主人公は基本善人ですが、売られた喧嘩は買うタイプです。
あとパルモンを屠殺したり殴って捕獲する生活に慣れたせいもあり、そこそこ暴力に対する忌避感も薄れつつある状態です。
またしばらく探索していると、少し驚くことがあった。
「なんだありゃ……でっけぇ……」
まるで山のような体躯をした巨大なパルモン。
象……というよりマンモスに近い見た目で、胴体は緑色の植物を思わせる体毛におおわれている。
端末を通して調べるとそこには「グランモス」と名前が表示された。
そこそこ近くで様子を見ても襲ってこないところを見ると、かなり温和な性格をしたパルモンらしい。
だけどしばらく観察していたら、野生のパルモンがグランモスに喧嘩を売って返り討ちにあっていた。
その時の様子だが、どう見ても今の俺じゃ太刀打ちできないことが分かった。
なんせ、喧嘩を売っていたパルモンが今の手持ちパルモンといい勝負をするやつだったのだ。
それを鎧袖一触といった様子で蹴散らしているのを見て、ありゃ勝てんわと即座に離れた次第だ。
そのままスタコラサッサと逃げつつ、探索を続けると朽ちた教会跡を発見。ついでにその足元で焚き火をする若い男もいた。
モーガンよりも若い印象の彼は俺を見ると「君は誰だい?」と少しだけ警戒した様子でこちらを見た。
「俺はトーマ、モーガンの弟子って言えば分かるかな?」
「ああ、彼の」
どうやらモーガンの名はある程度広まっているらしく「モーガンの弟子」という名乗りはある程度の効果を示したらしい。
「僕の名前はエミリオ、この辺りのパルモン研究をしているんだ」
エミリオと名乗った彼は手に持っていた大きな本を軽く開いて見せてくれた。
そこには各パルモンのイラストに始まり生態系、特徴などを事細かに書き連ねられていた。
「こりゃすごい。俺の端末なんかより詳しいよ」
「まあね、端末は広く浅く色んなことをサポートしてくれるけどなんでも万能って訳じゃないんだ。
詳しいことを知りたけりゃ自分で調べるしかない。だからこうやって自分で実地調査をしてるわけさ。
ところで……彼の弟子、ということは君は最近こちらに流れついたのかい?」
「ああ、半月くらい前に」
なんでもモーガンは定期的に流れ着いてきたばかりの新参者を拾ってくることがあったらしい。
その時にその人物の性根を見極め、仲間に引き入れるか先手を打ってしまうかなどを考えるそうだ。
あれ、だとすると俺が今誘われてないってことは何か判断に弾かれたってことか?
そんな思いが顔に出ていたらしく、目の前の男は笑いながらそれを否定した。
「今、どこの拠点も人員に対して居住区が足りてない状態なんだよ。最近密猟団や愛護団体当たりが幅をきかせてるせいもあって、新規開拓も儘ならなくてね。代わりにモーガンの弟子を名乗らせるのさ」
「ああ、そういうことか」
「この際だから、君が腕を磨いて大きな拠点をどこかに作りあげて溢れそうな人員を受け入れてくれると助かるよ」
「はは、頑張ってみるけどいつになるかわないな」
軽口には軽口で答えると、エミリオもそれほど本気で言ったつもりもないらしく「期待してるよ」とこれまた軽い口調で答えた。
一度エミリオとは別れ、そのまま更に進む。
道中ツノガミという薄紫の毛並みと角をもつ鹿パルモンと遭遇。
ちょっと苦戦したが何とか捕獲成功。
すると端末が震えた。
「なんだ?」
画面を見るとそこには「ツノガミのサドル解放」という文字が出ていた。
どうやら乗るために必要なサドルが作れるようになったらしい。
これは有難い。徒歩での移動にも限度があるから、パルモンの背中に乗れるのは楽しみと同時に助かる。
廃れた協会の裏手は細い階段を織りまぜた通路となっており、裏手は砂地のむき出しになった広場となっていた。
そこにはタマコッコだけでなく拠点付近じゃ見られなかった別種のパルモンたちが世俗している。
新天地、とまで履かないがエリアが変わったのだと分かり少しだけワクワクした。
だが直ぐにそんな考えも吹き飛んだ。
「……なんだあれ」
遠目に見える人の姿。
エミリオやモーガンたちのような住民かと思ったがどうにも違う。
彼らは5人前後で徒党を組んで、数匹のパルモンを追いかけ回していたのだ。
そりゃ俺だって捕獲のために追いかけたり、攻撃したりすることもあるが彼らの手口はなんというか……いじめに近いやり方だった。
重火器を使い、致命傷にならないように攻撃を加えつつ追いかけ回し、ヘラヘラと笑っているではないか。
しかも討伐し終えたあとドロップする肉や素材などに関しては目もくれず、次のパルモンへと銃口を向ける。
アレは狩りじゃなく、遊びだ。
ただ面白いからいたずらに弱いパルモンを一方的に痛めつけているのだ。
その姿に嫌悪感を覚えた。
するとその団体のひとりが俺に気づいた。
「ーーー!」
遠くで声が聞こえなかったが、何かを叫んだ直後ーー。
「うぐぁ!?」
左肩に衝撃を受けた。
撃たれたのだと理解したのは、ノックバックで転んだ俺の近くに弾丸が着弾した頃だ。
アイツら、問答無用で俺を撃ちやがった!
怒りを覚えて、咄嗟にうちのメインパルモンであるクルリスをくりだした。
「クルリス、リコイルだ!」
俺の声を聞くと、クルリスはは勢いよくジャンプして俺の肩に乗りそのまま頭の上に乗っかった。
そして何をするかと思うとどこからともなく、サブマシンガンを取り出し始めた。
「撃てぇ!」
号令を出すと、頭の上で激しい銃撃音を響かせこちらに迫ってきていた男たちに乱射を始めた。
突然の乱射にあちらも慌てて応戦するが、やたらと弾が明後日の方角へ飛んでいく。
銃の品質が良くないのだろうか。
ならばとばかりに間合いを詰めて1人、また1人と銃撃で瀕死に追い込む。
不意打ちされた怒りと、ズキズキする肩痛みを忘れるかのようにアドレナリンドバドバ溢れさせる俺は、興奮気味に弓を構えて「恨むんなら、俺を真っ先に撃ったバカを恨むんだな!!」と言いながら連射する。
バタバタと倒れる男たち。
リコリスの弾幕が終わる頃には、男たちはみな地面に倒れ伏していた。
終わってから「殺っちまった」と慌てたがどうにも死んでいない。というか出血もなければ欠損もない。
どうやら人間同士の争いにも世界のルールは適用されるらしい。
そんなことを考えていると、男たちはシュン、と音を立ててどこかへ消えてしまった。
そしてそこには彼らの荷物であっただろう袋が数点残されていた。
「どういう事だ?」
まだ分からないことだらけで混乱する俺は、とりあえずその袋の中身に怪しげなものが無いのを確認して回収することにした。
とりあえず妙なことに巻き込まれた俺はこれ以上の長居は不要と思い、来た道をもどることにした。
途中エミリオに再会し、負傷した俺を見た彼は俺の傷の手当をしてくれた。
先程起こったことを話すと驚かれた。
「それは密猟団だよ。良く無事だったね」
「アイツらがそうだったのか。倒したと思ったら消えたんだけどどういうこと? 荷物っぽいのもその場に残ってたし」
「ああ、もしかしてトーマは倒れたことないのかな?」
「?」
よく分からず首を傾げると、異世界人は力尽きるとその場に倒れ、仲間の援護によって助け起こされない限り拠点への強制転移が行われるらしい。
ただその際に荷物は送られないらしく、死んだ場所に荷物が残されるそうだ。
運が悪いと、今回の俺のように回収されて取り戻せないとか。
「え、モーガンには食われるって聞いたんだけど……生き返れるの?」
「あー……たぶん、モーガンもうっかり現地民の説明しちゃったんだろうね。うん、君は死なないよ。強いて言うなら死ぬほど痛い思いして生き返って持ってたもの全部失うって感じ」
「ええ……」
死なないのは嬉しいが、死ぬほど痛い思いするのは変わらないのか。嬉しいような悲しいような。
いや、命の保証が聞くだけマシと思うべきか?
「ただ噂だと、回数制限があるとか条件があるとかでそれに引っかかると蘇らえれなくなる。みたいな噂もあるから油断しない方がいいよ」
「わかった」
どうやらあまり油断も許されないらしい。
とにかく早い段階わかってよかった。
まったくモーガンのやつ、そういう大事な話はしっかりしておいてくれよ。
俺は気疲れを感じ、近くのモニュメントからファストラベルして拠点へと帰るのだった。