※この作品はR-18です。

プレイアデスの瞳   作:甕下 星辰

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※別サイト(pixiv・ミッドナイトノベルズ)にも同作品を投稿しております。

何も分からないからすべて手探りで進むしかない。
それがどんなに愚かな行為であっても。



恋焦がれて魔境に誘う③

あれから場所を変えて三回交わった。

ソファの上で一回、寝室まで歩きながらの未遂、そしてベッドの上での三回。

そのどれもわたしを満足させてくれ、また激しく我を忘れるほどだった。

 

ゆめうつつの褥の上、六連がまた甘くささやいてくる。

 

───なあ、ちゃんと言葉にして言っておくれよ。ずっと一緒に居るってさ。

 

六連はたまにこうして、よく分からないことをせがむ。

 

……またその話?

わたし、面倒な中に組み込まれるつもりはないわよ。

 

───そうだったな、じゃあ、聞き流してくれ。

 

とにかく眠い。沈み込む眠気で瞼が開かない。

だからこれもすべて、夢かもしれない。

 

身体を動かしすぎたし、気を張り過ぎた。

だって仕事が終わってから明け方まで、ずっとこの子を待っていたんだから。

 

まどろみが重い。重さに沈み込む意識に朝の風がやわらかく当たる。

開け放たれた窓。寝室の白い内カーテンが風に優しくなびく。

六連の指がやわらかく、わたしの頬を撫でる。優しい手つきで、長くしっかりとした節のある指が、頬をなぞる。

 

そんな柔らかいまどろみの中で。

 

───でも、俺は絶対に諦めないからな。

 

そんな静かな決意を、聞いた気がした。

 

その後、わたしは後輩たちからあの日の顛末を聞いた。

どんな報告をされるかは既に分かっていたけれども、確認のためだった。

 

「何ですかあの人の子、榮美里さんの特上の太客だからってサービスしようとしたら、すげなくされて困りましたよ」

 

「遊び慣れている風ではあるけど、別に『そっちの接待』は求めてないっていうかノリが悪くて……なんであたしらにあんな付かせ方させたんです?」

 

別口から聞いても、あの子らしいありさまだった。

 

手の掛かる子でしょう、と笑うと、その場に居た全員からあいまいな笑みを返された。

困惑と、口にしていいのだろうかと、何かを言いたくてたまらない、けれどもこちらを気にしてためらってしまっているといった具合だ。

他の後輩たちからも似たような接待を持ちかけられたのを聞いているのだろう、ハッキリ言った方が、とためらいに切迫したものを感じた。

 

なぜこんなことを、いい加減困ります、他の子からも聞きました、もう協力しませんからね───こういったことが言いたいのだろう。

 

「酔い潰してあたしらと寝させて……成功したらどうなると、どういう狙いがあったんですか?」

 

まあそうだろう。訳の分からないことに巻き込んでしまった。

 

ごめんなさい、これでおしまいよ、と謝ると後輩たちも、私達は別に何も損してないからいいですけれども、と納得してくれた。直接何かしらの矢面に立たないが故の、妥協した中での納得ではあったけれども、一応は。

おわびにみんなでお酒を呑みましょうとの一声で、その話題は終わった。

 

さあて、また別の方法を考えなきゃいけない。

 

あの子は器用だ。愚かだけれども、それでも器用だ。

あの子は自分の中にある何かの形を知っている。朧気でも近しいものを上手く探り当てることが出来る。

 

わたしは、自分の内にあるものの形すら知らない。

どう対処すればいいかなんて以前に、それを前にして自分が何を思っているのかすら分からない。

 

だからこれは、暗闇の中で手探りしているようなものだ。

その手探りの中で掴むのが何なのか、手にするまで分からない。けれども、そうでないと進めはしない。

 

───掴んだものが本当に望むものだったのかと悔やみやしないかと、思わなくもないけれど。

 

わたしはどうしたいのか。

怖がっているのか、それとも侮っているのか。

逃げたいのか、それとも留まりたいのか。まったく何も分かっちゃいないから。

 

フロアの喧騒はきらめくようで、後輩たちはひたすら明るい。

矢面に立ちはしない傍観者、あやうく難を逃れた立場で、にこやかに笑っている。もう難に顔を合わせることはないから、平気な様子でここにいる。

遠慮せずいっぱい呑んでねと笑いながら、グラスの中身を呷った。

 

どんな酒を呑もうとも、酔える気がまったくしなかった。

 




前提としてのよく分からない勧め含め、問いに答えられる形を見つける為に手探りで一生懸命なのです。
そして何かしらを探り当てたとして、その『何か』が思うような結果に繋がってくれるかは分からない。

六連は榮美里自身よりも榮美里の心に気付いている奴です。(擦り付け・厄介払い~含め)
間違った事は言ってないし不誠実な事もしていない。(変な所で興奮した以外、何の非も咎も無い)

魔境=娼館や賭博場など人を誘惑して逃れられなくする場所、もしくはどんな危険が潜むか分からない謎深き場所、未開の地
修行者の修行過程に陥る精神的な迷い・自我が拡大した状態

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