「ごちそうさまでした、美味しかったです」
「口にあったなら良かったです」
俺は今、聖力測定の際にお世話になったメディクさんとレストランで昼食を食べている。理由はもちろん騎士団についてだ。
「さて、それでは騎士団について話しましょうか」
「お願いします」
「まず騎士団の仕事内容についてですが大きく分けて4つあります」
「1つ目はダンジョン攻略です。基本的にはヒューマノイド国唯一のロストアヴァタールの攻略になりますが場合によっては他のダンジョンを攻略することもあります」
「ロストアヴァタールって何です?」
「超大きいダンジョンという認識で大丈夫です」
「了解です」
「続けますね、2つ目は治安維持です。王城の警備だったり主要な街の警備、取り締まりだったりをします」
「3つ目は訓練です。ダンジョン攻略や治安維持の当番に当てられてない者や騎士団になったとしてもまだ未熟なうちは訓練に励みます」
「最後は事務仕事です。あまり詳しくはないのですが3つの仕事で出た利益や損害の他に各地区の収入や支出、それに基づく税をまとめるそうです」
「なるほど」
「次に体系についてです。コチラは大きく3つに分けれます。戦闘部門、医療部門、事務部門です」
「戦闘部門の仕事としては基本的に事務仕事以外をこなすと言った感じです。事務仕事もするにはするのですが自分がいつ何の道具を使った、或いは壊したか程度を記入するくらいです」
「医療部門についても戦闘部門の団員と一緒に行動する事が多いためさほど変わりません。ただ医療と名がつく通り治療をする役割があるため戦闘中は戦闘部門程前には出ません。それでも戦場にいるのは変わらないためある程度の戦闘力は求められますが」
「最後に事務部門ですがコチラはダンジョン攻略以外が回ってくると思って下さい。もちろんダンジョン攻略も回ってくる事もありますが基本は戦闘と医療が行くので稀です。殆どが事務仕事と治安維持、或いは訓練の為安全度合いで言えばダントツですね」
「あとは…そうですね。医療、事務の部門に部門を纏めあげる医師長、事務長がいて、戦闘部門は団長が纏めあげることになっています」
「とまぁ簡単に言うとこんな感じです。質問はありますか?」
今説明してくれた事に関しては特にない…特にないのだがふと思い出したことがある。それは聖力測定の説明をする時にしたメディクさんの軽い自己紹介だ。えっと…確か…
「あの…メディクさんってもしかしてその医師長ですか?」
「おや、聖力測定の際の挨拶を覚えててくれたのですか。そうですよこう見えて医師長をやってます。えっへん」
そう言ってメディクさんはドヤ顔で腰に手を当て背中を逸らし誇らしげに言ってくる。正直クッソ可愛い…いかんいかん可愛さに流されそうになったがメディクさんは騎士団のトップ層という事になる。
「す、すごいですね…」
「そうでしょうそうでしょう。そこでルカに提案…いやお願いがあるのですが…」
「何ですか?」
「私のお婿さんになる気はありませんか?」
「…理由を聞いても?」
突発的な告白、以前なら狼狽えていただろうが今回は初めてでは無いためか何とか会話は繋げることが出来た。
「ルカが原初だから…というのももちろん含まれますが1番は内面ですかね。男子でありながら初対面の女性とも分け隔てなく接してくれて、お触りもOKなんてお婿さんにしたくない理由を探す方が難しいです」
「そ、そうですか」
俺は前世の価値観を持っているため今言ったことの何が凄いのか全く理解できない。ただ理由を語るメディクさんがクールな見た目なのを抜きしても冗談を言っている様には見えないため本気でそう思ってることだけは分かる。何時ぞやのセレスさんが言っていた夢が現実になったというのも割と的を射ているのかもしれないと遅まきながら思った。
ただ俺の答えはセレスさんの時と一緒だ。
「すいません、5歳ですので結婚とかはまだ考えてないんです」
「まぁ、そうですよね」
告白を断られたのに全くショックを受けた様子はない。
「すいません」
「構いません、諦める気はないので」
どうやらメディクさんもセレスさんと一緒でこの告白には前世のような意味は持たせてないらしい。
「話的にも時間的にもキリが良いですし、帰りましょう。送ります」
「1人でも帰れます」
「男の子を1人であるかせる女がいるものですか、それにルカの両親にも挨拶を済ませる目的もあります。気にしないでください」
会計を当然のようにメディクさんが払い店を後にする俺たち。セレスさんの時もそうだがご馳走になるだけなのは気が引ける。しかもレストランのキッカケは俺が理由なので尚更だ。
「何かデザートとか要りませんか?奢って貰ってたので今度は俺が払いますよ」
「男性でましてや子どもなんですからそんなの気にしなくて大丈夫ですよ」
しかしメディクさんに当然のように拒否されてしまった。やはりこの世界は女が払って当然という常識から金銭的というか物品的なお礼は受け取って貰えない。となると残されたお礼は…身体という事になる。身体というと意味深に想像してしまうが要はセレスさんとしているハグだ。ただ1つ疑問なのが果たして俺のハグがメディクさんにとってお礼に匹敵するかどうかだ。因みにハグをお礼に選んだ理由は金銭的や物品的なお礼が受け取られる可能性が低いから仕方なくであって俺自身がメディクさんとのハグを楽しみにしているというわけではない。断じて。
「メディクさん」
俺は前を歩くメディクさんを呼び止める。
「なんでしょう」
こちらを振り返るメディクさんに向かって突撃する。無論メディクさんにぶつかるためぶつかった後は手を回す。
「…っな…にを?」
いきなりハグされて状況が飲み込めないメディクさんは狼狽えるしかない。
「お礼です」
お礼と言えば何故俺がこんな奇行に出たか納得したようで少し落ち着きを取り戻した。
「お礼など要らないと言ったではないですか」
「じゃあ俺のワガママです。ご馳走してもらって嬉しくなってハグしてます」
「ふふっ強引ですね」
「強引と言えどワガママはワガママです。大人の女性なら子どものワガママに応えて欲しいです」
「そうですね」
そう言うとメディクさんも俺に手を回してきた。手を回されることによってより密着する形になってクールな印象と異なる暖かい体温、柔らかい感触がくる。
「そろそろ終わりにしましょう。周りの嫉妬が凄いです」
「はい」
そう言って離される手、うむ、メディクさんとのハグも実に素晴らしい時間だった。
「ありがとございます。ワガママに付き合ってくれて」
「こちらこそありがとうございます。ワガママを言ってくれて」
昼の日差しをその白と青の髪でめいっぱい受けて微笑む彼女は今日1で輝いて見えた。