※過去作品の引用・改作です。(概ねのストーリーは違います)
邇獅噛討伐の顛末、ヒツキ目線です。
輝く星を見上げるしかない結末。
かつての夏の日、ぼくは六連に、きみはこれから先、ぼくよりもずっと多くを助けるかもしれないと伝えた。
六連がぼくに
「お前が付けた
ぼくがどうしても決められなかった彼自身の
「でもそれならヒツキだけがモロに色々喰らうんじゃないか」
「ヒツキの事は、一体誰が守ってくれるの?」
人びとの、おさな子の道しるべとして通り過ぎていかれるだけのぼくを大切に思ってくれるのが、とてもうれしくて。
「きみの名は、いい名だね」
「『
「きみはぼくと似ている。名につながりがあるだけなのに、そう感じてしまったよ。縁は万物につながっているというのに、こんなに嬉しく思うなんて」
───けれどもきっと、きみの方がぼくよりも強くかがやくだろうと思うのは、今でも変わらない。
「夜空にかがやくすばるぼしはきっと、闇をも照らす」
「『
「きみは将来強いかがやきで闇を照らすような、誰かを助ける人になるかもしれないね」
きみの青い瞳からはぱちぱちと燐光をまとった火花が散りこぼれ、まるで祭事のため灯された花火のようだった。
あの時、きみはヒーローの様な俺の格好いい姿をとくとご覧あれ、その姿、眼に焼き付けろ、雄姿に拍手し、感涙しろ、なんて明るくおどけてみせたね。
だからぼくは、きみが深刻に捉えすぎるとは思ってなかったのかもしれない。
誰かを『助ける』『守る』というのは、なにも身を削って強大な存在と戦うことだけを指しはしない。
誰かの心の支えになること、どんな勤め、つながりの中でも共に働き成果を出し、気持ちを分かち合うこと、色々な意味でつながりが薄い所に赴いたとしても無為ではないと気持ちを奮い立たせ、己の信ずるものを信じること、自他の安寧を保つこと、どんな方向であっても、その尊さは変わりはしない。
だからどうあっても、きみの歩みが素晴らしいのは変わらないのに。
───どんな形でもきみが活躍する姿を、ぜひとも見させておくれよ。
もしかしてこう言ってしまったのが、きみの悔悟に結びついたのか。
六連、と声を掛けた。
笑っていた六連が、どうした、と姿勢をあらためる。
「六連、ぼくはきみがどんな道のりを歩んでいたのか知っている。『ニシカ』との因縁もその前も、『守るもの』たらんとどう心を砕き、強くなろうと励んでいたのかも知っている」
「けれどもそこまで身を削る必要はないじゃないか」
「きみは、きみ自身を思いやるべきだ」
「きみの親友として、そして、きみの部下として進言する」
───だからきみはぼくに報いようなんて、思わなくていいんだよ。
六連は何も言わなかった。何も言わず姿勢をゆるめ横たわり、ゆったりとした笑みを浮かべていた。
六連の眼に宿るすばるぼしは、肌の熱や包帯に妨げられてもなお明るく、澄んだまばゆさを発しようと佇んでいる。
そのかがやきと熱は、かつてのあの日と変わっちゃいない。
この後口を開いて何を言うのかなんて、分かり切っていた。
かつてぼくは、『星を眺めていて欲しい』と頼まれた。
───
『孤独な寂しがり屋』と、六連がそう称した、彼。
何十年、何百年先に星を見上げて、かがやきや動きの変化を、何気なく感じてくれたらうれしいと、彼はぼくに頼んできた。
天体はゆっくりだけど形が変わり、人間である自分は星が動くまで生きられない。だから少なくとも自分よりは長生きであろう人ならざるものに託したいのだ、と。
しかし星がどう動き、どのようにかがやくのかなんて、いくら長きを生きたとしても、分かりはしない。
黒い空は曇天の闇夜、星は見えない。
冬の空にかがやくすばるぼしも、季節外れのひつきぼしも、雲の帳に阻まれ姿を隠してしまっている。
地上からは、何も見えやしない。
それでも大気はうねり、手など届かぬ中空で、星々は燦然とかがやいている。
何故ヒツキは六連の過去を榮美里に明かしたのかというと、
それが六連にとって重要なファクターであり、今後共に在ろうとするならば絶対に知らないといけない事だからです。
ヒツキは本来人の過去をべらべら話す奴ではないけれども、六連は自分の過去、特に弱みというか影のある部分を(他者に差し迫った何かがあるとか必要性がなければ)「別に大した事ではないだろう」と基本的に話さない&しかし深い所で付き合うならその情報は絶対に知らなきゃいけない、という面倒なタイプなので。
『過去に喰われそうになり、そこから助けられ自分もまた守るものになりたいと思った』。
これは大きな出来事ではあるけれども、人ならざるものが多数いる世界ではありふれた(もしくは命が助かっただけでも幸運な)過去。当人もそう思っているし、聞く人によっては大変だったねーで終わり、その裏で心がどんな方に向き、どんな業を抱いたのなんて想像だにしない。
だから過去を聞かされても何も気付かず、業を垣間見る事なんて無く終わるのも有り得た。
でもそうはならなかった。
もしかしたらヒツキは、榮美里はもう六連の境界内に居る存在だから、明かしても領域を侵害した事にはならないだろうと判断した部分もあるかもしれません。
『篝』とは警護の為に灯されますが、時として悪獣を狩り焚く為の業火ともなります。
そしてそれを全く苦にも致しません。
『守るもの』としてこう動こう、こういう事はしたくない、これは危ない傾向だなど、幼少期の襲撃を経て自らを『守るもの』と定め立ち上がった、かつての『守られるばかりで友達が砕かれるのを何も出来ず見つめるだけの少年』。
規律や線引きという『境界』を重んじているのに、不安定な自らの存在が消える覚悟で親友を守る為に侵犯した、かつての守る場所を亡くして彷徨い続ける塞ノ神。
深入りしないわ、ごめんだわ、と言いながらとっくに引き返せない所まで来ている、現在の姿しか知らぬ情夫を慈しみで包むしか出来ない乳の親。
果たして彼らは、これからどんな道を歩むのでしょうか。
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