※この作品はR-18です。

プレイアデスの瞳   作:甕下 星辰

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※別サイト(pixiv・ミッドナイトノベルズ)にも同作品を投稿しております。

前回の続きです。
糸口は未だに見つからず。


屠龍の技研ぎ上げ、金鱗を刮ぐ②

睥睨獣に関しての情報は少ない。

資料が散逸しているのもあるが、睥睨獣がそれなりに居た筈の時代を生きていた存在からですら新たな情報を得られやしなかった。

連携の為に「あれは睥睨獣だ」とこちらが知る限りの事を各種機関にに触れ回っても、睥睨獣か、まだ生き残りが居たのか、と驚かれるだけでなく、二度も遭遇したのによく生きていたなあと感心され、挙句俺達こそが『睥睨獣に詳しい側の存在』として扱われすらした。

先に言った通り、睥睨獣に遭遇した者は殆どが殺されている。現代まで生き残っているのは遭遇そのものを回避出来た者のみだ。だからだろう。

 

───しかし、討ち取ったという記録があるのに、これは一体どういう事だ。

 

人が睥睨獣と思わしきものを討ち取ったという記録が全く無い訳ではない。されどそれは簡素で、如何にしてとの方法が記されていない。

今の俺達に必要なのは、まさにそれなのに。

 

都市は───都市と周辺地域は今のところ正常に機能している。

ニシカの襲撃の記録は報道機関にも渡っている。機密とした部分もあるが、襲撃自体や大きな被害が出ている事は伝わっている。しかし、殆ど報道はされていない。報道自体はされても、よく起こる範疇だと規模や被害を矮小化させて語られる。来るべき時まで隠蔽するべきだと判断したのだろう。

それはある意味正解だった。あるがままを報道したら混乱が沸き起こり、収拾が付かなくなってしまう。

しかし、何時までも隠して置ける物でもないのもまた、事実だった。

 

ニシカが本性を現した後、俺はあいつの姪に警告した。

 

───こうなってしまっても、あの娘は俺達を積極的に関わりを持とうとした。何も知らないのだ。だからそれはしょうがない。けれども時として、「しょうがない」では済まない事態に発展する事も、俺達は知っていた。

 

言葉を選び、なるべく柔らかく、向こうがわたしのせいで、なんて己を責めない様に、そんな話し方を心掛けた。

 

これからは俺達とあまり関わりを持たないで欲しい事。事務所の移転先は教えられない事。そして───

もし今後ニシカが現れ何を言ったとしても、絶対に耳を貸したり近寄ったりしてははいけない事。

可能ならば丈夫な建物の中に入り門戸を塞ぎ、絶対に中に入れてはいけない事。

 

「……ニシカちゃん、どうなっちゃったんですか?」

 

先の忠告を頷きながら真剣な顔で聞いていた娘は、ニシカについての項目に触れた途端に表情が曇り何かを考え始め、しばらくそうした後にようやく重い重い口を開いた。

 

「みなさんに会っちゃいけないのも、お忙しいとか邪魔になるとか、それだけじゃないんじゃないですか?……ニシカちゃんの事があるからなんじゃ」

 

邪魔だなんて言っていないと言葉を返しながら俺の頭の中には、この娘の友達の様な面をして俺達の元に現れたニシカの姿が浮かんでいた。

 

ニシカはどうにもなっていない。あいつは、この娘と共にいる時から何も変わっちゃいない。

 

「邪魔だと言っている訳じゃない。危険には晒せないと言っているんだ」

 

「……捜査に関わる事は教えられないな」

 

じゃあ、と口にしようとした娘を遮り、とにかく、と更に伝える。上手いごまかし方など思いつきようがなかった。

 

「自分の安全を一番に考えてくれ」

 

そこから更に、言葉を重ねる。

 

「『助けられたから』『何かの役に立たなきゃ』なんて、思いつめちゃいけないよ。俺は───俺達はね、助けられた人がその後も無事で居てくれるのが、一番嬉しいんだから」

 

その場の命を助けただけ。事件としては解決し、俺達の手から離れてしまった『その後』の保障は不可能だ。

事件後の現状や、語られる内心や不安なんかを聞いて寄り添うくらいならば出来るけれども、奥底に抱えているかもしれない毀損された部分の完全修復なんて出来やしない。だからこそ、願うのだ。

 

頼んだよ、と締め括り俺は娘の所から去った。篝さん、と尚も何かを言おうとする声を背に、娘の両親にお願いします、と言葉を改め委託して。

言葉は下手だがとりあえず、ニシカが来ても関わってはいけないと伝えられはした。

 

だがしかし奴がその気になれば、建物や遮蔽物を突き破り、引き摺り出す事など容易い。

引き裂くにしろ喰らうにしろ、もっと何か別の用途に使うにしろ、それは簡単に為されるだろう。注意喚起や狙われた者の対処だけでどうにかなる物でもないのだ。

だからといって、騙され誘き出される可能性をそのままにしておく訳にもいかない。

 

───早くどうにかしないとな。

 

早く、早く、早く。気ばかりが急いて、何処にもまるで進めやしない。

どんな糸口でもいい。どんな荒唐無稽な事でもいいんだ。奴を崩せるならば、何だっていい。

 

見えもしない物を探そうと、ボロ屑の中を漁るだけの様な現状。それがもどかしく、また悔しくもあった。

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