※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

143 / 144
第百三十一話 O嬢極のパワレベ、O嬢極の可能性

 

 午前の授業を公欠し、文香達の『護衛依頼』をどうにか合格点がもらえる形で果たした健太は、いつも通り学食で簡単な食事を終え、午後の準備に取り掛かっていた。

 授業は全て午前で完結するこの学園で午後の準備とは言うまでもない。

 ダンジョンダイブである。

 

 

 ――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

 

 

 ――第『捌(はち)』階層、『既知外(きちがい)』領域――

 

 

 

 

 午前中、華組の女子三人とダンジョンダイブを行っていた健太(けんた)は、午後に五人の女子とダンジョンダイブを行っていた。

 こちらの五人は倶楽部『O嬢極(オウジョウギワ)』の部員の中の五人。和花(わか)、芽衣(めい)、夜凪(やなぎ)、雪音(ゆのん)、良月(よづき)の五人だ。健太(けんた)と身体の関係を結び、なし崩し的にO嬢極の中でも「健太(けんた)担当」に決まった五人である。

 年度初めの倶楽部対抗戦――通称水無月杯が終わってから、健太(けんた)の倶楽部『安息所(メイトガード)』と和花(わか)を部長とする倶楽部『O嬢極(オウジョウギワ)』は正式に同盟(アライアンス)を結んでいた。

 もちろん、対等な同盟(アライアンス)ではない。学園の同盟では極めて一般的な一方が一方に全面的に従属する上下関係の従属である。

 一年男子が主力ながらいきなりCランク倶楽部に躍り出た『安息所(メイトガード)』と、ほとんどが非戦闘系の上級生女子だけで作られた『O嬢極(オウジョウギワ)』。

 その同盟で「美味しい思い」をするのは当然健太(けんた)、尚典(なおふみ)、来斗(らいと)、霊王(れお)の男子四人だ。

 だから「『O嬢極(オウジョウギワ)』の部員達も出来るだけ庇護する」という健太(けんた)の言葉に他の男子部員達も全員賛成した。

 

 とはいえいきなり『O嬢極(オウジョウギワ)』の全員を引きつれてのダイブは護衛対象が多すぎて予期せぬトラブルが怖い。

 そのため、ひとまず健太(けんた)自身と「健太(けんた)担当」の五人で健太(けんた)にとって勝手知ったる第八階層のダイブとなったのである。

 

 

 

 もちろん、第八階層『既知外(きちがい)』領域を勝手知ったると言えるのは健太(けんた)だけ。

『O嬢極(オウジョウギワ)』の女子五人にとってはいきなりぶち込まれた超絶瘴気圧のアホ空間である。

 健太(けんた)への隷属が深い和花(わか)と芽衣(めい)、そして五人の中では飛び抜けてレベルが高い良月(よづき)は耐えられたが、夜凪(やなぎ)と雪音(ゆのん)の二人は硬直させた体をブルブル震わせるだけの置物と化したのだった。

 

「落ち着いたか」

 

 健太(けんた)は両腕で夜凪(やなぎ)と雪音(ゆのん)を抱きしめながらそう問う。

 

 

「は、はい」

 

「う、うん、もう大丈夫」

 

 夜凪(やなぎ)と雪音(ゆのん)は黒い重甲冑を纏った健太(けんた)の体にガッチリと抱き着いたまま、どうにかそう答える。どうにもならない様であればこっそり『平静(サニティ)』のスキルを使用することも考えていたので健太(けんた)としては助かった。

 夜凪(やなぎ)も雪音(ゆのん)も曲がりなりにも三年生。何らかの形で高濃度瘴気圧の経験はあるのだろう。

 

「旦那様(あなた)。ここは既知外領域、それも既知領域からは相当離れた既知外領域ですわよね?」

 

『文官(オフィサー)』系である和花(わか)を誤魔化すことはできなし、する意味もない。

『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)は平たんな口調で答える。

 

「ああ。ここは第八階層の既知外領域。俺が普段ダイブしているあたりだ。今俺がダイブしているのはもう少しふ」

 

「流石ですね、私の旦那様(あなた)。ここの座標は登録しましたので、今後私たちを連れてきてくださるときは私が起点になりますから」

 

 健太(けんた)の言葉を遮る様にして健太(けんた)に抱き着いた和花(わか)は少し早口で健太(けんた)にそう告げる。

 和花(わか)の不自然な態度に少し考えた健太(けんた)はすぐに理由に思いつく。

 

(そうか。ここには俺が起点になって皆を連れて来たんだ。それなのに俺が普段はもっと深い階層にダイブしていると言ったらかなり変なことにある)

 

 電子学生手帳に記されているデータ上健太(けんた)は戦士系第二段階職『騎士(ナイト)』になっている。

 倶楽部対抗戦で堂々と『重装騎士(ヘヴィアームドナイト)』のスキルを使用したので実は第三段階職『重装騎士(ヘヴィアームドナイト)』であることは気づいている者は気づいているだろうが、だとしても戦士系であることに変わりはない。

 ダンジョンダイブの時、任意のポイントにログインできるのは『文官(オフィサー)』系だけだ。戦士系である健太(けんた)は前回ログアウトしたポイントにしかログインできないはずなのである。

 それなのに本日健太(けんた)を起点としてここ第八階層既知外領域にダイブしていて、その健太(けんた)が「普段はもっと深い階層を探索している」と言ったら色々矛盾してしまう。

 一応「今日の為に事前に『案内人(パスフェンダー)』の蘭(らん)にここに連れてきてもらっておいた」という言い訳がまだ成立するが、ちょっと調べればバレるレベルの嘘でしかない。

 この場にいる女子は大なり小なり健太(けんた)に隷属しているのでそう簡単に健太(けんた)の秘密を漏洩しないだろうが、それでも秘密の知っている者は素なければ少ないほど良い。

 

「ああ、ありがとう和花(わか)」

 

「……はいっ」

 

 抱き着く和花(わか)を抱き返すと和花(わか)は健太(けんた)の腕の中で湿った歓喜の声を上げる。

 

(ということは、和花(わか)には俺が本来『文官(オフィサー)』にしか出来ないはずの好きなポイントにログインできることがバレてたのか)

 

『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)は、その事実を冷静に受け止める。

 考えてみれば今更である。和花(わか)、芽衣(めい)、優梨愛(ゆりあ)、詩織(しおり)、そして藤子(ふじこ)の五人はあの補習レイドで何日もの日々を一緒の過ごした仲だ。その時健太(けんた)は『彫金士(ホワイトスミス)』の市湖(いちこ)に弟子入りし、普通に『職人(クラフター)』のスキルをバンバン使用していた。

 あそこでは健太(けんた)たちは地下住居、叶馬(とうま)達は地上住居に分かれて住んでおり、弟子入りは地上で行っていたので和花(わか)たちには見られていないと思っていたのだが、何らかの拍子に見られていても不思議はない。一応口止めはしておいたはずだが、蜜柑(みかん)達がぽろっと漏らした可能性もある。

 

 ともあれ、今はそこまで気にすることでもないだろう。後日、和花(わか)と二人きりの時間を作ってじっくり話し合えばよいだけのことだ。

 

「この辺りは原則オークしかいないからパワーレベリングに向いている。手近な玄室で俺がオークを無力化する。お前たちはそれに止めを刺せ。優先順位は、夜凪(やなぎ)、雪音(ゆのん)、芽衣(めい)、和花(わか)の順だ。良月(よづき)は別枠。最後に時間を取るからそれまで我慢しろ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

「りょー」

 

「三番目、よし」

 

「承知いたしました、旦那様(あなた)」

 

「おうよ、楽しみにさせてもらうぜ」

 

 健太(けんた)の言葉に、O嬢極の女子五人はそれぞれの言葉で了承の意を示した。

 

 

 

 

 

 近くの玄室に立ち入り、その中にたむろしていたオークの大群を慣れた手順で無力化した健太(けんた)は、『鑑定人(アプレイザー)』という職の便利さを実感していた。

 

「オークハイキングが一匹、オークキングが二匹、オークラウンドナイトが十匹、オークナイトがおよそ百匹。オークコートウィザード一匹とオークウィザード三匹、オークレンジャー2匹は健太(けんた)様が仕留めております」

 

「ありがとう、和花(わか)」

 

『鑑定人(アプレイザー)』である和花(わか)の報告に、右手で小剣『金狼木霊剣』を構えたままの健太(けんた)は意識を床に倒れた四肢のないオークの群れに向けたままそう礼の言葉を返す。

 これまでは何となく見た目から「これは鎧を着てるからオークナイト、これは大きくて偉そうだからオークロード」といった当て推量をするしかなかったモンスターの固有名を明言してもらえるのはとてもすっきりする。

 一般的に職人系の『鑑定士(オーセンティケーター)』は物の鑑定に、文官系の『鑑定人(アプレイザー)』生き物の鑑定を専門としていると言われている。

 あいにくと和花(わか)はこの辺りのモンスターと比べると圧倒的にレベルが低いため詳しい情報までは抜けないが、正式名称くらいは読み取ることが出来る。

 

「はい、旦那様(あなた)」

 

 健太(けんた)の言葉に和花(わか)が頭を撫でられたゴールデンレトリバーのような表情を浮かべているのを横目で見ながら、健太(けんた)は他のメンバーに指示を飛ばす。

 

「この数ならある程度同時進行で良いだろう。夜凪(やなぎ)、雪音(ゆのん)。倒れているオークに止めを刺せ。すべて無力化しているし、万が一オークがまだ何らかの攻撃手段を隠しているとしても俺が割って入る方が圧倒的に速い。

 気楽に行け」

 

「は、はい」

 

「うう……うん、オッケー、《来て》カギヤ」

 

 健太(けんた)の言葉を受けて夜凪(やなぎ)と雪音(ゆのん)が四肢を失って倒れているオークに止めを刺すため前に出る。

 

「せーの、ふっ!」

 

 夜凪(やなぎ)は両手で持つ長柄の片刃の斧をオークナイトの喉元に振り下ろす。

 夜凪(やなぎ)は倶楽部『O嬢極(オウジョウギワ)』のもう一人の副部長であり、職(クラス)は『戦士(ファイター)』である。学年は三年。

 見た目の第一印象は大人びた真面目そうな女子、といったところだろうか。女子にしては背が高く、静香(しずか)や蘭(らん)と同じくらいはありそうだ。ただし、静香(しずか)や蘭(らん)とは違い胸や尻の肉付きには恵まれていない。

 貧乳というほどではないが間違っても巨乳とは言われない。尻は明確に小さいほうだろう。足が長いので相対的になおさら尻は小さく見える。

 背が高くて大人びた顔立ちも相まって健太(けんた)の持つイメージは『出来る社会人女性』だ。今は戦闘の邪魔にならないようにキッチリとまとめている長い黒髪は、日頃は下ろしていることが多い。

 どちらにせよ髪が乱れていることはあまりない、几帳面な性格が見て取れる。

 

 三年の夜凪(やなぎ)がまだ第一段階職である『戦士(ファイター)』というのは言うまでもなくバリバリの落ちこぼれである。

 だがこれには理由がある。

 夜凪(やなぎ)が『戦士(ファイター)』になったのは今年度。それまでは『娼婦(ニンフ)』だった。

 夜凪(やなぎ)は一年のスタートダッシュでチンピラ倶楽部の『新人狩り』にあった人間だ。

 ノービスの一年女子に抵抗などできるはずもなく夜凪(やなぎ)はそのチンピラ倶楽部のオモチャになった。ノービスの状態で圧倒的格上のセックス漬けにされた女子は生来の素質や本人の気質がどうあってもその大半が『遊び人(ニート)』から『娼婦(ニンフ)』のコースに乗ってしまう。夜凪(やなぎ)もその例にもれなかった。

 原作で言えば『お尋ね者(ワイルドバンチ)』に捕まった李留(りる)、由香(ゆか)、保奈美(ほなみ)の三人に近い立ち位置だ。

 原作の李留(りる)、由香(ゆか)、保奈美(ほなみ)の三人は叶馬(とうま)が『お尋ね者(ワイルドバンチ)』を殲滅したため早い段階で解放されたが、あれはかなり珍しい例だ。

 夜凪(やなぎ)はごくごく普通にそのままそのチンピラ倶楽部に捕まったままだった。

 それから二年がたち、夜凪(やなぎ)が三年になればチンピラ倶楽部の男たちは五年になる。無事五年まで自我を維持している男子など普通科では少数派だ。

 新人狩りなどをやってキャッキャしているチンピラ倶楽部がその優秀な方の少数派に属するはずもなく。

 夜凪(やなぎ)の正式なパートナーとなっていた男子はいつの間にか「最初からいなかった」ことになっており、それ以外の部員達も自主的な行動を行うほどの自我は残っておらず。

 それを機会に倶楽部を抜け出した夜凪(やなぎ)は心機一転、自力でダンジョン戦闘に挑み(『娼婦(ニンフ)』のスキルが有効なオス属性のモンスターを狙った)、無事『娼婦(ニンフ)』をカンスト。

『聖堂(カテドラル)』で降格(ダウングレード)転職(クラスチェンジ)を行った結果、夜凪(やなぎ)は望み通り『戦士(ファイター)』となったのである。

 

「はっ! 次はこれね、ふっ!」

 

 その夜凪(やなぎ)は手際よく、四肢を失ったオークナイトを倒している。

 第一段階職に過ぎない『戦士(ファイター)』の夜凪(やなぎ)にとってオークナイトは無抵抗でも中々ダメージが通りずらい格上なのだが、そこは武器が補う。

 今夜凪(やなぎ)が使用している長柄の片刃斧は、健太(けんた)が用意したものだ。元はオークナイトが使用していたもので、健太(けんた)が『職人(クラフター)』のスキル『適合(アジャスト)』のスキルで大きさは夜凪(やなぎ)に合わせてあるが、重量は変わらない。有に十キロを超える。

 今の夜凪(やなぎ)にとっては間違っても自在に振り回すことが出来る武器ではないが、振り上げて振り下ろすという止めを刺すだけならば十分だ。

 

「せーのっ、ふん!」

 

 渾身の力を込めて長柄の片刃斧を振り下ろす夜凪(やなぎ)の額には珠の汗が、顔には二年間の遅れを取り戻す強い意志と歓喜の表情が浮かんでいた。

 

 

 

「カギヤ、お願い」

 

 雪音(ゆのん)の命令を受けて『強化外装骨格(アームドゴーレム)』カギヤが片手で持つ鈍色の戦鎚(メイス)を四肢を失って転がっているオークナイトに振り下ろす。その戦鎚(メイス)も健太(けんた)が提供したものだ。

 雪音(ゆのん)では持ち歩くだけで負担なので、『強化外装骨格(アームドゴーレム)』を召喚するまでは健太(けんた)が預かっている。

 動きが鈍くて正面戦闘ではあまり評価の高くない『強化外装骨格(アームドゴーレム)』もパワーとタフネスに関しては一級品だ。無力化した敵に止めを刺すには十分な戦力である。

 

「あは、すごい。もりもりレベル上がっちゃう!」

 

 雪音(ゆのん)はテンション高くそんな叫び声をあげる。

『強化外装骨格(アームドゴーレム)』を召喚していることからも分かる通り、雪音(ゆのん)は『職人(クラフター)』である。

『職人(クラフター)』系第二段階職『花火士(パイロテクニシャン)』だ。

 かなりレアな職(クラス)らしいのだが素の戦闘力の低さに関しては他の『職人(クラフター)』と同レベルな上、特技である『花火』の使い道が見つからないため「ハズレレア職」に認定されている。

 健太(けんた)はモンスターの能力器官(スキルオーガン)のインストールで相当『化ける』ポテンシャルを持っているのではないかと思っている。

 なにせ『花火士(パイロテクニシャン)』が作成する『ロケット花火(スカイロケット)』は遠距離攻撃手段なのだ。

 現状、第一階層『既知(きち)』領域のコボルトを倒すのにも十発以上必要(しかもコボルト相手でも結構避けられる)というあまりのショボさから見向きもされていないが、「量産可能な他人に使わせることが出来る遠距離武器」というだけでもとんでもない話だと健太(けんた)は考える。

 もっとも『花火士(パイロテクニシャン)』である雪音(ゆのん)が戦闘に全く意欲を見せない「典型的な普通科の女子」なので健太(けんた)としては無理強いするつもりはないが。

 幸い作った花火は誰でも使用可能なので、定期的に作ってもらって健太(けんた)の方で試すつもりだ。

 

 そんな雪音(ゆのん)の見た目は「一見するとギャル」っぽい。

 黒いセミロングの髪は外巻にして白のインナーカラーを入れている。

 制服の着崩し方も普段の発言もいかにもギャルっぽいのだが、レベルを重ねて鋭敏になっている今の健太(けんた)の感覚は何となく違和感を伝えている。

 麻衣(まい)、風音(かざね)、実咲(みさ)のような「自然体のギャル」とはなにか違う感じがする。

 とはいえ、それに言及するのも野暮というものだろう。

 

 

 

 第一段階職である『戦士(ファイター)』の夜凪(やなぎ)と、第二段階職である『花火士(パイロテクニシャン)』の雪音(ゆのん)にとってここ第八階層『既知外(きちがい)』領域のオークナイトは相当な格上に当たる。

 特に第一段階職の夜凪(やなぎ)から見れば止めだけでも入って来る経験値は膨大だ。

 

 

 夜凪(やなぎ)

 

『斧士(スラッシャー)R』『盗賊(シーフ)』『術士(マギ)』『文官(オフィサー)』『職人(クラフター)』

 

『闘士(ウォーリア)』『斧闘士(アクスウォーリア)R』

 

に転職(クラスチェンジ)可能。

 

『遊び人(ニート)』

 

『娼婦(ニンフ)』

 

に再転職(ブーメラン・クラスチェンジ)可能。

 

 

 

 だから『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』のスキルが健太(けんた)の脳裏にそのような文字列を映し出したのも当然と言えば当然であった。

 

「夜凪(やなぎ)はそこまでだ。よくやった。こっちに来い」

 

「はい、ご主人様…………」

 

 健太(けんた)の命令を受けて、夜凪(やなぎ)は両手で長柄の片刃斧を持ったままふらふらと健太(けんた)の側へと歩み寄る。

 

「雪音(ゆのん)はそのまま続けろ。和花(わか)、芽衣(めい)、お前達も行け」

 

「りょー、カギヤ。次いこー」

 

「ありがとうございます、旦那様(あなた)。和太(かずた)、行きなさい」

 

「前方射線、よし《シュート》」

 

 続く健太(けんた)の命令を受けて雪音(ゆのん)はそのまま『強化外装骨格(アームドゴーレム)』でのとどめ刺しを続行し、和花(わか)はすでに『具象化(リアライズ)』してあった『剣牙虎(セイバーティーゲル)』の和太(かずた)に攻撃を指示し、芽衣(めい)は頭頂部に大きな黄色い宝石が飾られた術杖(マギスタッフ)を振るい、『魔弾(マジックボルト)』を飛ばす。

 芽衣(めい)は『術士(マギ)』系第二段階職『魔術士(ウィザード)』だ。

『魔弾(マジックボルト)』は第一段階職『術士(マギ)』の基本スキル。だから芽衣(めい)は頑張ればもっと強力な攻撃スキルが使えるはずなのだが、あまりその辺を頑張る気はなさそうだ。

 

「《シュート》《シュート》よし、次。《シュート》」

 

 芽衣(めい)は後方からオークナイトに『魔弾(マジックボルト)』を飛ばして、一匹ずつ止めを刺していた。

 

「腕には掴まるな。体にしてくれ」

 

 健太(けんた)はとろんとした目で体を摺り寄せる夜凪(やなぎ)にそう言って視線は無力化したオークナイトの群れに向ける。

 遠距離攻撃手段があるマギ系は殺してあるし、それ以外は四肢を切り飛ばしているのでまず問題はないはずだが、油断は禁物だ。

 

「はい…………」

 

『戦士(ファイター)』がカンストするまで一気にレベルを上げてしまった夜凪(やなぎ)は性欲で濁った瞳と半開きになった口を健太(けんた)に晒し、そのモデル様なスレンダーな体を健太(けんた)に摺り寄せた。

 

 

 

 

 

 

 ボーナスキャラとして生かして無力化しておいたオークハイキング一匹とオークキング二匹は、結局健太(けんた)が倒すこととなった。

 夜凪(やなぎ)たちの攻撃力では倒しきるのに時間がかかりすぎそうだったからだ。唯一良月(よづき)ならば倒せるだろうが、そこまで一気に火力出すと良月(よづき)は「止まれない」可能性が高い。

 それならば良月(よづき)は次に回した方が効率が良い。

 

「和花(わか)、出来るだけ数が少ない玄室を探してくれ」

 

「はい、承知いたしました旦那様(あなた)。少々お待ちください。《位置》、あちらです。あちらの右手側の玄室がこの辺りでは一番小さいですね。モンスターは五十前後だと思われます」

 

 健太(けんた)の命令を受けた『位置(ロケーション)』のスキルを使用した和花(わか)は聞き取りやすい優しい声色でそう言う。

『鑑定人(アプレイザー)』である和花(わか)は文官系でも『案内人(パスフェンダー)』や『測量士(サーペイヤー)』ほど索敵、検索のスキルは豊富ではないが最低限のことはできる。

 

「ありがとう、和花(わか)。よし、行くぞ」

 

「はい、旦那様(あなた)」

 

 和花(わか)たちO嬢極の女子五人は健太(けんた)に守られながら、次の玄室を目指し移動を始めた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。