勝利の女神:NIKKE ─The Last Kiss─【Another Story】 作:一般指揮官
「──ディック。お前、
「──
「──お生憎様。こちとら生まれてからずっと無礼が
部隊の共用のシャワー室。将校以外の下士官や兵卒が使用する一室は簡素な造りだ。シャワーヘッドが設置され、仕切りと扉で囲われただけのそれが並んだ室内でシャワーの水音が途切れる。
通路を兼ねた脱衣のスペースは部屋の両端に設けられたシャワーの個室が並ぶ中央にある。そこへ置かれた長椅子へ腰掛ける長身の兵士──片腕へ黒々とした金属の義手を取り付けた青年が個室から出て来た青年将校を見上げた。
「──お前と彼女の惚れた腫れたに関与はしねぇさ。
「それは有り難いな。嬉しくて涙が出そうだ」
タオルで乱雑に短く刈り上げた頭髪の水気を吸い取り、続けて全身へ。その一連の行程を終えた青年将校が長椅子へ置いた自身の持ち物の中から一本の瓶を取り出した。
「…んなもん持ってたっけ?」
「──貰った」
「あ、そう」
誰から譲られたのか──など聞くだけ野暮だ。自身の無精髭にすら無頓着な男が香水を脈打つ箇所へ吹き掛ける姿に青年は呆れた様子の眼差しを向ける。
「──まさかと思うが…彼女と子供でもこさえたいとか思ってる訳じゃ…」
「──……はっ」
青年将校が鼻で嗤う。馬鹿も休み休み言え。そんな具合に。
「──彼女もそうだが、
上等、とは程遠いがさりとて粗末とも縁遠いベッドが軋む。その上には裸体を晒す一組の男女の姿。
「──リック…!」
与えられる快楽に脳が灼かれ、悩ましい声音と息を弾ませる妙齢の女性──その姿と形をした彼女が白く細い両腕を自身の上で腰を揺らす青年の背中を掻き抱く。
無意識に加減はしているのだろう。
ベッドの軋む音の間隔が次第に狭まる。打ち付けられる青年の昂りは力強く、最奥を容赦なく突き上げられる格好の彼女の唇からは一際高い嬌声が漏れ出た。
「──ンンッ!!やッ…そこ…ダメ…!!」
本当にダメだというなら抵抗を見せて欲しいものだ。男を無自覚に煽る癖でもあるのか──などと皮肉を告げる余裕は青年も持ち得ない。
「──ま、また…イッ…!!」
「──イッて良いぞ…俺も直ぐに…」
喉が掠れて常より低い声が彼女へ一足早い絶頂を促す。それが切っ掛けになったのかは分からないが、不意に彼女は全身を震わせつつ腰を浮かして胎内を締め上げる。
青年がやや遅れて果て、律動によるベッドの軋みが鳴り止んだ。
二人分の弾む呼吸が暫し響き、やがてギシリとベッドが鳴る。
身を起こした青年が昂った分身へ纏わせた避妊具の処理を始める。それを横目で見遣る彼女の鼻腔を続けて擽ったのは紫煙の香り。情事の後もあってか普段よりも回転の鈍い脳へ良く浸透する香りだ。
「──エッチの後って吸いたくなるの?」
思わず尋ねると、肩越しに青年の視線が向けられる。その乾燥気味の唇には一本の煙草が銜えられていた。
「…何故かは分からんが、昔からそうだったのは確かだ」
青年の言葉に大した意味はないのだろう。しかし、チクリと彼女の胸が痛む。
これまで何人の女性と肉体関係を持ったのか──それは知らないし、尋ねるつもりもない。ただ自身以外にも彼に求められた相手がいた、という事実は──有り体に言って嫉妬すら生まれてしまう。
──私以外に何人?
思わず口から飛び出しそうになった言葉を彼女は喉の奥へ引っ込めた。
どうせ皮肉混じりの答えしか返って来ない筈だ。
「──……
「──殺しか?それとも戦闘?」
「──なんでもないよ」
小声で呟いた筈だが、耳は優秀な青年が聞き返す。情事の後だというのに色気の欠片もない推測である。それはそれで
やがて青年の手が煙草を摘みつつ灰皿へ向かう。押し潰された煙草を認めた彼女の細い腕が彼へ伸び、筋肉が詰め込まれた太い腕を掴んだ。
再びベッドへ、自身の上へ彼女は
「──もっと」
「──Yes,Ma'am」
組織上の階級は彼女の方が上だ。上官に対して用いる了解の旨を返した青年が覆いさるや否や、彼女が自ら唇を重ねて差し入れた舌を絡めて来る。
直ぐに挿入しても構わないのだろうが、彼は敢えて再び前戯と愛撫で彼女に切ない嬌声を挙げさせる。
わざわざ時間を掛けて全身に唇を落とし、舌を這わせ、指で蕩けさせた末に──やっと待ち望んだそれが彼女の胎内へ分け入って来た。マナーとして避妊具を纏わせた男性の象徴が最奥まで埋まり、彼女は眉根を寄せながら始まった律動が与える快楽に浸る。
──ディック。お前、彼女とどうなりたいんだ?
不意に脳裏へ先だって尋ねてきた
この関係をどう定義すれば正解なのか。それは難しい問題であり、尚且つ彼女との関係の果てに待つものすら分からないが──
──キスを許す女と、抱く女は自分で決められる性分だ。
心中で返した青年は細く括れた腰を両手で掴むと力強い打ち付けと律動で彼女に絶え間ない快楽を与えていった。