レーナからの通信を受けた国防隊本部では第23特別小隊の招集命令が発令され、メンバーであるシィナ、エルフィ、ユーリ、オリヴィアの4人は司令官室に集合していた。
「第101歩兵小隊のレーナ隊長から変異少女の繁殖地を発見したと連絡があったわ。場所はアイレンドート地区の○○ビルよ。直ちに出撃準備を始め、完了次第現場へ急行してちょうだい」
「了解しました!規模はどれ程になっているのでしょうか?」
「今わかっているのは、ビルの2階部分のみよ。でも、変異少女の繁殖地という事なら2階だけなんてありえないわ。十分に警戒し、対処をお願い」
「変異少女の繁殖地がビルの1階だけなんて、確かにありえないもんね」
「そうじゃね。ぎょーさん、必要装備を持っていかんね」
「ま、私は変異少女が撃てればそれでいいんだけどな!」
「それでは準備にかかります。行くわよシィナ、ユーリ、オリヴィア!」
4人は司令官室を後にした。
それから1オリスが経過し、第23特別小隊の4人は変異少女の繁殖地となっているビルに到着した。ビルの入り口には第101歩兵小隊の3人が待っていた。
「待たせたわね、レーナ」
「救援に感謝します、エルフィ隊長。ビル内は既に変異少女の卵が散乱している状態です」
「わかったわ。第101歩兵小隊は、第23特別小隊の援護をお願い。卵は私たちで駆除するわよ」
「りょーかいエルフィ!」
「案内します!付いて来てください」
「しっかり案内しろよ!」
第101歩兵小隊と第23特別小隊はビルへと突入していった。そして階段を駆け上がり、レーナたちが最初に卵を発見した部屋へと到着した。その光景を目の当たりにした第23特別小隊の面々は、驚きはしたもの冷静に状況を確認していった。
「これは……凄い量の卵ね。他の部屋にもあるようだし、さっさと処理するわよ」
「うぇ~気持ちわる~」
「この前の繁殖地よりも多そうじゃ。みんな、きばるよ!」
「たくっ、めんどくさいが…やるしかねぇな」
「冷気放射器用意!」
エルフィの声がビルにこだますると、エルフィ、シィナ、ユーリ、オリヴィアの4人は背負っていた両手持ちの大きな銃口を持つ銃を取り出した。
(あ、あれが冷気放射器!)
第101歩兵小隊の隊員の1人が内心でとても驚いていた。変異少女の産んだ卵は超高熱で熱せられた場合でも孵化をする。その為、燃やすのではなく瞬間的に凍らせることで孵化を防ぐのである。そしてこの冷気放射器を取り扱えるのが第23特別小隊のメンバーなのである。4人は感覚を少しずつ開け、卵の山へ銃口を向けると―――
「冷気放射器、発射!」
エルフィの掛け声と共に、4丁の冷気放射器から極低温の真っ白なガスが放出されそのガスが卵の山を覆いつくしていく。
「ツベたっ!」
噴き出す冷気が少しだけ第101歩兵小隊の隊員たちに吹きかかり、声を上げる。それでも、第23特別小隊のメンバーたちは表情を変えず卵の山に冷気を当て続けていた。やがて―――
「発射止め!」
エルフィが発射停止の号令をした。シィナたちは一斉に冷気の放射を止め、冷気放射器のグリップ前に装着されているボンベを確認した。そしてしばらくして冷気ガスが晴れていくと、凍り付いた卵の山が姿を現した。
「処理完了ね」
(す、凄い…)
「じゃ、次に行きましょエルフィ!」
「そうね。レーナ、案内をお願い」
「了解!」
最初の繁殖場所の処理を終えた第23特別小隊と第101歩兵小隊は次の部屋へと向かった。
それから各階の部屋を回りながら、卵を冷気放射器で凍らせていくエルフィたち。そして最後の階層である4階へと到着した。
「ここが最後の4階です」
「了解、行くわよ」
そして4階の処理が始まった。
エルフィたちが4階に突入した頃、ビルの前から姿を消した変異少女は路地を歩きながらあることを思い出した。
(あ、そうだ。確か4階には特別なモノを置いてきたんだった!)
その事を思い出して呟く変異少女。
「アレなら、少しはあいつらを殺せるかもね」
それはレーナたちが4階の最初の部屋にあった卵を処理し終えた時の事だった。
「よし、次の部屋に行くわよ」
「了解」
そう言ったエルフィに続き、部屋を出ていくシィナたち。そしてそれに続くようにレーナたちが部屋を出ようとした時だった。ボコンッ!と言う壁を何かが突き抜いた音と共に、太い触手が現れた。
「っ!!」
レーナが叫ぶ中、現れた触手は出入り口の真上の壁に向かって伸びていき、やがて壁に当たると貼り付くように一瞬動きを止めると、植物が根を張るように床に向かって細かい触手を何本も伸ばしやがて出入り口を塞ぐように張り付いてしまった。そのことに気づいたエルフィがレーナに通信を入れる。
「レーナ!」
「奇襲を受けた!今は大丈夫だけど、時期に変異少女が来ると思う!」
「了解よ!すぐそっちに行くから、待ってて!オリヴィア、この触手を切って!」
「わかったわ。出来るだけ早くお願い!」
そうレーナが叫んだ時背後から、キャアー!と悲鳴が聞こえてきた。レーナが振り返るとそこには薄いピンク色をした糸によって体を巻き付けられた2人の隊員と、その隊員を両足で捕まえながら、両手を天井に張り付けてぶら下がっている薄紅梅色のロングヘアーが目立つ全裸の少年層女性型ヒューマンノイド、変異少女2体がいた。
「こいつら、いつの間に!?」
いつの間にか現れていた変異少女に驚くレーナ。そして今目の前にいる変異少女が先日倒した奴らとは違うことにもレーナは気づいた。
(この前のとは違う…そうか、戦闘子種か!)
戦闘子種は、その名の通り戦闘に特化したタイプの子種の変異少女だ。通常種とは異なり地形や環境に応じた変異をしているのが最大の特徴だが、通常の子種との見分けもつかない事が戦闘子種の厄介な点でもある。
「隊長、助けてください!」
捕まった隊員の悲痛の叫び声が室内に響く。
「今助けるわ―――」
レーナがそう言いながらX-93を構えた時、別の触手が壁を貫いてレーナに迫ってきた。
「っ!」
レーナは咄嗟にローリングで緊急回避をした。だが、回避行動を終えた直後だった。
「ギャアアー!!」「ギィエエアア!!」
隊員2人の悲鳴が室内に響き渡った。レーナが悲鳴のした方へ振り向くと糸で巻き取られた隊員2人の脳天に向け、2体の変異少女が赤面し卑猥な声をあげながら秘所から黄土色の液体を大量に垂れ流している光景が目に映った。
「しまった!」
レーナがそう言った時には、既に隊員の悲鳴は途切れていた。戦闘子種が秘所から出してくる酸の量が通常子種よりも多い。故に、通常子種の酸を浴びても助かる隊員はいるが、戦闘子種の酸を浴びた隊員は殆んどが死亡することになる。
「このぉー!!」
レーナは自分から見て右側にいる変異少女に向けてX-93をフルオートで発射した。連続で撃ち出された身体構築阻害弾は、次々に変異少女に命中していった。
「あガガガが!」
次々、身体構築阻害弾が命中した変異少女はその身体をボロボロにしながら、捕まえていた隊員の死体と共に床に倒れ絶命した。そして全弾を撃ち切ったレーナはX-93をリロードし、もう1体の方へ銃口を向けたが―――
ボコンッ!
と言う音と共に、再び触手が襲い掛かってきた。それに間一髪の所で気が付いたレーナは右に向かってローリングしこれを回避した。そして回避に成功した時、隣の部屋の壁を突き破って薄紅梅色のロングヘアーが目立つ全裸の変異少女がもう1体現れた。その変異少女の右腕は肩口から物凄い太い触手となっていた。
(さっき入り口を塞いだ奴ね!)
直感でその正体に気づいたレーナは、新たに表れた変異少女に銃口を向けた。すると、ドサッと言う音が今度は鳴り響いた。レーナが音のした方へ目を向けると、ドロドロに溶かされた隊員のなれの果てが転がっていた。そしてその天井には見震えしながら秘所を閉じている変異少女の姿があった。秘所からは酸の水滴がポタポタと床に落ちていた。レーナはすぐにチラリと入り口の方を見ると、オリヴィアは依然として触手を切り取ろうとナイフを動かしていた。
「ああクソッ!さっさと切れろよ!」
(…まだ時間がかかりそうね。こんな所で死んでたまるもんですか!)
レーナはX-93を構え直し、闘志を燃やしていた。