盗みのチャンスは一度だけ BAD END 作:muzineki
8:囚人番号WLA0116号
それから1時間後。
目的地に到着した瞳は、拘束衣を着たままワンボックスから降ろされ、すぐに建物の中へと連行された。
胴体拘束用のチェーンを引っ張られ、足枷を嵌められたままヨチヨチと長い廊下を歩かされる。
そしてエレベーターに乗せられた。
(一体、ここはどこなの?)
瞳の心臓の鼓動が早まる。
目隠しをされているため、周りは全く見えない。
解っているのは、この先に待っているのが、平山のコレクションとして飼われる生活ということだけだ。
やがてエレベーターの扉が開いた。
乾いたコンクリートの通路を歩くと、鉄扉が開く音が反響する。
背中を押された瞳が中へ足を踏み入れると、目隠しとボールギャグが外された。
そこは10メートル四方の薄暗い部屋であった。
奥には一段高い台があって、平山はそこに立っていた。
「ようこそ平山私設刑務所へ、歓迎するぞホイ、キャッツアイ」
騎乗鞭を片手に瞳を見下ろしながら、平山が言った。
無言のまま見据える瞳だったが、周りを警備用ロボットとメカドックに囲まれている事に気づき、すぐに肩をすくめてしまう。
抵抗の無駄を悟った女怪盗に、平山は威圧的に命令した。
「それでは囚人番号WLA0116、本名を名乗れホイ!」
「来生瞳……」
「お前は何をして、この刑務所へ来たんだホイ!」
「泥棒をしたから……です」
「泥棒をしていた時、何と名乗っていたんだホイ!」
「キャッツアイ……です」
「キャッツアイとしてやってきたことを、反省しているかホイ!」
「反省して……います」
質問が進む度に、瞳の声は小さいものとなった。
立場を口にすることで、囚人になったことを嫌でも思い知らされる。
言葉は自然と敬語になり、背筋も曲がり、視線は下へと落ちた。
「囚人番号WLA0116、お前に囚人服を貸与する、その場所で着替えろホイ」
電子ロックが解除され、拘束衣のベルトと足枷、そして貞操帯が外された。
平山の視線を感じつつ、瞳はゆっくりと尻穴からプラグを抜く。
すると警備用ロボットが青いレオタードを持って来た。
「キャッツアイとして犯した罪を忘れぬよう、今後はこのレオタードを囚人服として生活してもらうホイ。他の衣類は一切の着用を禁止、インナーやニップレスも許さんホイ」
(……悪趣味)
舌打ちした瞳は、やむなく素肌の上からレオタードを着た。
そして絶句する。
レオタードは極薄で、身体にピッタリと張り付くように作られていた。
身体のラインはもちろん、乳首の形や股間の割れ目までくっきりと浮き出ている。
「道具を中に隠せないよう、囚人服はそのように作ってある。3Dボディスキャナのデータを使って作ったから、寸分狂わずピッタリのはずだホイ」
平山そう言いながら、舐めまわすような視線を瞳に向けた。
レオタードに浮き出る乳首と股間のすじを、瞳は思わず隠す。
全裸よりも恥ずかしい格好であった。
「次はこれを装着するんだホイ」
別のロボットが、瞳の前へ青いチョーカーを持って来た。
チョーカーには瞳の囚人番号と罪名、そして刑期が書かれている。
バックルの部分はキャッツアイのマークになっていて、それが瞳の屈辱感を倍増させた。
「ワシが設計したお前専用の首輪だホイ、いいデザインだろうホイ」
平山の言葉と同時に、瞳から黒い首輪が外れた。
最大の脅威が無くなった瞳は、思わず視線を扉へと向ける。
「脱走したいなら、やってもかまわんぞホイ」
心を見透かした平山の言葉に、瞳はビクリと怯えた。
太った館長はニタニタと笑っているだけで、何の構えも見せない。
(ダメだわ……逃げられる訳が無い)
青いチョーカーを手にしたまま、瞳はうなだれた。
周りは警備用ロボットとメカドックに囲まれている、部屋の外にも備えがあるに違いない。
逃げてもまた叩きのめされ、無様に捕まるのは見えていた。
わずかな沈黙の後、瞳はチョーカーを首にあてがい、もそもそと装着した。
「では来生瞳、お前に訓示を行う、起立だホイ!」
瞳は命令に従い、背筋をピンと伸ばして起立した。
自らの手で囚人の証を嵌めた瞳は、懲役囚としての第一歩を踏み出していた。
「お前は善良な市民から、命よりも大切な美術品を盗んできた、どうしようもない悪党だホイ」
平山の訓示は、瞳の人格を非難することから始まった。
瞳は起立したまま平静を装い、じっと平山を見据える。
「だが矯正できぬ人間など存在しないというのが、ワシの信念だホイ。お前がキャッツとして犯した罪を償い反省し、真人間として社会へ復帰する。その尊い行為を支援する施設が、この平山私設刑務所だホイ」
その言葉を平山は誇らしげに言った。
ご立派な演説を述べながら、その視線は瞳の豊かなバストに向いている。
瞳は舌打ちしたくなるのを抑えながら、起立の姿勢を維持した。
「これからお前には、囚人としての礼儀や動作を徹底的に仕込む。そしてルールに従い生きることを学ぶんだホイ。そうすれば必ず、二度と罪を犯さぬ人間に生まれ変われるはずだホイ。来生瞳、お前の健闘を祈るホイ」
最後にフンと鼻息を鳴らして、平山の訓示が終わった。
精神的な疲労に襲われた瞳だが、まだ緊張を解くことは許されない。
「来生瞳、ワシの言った事を、理解したかホイ」
「はい」
「はい、ご主人様だホイ。囚人がワシに話しかけるときは、必ずご主人様と呼べ。その他の者に対しては、先生だホイ。それがこの刑務所のルール、わかったなホイ」
「は、はい……ごしゅじん……さま」
それは瞳にとって抵抗のある言葉だった。
喫茶店の仕事で接客には慣れているが、それでも相手をご主人様とは呼んだことは、今までの人生で一度も無かった。
「では来生瞳、この刑務所で基礎となる動作を教える。まずは両膝を床に付いて、両手を頭の後ろで組むんだホイ」
「はい……ご主人様」
ためらいがちに返事をした瞳は、命令通り床に両膝を付いた。
そして両手を頭の後ろで組む。
「次は尻を踵から離して、腰を浮かせろホイ」
台から降りた平山が、騎乗鞭を片手に細かく指示を出す。
瞳は黙ってその指示に従い、腰を浮かせて膝立ちの姿勢になる。
「今度は膝をつけたまま股を大きく広げるように……腰と胸は反らし気味に……そうそう、両手は頭の後ろで組んだまま肘を高く上げろホイ……腋の下がよく見えるようにな……クックック」
瞳の身体に騎乗鞭を当てがいつつ、平山は手の角度や脚の開きを訂正した。
屈辱に耐えながら、瞳は命令通りの姿勢を作る。
「これが当刑務所の定める、服従の姿勢だホイ」
それは一切を見るものに委ねたポーズであった。
形の良い乳房も、股間に浮き出るスジも、あらゆる場所が平山に無防備に晒されている。
瞳の整った顔が、恥辱にまみれ紅潮した。
「これからは『服従』と言われたら、どんな時でもその姿勢だホイ。許可があるまで動くことは絶対に許さん。少しでも失敗したら即座に懲罰だホイ、わかったなホイ」
そう言うと平山は、ニタニタ笑いながら瞳の身体を触り始めた。
脇から腰をつうっと撫で、尻肉や太腿を揉みこむ。
そしてツンと勃起した乳首を、レオタードの上から舐めまわした。
「くっ……」
平山の行動をある程度予期していた瞳は、身体を硬くして耐えた。
恥辱を与えて挑発し、少しでも反抗したら懲罰を与える。
美術館で受けた『取り調べ』で、散々味わってきた手口だ。
レオタードに浮き出る割れ目を撫でられると、ビクッと身体を震わせてしまう。
それでも瞳は顔をしかめて懸命に耐えた。
「ふむ、自分の立場は理解しているようだな、賢いぞホイ」
そう言うと平山は、瞳の身体から手を離した。
全身を強張らせていた瞳は、服従の姿勢を維持したままホッと力を抜く。
その隙を狙って、平山は瞳の柔らかな唇に接吻した。
「んんっ! むうっ! いやぁっ!」
悲鳴と同時に、瞳は服従の姿勢を解いて平山を振り払った。
こんな男とキスをする嫌悪感には、さすがに耐えられなかった。
その動きにロボット達は素早く反応し、瞳に向けて威嚇灯をチカチカと光らせる。
「囚人番号WLA0116ノ命令違反ヲ確認、直チニ制圧シマス」
「がっ! あぐっ!」
突然、カエルが潰されたような声が、瞳の口から漏れた。
青いチョーカーが収縮し、細い首を締め付けたのだ。
「がはっ……ぐぅ……うぉえ……がっ!」
首絞めの懲罰に悶える瞳。
反射的に両手で青いチョーカーを掴み、力を入れて足掻く。
だが己の罪が書かれた囚人の証はびくともしない。
「やめろホイ、その首輪は特殊合金と超高分子繊維を組み込んで作った対キャッツアイ用の特別製、金属用のカッターを使っても切断は不可能だホイ」
「あがっ……ぐぇ……」
やむなく瞳は、キャッツアイのマークを模したワンタッチ式のバックルを外そうと試みる。
しかし電子ロックで施錠されたチョーカーは、いかなキャッツアイでも外すことは不可能であった。
「足掻くだけ無駄と理解できたかホイ。そのチョーカーはお前が刑期を終えるまで、絶対に外れないよう造られている。電気ショックの懲罰もより苦痛を与えられるよう改良したぞホイ。どうだ、試してみるかホイ?」
「がはっ! や、やめて……」
平山の脅しに、瞳の美貌がチョーカーと同じ青色に染まる。
その間もチョーカーは、瞳の頸動脈をゆっくりと締め続けた。
頭への血液が阻害され、意識が朦朧とし、全身から力が抜けていく。
目から涙がこぼれ、口から涎がダラダラと流れる。
「がはっ……ゆ、ゆるして……ください……ごしゅじん……さま」
ピクピクと体を痙攣させて、瞳は哀願した。
意識が切れかかった頃、ようやくチョーカーは首を絞める動きを止めた。
「がはっ……がはっ……はぁ……はぁ……はぁ……」
首絞めから解放された瞳は、大きく咳き込んだ。
そんな彼女の背中に、平山の鞭が振り下ろされる。
「あうっ!」
「来生瞳、何をしている、さっさと服従の姿勢に戻れホイ」
「は、はい……ご主人様……」
のろのろと両手を頭の後ろで組んだ瞳は、膝立になって胸を反らした。
服従の姿勢に戻った瞳に、再び平山の愛撫が始まる。
片手で乳房を揉まれ、スリットを撫でられ、唇に舌を侵入される。
「むぅぅ……んぅ……」
平山の舌が、瞳の口内を這い回る。
次々と送り込まれる唾液を、コクッコクッと嚥下して、瞳は甘い鼻息を漏らす。
太った老人のキスに耐えるのは、とても辛かった。
だがそれ以上に、何をされても耐えるしかないという屈辱感が、ずしりと腹にくる。
平山私設刑務所に来てまだ1時間も経っていないのに、瞳は囚人という惨めな生き物に成り下がったことを、心の底から思い知らされた。