「なるほど。能力器官は生体ドロップアイテムをそのまま『強化外装骨格』に取り込めるケースもある。でも、そうではないケースも多いし、そのまま取り込めるとしても生体ドロップアイテムを錬成、調整する方が能力向上も望める。
なにより『強化外装骨格』の容量を食わずにすむ、と」
健太の言葉に、独特な言葉で説明していた蜜柑は嬉しそう何度も首を縦に振る。
「うん。そんな感じ。だから、健太君のビッグジャイアント君も生体ドロップアイテムをガガッてして、ギュギュてした後にヒュンて取り込んだ方が良いの。『強化外装骨格』の容量には限りがあるから無駄遣い厳禁。
健太君のビッグジャイアント君の容量は、私のゴライアス君と比べたら多いけど、それでも限りはあるんだしね」
その会話から分かる通り、本日健太は『職人』職の主戦力であるスキル『強化外装骨格』の強化について蜜柑達から指導を受けていた。
モンスターからドロップする生体パーツを『強化外装骨格』に取り込むことでモンスターの能力を獲得する強化方法は、つい最近叶馬が思いつき、蜜柑達が成功したばかりの新技術である。
現時点では蜜柑達旧『匠工房』の十二人しか実行できていない。
健太も能力器官の存在は原作で知ってはいたが、自己判断でビッグジャイアントに取り込むのは躊躇していた。今、蜜柑から説明を受けるとその判断は正しかったと確信する。
生体ドロップアイテムをそのままアームドゴーレムに取り込むだけならば健太にも出来そうな感触だったが、こうして詳しい話を聞くと先走ると面倒なことになるところだったと分かる。
特にここのようなレイド内で狩猟したモンスターの場合は健太の手には負えない。
通常のダンジョンでは、モンスターを倒すと確定でクリスタルを一つ残し、低確率で何らかのドロップアイテムを残す。
ゴブリンがオークのような武器防具を装備しているモンスターの場合、武器や防具もドロップするし、それぞれの種族事の媚薬を落としたりもするのだが、一番確率が高いのがモンスターの体の一部がドロップする、生体ドロップアイテムだ。
それらは一般的に毛皮、鱗、牙、爪などは武器、防具になるのでそれなりに重宝されていたのだが、内臓系の生体ドロップアイテムは一部がポーションなどの材料になるほかはただの「はずれ」として捨て置かれている状況だった。
こうした生体ドロップアイテムの中に能力器官として使える物が多くあるらしい。その場合は、生体ドロップアイテムをただそのまま『強化外装骨格』にインストールするだけで問題なくモンスターの能力が使えるようにはなる。
それに対してここのようなレイド内ではモンスターを倒すと、死体が丸ごとその場に残る。
だから、そのモンスターの能力器官を摘出しようと思えば、自己判断で「ここが能力器官だ」と見当をつけ、自力で破損させることなく摘出する必要がある。
必要のない部分まで摘出すればその分『強化外装骨格』の容量を余分に食うことになるし、間違って必要な部分を斬り落としてしまうと、何の能力もないただのゴミになり果てる。
少なくとも今の健太には、「絶対無理」と断言できる職人技だ。
それを旧『匠工房』の面々は、主に『調理士』の久留美が解体し、『錬金士』の智絵理が錬成し、『機関士』の柿音が微調整する形で、かなり完成度の高い能力器官の摘出に成功していた。
柿音達が言うには「まだまだ改良の余地がありそう」とのことだったが、健太としてはなにがなにやらさっぱりわからない。
専業『職人』ではない健太としては、今後も能力器官に関しては旧『匠工房』に丸投げしたい。
健太自身は自分の『強化外装骨格』であるビッグジャイアントに出来上がった能力器官をインストールする方法と、一度インストールした能力器官をアンインストールする方法だけ確実に身につければ良い。
「ちょっと使ってみますね。《発射》」
健太はそう一言断ると、ビッグジャイアントを操作する。
『強化外装骨格』の中でも特に大きい部類に入るビッグジャイアントはそのずんぐりむっくりで体の割に短い右腕を前に伸ばすと、その手首の内側から、真っ白な粘糸の網を射出した。
強力な粘着力を有する糸の塊は、地面に突き立てられた丸太に命中する。網の根元はビッグジャイアントの内手首に繋がっているので、丸太とビッグジャイアントが強力な粘糸で繋がれた状態だ。
丸太が敵モンスターだとすれば、この状態はかなり戦闘を有利にしてくれるだろう。ビッグジャイアントよりも大きくてパワーのある敵の場合は逆にこちらが不利になる可能性もあるが、その時は手首から粘糸網を切り離すことも出来る。
「良いですね。インストールすれば使い方はなんとなくわかる。使いこなすには熟練が必要でしょうけど。合わない思えばアンインストールできるのである程度気楽に試すことが出来ますね」
「アンインストールしちゃうと、せっかくの能力器官がなくなっちゃうけどね」
「そこがちょっとネックですね。百雷鳥の発電器官のような一点モノのレア素材は慎重に扱わないと。牛鬼や粘糸器官や婆沙婆沙の火吹き袋みたいに駄目で元々とはいかないですよね」
健太の答えに、大きな胸を強調するように腕を組んでいる凛子が半眼のジト目でため息をつく。
「あのね、健太君。確かに百雷鳥と比べたらあれだけど、牛鬼や婆沙婆沙の能力器官だって普通はこんなに大量取得できるものじゃないからね? キミも大概叶馬君に毒されてないかな?」
「……確かに。ちょっと叶馬の空間収納がある前提で考えちゃってましたね。普通なら通常のダンジョンなら低確率のドロップにお祈りするしかないし、こういうレイド空間でも倒したモンスターの死体を丸ごと持ち帰るのなんて物理的に不可能ですからね。普通はもっと大変なのか。ちょっと感覚がマヒしてたな」
非情に不本意だが、否定できない凛子の指摘に健太も少し反省する。
通常のダンジョン内では倒されたモンスターは、確定でクリスタルと低確率でそれ以外のドロップアイテムを残し、瘴気に返る。
だが、叶馬の場合、倒したモンスターが瘴気に返る前に空間収納に放り込むことで、死体を丸ごと確保することが出来る(そうした場合、討伐者に経験値が入らないのであまりやらないのだが)。
また、ここのようなレイド内では確かに倒したモンスターがそのまま死体として残るのだが、牛鬼は長い蜘蛛足部分を含めない胴体部分だけでも軽トラくらいあるし、それよりは小さい婆沙婆沙とて蜜柑の『強化外装骨格』ゴライアス(全高約三メートル)より二回り大きい火を噴く鷄なのだ。
倒すのは容易くてもその死体を持ち帰るのは容易ではない。
「そうですよね。俺ならまとめて倒しても持ち帰れるのが頑張って一匹ですもんね。ほんと叶馬は非常識だな」
「ここのモンスターをまとめて倒すのが、本来一番難しいんじゃないかな」
「あはは……」
半眼で大きなため息をつく凛子の隣で、困ったように笑う蜜柑も残念ながら健太をフォローする言葉は発してくれなかった。
夜はすっかり、複数の女子と寝ることが日常と化した健太はその夜も二人の二年女子と共に淫らで蠱惑的な時間を過ごしていた。
「あ、いい、くうん、んんん!」
月天の梵字による照明を最小に絞った薄暗い部屋の大きなベッドの上で、横向きに寝そべる褐色肌の女子が背中から中肉中背の男子――健太に抱きしめられ、犬のように鳴く。
「あ? くう、う、あああん、あん!」
後ろから抱きしめる健太の右手が褐色の豊満な乳房を揉み、ベッドとウエスト間から差し込まれる左手がむっちりとした太ももを割ってその奥の肉芽を刺激したり、熱く潤う肉穴に指が差し込まれる。
その手の動き、指の動き一つ一つに敏感な反応を見せ、一々その肉付きの良い褐色の肢体を震わせ、嬌声をあげる。
「きゃっ、んんん、あう……!」
背中を丸め、後ろから自分を抱きしめる健太の両腕を両手で掴んでいるので、一見すると拒絶しているようにも見えるが、その甘ったるい嬌声を聞けば、拒絶の意志など一片もないことが確信できる。
その証拠に、豊満な乳房とつり合いが取れている大きな尻を、後ろから抱き着く健太の剛直に積極的に押し当て、擦り付けて挿入を強請っている。
「ふふ、これ以上焦らすと泣き出しちゃうわよ。せっかく今、良い声で鳴いてるのに。ね、リーダー君」
健太の耳を擽る様に、そんな囁き声が届く。
もう一人の二年女子が、褐色爆乳女子の背中に抱き着く健太の背中に抱き着き、健太の耳元で囁いているのだ。
あからさまにわざと健太の背中に押し付けているであろう双乳は、片手で収まらない褐色女子のそれには流石に劣るが、世間の基準では余裕で巨乳に分類される。
背中に感じるその柔らかな感触と耳元を擽る熱い吐息に、暴発寸前まで興奮が高まった健太は右ひざを褐色二年女子の膝と膝の間に差し込み、横向きに寝そべる褐色二年女子の右足を自分の右足で持ち上げて、挿入の体勢を作る。
その体勢を維持したまま、健太はベッドの上で少し下へと移動して位置を調整し、探り当てた肉穴に肉棒の先端を突き当てると、勢いよく腰を前へと押し込んだ。
「くうん!」
疑いの余地のない歓喜の声が、褐色二年女子の口から洩れる。
健太はその声に応えるように、激しく腰を動かし始める。
同時に「逃がすものか」と言わんばかりに両腕はガッチリと褐色の肢体を抱きしめ、欲望のままに大きな乳房を揉んだり、濡れぼそった陰毛の奥の陰核を押す様にして刺激したりしている。
「あ、あっ、あっ、いっ! くっ! ひん!」
対する褐色二年女子は固く目を瞑り、短いくせ毛で覆われた頭を左右に振るだけで、身体は何一つ抵抗を示さない。されるがままに淫靡な喜びの声を上げるだけだ。
無抵抗というよりも従順なその反応に、健太はひたすら欲望をぶつけるように両手を腰を動かし続ける。
高まり続ける性感と性欲。性交の終わりはすぐに訪れた。
「きゃっ、はうん……!」
とどめとばかりに膣の一番奥まで差し込まれた肉棒から熱い白濁粘液の噴射を受けた褐色二年女子は、断末魔の悲鳴にも似た嬌声を上げ、至福の快楽に溺れるのだった。
穏やかな寝息を立てる褐色二年女子を広いベッドの隅に移動させた健太の夜はまだ終わらない。
「ん、ちゅ、んちゅ、ちゅうう」
裸でベッドの上で仰向けに寝そべる健太の上に、一人二年女子が乗っている。
股間はしっかりと結合したまま、健太の胸板にその巨乳を押しつぶすように上体を倒し、終わりがない口づけを続けている。密着騎乗位と言われる体位だ。
健太に上から被さる様に抱き着く二年女子は健太の首に両腕を回し、自分の舌を健太の口内に割きこみ、健太の舌を己の舌で巻き取る様な濃厚な口づけを続ける。
「んちゅっ、ちゅっ、んんん」
豊かな双乳を自ら押しつぶすような密着状態と口と口が一体化するほどの口づけを交わしたまま、二年女子は挿入状態の尻を振り、自分の膣で強烈な熱と存在感と放つご主人様の肉棒を刺激し続ける。
この体勢では下になっている健太に出来ることはほとんどない。せいぜい下から自分の上に覆いかぶさる女子の背中に両手を回し、軽く抱きしめてやるくらいだ。性交に関しては受け身より攻めの方が好きな健太としては多少物足りなくはあるが、たまにはこういうのも良い。
だが、そんなマグロ状態はそう長くは続かない。
「ちゅ、んんん、あ、だ、駄目……はう……!」
上で一心不乱に腰を振っていた二年女子がほどなくして耐えきれなくなったように口づけを交わしていた口を離すとクタリと健太の首筋に頬ずりするように顔を埋め荒い息をつく。もう腰は動いていない。
この数日で健太に対する隷属が深まっている。 御主人様から伝わる快楽と愛情がダイレクトに脳を焼き、動けなくなっているのだ。
動けないほどに疲労している女子とそのまま性交を続けるのも忍びない。と、途中でやめようとしたのは数日前のこと。本気で泣かれた経験から、健太はここからは自分が動くことが正解であると学んだ。
健太は上に覆いかぶさる二年女子の背中に回していた両腕のうち右腕を下にずらし、二年女子の形の良い尻をしっかりとつかむ。左腕は今まで通り二年女子の背中に回して落ちないように支えたまま。
健太は下から腰を突き上げる。
騎乗位で下になっている男子が腰を使うのというのは、下がスプリングの聞いているベッドじゃない場合結構負荷のある運動なのだが、今の健太にとっては全く問題ない。
「あ? あ、あ、あ、ああ!」
力の入らない肢体を下から二本の腕でがっちりと拘束されたまま、荒腰を使われる二年女子は健太の首筋に顔を埋めたまま、長い黒髪を揺らして快楽の声を漏らすだけだ。
自分のパートナーを「オナホ女」と呼び、物扱いする男子が学園には一定数いるが、今の健太と二年女子の性交は両者の心情はともかく行為だけ見ればまさにそれだ。
「はああ……!」
やがて、達した健太の精液を女陰の中で受け止めた二年女子は、健太の体の上で意識を手放すのだった。
叶馬と旧『匠工房』の面々と合流した後の日々は、健太にとって充実した上に非常に規則正しいものになっていた。
昼間(あくまで時計の話で日差しは常に夕暮れだ)の叶馬が砦の外に出ている時は、砦の守護につきながら市湖から彫金を習ったり、蜜柑達から『強化外装骨格』の強化方法について教えてもらったりしている。
正直、ここが極級レイドであると忘れてしまいそうなくらいに平和な日々だ。
「お菓子作りにミルクと卵があったら」という芽龍の言葉を聞いた叶馬が「ワンチャンこいつらでどうでしょう?」と牛鬼と婆沙婆沙を生け捕りにして持って帰ってきたり(久留美にしこたま怒られた)、ミルクの代用に豆乳、卵の代用に豆腐を思いついた朱陽に頼まれて地下菜園に大豆を収穫に行った叶馬がボロボロになりつつも言われた通り大豆は取ってきたり(破損が激しい重圧の甲冑は現在蜜柑が修理中だ)、叶馬が外に出ている時に発電機用の強力磁石を新たに作ろうとした柿音に、凛子が発電器官を搭載した自分の『強化外装骨格』アルテイで発電係を果たしてしまい、戻って来た叶馬が無表情のままガックリ落ち込んだり(その晩、凛子は叶馬に滅茶苦茶八つ当たりっクスされた)と、小さなハプニングは多くあったが、大筋は「平和で充実した日々」と言っても良いだろう。
今、健太は砦の外にいる。もちろん、フル装備だ。
叶馬が砦の守りについている時は、健太が砦の外で活動できる約束になっている。
「流石に獲物が少なくなってきたな。安全確保という意味では良いことなんだが」
健太はたった今、大剣の一振りで正面から真っ二つに切り裂いた牛頭の巨大蜘蛛――牛鬼を前に、そんな独り言を漏らした。
健太と叶馬が交代で砦周囲のモンスターを狩っているのは砦の安全確保と、素材確保のためだ。
モンスターに対する殲滅力ならば叶馬に負けていない自信がある健太だが、素材確保能力に関しては、天と地のほど差がある。
叶馬には空間収納という反則スキルがあるのだ。自分の手で持ち運ぶしかない健太では全く太刀打ちできない。
それでも健太は、こうして外でモンスター退治を行った際には、最低でも一匹はモンスターの死体を持ち帰るようにしていた。
持ち帰ったモンスターの死体には、自分の名前を書いた上で叶馬の空間収納に入れさせてもらっている。
原作通りならば、叶馬はここでも『ダンジョンショップ』と遭遇する。モンスターの死体はそこに同行できたときに支払う「通貨」だ。
まあ駄目で元々だが、可能であればちょっと利便性を上げたいスキルがあるのだ。
「持って帰るのはこいつで良いとして。念のため確認しておくか。《地図表示》」
健太がすっかり使い慣れた『地図帳』のスキルを発動させると、健太の脳裏に自分を中心とした地図が描き出される。
その地図の見方にも慣れてきた。
中央の白いピンが自分で、青いピンが味方。赤いピンが敵で、黄色のピンが中立。
青いピンが乱立している砦周囲には、モンスターを意味する赤いピンはほとんど見当たらない。
その代わりに、砦から少し離れところに黄色のピンが二本立っている。
「ああ、もうそんなところまで来ていたか」
思い当たる健太はそんな独り言を漏らす。
黄色のピンは仲間ではない、人間。このレイドの参加者。
原作では叶馬が砦にいる時に、補習レイドに参加している男子生徒の襲撃を受けるのだ。
今も叶馬は砦にいる。だから、健太がこうして外を出歩くことが出来るのだ。そう考えると、今が最初の襲撃のタイミングでもおかしくはない。
「さて、どうするか。いっそこのタイミングで俺が砦にいない方が、都合が良いと言えば都合が良い」
『戦士の不動心』がオンなっている健太はそう冷静に判断を下す。
原作では砦の襲撃から叶馬と蜜柑達が話し合う。そこで、叶馬が「やられたらやり返せ。徹底的にやり返せ。俺が許す」といった内容の言葉で説得し、今日まで学園の最下層、虐げられてもただ受け入れ、我慢し、身を寄せて耐えることしかできなくなっていた『旧匠工房』の心の在り方が大きく変わる一因となる。
自分にはできないことだ、と健太は冷静に評価を下す。
健太は、叶馬のような女子を奮い立たせて、その意思を尊重するような振る舞いは出来ない。特に弱者として虐げられている女子を見たら、出来る限り「守り、甘やかす」という方向にしか情が働かないのだ。
こうしてその場面に立ち会えない状態こそが、「その場にいない方が良い」証拠にも思えて来る。
砦に関しては叶馬に任せるべきだ。
その結論に至った健太は、砦の外に意識を向ける。
地図上の青いピンの内、二本だけが今砦の外で活動している。
こちらも健太には心当たりがある。原作通りならば、杏と桃花が砦の外まで採集に行っていて、一時的に男子に捕まる展開があるのだ。
「流石にそれは見過ごす必要はないな。トレミーとボンドを護衛に付けているから問題はないとは思うが」
一瞬足元の牛鬼の死体に目を落とした健太は、すぐにそれを諦めると、杏と桃花と思しき二本の青いピンを目指し、密林を駆けだすのだった。