以前に別サイトで書いた掌編を膨らませた作品です。
年齢制限があるシリーズなのにR18をあまり描いてないな?と練ったら結構長くなりました。
早朝、彼の部屋の中で待っていると鍵を回す音がした。
───帰って来た。
戸の前に駆け寄り、開かれた扉の前で両腕を伸ばすより先に、あの子がわたしを捉え、抱き寄せる。
抱きしめられたままほんの少し後ずさりする。戸口より内、完全に内側に入った所で六連が唇を重ねて来る。
力強い腕、重ねられる唇と割り込んでくる舌、伏した眼は睫毛の影と青い光を宿し、静かにこちらを見つめている。
香るのは石鹸やシャンプーの残り香のみ。酒の匂いは完全に抜けきって。香りとしてもあの子の中にも、他の女の要素は感じられない。
ああ。
あの子達、失敗したのね。
激しく貪られながら、そう気づいた。
貪り続けながら六連はどんどん迫り、わたしを壁に追いやって来る。
口付けが痛い。いつの間にかわたしを抱いていた腕は離れ、彼の手の平はわたしの両腕を取り、壁に押し付けていた。
それでも六連は口付けを止めはしない。わたしの方から抜け出そうとも、思わない。
唇がわたしの口から離れ、右頬、そして喉元に移る。ちょっとどうしたの、がっつきすぎよ、と、吐息交じりの声で問おうとした、その時だった。
彼の歯が、わたしの乳首を噛んだ。
口付けの延長で服の上から、服や下着といった遮蔽物越しでも突き刺さる感覚は明確だ。
寄せられる頬の熱さと牙が刺さる痛みと同時に女陰から熱く迸り、一気に下着が濡れてゆく。
痛みと圧し付けられる彼の体温で身体の芯が熱くなり、女の部分が硬くなるのが分かった。
───ずいぶんと荒っぽいわねえ。
さあ、ここから何をしてくれるのかしら。促すために頭でも撫でてあげたいのだけれど、と手首を固定させられたままで思う。
と、ここで彼の両手が唐突に開いた。
「やめだ」
解放された手首をさすりながら、どうしたの、と口にしながら彼の背を追いかける。
彼はまっすぐに居間へと向かい、こちらを一瞥にもしなかった。
ずかずか、のしのし、とわざと粗雑に進んだ彼は、ふうとため息を溢し、ソファに体を横たえた。
ちゃんと寝られなかったんだよと、ベランダに足を向け寝そべり手の平を顔に当て、朝日が顔に当たらない様にして。
「お前、後輩達に俺を押し付けようとしているだろう」
そういう事やめろよな、とうっすらと笑みを浮かべながら、あなたは語る。
「俺はお前に『後輩のお店に寄ってあげて』と言われたから行っていたんだ。純粋に、酒を呑む為にだ。そしたら何だ、いつもいつも横にぴったりと引っ付いて。あれじゃ何の店かわかりゃしない」
「強い酒をガンガン勧めて来て、肩に手をやったり、腕を絡めて来たり……その度に困るよと振り払って、それでも引っ掛けたいと焦ったのか、俺の腿や股間に手を置こうともして来たな。露骨過ぎるし品が無いよ、あんなのは」
後輩の店を違法営業で摘発させたいのか、と面白くもない冗談を言いながら、更に言葉は続く。
「何時行くのかの予定はお前に毎度毎度伝えていた。お前は毎度『ひとりで行ってらっしゃい』と背を押してくれたな」
「俺に呑ませる酒も殆どお前の奢りだったらしいじゃないか。榮美里さんに美味しいお酒をたっぷり呑ませてくれと言われたけれどあなた酔いませんね、とうっかり漏らした奴に聞いたら色々白状したよ」
「『あのひとに頼まれたんです』、『お願いです、このまま大人しくもてなされてください』って」
それでそのお願いにあなたは応じたの、と聞いてみた。
答えは既に知っているようなものだったけれども、それでも聞きたかった。
「まさか!丁重にお断りして近場の宿で酒を抜いたよ」
酒には強いし酔いが抜けるのも早いけどあそこまで酔わされたらな、恨みも買っている身だ、不測の事態に巻き込まれるかもと予防策を取った、風呂に入って速攻で寝て、朝方にもう一度シャワーを浴びてさっぱりして帰って来たよ、と語る口調は妙に明るく、何の非も咎も無い事は明確だ。
それでも、こちらの非と咎を突くかすかな苦みは、確かに含まれている。
やっぱりこういうことは、あなたの口から聞きたいわ。
「俺に何か思う所があるんなら自分の口で言いなよ。体よく誰かに擦り付けようとするんじゃなくてさ」
「上手く言葉に出来なくてもいい。心の中に近い言葉を───単語でも何でも並べてくれたら、そこから探し出して見せる。それも違うというなら、正解に近い物を引き当てる為に何度でも話し合える。どれほど時間をかけても構わない」
何度でもだよ、とこちらに念を押す口振りは、やはり幼い。
「だから痛くもない腹を───いいや、腹を刺して痛くした上で探られるなんてごめんだね」
だから、今回も腹が立ったなあ───と笑う声は明るく、それでも、こちらを突き刺す棘を隠しもしない。
「本当は腹立ち紛れに、迎えに来たお前を玄関口に押し付けて、そのままヤってやろうと思ったんだ」
「でもやめた───俺はうじうじしているからね、後で「酷い事をしてしまった」って後悔しそうだから」
あら、あんなの『ひどいこと』でも何でもないのに。
六連にそう言うと、彼は笑いながら首を横に振った。
かぶりを振って、ちがうちがうとゆるやかに笑う眼にはかすかな呆れと、何とも言えない青い光が宿っていた。
青い光はにじみ、湿った光沢はこちらの眼を通して染み入るようで。
「嫌な事はしちゃ駄目だよ。相手が嫌がる事も、自分が嫌だと思う事も」
だからやりたくない、俺はずっとお前と居るつもりだからねと、無邪気を装って笑う彼の顔から目を逸らしながら、彼の傍に屈む。
そして、彼のスラックスのジッパーを下ろした。
おいまだ話は終わってないぞ、何してるんだ、と少し慌てながらわたしから離れようとする彼の眼をまっすぐ見つめながら、こう言った。
───ここまで悪さしなかった、あなたのオチンチン……いいこいいこさせて?
一瞬飲まれたのだろう、え、と動きも声も止めた彼のその部分を、一気に口に含んだ。
彼の一物は既に滾り、熱を帯びながら屹立していた。
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