※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

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第百十三話 突入する『酸雨遺跡(アシッドレイン)』、初めての第三段階職カンスト

 

 

 

――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

 

 

 

 

 

 

 ――第『拾弐(じゅうに)』階層、『既知外(きちがい)』領域――

 

 

 

 

 

「…………かなりのダメージだったな。やはり、油断は禁物だ。エロール、よくやったぞ。おかげで助かった」

 

「…………ホホウ」

 

 主である健太(けんた)の言葉に、『赤梟頭熊・全耐性(レッドヘッドオウルベア・オールレジスト)』のエロールは誇らしげに鳴き声を上げる。

 ただし、その体は満身創痍だ。頭部から胸にかけての赤い毛皮もそれ以外も多くは焦げて黒ずんでおり、毛皮が完全に炭化して肉が露出している場所もあちこちに見受けられる。

 クラスチェンジをして『全耐性(オールレジスト)』の能力を得ていなければ、撃破されていただろう。

 

 第十三階層に繋がる界門(ゲート)を守る界門守護者(ゲートキーパー)

 それは人間大のペンギンだった。

 それもデフォルメされたやけに愛嬌(あいきょう)のあるペンギンで、どうやって保持しているのか片手に小剣、逆の手に丸盾を持っていた。

 戦闘力は「これが界門守護者?」と疑問を抱くくらいに弱かったため、『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっていた健太(けんた)は、用心に用心を重ね、戦闘中に自分とエロールに『硬盾士(ハードシールダー)』『増強術士(エンハンサー)』『司祭(プリースト)』そして『重装騎士(ヘヴィアームドナイト)』のスキルで防御力を強化していたのだが、それ上でエロールはここまでのダメージを受けた。

 

 その攻撃は、ズバリ「自爆」である。用心していた甲斐があったというべきか、その威力は今の健太(けんた)をもってしても無視できないくらいに高かった。

 何の守りもなく至近距離で受けていれば、今の健太(けんた)でもかなりのダメージを受けていたことだろう。

 

 ともあれ、「自爆」という形であっても界門守護者を撃破できたことに変わりはない。

 これで下の階層、第十三階層通称『酸雨遺跡(アシッドレイン)』へと進むことが出来る。

 

 第十三階層は『酸雨遺跡(アシッドレイン)』の通称通り酸性の雨が降り続ける世界だ。

 その酸性雨は人間や大部分のモンスター(酸もしくは水を弱点とするモンスターを除く)には無害だが、対策がされていない装備の類を等しく腐食させる。

 

 高レベルのマジックアイテムはほぼ問題ないらしいので、健太(けんた)の装備はほぼ問題ないだろう。

 確実に大丈夫と蜜柑(みかん)が太鼓判を押してくれたのが、健太(けんた)主武器(メインウェポン)である小剣『金狼木霊剣』だ。

『金狼木霊剣』は非常に珍しい、五行の『(ウッド)』と『(メタル)』の二重属性だ。

 製造において蜜柑(みかん)がその素材の力を遺憾なく引き出してくれたため『金狼木霊剣』は「(ウッド)だから錆びず、(メタル)だから腐らない」らしい。

 これが作り手の腕が悪いと「(ウッド)だから腐り、(メタル)だから錆びる」という代物になってもおかしくはないというのだから、やはり『職人(クラフター)』はレベル以上に純粋な腕がものを言うのだろう。

 

 ともあれ、健太(けんた)は一つ柏手を打つと限定空間収納(レンタルスペース)を開き、身に纏っていた防寒装備一式を仕舞い、通常装備と耐酸性装備を取り出す。

 学園で購入した耐寒装備一式を仕舞い、耐寒用の『ウーン』の梵字の護符を外し、代わりにいつも通りの白黒虎革製の胸部鎧(ブレストアーマー)を纏い、耐酸性に造ってきた『ナ』の梵字護符を装備する。

 (あんず)が作ってくれた防寒マントだけはまだ身に着けておく。第十二階層にいる状態で全ての耐寒装備を外すのは流石に無謀だからだ。

 

『ナ』は那羅延天(ならえんてん)を意味する梵字であり、那羅延天(ならえんてん)はインド神話におけるヴィシュヌに相当する。

 那羅延天(ならえんてん)は『守護』『健康』のご利益があるとされている。一方ヴィシュヌはインド神話体系における主神とも主役ともいうべき大神だ。

 ヴィシュヌは多くの化身を持つため司るものも非常に多いのだが、ヴィシュヌ本体の場合は主に『調和』『秩序』『維持』といったところになるだろうか。

 そこからブラフマー文字で効果を『守護』『維持』の力を装備の損耗に限定して固定したのだ。これで酸性雨に対する耐性が期待できる。

 

「よし、行くか。エロール、モモノスケ《戻れ》」

 

具象化(リアライズ)』していたモンスターを送還した健太(けんた)は、第十三階層『酸雨遺跡(アシッドレイン)』に繋がる界門を潜るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが第十三階層か。『酸雨遺跡(アシッドレイン)』、なるほど」

 

 無事、第十三階層に到着した健太(けんた)は肉眼、『盗賊(シーフ)』の気配察知、『文官(オフィサー)』のスキルで素早く周囲を把握すると、柏手を鳴らして限定空間収納(レンタルスペース)に防寒マントを収納する。

 

 改めて健太(けんた)は、周囲を見渡す。

 

 第十三階層『酸雨遺跡(アシッドレイン)』。

 

 

 どこの文明ともつかない廃墟となった建造物が立ち並び、空には常に黒に近い灰色の雲が低く垂れこみ、酸性の雨をシトシトと降らせている。

 そのため視界は悪いし、倒壊しているとはいえそれなりの高さの建築物が多数存在するため、死角が多く存在する。

 

「装備の犠牲覚悟でボンドを召喚したほうが良いかもしれないな」

 

 健太(けんた)はそう呟く。

酸雨遺跡(アシッドレイン)』の酸性雨は対策の出来ていない装備を腐食するが、人間やモンスターには基本害はない。

 だからここに適している『モンスターカード』は装備のいらないモンスターであり、ゴブリン『槍獣騎士(ランスビーストナイト)』のジュゲムやコボルト『無法者(アウトロー)』のボンドのような装備を必要とするモンスターには不向きな階層である。

 しかし酸性雨によるダメージはなくとも、振り続ける雨が視界を遮ることに変わりはない。その上荒廃した建造物が立ち並ぶこの領域は、どうしても死角が多くなる。

 盗賊の感覚も文官のスキルも完璧ではない。穴はあるし対抗する能力を持つモンスターも存在する。

 そうなると警戒用にボンドの『眼』が欲しい。

 

「そうだな。そうするか。《来い》ボンド、《来い》トレミー」

 

「オン!」「…………」

 

 健太(けんた)は、コボルト『無法者(アウトロー)』のボンドと『徹甲虫・多弾倉(ペネトレイトビートル・リボルバー)』のトレミーを『具象化(リアライズ)』する。

 低学年の小学生ほどの大きさしかない身長のボンドだが、その犬のような顔は精悍でやる気を感じさせる。一方、拳ほど大きさのテントウムシであるトレミーはいつも通り健太(けんた)の肩に止まる。

 

「お前たちの役割は偵察と周囲の警戒だ。敵や異変を発見したら、すぐに知らせろ。お前達からは仕掛けるな」

 

「オン!」「…………」

 

 発声器官のないトレミーは無言のままだが、カードを通して了承の意志は伝わってくる。

 

「トレミーはこの雨で飛行に支障がないようなら、少し上空を飛んで周囲を見せてくれ。《眼を借りる》ぞ」

 

 そう言って健太(けんた)は『同調(レゾナンス)』のスキルでトレミーの視覚を共有する。

 無論、虫であるトレミーの視界をダイレクトに見るのではなく、『脳外記憶領域(クラウドストレージ)』でトレミーの視覚情報が人間の眼にはどう見えるのか予測して返還するプログラムで、脳裏の一部にそちらの映像を映し出す方式だ。

 

 肉眼で見る自分の視界と、『同調(レゾナンス)』で脳裏の一部に映し出すトレミーの視界。二つの視覚情報に同時に意識を割くのは少々難易度が高いが、(クラス)を重ねてレベルを上げたおかげか今の健太(けんた)にとっては「ある程度集中していれば維持は可能」な程度だ。

 

(オンラインのFPS系のゲームを思い出すな。こっちの装備や出没するエネミーを考えればファンタジーRPGの方が近いんだろうが)

 

 そんなことを考えながら広い廃墟の街並みを歩み進むことしばし、最初に異変を発見したのは広く空を偵察していたトレミーではなく、健太(けんた)のすぐ隣で『眼』を光らせていたボンドだった。

 

「…………」

 

 無言のまま、脚を止めたボンドはその長く伸びた鼻面を斜め前方向に向け、威嚇するように少し牙をむいている。同時に、健太(けんた)が「この階層ではできるだけ抜くな」と命じた短剣を抜いている。ボンドの短剣は韋駄天(いだてん)を意味する『クー』の梵字を刀身に刻んである。

 この短剣を抜いている間、ボンドは圧倒的な移動速度と一回り強大化した身体能力を得られる。

 

 ボンドの警戒する方向に健太(けんた)は素早く、『文官(オフィサー)』系のスキルである『索敵(サーチエネミー)』を使用する。

 その瞬間だった。

 これまで『地図帳(アトラス)』のスキルではそこにはなにもいないことになっていた場所、ボンドが睨む石造りの大きな廃屋の奥に(エネミー)を意味する赤い光点三つが映る。

 

「っ、『索敵(サーチエネミー)』に反応して目を覚ましたか?」

 

 健太(けんた)がそんな言葉をつぶやきながら、両手で大剣を構えると同時に、石造りの廃屋が内側から打ち破れ、三つの大きな影が姿を現す。

 第十三階層『酸雨遺跡(アシッドレイン)』に出没するモンスターは、全てゴーレムである。

 学園の資料ではゴーレムを『寸法(サイズ)』『素材(マテリアル)』『形状(シェープ)』の三項目で分類している。

 寸法が標準(ミディアム)、素材が(アース)(ウッド)(ストーン)、形状は人型(ヒューマノイド)が圧倒的多数とされているが、もちろんこれは『既知(きち)』領域の話だ。

 

 今、健太(けんた)の前に現れた三体のゴーレムは、明らかに違った。

 形状は辛うじて人型をしているが、二本の脚はやたらと短く、胴体は逆さに立てた卵のよう。対して両腕は地面につきそうなほどに長く腕全体が蛇腹のようになっており、変幻自在の攻撃を繰り出しそうだ。もしかすると、さらに伸びてくるのかもしれない。

 体と比較して頭部は小さく、目らしき丸いなにかが二つあるが片方が異常に大きく、もう片方は小さい。

 全高は目算で三メートル強、学園の基準で言えば大型(ラージ)に分類されるだろう。

 材質は良く分からない。土、木、石で言えば石に近いがもっと金属的な光沢があっていかにも頑丈そうだ。

 

 推定『材質不明の異形大型ゴーレム』三体は、辺りの廃屋を砕きながらまっすぐ健太(けんた)たちに向って来る。

 巨体に似合わぬすさまじい移動速度だが、それでも初撃は健太(けんた)達が先だ。 

 

「トレミー《撃て》」

 

 と健太(けんた)の言葉を受けた『徹甲虫・多弾倉(ペネトレイトビートル・リボルバー)』は超高速突撃を敢行する。

 騎士殺しの異名を持つトレミーの超高速突撃は、頑丈そうな異形ゴーレムの胴体を抉り、突き刺さった。貫くことはできない。トレミーは異形ゴーレムの逆卵型の胴体に埋まったままだ。

 その状態を理解した健太(けんた)はすぐさま次のアクションを超す。

 

 トレミーの高速突撃は生体ジェット噴射器官によるものだ。密着状態からでも多少威力は落ちるものの発動は可能。今のトレミーは『徹甲虫・多弾倉(ペネトレイトビートル・リボルバー)』のため、最大六回まで連続で超高速突撃が可能だ。

 

「トレミー、そのまま《撃て》《撃て》」

 

 幸い、三度目の超高速突撃でトレミーは無事異形ゴーレムの胴体を貫き、背中から飛び出した。

 残念ながら生物系でも機械系でもないゴーレムの場合、貫通痕一つだけでは活動を停止することはない。それどころか戦闘力は全く減少していないだろう。

 だが、もちろん今の威力偵察が無意味だったわけではない。

 

「貫通にトレミーの突撃三発か。結構固いな。トレミー《戻れ》。ボンド、防御専念。異常が『視え』たら教えてくれ」

 

 敵の防御力が分かれば求められる攻撃力が割り出せる。

 健太(けんた)は、トレミーをカードに戻し、ボンドをあくまで索敵に専念させると自らは大剣を両手で構える。

 柄をどこまでも伸ばすことに出来る大剣のおかげで健太(けんた)は大概の場合、先制攻撃権を得る。

 だが、初見の敵である異形ゴーレムは健太(けんた)よりも先に攻撃を仕掛けて来る。

 

「ゴッ!」

 

 一体は元から地面につくほど長かったその蛇腹腕を一瞬でさらに伸ばして手刀を振り下ろし、

 

「レッ!」

 

 もう一体は大きさの違う二つの眼のうち、小さいほうから糸のように細い光線を放ち、

 

「ムウ!」

 

 最後の一体は長い両腕が後方に翼のように伸びて、背中から火を吐きながら高速で突進してくる。

 

 全く同時ではなく、同じリズムでもない、少しずつずれた三連撃。

 

 「ちっ、《はっ》、ふん」

 

 対する健太(けんた)は、蛇腹腕の手刀を大剣で斬り落とし、細い光線を『硬盾士(ハードシールダー)』のスキル『即席盾(インスタントシールド)』で受け止め、高速で飛んでくる異形ゴーレムを大剣の振り下ろしでたたき割った。

 

 カウンター気味に大剣の一撃を受けた三体目の異形ゴーレムはその一撃で小さな頭部と逆卵型の胴体部分をまとめて砕かれ、活動停止する。

 

「《伸びろ》、はっ」

 

 さらに健太(けんた)は大剣の柄を伸ばし、まだ遠方にいる腕を伸ばしてきた一体目の異形ゴーレムと、光線を撃ってきた二体目の異形ゴーレムを纏めて薙ぎ払うように、一閃する。

 

 大剣のもう一つの能力である『鋭刃(シャープネス)』は発動させていないので切れ味はお世辞にも良いとは言えないが、その黒味がかった灰色の石のような鈍い刃は、健太(けんた)の腕力によって異形ゴーレム二体の胴体をガラス細工のように叩き割った。

 

「オンオン!」

 

「ああ、分かってる」

 

 あっという間に三体の異形ゴーレムを仕留めた健太(けんた)だが、ボンドの鳴き声(けいこく)を聞くまでもなく戦闘が始まったばかりであることを把握していた。

 

 スキル『地図帳(アトラス)』によって健太(けんた)の脳内に広がる広域地図。つい先ほどまでは自分を意味する白のピン一本と味方を意味する青いピン二本しかなかったのに、敵を意味する赤いピンが地図全体を赤く染める勢いで増えていっている。

 広域地図の範囲外から押し寄せてきているわけではない。一瞬前までは何もなかった場所に次々と赤いピンが突き刺さっているのだ。

 

「どうやらこの辺りは、この手のタイプのゴーレムが休眠(スリープ)状態で散らばっていたようだな」

 

 それが健太(けんた)の『索敵(サーチエネミー)』を察知したことで三体が起動し、その三体を撃破したことで残り数百のゴーレムも起動したのだろう。

 

「《防御強化》《筋力強化》《敏捷強化》《視力強化》《自動盾》《障壁》」

 

 健太(けんた)が素早く自己強化を済ませた頃には、いたるところから石造りの廃墟が倒壊する音が響き、振り続ける酸性雨すら押しのけるようにして異形ゴーレムは、全方向から襲い掛かってきた。

 

 

 

 

 

 同じところに留まり続けると天敵者(アグレッサー)が湧くという法則は自然領域(ネイチャーフィールド)であっても変わらない。

 敵がしぶとかったとしても、また敵がとんでもない数で押し寄せてきていたとしても、天敵者(アグレッサー)は考慮してくれない。

 だから一時間を超える長期戦に及んだ場合、戦闘を継続しながら場所を移動する必要があるのだ。

 今回のような全方位から押し寄せる大群を相手にそれをするとどうなるかというと、多くの場合更なる大群を呼び寄せる羽目になる。

 

 結果、数時間に及ぶ戦闘を終えた時、健太(けんた)の撃破数は千を超えていた。

 

「《アイテムサーチ》」

 

 酸性雨でぐしょ濡れになった髪を左手でかき上げながら、健太(けんた)は『検索案内(ナビゲート)』のスキルでドロップアイテムを探す。

 健太(けんた)の脳内の地図に無数の銀色の光が灯る。クリスタルは小さな光で、ドロップアイテムは大きな光だ。

 全部は流石に拾っていられないが、ドロップアイテムは一通り集めておくべきだろう。今回倒した数からするとモンスターカードだけでも結構な数が落ちているはずだ。

 

「ボンド頼む。適当に拾い集めてくれ。これで《視える》だろう」

 

 そう言うと健太(けんた)はボンドとの間に『同調(レゾナンス)』のスキルを使い、視覚を共有した。

 ただし、今回はいつもと逆で、ボンドの視界に健太(けんた)の『検索案内(ナビゲート)』の結果が記された地図が映るようにしたのだ。

 盗賊系と地図の相性が良いのか、それともボンドが純粋に賢いのか、ボンドは現実と照らし合わせて地図を見ることが出来る。

 

「クン」

 

 健太(けんた)の言葉を受けてこちらも酸性雨で毛皮がぐしょ濡れのボンドが元気の良い返事をする。

 健太(けんた)は腰に下げていた袋をボンドに渡した。大した量は入らないが、そこまで欲張る必要もない。ボンドは周囲への警戒を怠らず、それでいて素驚くほどの素早さで駆けだす。

 もちろん、ボンドだけに任せるつもりはなく、健太(けんた)自身も目に付くドロップアイテムは拾っていく。

 一番多いのはゴーレムの外殻だ。手に取ると金属というよりセラミックに近い感触だ。

 健太(けんた)は一通りアイテムを拾い集めて限定空間収納(レンタルスペース)に収めたところで、呟きを漏らす。

 

「気のせいではないな。わずかだが小さく、重くなっている。色も濃い」

 

 健太(けんた)はドロップアイテムを拾うため、背中に収納していた大剣を改めて手に持ち、そう結論づける。

 元々この大剣は刀身にSPを込めると灰色の刀身が小さく、重く、そして黒くなるという特徴がある。

 だが、今健太(けんた)は大剣に一切SPを注いでいない。それなのに僅かだがその刀身は健太(けんた)の記憶にあるものより、小さく、重く、そして黒くなっている。

 恐らくだが、刃の鋭さも少し増しているのではないだろうか。

 最初は、酸性雨にやられたのかと思ったがどうもそうではないようだ。

 

「威力が出しやすくなったと思えば悪くはないが、重くなるのは多少問題だな」

 

 元々この大剣は普段の状態でも十数キロはあった。今はニ十キロ迫る重さがある感じだ。

 

「余裕のある時に一度、凜子(りんこ)先輩に見てもらうか」

 

 知り合いで一番信頼のおける『鑑定士(オーセンティケーター)』の名前を口にしながら、健太(けんた)はひとまず意識を別な点に向ける。

 

「一体一体は弱めのモンスターだったが流石にこれだけやれば、第三段階職でもカンストするか。とはいえ、経験値効率は『密林竜園(ドラゴンガーデン)』が頭一つ抜けているな」

 

 そのモンスター――異形ゴーレムとの戦闘で見渡す限り遺跡と呼べる呼べるような建造物は全て消え去り、異形ゴーレムが目から放つ光線でまだらにガラス化している地表の上に立ち、健太(けんた)はそんな感想を漏らす。

 

 そして健太(けんた)は脳裏に表示される見慣れた文字列に意識を向ける。

 

 

義賊(ソーシャルバンデッド)R』

 

 

 

詠唱術士(キャスター)』『方士(ファンシィ)R』『火精霊使い(フレイムシャーマン)R』『風精霊使い(ウィンドシャーマン)R』『水精霊使い(アクアシャーマン)R』 

 

神官戦士(プリーストファイター)SR』

 

鍛冶士(ブラックスミス)』『金細工士(オルフェーヴル)R』『合成士(シンセサイザー)SR』

 

書記(レコーダー)』『使役者(テイマー)SR』『統計士(スタティスティシャン)』『融合調整士(ミキサー)SR』

 

独りよがり(オナルシスト)SR』

 

 

 

戦闘士(グラディエーター)』『襲闘士(ストライカー)』『剛拳士(ナックルロード)R』『堅牢盾士(ロバストシールダー)R』聖騎士(パラディン)防壁騎士(ウォールナイト)R』鏡盾騎士(ミラーナイト)R』『魔法騎士(マジックナイト)SR』『竜騎兵(ドラグーン)R』『馬上槍武者(バジョウヤリムシャ)SR』『浪漫闘士(ロマンチックウォリアー)SR』『小妖精騎士(ピクシーナイト)SR』大剣豪R(グレートソードマスター)槍重装騎士(ランスヘヴィアームドナイト)R』侍大将(サムライマスター)

 

略奪者(バーグラー)』『山賊団長(バンデッドリーダー)R』

 

魔女男(ウォーロック)』『咒法師(コンジャラー)』『退神師(ゴッドリパレント)SR』『精霊契約者(エレメンタルコントラクター)』『土精霊契約者(アースエレメンタルコントラクター)R』『拡大術士(ブースター)R』『紋章魔術士(エムブレムウィザード)SR』

 

司教(ビショップ)SR』

 

牢名主(ロウナヌシ)』『一人達者(グッドオナニスト)SR』

 

 

 に転職可能。

 

 

 

 ※お客様のご契約、ご利用状況では、以下の職クラスは選択できません。

 

聖賢見習い(リシサン)GR』『石猿見習い(メイホウサン)GR』伝承の英雄(スクリーンヒーロー)GR』称号獲得者(タイトルホルダー)GR』

 

 

 

 

 本来、この次に就く(クラス)に関しては健太(けんた)としては悩む余地がないはずだった。

 現在、健太(けんた)は近々いくつかの難問に遭遇することになっている。

 一つは、初めて経験する特級科の護衛依頼。もう一つは、倶楽部対抗戦本戦で起こりうる叶馬(とうま)との決闘だ。

 前者を成功させるのに必要なのは防御力であり、後者を生還するのに必要なのも防御力である。

 だから、元々健太(けんた)は「次に就くのは『堅牢盾士(ロバストシールダー)』一択」だと考えていたのだ。

 

 だが、いざ『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』が発動すると新たに『聖騎士(パラディン)』『防壁騎士(ウォールナイト)』が追加されていた。

聖騎士(パラディン)』もかなり防御力を期待できる(クラス)だが『防壁騎士(ウォールナイト)』はそれ以上、防御に特化した騎士(クラス)と言える。

 礼治(れいじ)と並ぶもう一人の生徒会副会長である耕司(こうじ)が付いている第四段階職『城壁騎士(フォートレスロード)』の前段階とも言える。

 

堅牢盾士(ロバストシールダー)』と比べても総合的な防御力は甲乙つけがたいだろう。

 しいて言えば、『堅牢盾士(ロバストシールダー)』はその名の通り「盾を強化」するタイプの防御スキルが、『防壁騎士(ウォールナイト)』は「自分と騎獣の全体を守る」タイプの防御スキルが多いことだろうか。

 

 盾も騎獣もいる健太(けんた)にとってはどちらがより優先度が高いという話ではない。

 

「さて、どうするべきか」

 

 健太(けんた)はボンドが袋いっぱいのドロップアイテムを集めて戻ってくるまで、悩み続けるのだった。

 

 

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