変異少女たちを殲滅し国防隊の基地に帰還したレーナたち。基地は石造りの城壁に囲まれたコンクリート製の建物だ。レーナたちは城壁入り口で警備をしている兵士に敬礼をしながら基地の敷地へと入って行った。そして基地施設の玄関に到着した時、レーナは他の2人の隊員に話しかけた。
「私はこれから司令官に報告に向かう。お前たちは先に休憩に入って良いぞ」
「ハッ!ありがとうございます!」
「隊長、ではまた後で」
そう言って隊員2人を先に休憩に入らせ、レーナは1人施設の最上階に存在する司令官室に向かった。国内の治安維持、もとい変異少女の討伐報告は部隊長が直接司令官に報告することが決まりとなっている。しかし、レーナにとってはそれだけではなかった。基地内部に設けられたエレベータで最上階に向かい、廊下を歩いていくレーナの心中はどういう訳かとてもワクワクしていた。そして、司令官室の扉の前までやって来た。扉は両開きの自動ドアだが、まずはその扉のすぐ隣に備え付けられた通話パネルで呼び出しを行わないといけない。レーナは先程までのワクワクを抑え、そのパネルの右端の呼び出しパネルに指で触れた。
「第101歩兵小隊、隊長のレーナです。作戦のご報告に参りました」
「……入りなさい」
しばらくして返事が返ってきた。レーナがヘルメットを脱ぐと、その下からは蒼いショートヘアーの髪が姿を見せた。やがて自動ドアが開くとレーナは室内へと入り、サッと敬礼をした。
「失礼します!」
「ご苦労様です。では報告をお願いレーナ」
司令室の奥にある執務机には右に流れた前髪が特徴の薄紅色のロングヘアーに青色のトレンチコートを着た女性が座っていた。
「はい。目撃情報の通り、変異少女3体の討伐に成功しました。しかし、隊員1名が変異少女からの反撃にあい戦死しました」
「そう……よくやってくれたわ。レーナ」
レーナの報告を聞いた司令官「レヴィナ」は、少し悔しそうに感謝を述べた。
「…ありがとうございます」
そしてレーナもまた悔しそうに礼を述べたのであった。それからしばらく、室内には沈黙の時間が流れていた。だがやがて、レーナが話を切り出した。
「……何か対策は無いのでしょうか?」
「…難しいわね。あいつらは私たちヒューマンノイドそっくりな上に体表面から分泌する液体で擬態する。擬態されれば、目視による見分けも熱探知や専用レーダーでの探知も出来なくなってしまう。本性を現したタイミングでしか発見できない以上、後手引かされるのは仕方ないわ」
「………」
国防隊は変異少女の対策としてあらゆる面で対策を講じてきた。しかし、変異少女たちはそれら対策にあっという間に対応出来るようになってしまう。結局、国防隊は住民や監視員からの目撃情報を元に変異少女を発見し、討伐するしかなくなっているのだ。
「ともかく、住民や監視員からの報告に頼るしかないわ。堪えてちょうだい」
「……わかりました」
「ごめんなさいね、レーナ………さて、仕事の話はここまでにしましょうか」
と、一呼吸置いたレヴィナが執務机から立ち上がるとレーナの方へ歩いてきた。そしてその言葉を聞いたレーナは先程までの堅苦しい表情ではなく、パァ!とにこやかな笑顔になっていた。やがてレヴィナがレーナの元へやって来ると、右手でレーナの左頬に触れた。
「今夜も私の私室に来なさい♡良いわね、レーナ?」
「はいっ、お姉さま♡」
レーナはレヴィナが頬に触れた右手に両手を重ねうっとりした表情を答えた。今更ではあるが、レーナとレヴィナは姉妹である。双子ではなく、レヴィナの方が2つ年上で国防隊への入隊も彼女の方が2年先だ。レーナはそんな姉の姿を見て憧れを持ち、彼女も国防隊への入隊を決めたのである。しかしレヴィナは類い稀な才能で異例のスピード昇進を果たし、現在では国防隊の司令官にまで上り詰めたのだ。一方のレーナはレヴィナ程の速度で昇進することが出来ず、現在でも未だ小隊の隊長を務めるに留まっている。だが、そんな優秀な姉を嫉む様なことをレーナはしなかった。寧ろ、彼女の事を誇りに思っていたし、何より姉の事が大好きだった。
「今夜も沢山、愛し合いましょう♡」
「勿論ですっお姉さま♡」
そしてレーナのレヴィナに対する思いは、いつしか愛へと変化していたのだ。現在では既に身体を重ね合わせる間柄にもなっている。流石に普段は上官と部下という上下関係ではあるのでそう言う態度をお互い取ってはいるが、誰もいない場合はそういう訳ではない。司令官室で2人きりだと、抱き合ってキスしあうのは日常茶飯事となっている。そして今も、レーナとレヴィナは司令官室のど真ん中で抱き合ってキスをしていた。のだが―――
ピリリリ!
突如、司令官室の呼び出しベルが鳴った。ハッとした2人はすぐに身体を離し、先程までの軍人の顔へと戻る。そしてレヴィナが呼び出しベルに応えた。
「司令官、すぐにご報告したいことが」
「わかったわ。入りなさい」
やがて自動ドアが開き、1人の青年層男性型ヒューマンノイドが入ってきた。その左腕には「片手が四角い物を持ち上げている」絵柄が描かれたワッペンが縫い合わせられていた。
(回収部隊の隊員か…どうしたのかしら?)
「それで、急な報告と言うのは何かしら?」
「はい。先程、第101歩兵小隊が殲滅したと思われる変異少女の死骸が消失していました!」
「何ですって!?」
思わず声を上げたのはレヴィナではなくレーナだった。それもそうだ。レーナたちが撤収してから1オリス*1も経っていないからである。
「今レーナ隊長から報告を受けたところよ。報告では戦死者が出ているわ。そっちの方はどうだったの?」
「現場には何も残されていませんでした。その戦死したという隊員の遺体も、見つかりませんでした」
「短時間で現場から何もかもが消え去った…となると、考えられる原因は……」
「…変異少女でしょうね。でも犯人は
今レヴィナが言った。「
「いかがいたしますか、司令官」
「監視員の増員をお願い。親種が居る以上、早急に討伐しないと繁殖されて大変なことになるわ!」
「ハッ!すぐに取り掛かります!」
「お願いね」
そう指示を受けた回収部隊の隊員はサッと踵を返して司令官室を出ていった。そして室内にはレーナとレヴィナが残された。
「司令官、101歩兵小隊への命令は?」
「いえ、今日はもう休みなさい。代わりの部隊に当たらせるわ」
「わかりました。では、私もこれで失礼します」
「ええ。また後でねレーナ♡」
「はい、お姉さま♡」
そしてレーナも司令官室を退室していった。