「レーナ…レーナ、起きなさい」
「ん…うーん」
時間は少しだけ遡り、レヴィナに肩を揺すられて目を覚ますレーナ。レーナの頭はいつの間にかベットの枕の上に乗せられていた。
「あれ?私、確かお姉さまに……」
「うん。私に
「そ、そんなぁ…お姉さまとの愉しい夜がぁ……」
現実を突きつけられて落ち込むレーナ。だが、レヴィナは急いで宿舎に戻るように促した。
「それより急ぎなさい。あと1オリスもしたら起床時間になるわ」
「ヤバ、急いで戻らないと」
「体は綺麗に拭いておいたから、服を着て急いで宿舎に戻りなさい。いいわね?」
「はい、お姉さま」
レヴィナに促され、レーナはパパッと服を着ると急いで扉の前へと来た。
「お姉さまぁ♡」
「もう、甘えんぼさんね♡」
最後に扉の前で1回だけキスをして、レーナはレヴィナの私室を出ていった。そして夜中にレヴィナの私室を目指した時と同じルートで宿舎に戻っていった。
その後、無事起床時間までに宿舎に戻ることが出来たレーナはいつも通りに起床して朝礼に参加、その後に食堂で食事を済ませる。食事の席ではレーナと第101歩兵小隊の隊員2人も同席し、レーナは本日の仕事を伝えた。
「アイレンドート地区の警備が今日の101歩兵小隊の任務よ」
「アイレンドート地区…あの廃墟ビル街が立ち並ぶ地域ですね」
「うへー、あそこはいつ行っても不気味だから、嫌なんだよねぇ…」
第101歩兵小隊の本日の任務地であるアイレンドート地区は「シンファニー」の旧繁華街だ。現在は新しい建物が国の中心街に出来たことで、アイレンドート地区に店を出していた店舗は殆んどが中心街へ移転した為、現在は廃墟ビルが立ち並ぶ地区となっているのだ。だがこう言った場所は廃墟マニアのようなヒューマンノイドだけではなく、変異少女も姿を現しやすい場所になっているのだ。
「泣き言は効かないわ。出発時間は1オリス後、それまでに準備をしておいて」
「了解です隊長」
「はぁ…頑張ろ」
こうして朝食の時間は過ぎていった。その後、第101歩兵小隊のメンバーは保管室へと向かい装備を身に着けた後、整備室でX-93の動作確認を行っていた。するとそこへ、毛先になるにつれて外へと広がっていく水色の長髪と黄色い瞳をした身長150シーチくらいの女性型ヒューマンノイドと、茶髪のボブヘアーと赤い瞳をした身長150シーチくらいの女性型ヒューマンノイドのTシャツと長ズボン姿の2人がやって来た。
「あ、レーナさん。これから任務?」
先に声をかけてきたのは水色の髪が特徴的な女性型ヒューマンノイドだった。
「ユーリさん。はい、今日はこの後アイレンドート地区の警備です」
「そんなんじゃね!頑張ってきんさい!」
水色の髪の女性型ヒューマンノイドの名前はユーリ、シンファニーの国外れになる田舎から国防隊へ入隊してきたヒューマンノイドだ。そして、田舎地方の独特な訛りが入隊した後も消えず現在でも、訛り言葉で話している。少し浮いているようにも見える人物だ。しかしユーリも昨日レーナが出会ったシィナ、エルフィと同じ第23特別小隊の隊員である。その実力は折り紙付きだ。
「ま、せいぜい変異少女の奴らに見つからないようにするんだな」
と、今度は茶髪の女性型ヒューマンノイドがレーナに話しかけてきた。
「……ご忠告、感謝します。オリヴィアさん」
レーナはその茶髪のヒューマンノイド、オリヴィアに少し面倒くさそうに返答した。この口の悪い女性型ヒューマンノイドの名前はオリヴィア。気が強く、自身の力に絶対的な信頼を置いている一言で言って、関わるのが面倒くさい奴。である。だがオリヴィアもまた、第23特別小隊の隊員。その実力は本物である。
「まっ、私らは変異少女の活動が確認されなきゃほぼ出動がないからなぁ!せいぜい、奴らの痕跡を見つけて来いよ!」
そう言ってオリヴィアはレーナたちの元から去っていった。
「まったくもう…レーナさん、堪忍してな」
「大丈夫ですよ。オリヴィアさんの実力は知ってますから」
「そう言ってくれると助かるわぁ。気ぃ付けて行ってきんさい」
「ありがとうございます」
オリヴィアのフォローを入れてユーリもその場を後にした。それを目で追いかけることなく、レーナはX-93の点検を続けた。
そして時間は流れ、レーナたち101歩兵小隊のはアイレンドート地区の警備を続けていた。廃墟ビル群に交じってシンファニー国民が暮らす家が立ち並ぶ街を、レーナたちはX-93を携えて歩いていく。
「はぁ…相変わらず不気味だよねぇ、ここ」
「ホント、早く終わらないかしら」
「2人共、私語はほどほどにね」
だが、警備任務と言ってもこの国の治安は大体どの場所でも良好だ。こんな廃墟ビル群が立ち並ぶアイレンドート地区でさえ、である。故に、この警備任務は常に暇なのである。それからしばらくレーナたちは狭い通路を歩いていった。すると、通路脇に立っていた中年層の男性型ヒューマンノイドがレーナたちに気づき、声をかけてきた。
「あんたたち、国防隊の隊員だよな?」
「あ、はい。そうですが…どうかされました?」
「昨日の夜中になんだがよ。あそこの廃墟ビルの近くを歩いてたら、中から女性型ヒューマンノイドの声が聞こえてきたんだ」
その男性型ヒューマンノイドは少し離れた場所に立つ廃墟ビルを指さした。その指さされた廃墟ビルに目をやるレーナ。
(廃墟ビルから声……まさか変異少女かしら?)
レーナは質問を返した。
「その声はどんな声だったんですか?」
「うーん、喘ぎ声のように聞こえた気がするが…なにぶん俺も眠気に襲われたもんだからさ。聞き間違えかもしれん。もし聞き間違いだったら、すまん」
「そうですか。また何かあれば、国防隊へ連絡をお願いします」
「ああ。すまねぇな」
レーナは男性型ヒューマンノイドに敬礼をすると、その場を後にした。すると、隊員の1人がレーナに尋ねてきた。
「隊長、さっきの話…」
「
「…了解です。一応本部の方に連絡を入れておきますね」
そう言ってもう1人の隊員が通信機で本部と連絡を取った。
本部への連絡を終えたレーナたちは、先程の男性型ヒューマンノイドが言っていた廃墟ビルの前へやって来ていた。色が剥がれ落ちた鉄筋コンクリートに覆われたそのビルの1階にある入り口が大きく口を開けていた。
「じゃあ今から調査にかかるから、各員警戒を怠らないように」
そしてレーナたちはビルへと侵入していった。ビルの中はマルティニスの主星である「ティファニアー」から降り注ぐ光が入り込み、意外と明るかった。レーナたちは1階の壁に貼られた廃墟ビルがまだ雑居ビルとして稼働していた頃の見取り図を確認した。
「地下は1階、上は4階まであるようね。1階ずつ調べていくわ、先頭は私、2人はその後ろから続いて」
「了解です」「了解しました」
レーナたちは廃墟ビルの調査を開始した。まずは1階から始めることになった。しかし、1階の各部屋を見て回ってものの変異少女が活動したであろう痕跡は発見できなかった。
「1階には何もない。2階に行くわよ」
レーナの指示で、3人は2階への階段を上がっていった。そして階段を登り切った所にある通路に出た時、レーナはある物に気づいた。
「これは…」
レーナはしゃがみ込むと、床に着いた
(ネバついた液体のようね。これは、当たりを引いたのかも)
「隊長どうしたんですか?」
「もしかしたら、当たりを引いたのかもしれないわ。先へ進むわよ」
何か確信を得たレーナは、2回のある部屋に足を踏み入れた。そしてレーナたちの眼前に、衝撃的な光景が広がっていた。
「こ、これは!」
「う、嘘でしょ…」
「こんな事って……」
眼前に広がる光景。それは、山のように積み上げられた卵によって埋め尽くされた部屋だった。
「こ、これ…変異少女の卵…ですよね」
「急いで他の部屋も調べるわよ!各員散開!」
「りょ、了解!」
その光景に唖然とする隊員だったが、レーナはすぐに指示を飛ばした。3人はすぐに散開すると、足早に2階に存在する他の部屋を調べた。レーナが別の部屋に入ると、その部屋も先程と同じ光景が広がっていた。
「隊長!こっちの部屋も卵だらけです!」
「こっちの部屋も同じく!」
(なんてことなの…これが一斉に孵化したら、大変なことになる!)
レーナの額に汗が浮く。そしてすぐに別の指示を飛ばした。
急いで本部に連絡!!変異少女の繁殖地を発見したと!!
「りょ、了解です!」
少し時間は遡りレーナのたちが廃墟ビルへ入って行ったのを紅梅色をした左に流れた前髪を持つロングヘアーに、胸元を強調するシャツとタイトスカートを着た変異少女は、陰から見ていた。
(あーあ。こんなに早く見つかるなんて、ついてないわね。仕方ない、別の場所に行きましょうか)
そう言ってその変異少女はビル街の奥へと消えていった。