討伐回・第二弾、最終話となります。
(読みやすさの為に話数を再度分割致しました)
俺は構内を歩いていた。
もう辺りは完全に夜になっている。影と冷たい外気がそれをよく示していた。
外気が風となり、ざわざわと木々が鳴る。気になどしてはいられない。
「篝さん、まだいらしたんですね」
突然、声を掛けられた───あいつの姪だ。
ああ、ここに居たのか。
そっちこそ、と返すと、待ち合わせしてるんです、と笑顔を向けられた。
「ああ、あの子なら来ないぞ」
何でも、急用で行けなくなったんだってさ、と続けると、言付けを預かって下さったんですね、ありがとうございます、と礼を言いながら腑に落ちない様子だとよく分かる。それはそうだろう。言っている俺でさえ、この理屈は少し不自然に感じる。
だから早く帰れと促すと、少し躊躇った後、送って下さいと言われた。意を決したような顔をしている。まず親御さんに連絡を、もし都合が付かなかったら俺達が送ると返すと、分かりましたと返してきた。心残りがある様な、何だか残念そうに見える顔だった。
幾ら叔父の知り合いだからって、そこまで簡単に信用しちゃいけない。隙を見せるものでもない。もし何かしらの害意を隠し持っている相手だったら、どうなっていたやら。
誰が何を隠し持っているかなんて、一見では分からない。相手が巧みなら猶更だ。俺とて、簡単に例外に入れていい存在じゃないんだ。
だって俺はたった今、お前の友達を殺してきたばかりなんだから。
『アオジャシン』の人生は、人としての姿で寿命を迎え、獣としての自分に喰われる前から、一体化した時とその後の為にある。それは、周囲の人間関係の選択でも同じである。自分が『理想の姿』になった後に喰らう候補の選択。足が付くのを厭い結果的には喰わないにしても、生来の傾向としては喰う方向に定まり続けている。交友のあった相手に対しての情などはそこには無い。夢に対しての例外は無い。
───分からない。
俺はペットボトル越しに自分を見上げる視点を知らない。ぬめった肌と吸盤を持ちながら泥の中にうずくまり、窓越しに部屋の中にいる自分を見つめる視点を知らない。藪の中に潜り込み、離れた所に居る自分を見る針の様に細い瞳孔を持たない。
───利用する為だけに『友達』を作り、使い潰し続ける人生を『素晴らしい物』と言い切れる価値観を知らない。
『アオジャシン』は色々な意味で厄介な相手だ。
偶然が無ければ獣の姿を認識する事も出来ず、偶然を以てしても「悪意ある存在だ」とは検知されない。また、一体化の為に自らを誰かにわざと殺させるのも、その後にその相手を捕食するのですら、「悪意故である」とは検知出来ない。だからこそ、メノウはあれだけ頭に血を上り滾らせ、吠えたのだろう。決して蛮勇が故だけじゃない。『すぐ傍に居たのに気付かなかった』、『動向を止められず、見て取る事も出来なかった』というのは、とても悔しい事だから。
出来るだけ簡単に討つならば、認識する機会を得て、一体化する前に獣の姿の形態を潰すのが良い。そうなれば、人間の形態の『アオジャシン』は茫然自失となり行動不能となる。そうした上で人間の姿を討つのが一番楽だ。
突然変異で生まれる一族、もしくは、通常の人間から突如生まれた変異体。
認識阻害を齎す何らかの効果のせいで、こいつらを認識出来たのはここ百年前後だ。だから、『アオジャシン』という呼び名が付いたのもそれ程昔でもない。
それにしても、この呼び名を考えた奴は随分趣味が悪いと思う。
───それともそいつも、奴らの生態に対して腹に据えかねていたのか。
自らの『輝かしい未来』の為に周囲の人間を犠牲にする、生まれながらに自らの人生の設計図を持って生まれた存在。
───『
予め描かれた図と、それに応じてのびのびと動く自由な奴ら。奴らの夢の設計図。それを見つけて引き裂き破くのが、俺達の仕事の一つだ。
人を喰らう為だけに関係を結び、利用する奴らと、そんな奴らの夢を踏み躙る俺達。どちらが先に気付いて潰して喰らうか。そんな不毛なやり取りしか、ここには無いのかもしれない。生まれながらの傾向と価値観は、折り合いを持たせる事など実質不可能なのかもしれない。
いや、種族の如何など別にしても『絶対的な信頼を置いていい相手』なぞ、何処にも存在しないのではないか。
───そんな考えが浮かび、暗い影が少しだけ心に滲んだその時だった。
「六連!」
声がした。カズトと待機させていたうちの連中が、すぐそこまで来ていた。万が一苦戦した時の為に近くまで呼んでいたのだ。メノウも居た。頭が冷えたらしく姿は人の形に戻り、六連さんすみません、とこちらに謝ってきた。
六連、ともう一度カズトが俺を呼んだ。顔はいつもの表情の薄い顔。しかし、こちらを心配してくれているのは十分に分かった。
───あいつがこうして名前で呼んでくるという事は、俺はよっぽど酷い顔をしていたに違いない。
前を見る。
みんなが居る。俺を待っていて、信じてくれている。
───大丈夫だ。俺もお前達を信じているし、これからも信じ続けるんだ。
無事終わったぞと声を掛け、皆の元に向かった。
まだまだやる事は多い。こんな所でくじかれ沈み込んでいる暇は無いんだ。
夜の色は濃く、風は冷たい。
しかし、俺の身体は熱く、胸の中に在る鼓動は熱に合わせて脈動を奏でていた。
人ならざるものは独特の理論や法則を持つ者・種族も居るんじゃないかな、という前からの薄っすらとした続きです。(そしてそれは時に人間にとっては迷惑・どうやっても受け入れられない身勝手な物でしかなかったりする)
六連は『アオジャシン』に限らず、訳の分からない法則の為に人を喰らう・犠牲にする(そしてその為に何も知らない相手を陥れもする)奴は嫌っております。種族単位でそうだった場合は種族そのものを嫌う。
(個人を見る・検分する性質&どんな場合でも和解の可能性は全くのゼロでは無いと対話はするけれども、大体の場合は人間や他者との折り合いが付けられる場合含め、独特の理論や法則を優先して他の手段を取らない・嬉々として、時には騙した相手を嘲笑いながら消費する場合が殆どなので嫌い続ける)
六連はもし友情・愛情を抱いた相手が『何処か遠くのゴミ捨て場で果てそうになっている』なら、もしくは『ドブ川の中で力尽き沈みそうになっている』ならば、どんな手段を使っても駆け付け抱き上げるし、もし深い因縁によって憎悪を抱いた相手が『草むらの中で力尽きようとしている』なら、もしくは『数人に袋叩きにされて息も絶え絶えとなっている』ならば、最悪の頃合いで訪れ、確実に止めを刺す&最悪の死を与える様な存在です。(後者の例は人ならざるものを想定しているので、人間相手ならもう少し変わるかもしれませんが)
六連と『深い関係を結ぶ』という事は、その縁によって繋がり続けるのと同義なのです。
この小説にどのような描写を求めていますか。
-
アクション・動きのある描写
-
独白に近い心理描写
-
登場人物同士の交流描写
-
ぼかしている部分の明示
-
R18描写(性的な描写)
-
R18G描写(グロテスクな描写)