらせ、サディスティックな感情を昂らせた。
「助けて欲しいなら、キャッツアイの正体を吐いてワシに屈服し、罪を償うと誓うんだホイ」
「うぅ……くぅ……」
屈服の言葉は、喉元まで登っていた。
だが最後に残ったプライドが、その言葉を噛み殺す。
「我慢強いのも考えものだぞホイ」
平山は木馬を両手で掴み、前後に揺さぶりをかけた。
股間から発される激痛が瞳の全身を貫き、涸れたはずの涙が頬を流れる。
「う、うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ! も、もうやめてぇぇぇぇっ!」
「そうはいかんホイ」
平山は鞭を手にすると、瞳の背中を打った。
股間の痛みと背中の痛みが、同時に身体を襲う。
「あうっ! ぎゃっ! ああッ!」
鞭に叩かれる度に、瞳は首をのけぞらせ、悲鳴を上げた。
汗まみれの頬に、涙の筋が重なる。
やがて鞭の連打が終わると、瞳はがっくりと項垂れた。
限界を悟った平山はニヤリと笑い、乱れた息をつく瞳の耳元で囁いた。
「そろそろ態度を改めて、罪を認めたらどうだホイ、来生瞳くん」
「……!」
雷でも落とされたかのように、はっと瞳は頭を上げた。
「驚くことはあるまい、少し調べれば本名などすぐわかる、そう警告したはずだホイ」
「だ、だったらどうして、拷問なんて……」
「決まっているだろう、ワシが楽しいからだホイ」
「この下種!」
平山の言葉に、瞳は激昂した。
だが怒りの表情が苦悶へと変わるのに、長くはかからなかった。
平山はただ待っていればよかった。
やがて瞳の視線は、哀願のまなざしへと変わっていった。
「お、おろして……降参する……罪を認めて囚人になるわ……許して……」
「ではお前の本名を、自分の口ではっきりと言うんだホイ」
「来生……瞳……」
「そうか、その来生瞳がお前の本名、キャッツアイの正体で間違いのだなホイ」
「はい……」
こらえていた言葉を吐き出した瞳は、力なく頷いた。
股間の苦痛は限界を超えている。
彼女の頭にあるのは、1秒でも早くこの地獄から逃れることだけだ。
「では来生瞳、お前がキャッツアイとして犯した罪を、全て証言すると約束するなホイ」
「はい……約束……します……」
「自分が罪人である事を認め、これからは囚人として罪を償うと誓うかホイ」
「はい……認め……ます……これからは……囚人として……罪を償うことを……誓い……ます……」
木馬の痛みに耐えながら、途切れ途切れに誓いの言葉を述べる瞳。
今ならどんな事でも言ってしまいそうだった。
「よろしい、怪盗キャッツアイ、本名来生瞳の自供を確認したホイ」
首輪に繋げられた鎖と足枷が外され、木馬の足が縮む。
ようやく木馬から降ろされた瞳は、ごろりと床に転がった。
「さあ来生瞳くん、今日からお前はワシが所有する囚人だホイ。真人間として社会に戻れるよう、ビシビシ躾をしてやるから覚悟するんだホイ」
勝ち誇ったように言う平山。
しかしその言葉は、瞳には届いてはいなかった。
汗でレオタードをびっしょりと濡らした女怪盗は、気を失っていた。