※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

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第百十二話 限定空間収納(レンタルスペース)の裏ワザ、『O嬢極(オウジョウギワ)』との初夜

 

 

 

 健太(けんた)が貰った三つのチートスキルの一つ『周回レベル上げ(タイムターナー)』はその名の通りレベルアップをするためには有効だが、ダンジョンの攻略を進める上ではそこまで有益な存在ではない。

 なにせ、時間を戻ることは出来ても進めることはできないし、一度戻した時間も始点となる時間まで戻れば、本来の時間軸に場所も含めて戻ってしまうため、過去に戻っても距離を稼ぐことは出来ないのだ。

 

 だが、『周回レベル上げ(タイムターナー)』がダンジョン攻略を進めるうえで役立つケースもある。

 それは界門を探すときだ。

 これが『既知(きち)』であればどの階層でも界門の座標ぐらいは購買で購入できる地図に記されているのだが、健太(けんた)叶馬(とうま)達が潜っている『既知外(きちがい)』にはそんなものはない。

 界門は複数存在するので、一定方向に直進し続けて定期的に『文官(オフィサー)』系のスキルを使っていればいずれは見つかるのだろうが、このやり方では実はもっと近くにあった界門を見逃す可能性もある。

 そこで役に立つのが『周回レベル上げ(タイムターナー)』だ。

 『羅城門』閉門までの残り時間が一時間未満。

 閉門直前まで北に行って『周回レベル上げ(タイムターナー)』、北東に行って『周回レベル上げ(タイムターナー)』、東に行って『周回レベル上げ(タイムターナー)』と繰り返し、どこかで界門を発見できれば次回はそちらに真っすぐ向かえばよい。

 次回スタート時点でのタイムロスを大幅に軽減できる。

周回レベル上げ(タイムターナー)』は厳密に言えば過去に戻っているのではなく、極めて近い別の世界線に過去に移動しているので、モンスターの配置などは結構ズレたりするものの、界門の位置のような大きな部分が異なっていることはまずない。

 

 

 

 

 

 

 ここ第十二階層『永久氷河(コキュートス)』は広さの割にモンスターの生息数が少ない。

 ちょっと進めばモンスターの大群と遭遇する第十一階層『砂漠草原(デザートサバンナ)』や、多くは単独行動だが連続戦闘になりやすい第十階層『密林竜園(ドラゴンガーデン)』と比べると、戦闘になる頻度は遥かに低い。

 とはいえ、『周回レベル上げ(タイムターナー)』を使ってダンジョンダイブを(主観的には)伸ばしていれば、必然的にモンスターと遭遇する確率は高まる。

 

 複数回の『周回レベル上げ(タイムターナー)』であらゆる方向に探索の手を伸ばし、『巨大長毛象(ギガントマンモス)』『雪狼(スノーウルフ)』『赤鼻トナカイ(ペッテリ・プナクーノ)』といういずれも巨体を誇るモンスターの大群を余さず撃破したことで、『赤梟頭熊(レッドヘッドオウルベア)』のエロールに念願の変化が訪れた。

 

 

 

名称:『エロール』

 

 種族:梟頭熊(オウルベア)(ユニーク個体)

 属性:魔

 

 階位:30+40+1

 

 能力:『狂乱(インサイア)』 『不眠(インソムニア)』 『妨害(インタフィア)』『全耐性(オールレジスト)

 

 存在強度:☆☆☆☆

 

 

 

梟頭熊(オウルベア)のユニーク個体。穴持たず、不眠不休で徘徊し続ける】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤梟頭熊(レッドヘッドオウルベア)』から『赤梟頭熊・全耐性(レッドヘッドオウルベア・オールレジスト)』にクラスチェンジを果たしたエロールは、十メートル前後だった体がもう一回り大きくなっている。さらに元は梟状態の頭部だけが目の覚めるような赤だったのだが、肩から胸、背中まで赤く染まっている。

 体つきも全体的に肉厚になっており、見た目からもタフさが伝わってくる。

 事実、今回のクラスチェンジで一番上昇したのは、耐久力だ。

 元々分厚い毛皮で打たれ強く壁役としての適性が高かったエロールだが、『全耐性(オールレジスト)』を会得したことでその壁役の適性はさらに増している。

 『全耐性(オールレジスト)』はその名の通り、全ての事象に対する耐性が上昇する能力だ。

 暑さ、寒さのような環境ダメージから炎、電撃、酸のような属性攻撃、さらには毒、誘眠、石化のようなバッドステータス付与まですべてに対する抵抗力が大幅に上昇する。

 もっともエロールの場合、睡眠と狂気は元々一切効かないのだが。

 今のエロールならば、『既知外(きちがい)』領域の自然領域(ネイチャーフィールド)でも安定して壁役を務めてくれそうだ。

 

 

 

 

「しかし、トナカイが空を駆けるのは納得がいくようないかないような。ああ、エロールはよくやったぞ」

 

「ホホウ」

 

 自由に空を駆けることはできるが、遠距離攻撃手段はなかった『赤鼻トナカイ(ペッテリ・プナクーノ)』の攻撃を受け止めて反撃で倒したエロールは、クラスチェンジを果たしたばかりの姿で誇らしげに鳴く。

 

 健太(けんた)は『赤鼻トナカイ(ペッテリ・プナクーノ)』からドロップしたクリスタル、枝角、毛皮等に混ざって二枚ドロップした『モンスターカード』を拾い上げる。

 

「惜しいな。今が『周回レベル上げ(タイムターナー)』の最中(さいちゅう)でなければな」

 

周回レベル上げ(タイムターナー)』で戻っている時間軸で得た物は本来の時間軸に持ち帰ることが出来ない。持ち帰ることが出来るのは経験と記憶だけ。だから、レアなアイテムがドロップしてもあきらめるしかない。

 

赤鼻トナカイ(ペッテリ・プナクーノ)』には『馴鹿蹄(レインディアシュー)』『牽引(トーイング)』『好戦的(ウォーライク)』という三つのスキルが、もう一枚のユニーク個体らしき鼻が青い『赤鼻トナカイ(ペッテリ・プナクーノ)』には『馴鹿蹄(レインディアシュー)』『医療(メディカルケア)』『泣き虫(クライベイビー)』の三つのスキルが表示されていた。

 

 馬系モンスターが必ず習得しているスキル『馬蹄(ホースシュー)』が移動力向上のスキルであることから推測するに、『馴鹿蹄(レインディアシュー)』は『赤鼻トナカイ(ペッテリ・プナクーノ)』のように空中を駆けまわることが出来るスキルである可能性が高い。

 さらに、レア個体が所有する『医療(メディカルケア)』はものすごく重宝されるスキルだ。

医療(メディカルケア)』は、あらゆる状態異常を治し、怪我を治療できるスキルである。

 回復手段が基本的にダンジョン外では日持ちしないポーションしかない学園では、垂涎の的になることは容易に想像が出来るだろう。

 スキル使用には長時間対象を安静な状態にしておかなければならないので戦闘中には使えないが、戦闘終了後に状態異常やダメージを癒すのには非常に有効だ。

 あいにく状態異常回復の確率も低いしダメージ回復量も微量だが、SPが続く限り何度でもかけ直すことが可能なので『医療(メディカルケア)』持ちがいれば、連戦の合間に戦力を立て直すことが出来るようになる。

 

 健太(けんた)自身は『医療(メディカルケア)』の上位互換ともいうべき『癒し手(ヒーラー)』系(クラス)を習得してるのでそこまで必要ではないが、『安息所(メイトガード)』のメンバーが健太(けんた)抜きでダイブするときのことを考えれば、是非とも確保しておきたいところだった。

 

 現状『安息所(メイトガード)』の『文官(オフィサ―)』は二人。『案内人(パスフェンダー)』の(らん)と『書記(レコーダー)』の実咲(みさ)だ。

 (らん)は基本健太(けんた)抜きでダイブすることはないので、渡すとすれば実咲(みさ)だろうか? 次点で『O嬢極(オウジョウギワ)』の和花(わか)もありかもしれない。

 

 と考えたところで『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)はどのみちこの『モンスターカード』を持ち帰ることはできないという事実を思い出す。

 ここは健太(けんた)が生きる本来の時間軸からズレた過去の並行時間軸。異なる世界線、よく似た別世界なのだ。

 と、そこまで考えたところで健太(けんた)はふと、ある可能性に思いいたる。

 

「まてよ? 異なる世界線? 異なる世界。異世界とも言える、か? それならばもしかして……」

 

 おもむろに健太(けんた)は『白いしめ縄』を手首に巻いた手で柏手を鳴らし、限定空間収納(レンタルスペース)を開く。

 

「ふむ。『周回レベル上げ(タイムターナー)』使用の時間軸でも問題なく限定空間収納(レンタルスペース)は開くか。これなら少しは期待しても良いか」

 

 そう呟いた健太(けんた)は二枚の『モンスターカード』を限定空間収納(レンタルスペース)に収納する。

 一瞬視線を雪原に転がる他のドロップアイテム――クリスタルや枝角、毛皮に向けた健太(けんた)だが、それらを限定空間収納(レンタルスペース)に入れるのは止めておいた。

 現状、どうなるか分からない実験的な行為なのだ。最初から欲張ると大事故に繋がりかねない。

 

 

 

 その後、無事に第十三階層に繋がる界門を発見した健太(けんた)は、『羅城門』の閉門前に『遊び人(ニート)』のスキル『脱出(エクソダス)』でダンジョンをログアウトするのだった。

 

 

 

 

 

 無事、ダンジョンをログアウトした健太(けんた)を待っていたのは見覚えのあるよく似た容姿の女子二人だった。

 叶馬(とうま)のパートナー、海春(みはる)夏海(なつみ)である。同時にこの二人は、(ゆき)の巫女のような立場でもある。

 まだ『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)はすぐに二人が誰の指示でここに来たのか悟る。

 

「あ、あの童神(わらべがみ)様がお怒りです」

 

「時空間が滅茶苦茶なところから手を突っ込んで来るな。調整が大変、だそうです」

 

 健太の予想は当たっていた。童神とは海春(みはる)夏海(なつみ)(ゆき)に対する尊称である。

 どうやら、健太(けんた)がやった『周回レベル上げ(タイムターナー)』使用時間軸での限定空間収納(レンタルスペース)の使用は、一応の成功はみたものの『空間収納(アイテムボックス)』の監理者(ケアテイカー)である(ゆき)に多大な負担を強いる行為だったらしい。

 

「……(ゆき)ちゃんに謝罪したいから、セッティングお願いできるかな」

 

「了解です」

 

「任されましたです」

 

 以前調べた記憶で座敷童(ざしきわらし)の好物は小豆(あずき)と覚えていた健太(けんた)は、購買で有名な小豆アイスを箱で購入して手土産とする。

 

 

 その後、麻鷺荘の海春(みはる)夏海(なつみ)の部屋で(ゆき)(プリプリに怒っていた)と対面を果たした健太(けんた)は、平身低頭の謝罪と手土産のおかげでどうにか許されるだけでなく、今後も月に一回という制限付きで『周回レベル上げ(タイムターナー)』時間軸での限定空間収納(レンタルスペース)の使用も許可されたのだった。

 

 ちなみに手土産の感想は「美味しいけど固すぎ。歯が折れるかと思った」である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多少の想定外とそれに(ともな)う寄り道はあったものの、無事白鶴荘に帰ってきた健太(けんた)は夕食を取りながら、(らん)達パートナーや尚典(なおふみ)達倶楽部対抗戦の参加者から近況を聞き、情報の共有を図る。

 幸い本日は誰にも大きな動きはなかったらしい。バッジを失った者は誰もおらず、追加のバッジも尚典(なおふみ)が一個だけ。

 

「出来るだけ人目につかないように、真っすぐ寮に帰ろうとしたんだけど、捕まっちゃった」

 

 と尚典(なおふみ)は苦笑していた。

 倶楽部『安息所(メイトガード)』のレギュラー五人は全員見た目が強そうではないが、中でも尚典(なおふみ)は一番弱そうに見えるのだろう。

 小柄で華奢な体つきと、童顔で可愛い系の顔立ち。実際本人の性格も、その見た目を裏切らない人当たりの柔らかい質で、そんな人柄が雰囲気としてにじみ出ている。

 しかしてその実力は『術士(マギ)』系のスキップ転職(クラスチェンジ)組で、第二段階職『陰陽師(オンミョウジ)』を推定20の後半まで上げている。

 モンスター相手ならば戦闘経験も十分つんでいるし、対抗戦予選前に『学生決闘(メンズ―ア)』で五人抜きなども達成している。

 これに勝る一年は叶馬(とうま)達と健太(けんた)自身を除けば、皆無に等しいだろう。

 

 外見詐欺レベルで言えば健太(けんた)に勝るかもしれない。

 

尚典(なおふみ)も怪我はないようで良かった。すでに予選突破は決めているのだし、今後もこちらから勝負を申し込むのはなしでいこう。

 後、俺の友人たちが作った倶楽部『神匠騎士団(アデプトオーダーズ)』と予選ではお互い潰し合わないって協定結んでいるから、注意してくれ。

 顔見知りじゃない奴の為に手帳で写真撮らせてもらってきたから、共有するぞ。みんなの写真も向こうに渡すから後で撮らせてくれ」

 

 そう言って健太(けんた)は、撮影機能付きの電子生徒手帳と接続ケーブルを取り出す。無線が一切使えない学園内では、電子データを転送するのにも有線接続が一般的だ。

 健太(けんた)は念のため、叶馬(とうま)達を知っている者にも知らない者にも関係なく、レギュラーの四人全員に叶馬(とうま)達五人の写真を送る。

 

「ん、了解っす。けど、どのみちこっちから勝負申し込まないんっすから、そいつらだけ特別注意する必要ってないんじゃないすか?」

 

 至極常識的なことを言う霊王(れお)だが、残念ながらその認識は間違っている。

 

「うん。霊王(れお)くらいにみんな常識があればそうなんだけどね」

 

 万が一のことを考えれば、叶馬と沙姫(さき)の顔はちゃんと覚えて、出来るだけ近寄らないようにして欲しいのだ。

 

「ひっ!?」

 

 あいまいな返事で健太(けんた)が濁していると、最初に転送データを見た来斗(らいと)が悲鳴を上げる。

 

「ど、どしたんすか?」

 

 顔面を蒼白してガタガタ震える来斗(らいと)に、霊王(れお)が驚きの声を上げる。

 健太(けんた)はため息をつきながら、

 

「ああ、忠告が遅れたけど、一枚目が向こうの部長の叶馬(とうま)だ。何べん言っても『愛想笑い』をやめてくれなかったからそんな写真になっている。

 直視しても一応物理的な損害はないはずだけど、精神ダメージは保証できないから注意してくれ」

 

 そんな健太(けんた)の言葉を裏付けるように、心構えなくそれを直視してしまった来斗(らいと)は真っ青な顔で震えながら、

 

「は、○面……白○の者が……笑って……!」

 

 と裏返った声を上げている。

 隣に座っていた実咲(みさ)が、

 

「だ、大丈夫、来斗(らいと)?」

 

 と心配げにのぞき込むと、その太い手で生徒手帳の画面を隠しながら、

 

「み、見るな、実咲(みさ)! お前は見ちゃ駄目だ!」

 

 と実咲(みさ)の視界に冒涜的な写真が入らない様守っているところを見るに、大きな問題は無さそうだ。

 

「ははは。これ、叶馬(とうま)君だよね。凄い迫力だなー」

 

 健太(けんた)以上に麻鷺荘の常連となっている尚典(なおふみ)は、流石に叶馬(とうま)の顔も見慣れているのか、叶馬(とうま)の『作り笑顔』を見てもなお笑う胆力を見せる。

 

「これは……心構え無しで直視した来斗(らいと)がああなるのも無理ないっすね」

 

 面識のない霊王(れお)も『愛想笑い』の写真を見て、顔を引きつられている。

 

「なるほどね。ふーん、そっか。あの乙葉(おとは)がねー」

 

 一方、竹海(たけみ)は一人、明らかにカメラ慣れしていない様子でこちらを睨む二年女子――乙葉(おとは)の写真を見て、面白そうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 その夜。

 健太(けんた)は当初予定を変更して、同じ白鶴荘でも初めて訪れる部屋のドアをノックしていた。

 四つの♀の丸を一つの♂の矢印が貫いている紋章(クレスト)が掲げられたその部屋は、倶楽部『O嬢極(オウジョウギワ)』の部長和花(わか)と、副部長芽衣(めい)の二人部屋である。

 だが、

 

「はい。お入りください」

 

 という聞き覚えのある優しげな声に健太(けんた)がそっとドアを開けると、中には二人ではなく五人の女子が待っていた。

 

 

 

 

 通常、白鶴荘の二人部屋は真ん中に共有スペースの通路を作る様に部屋の両端にベッドが二つ備え付けられているのだが、その部屋ではベット同士がピッタリとくっつけられ、その上にキングサイズの寝具が鎮座していた。

 もう、最初から「多人数でやります」と言っている配置である。

 

 二つのベットをくっつけた横に、五人の先輩女子達が立ち、健太(けんた)に挨拶をしてくる。

 

「ようこそお越しくださいました、健太(けんた)様。本日のお相手を務めさせていただきます、倶楽部『O嬢極(オウジョウギワ)』部長、和花(わか)にございます」

 

「副部長、芽衣(めい)。ぶい」

 

「同じく副部長の夜凪(やなぎ)です」

 

「部員の雪音(ゆのん)だよ」

 

「部員良月(よづき)

 

 本日、健太(けんた)が予選で倒してその肢体(からだ)を自由にする権利を得た五人の女子が揃って深々と頭を下げる。

 部屋の中は薄暗く、五人の女子は皆いかにもなイブニングドレスを纏っている。

 和花(わか)は黒、芽衣(めい)は黄色、夜凪(やなぎ)は紫、雪音(ゆのん)は白、良月(よづき)は緑と全員色は異なっているがベースとなっている形は一緒だ。

 大きく胸元がVの字に開いており、ロングドレスの形はしてるものの生地は薄く、非常に体にフィットしてるため、肌色面積以上に煽情的だ。

 イブニングドレスと言っても、晩餐会などの格式ばった場所ではなく夜の店、もっとはっきり言えば高級風俗店のキャストを彷彿させるドレスである。

 実際、和花(わか)もその辺りを意識しているのだろう。珍しく、健太(けんた)旦那様(あなた)ではなく健太(けんた)様と呼んでいるのもその一環と思われる。

 

「あ、はい。け、健太(けんた)です。今夜はよろしくお願いします、です」

 

 (らん)達で多対一のセックスには慣れてきた健太(けんた)だが、五人という大人数でそのうち三人は初めての相手ということもあり、全く緊張を隠せない。

 そんな健太(けんた)の様子にも五人の女子達は笑うでもなく、あくまで友好的に振る舞う。

 

「はい。こちらにお座りください」

 

「私の隣、よし」

 

「脱衣のお手伝いをさせてください」

 

「後ろゲット」

 

「足元」

 

 和花(わか)の細い手に引かれてキングサイスの寝具に健太(けんた)が腰を下ろすと、五人の女子達は花に群がる蝶のように健太(けんた)の前後左右を取り囲む。

 そして、慣れた手つきでTシャツと制服の下という健太(けんた)の身に着けていた衣類を脱がしていき、同時に自分達もイブニングドレスを足元に落す。

 

 五人の女子はそれぞれ、イブニングドレスと同色の下着を身に着けていた。

 

「ふわあ」

 

 毎晩複数の女子と性交を繰り返しているはずの健太(けんた)だが、下着姿を見ただけで感嘆の声を漏らしてしまう。

 それはどれだけ経験を重ねても中々成長しない健太(けんた)の性格にも由来するが、それだけ彼女達五人が淫靡な魅力を醸し出しているからでもある。

 胸の大きさという点では一番大きな良月(よづき)でも優梨愛と同程度。(らん)竹海(たけみ)に匹敵する者は一人もいない。

 だが、彼女たちは全員が三年以上。この学園で積み重ねる一年、二年は大きい。

 彼女たちの性的な魅力は成熟を通り越して爛熟(らんじゅく)の域に達している。

 

「それでは、堪能してくださいませ」

 

「ベッド、よし」

 

「失礼します」

 

「えいっ」

 

「…………」

 

 五人どころか五十人でも今の健太(けんた)にとっては誤差なくらいに非力な女子達に、健太(けんた)は何の抵抗もせずキングベッドへと押し倒されていくのだった。

 

 

 

 

 

 始まるまでは雰囲気と生来の性格から完全に主導権を取られてしまった健太(けんた)だが、いざセックス本番に至ればレベル差の暴力がものを言う。

 和花(わか)芽衣(めい)が倶楽部の主導権を取れていることからも分かる通り、夜凪(やなぎ)雪音(ゆのん)のレベルはそれ以下、良月(よづき)は少し特殊だが、健太と比べれば誤差の範囲内。

 そんな彼女達が健太(けんた)の射精を膣内(なか)に何度も受け入れれば、一晩で隷属が完了するのも必然である。

 

 夜が白々と明けてくる頃。

 キングサイズの寝具の中央で眠る裸の健太(けんた)は、裸の女子五人にベッタリと抱き着かれていてた。

 強すぎる性感に意識を失っているはずなのに、必死に健太(けんた)の手足もしくは体に抱き着くその様は、見る者が見れば一目でわかるくらいに堕ちている。

 元から堕ちている和花(わか)芽衣(めい)はもちろん、夜凪(やなぎ)雪音(ゆのん)良月(よづき)の三人も相当深く隷属している。無意識でも体が御主人さまを求めるのだ。

 

「…………」

 

 目を覚ました健太(けんた)はその事実を自覚すると共に、彼女たちにどのように報いるべきか考えていた。

 一度受け入れてしまった以上、彼女達との関係は今後も続いていくことになるだろう。ここはそういう空間だ。

 

 今健太(けんた)が寝ているキングサイズの寝具も、出迎えの時彼女たちが着ていたイブニングドレスと下着の上下も、健太(けんた)をもてなすためにわざわざ買いそろえてくれたものだろう。

 言っては何だが、エントリークラスの寮で暮らす女子に『銭』の余裕はそうないはずだ。これで「向こうが勝手にやったことだから」と何も返さないのは健太(けんた)の価値観ではありえない。

 しかし、だからと言って『銭』を渡すのは少し抵抗がある。まるで彼女たちの肢体(からだ)を金で買っているような気分になる。

 では、今後は衣類などを直接プレゼントするのはどうか? と考えた健太(けんた)だが、これもすぐに却下する。

 健太(けんた)と彼女たちの力関係を考えれば、どんな服でも彼女たちは喜んで着るしか選択肢はない。逆に押し付けがましいことになりかねない。

 

「となると、毎度ワンパターンだけどあれが一番か」

 

「なにがですか? 旦那様(あなた)?」

 

 健太(けんた)の右腕を抱いて寝ていた和花(わか)が、何時の間にか目を覚まし囁き声でそう尋ねる。

 なんとな体温と気配の変化でそれを察していた健太(けんた)は、特に驚くこともなく和花(わか)の問いに答える。

 

「はい。和花(わか)先輩達『O嬢極(オウジョウギワ)』の皆さんへのお返しについてです。月に一回か二回、先輩達のダンジョンダイブをお手伝いしようと思うのですが、どうでしょうか?」

 

 ダンジョンダイブを手伝って儲けを頭割りにすれば、結構な収入になるはずだ。ついでに、補習レイド送りにならないくらいにダンジョン実習成績も手伝ってあげれば、少しは『同盟(アライアンス)』を結んだ甲斐があった、と思ってもらえるのではないか。

 

「え…………?」

 

 そんな健太(けんた)の安直な提案に、和花(わか)はしばし目を丸くする。

 

「あ、もちろん強制じゃないです。あくまで自由参加ですから」

 

 和花(わか)のリアクションが遅れたことで「エントリークラスにいる様な落ちこぼれ女子には、ダンジョンダイブそのものを忌避する者も多い」という話を思い出した健太(けんた)は、慌ててそう付け加える。

 だが、和花(わか)が沈黙していた理由は、まったく異なっている。

 

「…………それはとても魅力的な、私たちのような者にとっては本当にありがたいお話です」

 

 囁くようにそう言う和花(わか)の言葉は、間違いなく本心からのものだ。

 そんな健太(けんた)和花(わか)の会話に、他の女子達も目を覚ましてきたのか、カーテン越しに差し込む朝日に照らし出されるキングサイズの寝具の上で、裸の女子達がモソモソと動き出す。

 

「んー?……よし」

 

「おはようございます」

 

「ふわあ、良く寝たー。あ、おはよダーリン」

 

「おはようご主人。おかげで『目が覚めた』ぜ」

 

 和花(わか)芽衣(めい)は辛うじて上体を起こすことが出来るが夜凪(やなぎ)雪音(ゆのん)良月(よづき)はまだ首を(もた)げることも出来ない。裸で死んだようにベッドに体を横たえたまま、声だけを発している。

 無理もない。健太(けんた)という規格外に隷属したばかりなのだ。強い快楽と常識外に深い隷属に頭も体も大部分は多幸感に支配されたままだ。

 

「すみません、お湯とタオルを貰ってきますね」

 

 これまでの日々でこうした状況を何度も経験している健太(けんた)は、そう言うとあわただしくトランクス、ズボン、Tシャツだけを着こむと足早に部屋を後にする。

 残されたのは、キングサイズ寝具の上に裸で横たわる女子五人。

 

「皆さん、旦那様(うちのひと)の言葉は聞いていましたね?」

 

「もちろん」

 

「はい、聞いていました」

 

「あふん? あれ、夢じゃなかったん?」

 

「夢じゃねえみてえだな」

 

 確認を取る部長和花(わか)の言葉に、芽衣(めい)たちはそんな返事を返す。

 

 健太(けんた)の言葉。それは「お礼として『O嬢極(オウジョウギワ)』の希望者全員をダンジョンダイブに連れていく」という先ほどの発言だ。

 これは、同盟(アライアンス)で支配される「セックス要員の女子オンリー倶楽部」の扱いとしては破格を通り越している。

 通常、『O嬢極(オウジョウギワ)』のような倶楽部はシンプルに性的搾取対象だ。「お礼」という概念自体存在しないと言っても過言ではない。

 さらに、健太(けんた)は言っていないがダンジョンダイブの際生じる儲けは「いつも通り均等な頭割り」のつもりでいる。

 

和花(わか)が頑張って希望者を減らしたのに、これを知られたら残りの七枠に希望者が殺到しますよ?」

 

 生真面目に心配する夜凪(やなぎ)の言葉に和花(わか)は柔らかく苦笑する。

 

「そうですね。正直、旦那様(うちのひと)の懐の深さを見誤っていました」

 

 和花(わか)は『O嬢極(オウジョウギワ)』を結成する際、部員候補である白鶴荘の寮生に色々とマイナスに聞こえる条件を伝えて初期メンバーを絞ったのだ。

 

「『安息所(メイトガード)』男子から要求には一切拒む権利はない」

「『安息所(メイトガード)』から何らかの保証は一切ない」

「こちらに『安息所(メイトガード)』に対する交渉権も無し」

「今入らなくても枠が空いていれば『O嬢極(オウジョウギワ)』は以後も部員を募集中」

 

 まあ、上の三つは一般的な有力男子倶楽部とセックス専門女子倶楽部の同盟(アライアンス)ならば極々当たり前の条件だが、それをあえて明文化することで「あまり美味しい倶楽部じゃないよ」という印象を持たせたのだ。

 その上で最後の条件「今入らなくてもいつでも入れるよ」を加えることで「ひとまず様子見」という人間を増加させた。ちなみに初期入部組と以後入部組の待遇を同じにするとは言っていない。

 

 だが、そんな和花(わか)の小細工も健太(けんた)の今回の発言「『O嬢極(オウジョウギワ)』の部員は健太(けんた)がダンジョンダイブに連れて行ってくれる」が周知されれば、問答無用で殺到することになるだろう。

 

「まあ、そこは私が部長の責任を果たしますよ。ところで、良月(よづき)先輩。すっかり良くなったようですね?」

 

 と突如和花(わか)に話を振られた、金髪ショートの女子――良月(よづき)は首を(もた)げることも出来ないぐったりとした様相で、だが口元に不敵な笑みを浮かべる。

 

「ああ、おかげさまでこの通りだ。まったく、とんでもないご主人様だよ。オレの空白がすっかり埋め尽くされちまった」

 

 良月(よづき)は元々、補習レイド前の和花(わか)芽衣(めい)よりまだ自我の摩耗が進んでいた人間だ。

 それが健太(けんた)と一晩セックスをしただけで、元の人格を取り戻している。

 いや、正確に言えば元通りではない。自我が摩耗して空いた隙間を健太(けんた)の精気で埋めたのだ。

 一見すると元通りに見えても、彼女の中の優先順位は以前とは全く異なっている。それまでの自分の価値観の上に、健太(けんた)というご主人様の存在が追加されているのだ。

 それに関しては、和花(わか)芽衣(めい)も同様だが。

 

 『銭』がないから脱色、染色は自分でやっているのだろう。お世辞にも綺麗とは言えない金髪のショートヘアを小さく振り、良月(よづき)は感想を漏らす。

 

「っかし、あんなショボい見た目で中身はとんだバケモンだぜ。ビンゴにいた頃でも、ここまで圧倒された経験はねえんだがな」

 

 良月(よづき)は「途中脱落組」である。

 入学からスタートダッシュには成功して、ある程度のところまでは女子ながらダンジョン勢としてひた走ったのだが、途中でこけてドロップアウトを余儀なくされた。

 元々就いている(クラス)が攻撃力が高い代わりに制御に難があるタイプだったため、レベルは上がりやすい代わりに『死に戻り』もしやすく、徐々に自我が擦り切れて所属倶楽部から放り出されたのだ。

 だから、かつては学園のトップ層もセックスをした経験を持つ。この学園では一部の特殊職を除き、セックスをすれば相手の格がある程度分かるようになっている。

 だが、良月(よづき)の過去の経験でも昨晩の健太(けんた)は比較対象が見つからないレベルだった。

 

「それはそうよ。旦那様(うちのひと)は強さも優しさも規格外ですから」

 

 うっとりと目を細める和花(わか)に、良月(よづき)はまだ首を(もた)げることも出来ないまま、呆れた様子で言葉を返す。

 

「はいはい。んで、その規格外のご主人様をゲットして性悪女(てめえ)はなに企んでやがる?」

 

 いかにもヤンキー女らしく下からにらみつける良月(よづき)に、和花(わか)は即答する。

 

「もちろん、全身全霊を上げて旦那様(あのひと)のお力になることです」

 

 和花(わか)の笑み、声、佇まい。その全てが本性を知っている良月(よづき)の眼にも「優し気」としか映らない。

 だが、自分の身に起きたことが彼女の身にも起きていると考えれば、和花(わか)の言葉に嘘が無いことは理解できる。

 

「手段は選べよ」

 

「ええ。もちろんです」

 

 念を押す良月(よづき)和花(わか)は、底抜けに優し気な笑みで答えるのだった。

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