「俺、聖騎士になります」
何てカッコつけて宣言してからある程度日数が経った。入学式の頃の満開だった花はすっかり散り始め残っている花びらの方が少なくなってきた…のだが俺の進捗は今の所何もない。
勿論一朝一夕で飛び抜けて強くなれる訳なんてないのは分かってる。問題は強くなってない事では無い。真に問題なのは…
(前々から分かってた事だがこの世界って男に過保護過ぎるよな…)
コレである。この価値観のせいで適当な走り込みだとかをしようとしても男が1人で外にいるのは危ないだとか言われるし、かと言って護衛を付けるとちょっと走っただけでそれ以上は走ると危ないとか心配される。
いや、いくらなんでも大袈裟だろと思っていたのだがどうもそうでは無いらしい。
先程ある程度日数があったと言った通り日にちが経過しているため俺は学校に何度も行っている。学校に行っている以上授業を受けるわけだが国語とか算数はともかく体育の差がヤバい。
ナオヘシの体力が無さすぎるのである。初めて2人の体力の無さを目の当たりにした時は度肝を抜かれた所か1周回ってギャグだろと笑いたくなったが周りの反応は何ともなく寧ろ俺が体力ありすぎ(勿論男の範囲であるが)と言われた位である。
世の中の男と俺のギャップのせいで適切なトレーニングどころか運動すら出来ない現状が続いており俺は単純に運動できない事や今の現状すら打開できない自分の不甲斐なさにフラストレーションが溜まっている。
ただこんな現状ではあるが希望がない訳では無い。宣言したあとにセレスさんやメディクさんとそれぞれご飯に行き現状について何とかならないかと話したところメディクさんの方から線は薄いが俺次第で何とかなるかもと言われたのである。そして今日その返答が返ってくるため俺はメディクさんを家の前で待っているという状況だ。
待ち始めて幾ばくか経った頃白と水色の髪を揺らしながら1人の人物がこちらに歩いてきた。
「こんにちは、ルカ」
「こんにちは、メディクさん」
「立ち話もなんですし歩きながら話しましょうか」
そう言って俺たち2人は歩き始めた。
「それで俺は強くなれそうですか?」
「それはまだ分かりません。ただ話は取り付けてきました。まずは話をしてみてそれから考えるそうです」
「そうなんですね、それで話を聞いてくれる方はどんな方なんですか?」
これから会う人物がどんな人なのか気になり質問してみた所メディクさんは普段はクールな印象を抱かせる顔を歪め呟いた。
「名をヴィジルと言い、私の師匠にあたる人です…性格は厳しいですが理不尽な罰は与えませんし…決して悪い人では…ないのですが、ただ…」
そこで言葉に詰まってしまうメディクさん。俺はもう不安になってきた。だが聞かない訳にはいかない。
「ただ?」
「強くすることに関しては妥協しない人ですから、たとえルカのような男であっても女と大して扱いは変えないと思うんです。となるとルカがケガとかしないか心配で…勧めた私が言うのもなんですが嫌なら言ってください」
なるほど、男が弱いこの世界で女と同じ扱いをしても男が耐えられると思ってないワケか。
確かに男は弱いが俺には聖力があるし精神面でもこの世界の男とは違う。残るは肉体だがこれは男女差がでない幼少期はともかく成長したらリヒトとエリスのように身長とか色々差が出るのだろうか。
まぁ肉体に差が出たところで簡単に諦めないが。
という訳で断る訳もない。
「俺から頼んだ事ですし断りませんよ。それに多少は厳しくしないと強くなれませんし」
「それもそうですが…まぁ心配するのはやめましょう。ルカは普通の男の子ではありませんから」
「俺は普通の男の子ですよ」
「中々冗談が好きなのですね」
何度言っても信憑性にかける言葉だなと思う。
それからは適当にお互い何があっただのアレが大変だっただの他愛もない話をしつつ歩いていく。
街の通りをいくつか過ぎ外れの方にやってきた。俺が住んでいるとことは主要な街道ということもあり建物がズラリと並んでいたがここは外れなため点々としか建物が建っておらず何時も見ている風景とは違いやや寂しさを感じる。
「ここです」
足を止めたメディクさんの目の前にはほかの建物よりやや大きい2階建ての建物が建っていた。建物には看板も何も付いておらずまた窓等も閉まっており中を伺うことは出来ない。
「…メディクです。先日の件できました」
メディクさんが戸をノックをしつつ声をかける。少しの間を置いて人の歩く音に続き戸が開かれた。
「…おー、よく来たね。…でその子が強くなりたいって言う子かね?」