※この作品はR-18です。

正真正銘、現地の魔物です。(なお現代知識インストール済み)   作:⬛︎黒幕⬛︎

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ララムのキャラデザ画みたいなのができました↓


【挿絵表示】


いちおうスリット部分には黒海苔貼っときました、センシティブ……かな…?
と、思ったけど見ようと性癖によってはセンシティブだし多分いりますよね修正……


蛇人ララム【1】

 蛇人(ミアーガ)のララムは、本来はそう特異な個体ではない。

 

 故にその誕生も、蛇人としては珍しくもない、ありふれたものだった。

 

 彼の所属する巣の蛇人たちの産屋。最奥の地下湖、その泥濘。

 

 地熱で僅かに温められた泥の巣に産み落とされた卵の内で、十分に育つまでは卵液の中を漂いながら微睡む。

 そして、身体が出来上がれば完全に覚醒し、本能に依って殻を破る。

 

 つがいを成し、交代で巣を見守っていた親個体に拾い上げられて名を呼ばれる。

 

 あまりにありふれた出来事を経て、そうして名もなき蛇人の赤子はララムになった。

 

 そこから「記憶」を得るまでのことは、ぬるま湯のように味気なくぼやけていてよく思い出せない。

 

 

────────────────────────

 

 

 蛇人は、幼体のうちは両親の棲家で隔離され庇護される。

 それは、生まれたばかりの蛇人は成体の精強さからは信じられないほどに小さく、脆弱で繊細だからだ。

 

 分かりやすいのは体躯だろう。

 何故なら蛇人は卵生であり、基本的に一度に産む卵は一つだけ。それでいて産み落とされる卵の大きさは手のひら大であり、当然そこから産まれる幼体も成体の蛇人なら手のひらに収めてしまえる程度の大きさでしかない。これが稀に生まれる一卵性の多胎児であればさらに小さくなる。

 親からしたら手厚い庇護の対象と捉えられるのも当然だ。

 

 そして体躯の他、飛び抜けて未成熟なのが眼球である。

 成体の蛇人の眼球は表層が透明な外殻に覆われており、多少のことでは傷も付かない。

 だが、蛇人には眼球を保護するための器官である瞼やまつ毛、涙の分泌腺が存在する。

 

 眼球自体は瞼よりも強固な外殻に守られているにも関わらずだ。

 

 それは何故か?

 ────理由は単純、幼体の頃の名残である。

 

 蛇人の眼球は成長し切るまでは「人」と同じように脆弱なゼラチン質が剥き出しの状態なのだ。

 眼球の成長が止まり、その最終的な大きさが確定する──そこで初めて眼球の表層部が硬化し、強固な外殻となる。

 それより前に眼球に傷を負えば、魔法で治したとしても後々まで後遺症が残ってしまう。

 

 幼体には他にも多々未熟な箇所はあるが、一番と言っていいほどの弱点がこの硬化前の眼球だ。

 よって蛇人の間で「瞳が柔らかい」というのは未熟さの象徴とみなされており、相手の未熟さを指摘する言い回しとして使われたりもする。

 

 そして幼体の蛇人は少なくとも、眼球に外殻が形成されるまでは未熟とみなされ両親の棲家から出されることはない。

 

 …………そのはずなのだが。

 

 それは手のひら大だったララムの身体が、大人の腕程度の大きさに成長した頃。

 

 彼の両親にとってララムが第一子であり育児経験が不足していたことや、ララムがその年頃の幼体にしては比較的俊敏だったことなど、様々な偶然が重なり。

 

 ────彼は両親の棲家から抜け出し、見張りの目を掻い潜って巣の外に出てしまった。

 

 未知への興味、好奇心に突き動かされた小さな蛇人の脱走は直ぐに巣全体に伝わり、大捜索が行われた末にララムは巣を出てすぐの場所で発見、即座に連れ戻された。

 

 だが…………それまでの間に。

 数多の星々が輝く夜空を見上げたララムは、蛇人の間で凶星(まがつぼし)として知られるある一等星を直視してしまったのだ。

 その視線を媒介に、彼の魂は何処か……あるいは何かと交信してしまった。接続は一瞬のことでしかなかったが、彼の記憶領域に知るはずのない知識が焼きつくのには十分だった。

 

 物心がつく、という言葉がある。

 

 「幼少」とされる、ものごとを理解することさえ難しい未熟な期間を脱することをそういうらしい。

 

 ララムの場合、それはあの星と目が合った時のことだったのだろう。

 

 己が知るはずのない「記憶」、知識が刻まれる。

 そして、それを引き金として、多くを理解させられてしまった思考の次元が急速に引き上がる感覚。

 

 本来はもっと緩やかに、緩慢に行われるはずだったそれを、ララムはほんの数秒のうちに終え────「記憶」を得たララムは、「記憶」を得る前のララムとは劇的に、致命的に変わってしまった。

 

 

────────────────────────

 

 

 「記憶」を得、それに伴って思考力も成体になる間近の個体程度に上昇したララムだったが、肉体に急激な変化があったわけではない。

 

 そのため肉体的には依然として脆弱な幼体でしかなかった彼は両親の棲家での庇護を脱することは許されなかったし、ララム自身もそれには納得していた。

 

 精強な肉体を持ち、食餌もほとんど必要なく、魔法の行使に優れる成体の蛇人でさえ巣の外では容易く命を落としたり深傷を負ったりする。蛇人たちが生息する環境はそれほどまでに過酷なのだ。

 故に「瞳が柔らかい」幼体は、成熟するまで大人しく庇護されるべきである。

 

 ……と、彼の両親が涙ながらに連れ戻されたララムに説いたからだ。

 「記憶」を得たことにより、己の危険に対する脆弱性と未熟さを正しく認識できる知性を得ていたことも大きい。

 かくして彼は、我が子が無事だったことへの安堵やら目を離した自分たちへの自責やらでべしょべしょに泣きながらの説教を受けて深く反省し…………以後、成体になるまで無謀な行いは慎むことにした。

 

 とはいえララムは幼体らしい強い好奇心を持ち合わせ、その上一度脱走に成功したことによって棲家の外に広がる世界の一端を知ってしまっている。そんな彼にとって両親の庇護下の環境は……はっきり言って退屈であることが否めないものだった。

 両親はララムに確かな愛情を持って接してくれたし、ララムの所属する巣は文化的にもかなり発展しているので娯楽の類も存在したが……いかんせんララムにとっては物足りなかった。

 

 しかし前述したように、今のララムは両親の庇護下に留まることが最善であると理解している。

 

 そのため退屈を持て余した彼が、己の内面にある未知……星との交信によって得た「記憶」について日がな一日考えるようになったのは必然だったのだろう。

 

 「記憶」が内包する情報は膨大であり、いくら思索を深めても深め足りなかった。

 また、ララムにもたらされた「記憶」を保持していた種族……「人」というらしい……は蛇人との差異があまりにも大きい存在だったらしく、「記憶」によって得た知識は蛇人からすれば極めて奇妙で興味深いものばかり。

 「記憶」について考えることはララムにとって最高の暇つぶしであり娯楽だった。

 

 「記憶」のうちで特にララムの興味を引いたのは、「人」が用いる蛇人たちとは異なる意思疎通の方法とそこに根差した文化だ。

 

 蛇人、というかこの地に生きとし生ける魔物は、大気中に漂う魔力を媒介に自身の意思を直接他者に伝えることで意思疎通を行う。

 対して「人」は、喉にある声帯を「呼吸」の応用によって震わせて音波を発し、そのパターン……「言語」によって意思疎通を行う。

 

 「人」の価値観で例えるなら「テレパシー」に類されるだろう蛇人の意思疎通法は、大気中の物質を媒介に情報を伝播させるという点では「人」の操る「言語」と共通していた。

 また「記憶」にある「人」が肉声を用いて会話をしている時の感覚はララムたち蛇人が会話している時のものと酷似していたため、どちらの意思疎通法も使用感に関してはそうかけ離れてはいないらしい。

 

 ただし、肉声と「言語」による会話を行う場合は予め意味を持つ音声パターンを決めておき、意思疎通を行う者達の間でその法則を周知しておく必要がある。そして、まだ同じ「言語」の情報を共有していない者同士では極めて精度の低い意思疎通しか行えない。

 そのせいで「人」は同種族であるにも関わらず、「国」や「民族」と呼ばれる別種の「言語」を扱う集団ごとに分裂しており、「言語」の違いという壁により異なる「国」や「民族」同士の意思疎通は困難を極めるようだ。

 

 この辺りの仕様は、一定の思考力と精神構造の類似がある相手ならば誰でも、事前知識がなくとも詳細な意思疎通が可能であることが常識だったララムからすれば面倒かつ非効率極まりないように思えた。

 

 しかしどうやら「人」は魔力の認識や魔法の行使が行えない種族らしいので、「人」という種族からすれば「言語」という意思疎通法は最適解の一つであるのだろう。

 

 また、「言語」を意思疎通の術(すべ)としたためにララムの知る巣のそれとは異なる発展を遂げた「人」の文化の中には魅力的なものも多くあった。

 

 例えば「歌」や「声楽」、これらは蛇人にはない概念だ。

 蛇人にも声帯はあるし、幅広い音域の音を発することも可能ではある。しかし蛇人が肉声を出すのは意思疎通のためではなく、環境音を模した音を立てて外敵や獲物の感覚を惑わすためや、暗闇の中で音波の反響によって周囲の地形を把握するためだ。

 

 そもそも意思疎通が「言語」に頼らずとも行えてしまう蛇人には、肉声を他者への伝達手段として用いるという発想がないのである。

 

 音楽の概念は蛇人にもあるし、この巣では楽器の類も普及している。が、それによって奏でる曲に肉声を盛り込むことを考えついた個体はまだ誰もいなかった。

 

 故にララムにとって楽器を使わなくても音楽が奏でられるというのは革命的で、「歌」の概念に衝撃を受けた彼はしばらくの間、声帯で「歌」を奏でて遊ぶことに夢中になったものだ。

 

 他にララムを魅了としたものといえば、「文字」、そして「文章」だ。

 特定の紋様の羅列によって複雑な意思疎通が行えるという事実はまさに、「人」の「諺(ことわざ)」で言う「目から鱗」だった。

 

 蛇人の文化にも意味を持つ記号(シンボル)の類はある。しかしその数は少なく、詳細な情報の伝達に使えるようなものではない。

 

 では、蛇人が長きにわたる情報の伝達や集積のために、情報を不特定多数にアクセス可能な形に出力したい時はどのような手段を用いているのか。

 

 その答えは「情報魔結晶」である。

 

 そもそもこの世界における魔力とは何なのか?……それは魔力を日常的に利用し魔法を行使している蛇人たちもわかっていない。

 しかしいくつか判明し、周知されている性質もある。

 

 例えば全ての物質の中に含有されていることや、通常の状態では均一の濃度を保とうと拡散していく性質があること。

 そして何より、情報を与えられることで様々な状態に変質するということ。

 

 このうち三つ目の性質は、魔力が「魔法」という形で既存の法則に反してある種の奇跡を引き起こす技術の元手となりうることの理由でもある。

 

 そして、蛇人が情報媒体として利用している「情報魔結晶」もまた、この法則を利用して生み出される。

 

 その原理は蛇人からすると単純で、「情報を保存する」性質と「同じ性質を持つ魔力同士で集まる」性質を付与した魔力に意志や思考といった情報を保存し、圧縮して結晶化。新たな干渉がない限りその状態を保持するという性質を付与するというものだ。

 

 こうして保存された情報は鉱石や宝石のような外見の結晶体として固定化され、それ単体での保存や持ち運びが可能になる。

 

 なお、情報魔結晶に保存された情報は、一時的に結晶化を解くことで容易に──魔力に乗せた意志をやりとりして「会話」するときと同じ要領で──読み取れるようになる。

 

 魔法に長けた蛇人の中には凝固した状態のままの魔結晶からも情報を読み取れる者もいるが、その技術は蛇人からしても難易度が高いのでそれが可能な者はごく少数しかいない。

 

 この魔結晶による情報の物質化は、蛇人の「会話」と同じく事前の知識共有なしに複雑かつ詳細な情報の伝達が可能なものだ。

 

 だからこそ、その使い勝手においてより劣る「文字」やそれを利用した伝達法についてはほとんど発展してこなかったのだろう。

 

 しかし解読に事前の知識共有が必要な伝達手段というのは、万人に容易に理解可能な伝達手段とは別の意味で有用なのではないか。ララムは「記憶」の中にあった、「人」という種族の歩んだ戦乱の歴史を知った上でそう考える。

 情報の多寡というのは戦いの趨勢を大きく左右することは、「人」の歴史が証明していた。

 

 「文字」という伝達手段の持つ暗号性は、何らかの大きな戦乱の中では大いに役立つだろう。

 

 ……とはいえ、基本的に温厚で協調性と共感性が高い種族である蛇人が「人」のように相争う姿は想像できない。

 

 なので「文字」が持つ自勢力にのみ解読可能な情報伝達手段としてのポテンシャルは蛇人達にとっては無用の長物だ……今の所は。

 

 当然だが、ララムが所属する巣の蛇人たちの縄張りは限られている。

 

 その領域内には今の所、巣に所属する蛇人と岩精以外に一定以上の知能を持つ存在は確認されていない。蛇人にとって敵となる魔物自体は数多いが、彼らは知能が低く、ほとんど本能だけに従って行動しているタイプの魔物だ。

 

 この巣に住まうララムの同胞達は未だ、明確な悪意を持って敵対してくる高い知能を兼ね備えた相手とは遭遇していないのだ。

 

 だが、そういう種族が……それこそ、「人」のようなある種の悪辣さを持つ種族がこの世界のどこかにいない保証はどこにある?

 

 いつかそういった存在と出会い、その悪意に晒されたとき同胞達はどうなる。

 

 同胞達はそんな存在がいるなどとは予想だにしていない。

 ララムとて、「記憶」を得ることがなければそんな発想など持たなかっただろう。

 

 もしも事前の情報も準備もなく「人」のような種族と出会ってしまった場合の巣の末路は……想像するだけでも恐ろしい。

 想像を絶する被害がもたらされ、巣そのものが滅びることさえあり得る。

 

 「無い」ことを証明するのは不可能だ。

 

 そんな種族などいなければいい。

 そんな存在とは未来永劫邂逅しなければいい。

 

 それならばそれでいいが……もしもの場合のため、最悪を想定して何らかの備えはしておくべきだ。それがララムの出した結論。

 

 「記憶」について考えるのは、確かに初めはただの暇つぶしだった。

 

 しかしそこからララムは前述したような、今後同胞達に降りかかるかもしれない危険に思い至ってしまう。

 

 ララムがそれに気がついたのは成体となる間近だった時分であり─────彼の両親が、巣に侵入した魔物の迎撃にあたって命を落とす、数時間前のことだった。




おめでとう!!アイデアロール成功です!!

\(・ω・\)SAN値!(/・ω・)/ピンチ!

蛇人はとても善良な種族なので悪意を持った外敵の存在は予想だにしていないってわけよ……
つまりここに欲深い人類が来たら……ねえ?
やりたい放題の確定演出だよねっていう
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