正真正銘、現地の魔物です。(なお現代知識インストール済み) 作:⬛︎黒幕⬛︎
ショッキングシーンは大体三人称かララム視点だったので両親視点です。
私はハピエン(広義)厨なのでこうして救済回をだな……
あ、文字化けは『通常知覚できない概念』または『それに片足突っ込んでる何か』だとしちゃうシステムです
文字化けは復元されること前提で書いてるところがある(傲慢)のでぜひ復元にチャレンジしてみてね!
どこか。
何もないような全てがあるような、どこか。
そこに彼らは────ルルムとメトラは居た。
死んだはずである。
否、死んでいるのは間違いがない。
姿こそ個体満足であるようだがどうにも
重さがないのだ、どうやら。
肉体がないからだろうか。
自らと相方が在ることだけはわかるが、それ以外は見ることも聞くことも知覚することもできない、闇の中であった。
「…………死んじまったな」
ルルムが呟く。己が死んだという事実を呑み下すように、悲しげに微笑いながら。
「そうだねえ。……ルルムはあの攻撃、避けられたんじゃないかい?」
存外あっけらかんとした態度で応えたメトラは、悪戯っぽく問いかけた。
「悪い、メトラがやられて……一瞬、集中が切れた」
投げかけられた問いの答えを、ルルムは沈痛な面持ちで返す。
その内容自体は想定のうちだったが、ここまで落ち込むとは思っていなかったメトラは密かに焦った。
親愛の情を持つ相手に対して揶揄うような言動をすることが多い彼だが、何も相手を傷つけたいわけではない。変わり者とはいえ
「はあ、全く。大事な時に、僕が支えてやらないと剣も振れない有様になって……」
だから親愛の情を込めてそう揶揄う。
どう考えても逆効果なのだが、長い間同族と碌なコミュニケーションを取ってこなかったメトラはそれに気がつけない。
そもそもこの発言自体、メトラの込めた意味としては『自分が魔術で支えたり転移させたりしてやらないといけないというのも悪くなかった』『僕と君は本当にいいコンビだね!』辺りのものだ。
明晰な頭脳を持つが故、変に意味をこねくり回してから出力された結果がこのバッドコミュニケーションなのである。
普段のルルムなら、生来の察しの良さと前向き思考でメトラの伝えようとしている意味を正確に読み取るのだが…………本気で落ち込んでいる今はそうもいかなかった。
「…………本当に悪かった、ララムも……一体きりにしちまったしな」
がっくりと腕をうなだれさせ、悲痛な意思を発するルルム。
案の定、悪化している。
その上、無意識にメトラにも刺さることを指摘してしまったものだから、メトラの方までしなしなと項垂れた。まさに青菜に塩といった有様だ。
「…………それを言われると僕も、この子を連れてきてしまった」
自嘲するように、懺悔のようにメトラが口にする。
掌に乗る小さな、己の胎の中で卵になるはずだった塊を悲しげに見つめながら。
二体はそれから暫しの間、自我も意思も未形成のまま、名を贈ることもできず死なせてしまった小さな塊を見つめた。
どちらももはや意思を発する気にはなれず、悲痛な面持ちで額を突き合わせる。
と、その時。
唐突に現れた見慣れた小さな手が、その未形成の胚を優しく掴んで共に消失した。
「「は?」」
二体は大いに困惑した。
一見意味不明な謎現象、だが二体の直感は告げていた。
死ぬはずだった小さな我が子を、その手が現世に連れ戻したのだ、と。
「………………今の、ララムの手だったよな?」
「……そうだね」
「ちびを連れ戻したよな?」
「多分」
互いに顔を見合わせて確認し合う。
どうやら残してきてしまった
「何を、どうやったか分かったり」
「しない。全然意味がわからない。どうやったんだろうあの子」
わずかに期待しながら放たれたルルムの問いを、メトラが悔い気味に否定する。
天才と称され、数多の知恵を編み出してきたメトラであっても先の現象は意味不明だった。共にここにいた以上、あの小さな我が子は死にゆく運命どころか既に死んでいるまであった筈。
それを現世に引き戻すなど、如何様にすれば成し得る所業だというのか。
メトラは本気で困惑したし、彼の終生の
「ええ……メトラでも分からないことをやってのけたのかよララムの奴」
あまりの事態に悲嘆を忘れ、生来の前向きさを取り戻したルルムはどこか呑気にそうこぼす。
必要がなければあまり深く考えない彼は、ララムの成したことの規格外さをメトラほどには理解していなかったからだ。
「…………まあ、僕たちの仔だし」
メトラはあまり論理的でない、一旦の答えを定める。
調子を取り戻したらしいルルムに安堵の笑みを浮かべつつ、どこか誇らしげに。
「それもそうか」
ルルムはあっさりとそれに賛同し、それから小さく笑った。
「…………でもなんか、あれだな。ちょっと安心だな」
「ふむ?」
言葉通り、安堵した様子で語る彼にメトラは片眉を上げた。
先程まであんなに落ち込んでいたというのに、どういう心境の変化だろう。
そんな彼に、ルルムは何やら確信した様子で告げる。
「あいつは多分、これからもメトラや俺みたいに……いや、俺たち以上に色々やらかしながら、それでもちゃんとやっていける」
だから大丈夫だ、といつもの通り柔らかく微笑った彼に、メトラも釣られて頬を緩めた。
「ふふ、そうだね。きっとそうだ」
「ああ、俺たちの仔だからな」
「うん。今連れ戻された、まだ名前をあげられていないあの子も」
「同胞たちが、ララムと一緒に育てるだろうな」
「だろうね。きっとあの子も大丈夫」
口々に、そう納得し合う。
生前の暖かい日常と同じように。
それから少し悲しげに続ける。
「……俺たちがそばにいられないのは寂しいけどな」
「…………やっぱりもうちょっと上手くやれればよかったね、僕ら二体とも」
「…………それは言いっこなしだろ、もうどうにもならな……いや、」
ふと、ルルムが気付いて首を傾げる。
「どうしたんだい」
「…………この後って、俺たちどうなるんだ?」
自分たちは死んだわけだが、謎に意識を残している。相方も知覚できる。
これはどういうことで、そしてこれから自分たちはどうなるのだろうか。
全く未知だ。
「さあ」
「メトラでも知らないか……」
ダメ元で問うたメトラも、死後の世界については知らないらしい。
こんな時にも一旦確認してみる辺り、ルルムは年上で頭脳明晰なメトラのことを大体何でも知っている凄い奴だと思っている節があるのだった。
「流石に死んだ後のことはわからない…………俄然興味が湧いてきた。今から調べよう」
当のメトラは流石に全知ではないので今後のことは何も知らない。
だが、それゆえに彼は探求の徒であった。
ここまでの会話から死後の世界という新しい未知に興味を見出したメトラは、どうやら死んでも研究を続けるつもりのようだ。
キラキラと目を輝かせ、急に活気を取り戻している辺り根っからの研究者気質らしい。
「ええ……」
「ルルム、君も手伝ってよ」
流石に引いているルルムに対し、メトラは事も無げに言い放った。
手伝わせるつもり十割の態度である。
「ええ…………何というか、メトラは……ブレないな」
「当たり前だよ、これが僕さ。ほら、付いてきて!ここを探索しよう!」
「はいはい、分かったよメトラ」
こうして二体の蛇人の魂は、存外に楽しくなりそうな死出の旅路を這い始めたのだった。