*普通にイチャイチャ
「……キラー」
静かなリビングにマーダーの声が響く。
読書中の俺の注意を引きつけたマーダーは、俺を軽く睨んだ。
「俺の事嫌いか?」
「は?」
予想外の質問に俺は素っ頓狂な声を上げてしまい、しばしポカンとしていた。
嫌い?そんなわけない。そうでなければマーダーと恋人になったりしない。
彼は何をどう間違えて俺にそんな質問を投げ掛けたのだろうか。
「…はぁ」
どう彼に説明しようか考えていると、小さな、諦めたような低いため息が聞こえた。
マーダーはソファの端っこにいたが、移動して俺の隣にピッタリ座る。
俺の目を覗き込むように見つめてきて、俺は石像になったように動けなくなった。
「俺は?」
そのまま平然と聞いてきたマーダーの質問の意図が分からず、何も答えられなかった。
どちらとも無言、俺にとってはとても気まずい時間が流れていく。
互いの呼吸すら聞こえそうなほど静かになり、俺は耐えきれず口を開いた。
「マー、ダー……?」
それでもじっと見つめてくるマーダー。
赤とシアンの綺麗な目に吸い込まれそうになり、俺はバッと開いた本で顔を隠した。
死ぬ。恥ずか死ぬ。何の罰ゲームだ。
まさかマーダーこれを狙ってんじゃ、と思った瞬間、俺の顔の前から本が消えた。
……否、俺の前に移動したマーダーが俺から本を奪った。
今の俺はどんな顔をしてるのだろう。顔が熱いから赤いだろうか。それともマーダーからの無言の圧で真っ青になっているだろうか。
「…」
「………」
ひたすら俺の目を見つめてくるマーダーと、ひたすら恥ずかしくて目を必死に背ける俺の無言の戦いが始まった。
しかも段々顔近づいてないかこれ。せめて何か言ってくれホントに。
「俺より本が良いか?なぁキラー。」
そんなことを言われ反射でマーダーを見る。
相変わらず俺の頭はハテナでいっぱいだが。
「答えろ。」
無言の圧も怖いが淡々と言葉でじっくり圧をかけてくるのも怖い。
弱々しい声を上げそうになりながらも必死に答えた。
「そんなこと、ない、です……」
「良かった」
突然ふっと緩む空気。マーダーを見れば優しく微笑んでいる。
彼は閉じた本をソファから遠いテーブルに置き、俺の隣に座った。
「へ………?」
「最近本ばっか読んでるからそんなに面白いのかと思ってな。俺といるより本の方が良いのかと」
誤解を解こうとふるふると俺は首を振る。マーダーはそんな俺を見てクス、と笑った。
「ま、読書して頭良くすんのも大事だが、」
コツ、とマーダーの口が俺の額に当たり、あまりに突然すぎてキスされたと理解するのに10秒はかかった。
普段しないキスに俺は少々困惑する。
「寂しがってる恋人ぐらいは眼中に入れとけよ?」
優しく頭を撫でられ、心地良い気分の俺にそう言った。
ようやく全てを理解した俺はマーダーに身を預ける。
「…ごめん」
「気をつけろよ」
本に軽く嫉妬していた彼の心を癒すため、今日1日俺はマーダーに甘える事にした。