※この作品はR-18です。

プレイアデスの瞳   作:甕下 星辰

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※別サイト(pixiv・ミッドナイトノベルズ)にも同作品を投稿しております。
※過去作品の引用・改作です。(概ねのストーリーは違います)

邇獅噛討伐の顛末、ヒツキ目線です。
非戦闘員であり主人公の親友は何をどう見るのか。


凛と響き、燃ゆる(篝は焔、焔は業火)①

「きみはもしかして、ぼくよりもずっと多くを助けるかもしれないね」

 

きみの青い眼はあざやかにきらめき、火花がぱちぱちとはじけ熱を宿した。

 

それを知っているから───だからこそ、思ってしまう。

 

きみが身を削りこうして横たわっているのは、ぼくのせいなのではないのかと。

 

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十二月の山は寒い。

それは、血や肉を持たぬぼくですらそう感じるぐらいだから。今この山に居るみなにとっては、きっと身に沁みるほどにこたえるものなのではないかと考えてしまう。

けれども、今この山に居るぼく以外の面々は、作戦を遂行するために駆け回っている。冷たくなっているのは、この場に居続けるよう配置されたぼくぐらいだろう。

この場からはみなの様子は見えない。だから感じているであろう熱も分からない。

 

ああどうかきみよ、熱くなりすぎるな。

 

彼女を一目見た時から、きみの動きは迅速だった。

彼女が何であるか、どういった縁があるのかをわずかな間に見て取り───かつてきみを襲った彼の近縁の女性、彼と同じく『睥睨獣』であるなんて、ぼくからの細やかな補足などいらないのではないかと思わせるほどにあざやかだったね───新たな拠点への手配も、彼女に有効かもしれない品の捜索や交渉も、けして後れを取るものではなかった。

 

だけどきみが言うように、今こうしてみなが動けるのは彼女の気まぐれが故だというのも、まちがいじゃあない。

 

気まぐれゆえにぼく達の事務所をふらり訪れた彼女は、それがためにぼく達をつまみ喰らい潰して事務所を壊滅させるつもりだったのをやめ、『イッショー』を、六連を、あやめも喰らいもせずに去っていった。

趣向を変え、新たな方法で責め苦しめると予告して。

これには困った。なにしろ、彼女の───睥睨獣の『ニシカ』の出方がまるで分からなかったからだ。

潜伏場所やツテどころか、どんな傾向で動くのかの大まかな要素ですら分からない。個としての彼女以前に、睥睨獣の生態についての資料すら乏しい。あの時の彼と、彼の姉である『ニシカ』に遭った上で生きて帰ってきたぼく達ふたりが『睥睨獣に詳しいもの』として扱われるぐらいと言えば、その乏しさのほどが伝わるだろうか。

 

そしてそんな中でも、『イッショー』は彼女の心理を推察し、動向を読もうとした。

 

まったくの見当外れかもしれない、それでも糸口になるならと、彼は語った。

 

「人ならざるもの、もとい妖怪や神格とされている存在の感性や本質は、時折俺達人間にはよく分からない異質さを感じさせるものがある」

「人間はそんなに重視しないものを重視したり、人間からすると極端に走り過ぎていると見做される言動を、何の意図も無く、もしくは人間の受け取り方とは正反対の意味で行ったりする場合もある、そうだろう?」

 

───だから、こんな『分かりやすい』基盤から行動を成しているなんて思い込み過ぎたら、もしかしたら本質から離れて推理を引っ掻き回すだけになってしまうのかもしれないけれども。

 

「あいつは弟の話を、ガキの頃の俺を襲った『ケンヤ』の事を語る時、随分嬉しそうにしていた」

 

ぬいぐるみやワッペン、刺繍なんかをわざわざ作り見せびらかして───キャラクターの話か何かだとぼかしながら、あいつは延々と語っていた。俺やカズトがあいつに襲撃され生き残った『喰い残し』だなんて知っていた訳じゃない。何の因縁も無い、『ケンヤ』の事をまるで知らないであろう者達の前で、あいつはあそこまで楽しそうにはしゃいでいたのだ。

 

「『弟なぞ、当の昔に喰らって居たかどうかも覚えちゃいない』とか、『コテンパンに痛めつけて以来それっきり、数百年会っていない』とかじゃない。ちゃんと名前も覚えているし、どんな性格なのかも茶化して嘲る程度には身近で様子を見ていた。一方的かもしれないけれど、何かしらの思い入れはあるんだ」

 

何があったにしても、何が無かったにしても、俺が関わらなかった、もう関わる事の出来ない話だ。

それでも推測はしないといけない。何をどう考え、どんな結論に至って何を仕掛けて来るのか。その糸口を掴もうとするのを、止めてはいけない。

別にあいつの事に限った話じゃないけどな、と締め括る前に、『イッショー』はこう付け加えた。

 

だから遊び好きな性質に加えて、愉しもう、嬲ろうと無茶苦茶するかもしれないぞ。

 

───何しろ奴にとって俺は『最愛の弟を討ち取った、憎い憎い武芸者』なんだから。

 

それは、と口を挟もうとしたぼくの声は、「無茶苦茶なんてさせねえぞ」と張り切り高らかに笑うきみの声にかき消されてしまった。

 

黒い棘を吐き出しながら燻らせ、身体の内に突き刺しているかような、苦い苦い笑いだった。

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