※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

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第十四話 強さの追求、第三のチート能力発動

 

 

 

 

 

 

――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

 ――第『(さん)』階層、『既知外(きちがい)』領域――

 

 

 

 

 

 ダンジョンの広い玄室で、戦闘が行われていた。

 

 十匹を超えるゴブリンの前に立ちふさがるのは、全長三メートル強の鉄の巨人。

 分厚く丸みを帯びた胴体に、太い手足。頭頂部より大きく盛り上がった両肩。その全てが武骨な鉄色で、いかにも鈍重そうで、いかにも頑丈そうだ。

 そして、その戦闘方法は、そんな見た目を全く裏切らないものだった。

 

「ギィ!」

 

「シギャア!」

 

「ゴゲエ!」

 

 ゴブリン達の、槍、剣、こん棒、素手、いかなる攻撃も一切防御行動はとらずにその身で受け、固く握った拳を上から下に振り下ろす。

 

「ゴベッ!?」

 

 空手で『鉄槌』と呼ばれる、拳を縦に振り下ろすその一撃を、頭上から食らったゴブリンは、水袋が破裂するようなベチャリという異音を残し、爆砕した。

 

「ヒギッ」

 

 怯んだゴブリン達は、なんとか鉄の巨人を迂回して玄室の出口を目指すが、そこに巨人の陰から赤い光弾が襲い掛かる。

 

「ギャ!?」

 

 光弾を頭部に食らったゴブリンは即座に炎上し、絶命した。

 

「ヒギ」

 

 足を止めるゴブリン達に襲い掛かる、見事な槍を持った大柄なゴブリン。

 

「フン!」

 

「ヒギャア!」

 

「モゲェ……」

 

「アベェ!」

 

 大柄なゴブリンが槍を一振り、一突き、一薙ぎする度、ゴブリン達は一匹ずつ仕留められていく。

 十匹を超えるゴブリンの群れが全滅するまで、さほどの時間はかからなかった。

 

 

 

 

「もう、この辺りのゴブリンならジュゲムの敵じゃないな。ジュゲム、凄いぞ」

 

 戦闘に勝利した健太は、使役モンスターであるジュゲムを褒める。

 

「イギ」

 

 ゴブリン槍兵(ランサー)のジュゲムは顔に皺をよせ、喜びを表現する。客観的に見れば醜悪な顔なのだろうが、忠実に言うことを聞き、自分の誉め言葉に喜びの感情を見せるゴブリン槍兵に、健太も多少はひいき目が入る。

 

「しかし、『強化外装骨格(アームドゴーレム)』は、思った以上に強いな。これが弱いから、『職人(クラフター)』は不遇職のはずなんだが、やっぱり他職を多数重ねてる俺の『ビッグジャイアント』は例外とみるべきか」

 

戦士の不動心(マインドスイッチ)』をオンにしている健太は、謙遜も増長もせず、客観的に自分を評価する。

 

匠工房(アデプトワーカーズ)』で、ジュゲム用の槍、小剣、盾を受け取ってから、何度かダンジョンダイブを繰り返した健太は、順調に『既知(きち)領域』へと近づきながら、レベルアップと転職(クラスチェンジ)を繰り返していた。

 

 現在の健太は、『ノービス』10+『遊び人(ニート)』20+『盗賊(シーフ)』20+『癒し手(ヒーラー)』20+『文官(オフィサー)』20+『職人(クラフター)』20+『術士(マギ)』10以上、だ。

 

 あれから、『文官』を20レベルに上げ、『職人』に転職し、その『職人』も20レベルにして、現在は『術士』のレベルを上げている。

 先ほど最前線で猛威を振るっていたのは、その『職人』の基本スキルである『強化外装骨格(アームドゴーレム)』だ。

『強化外装骨格』は、自分の分身(アバター)となるロボットのような物を召喚するスキルだ。召喚する際、SP(ソルポイント)の半分が一時的に削られ、それがそのままそのロボットのSPとなる。

 ロボットの操縦方法は三つ。自分が乗り込んで内部から操縦、乗り込まずに外部から操縦、そして音声で命令する半自動操縦だ。前ほど思い通りに操縦が可能で、後ろほどアバウトになる。

 

 先ほどまで戦っていた健太の『強化外装骨格』――『ビッグジャイアント』は、三番目の半自動操縦だった。

「その場から動くな。近づく敵を殴れ」。その二つの命令を忠実に守った『ビッグジャイアント』は、見た目通りの分厚い装甲でゴブリンの攻撃を歯牙にもかけず、頭上から振り下ろす巨大な拳で、ゴブリン達を潰していった。

 

 ちなみに『ビッグジャイアント』という名前は、健太が自分の『強化外装骨格』を見た時に連想した、二つのロボットアニメのロボット名から来ている。なんか意味がダブっている気がするが、もう一つの候補である『オーロボ』よりは良いだろう。

 

 好感触だった『職人』のスキルに比べ、思ったより使いづらかったのが『術士(マギ)』のスキルだ。

 一匹のゴブリンを丸焼けにしたのは、健太が使った『火弾(ファイヤーブリッド)』だ。威力は申し分なく、射程も充分なのだが、いかんせん発動にひどく手間がかかる。

 SPを魔力(マナ)として放出し、『変質(マナチェンジ)』のスキルで火の属性に代え、思い描く通りに射出する。

 思っていたよりもずっと難しい。その上、一発でSPも随分と減った感触がある。

『文官』の『具象化』や『職人』の『強化外装骨格』のような長時間具現化するタイプのスキルと比べれば流石に少ないが、『遊び人(ニート)』の『蜻蛉(シャドウ)』や『盗賊(シーフ)』の『俊足(ファスト)』と比べれば、十倍以上のSPが消費されている気がする。

 

「これを転職(クラスチェンジ)初日から、複数に分裂させて個別に動かしてた麻衣(まい)は、天才の部類だな」

 

 思わず、健太の口からそんな言葉が漏れる。

 実際、魔法という未知の技能はそれくらい難しかった。『術士』の職業(クラス)を得たことで、魔力の扱いを直感的に理解できるようになっているのだが、その理解には個人差がある。健太は、残念ながらあまり理解力のある方ではないようだ。

 健太が言っているように、原作で、いきなり自由自在に魔力を炎に変質させ、思うがままに動かして見せた麻衣は、確かに尋常な才能ではない。第一段階の『術士』を飛ばして、いきなり第二段階の『魔術士(ウィザード)』になっていたという下駄を差っ引いてみても、一種の天才と言っても過言ではないだろう。

 無論それは、術士して天才、感覚が天才的という意味であり、頭脳が天才なわけではない。

 

 いずれにせよ、天才ではない健太が『術士』のスキルを使いこなせるようになるには、反復練習を繰り返すに限る。問題は『術士』のスキルは、消費SPが大きいという点だ。

 SPは、全身を守るバリアであり、あらゆる意味で身体能力を上げるブースターであり、枯渇すれば死ぬ生命力そのものでもある。やみくもに消費して良いものではない。

 幸いなのは『術士』となったことで、SPの自然回復量が激増していることだ。原作の叶馬(とうま)の言葉を借りれば、『術士』系には「SP回復の常時発動型(パッシブ)スキルがついている」という表現になるだろうか。

 瘴気濃度の濃いダンジョン内では、元々SPの回復は早まるので、途中休み休み戦闘を繰り返せば、『術士』としての経験を積んでいくことも不可能ではない。

 

「時間か。……今の俺なら大丈夫か?」

 

戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太は、感情を交えず今日までの自分を振り返る。

 二日に一回のダンジョンダイブ。すべてソロでのダイブだったが、慎重な行動に終始したこともあり、ピンチに陥ったことは一度もない。第一段階職業だが、何重にも重なっている今の健太にとって、この辺りのゴブリンなど、居眠りをしているところを攻撃されても、SPバリアで防げるくらいの敵でしかない。

 さらに、『文官』の『索敵(サーチエネミー)』というスキルで、モンスターの居場所を把握することが出来るようになったので、安全性はさらに高まっている。このスキルは、自分の周囲にいるモンスターの居場所を知ることができるだけで、モンスターの種類は識別できないのだが、この辺りに限ってはそれで十分だ。

 なぜならば、ゴブリンは必ず三匹以上の群れを成しているのに対し、健太が警戒する『超越個体(オーバーボーダー)』は、単独で行動しているから、光点の集まり具合でどれがゴブリンで、どれが『超越個体』かは、見分けがつく。

 ゴブリンヒーローはともかく、ゴブリンキングとゴブリンロードが単独行動なのは少し疑問を感じるところだが、こちらとしては助かる習性であることは確かだ。

 

 そうした、現在の自分の置かれている状況を冷静に判断して、健太は判断を下す。

 

「そろそろ使うか。三つ目のチート能力」

 

 そう自分に言い聞かせた健太は、『強化外装骨格』のビッグジャイアントを消し、ジュゲムを『モンスターカード』に戻した。と同時に床に転がるジュゲムに渡していた、『匠工房(アデプトワーカーズ)』製の『槍』、『小剣』、『盾』を拾い集める。

 自分ひとりになったところで、健太は左手首に嵌めている腕時計で時間を確認する。現在時刻は午後4時47分。今日は午後2時からダイブしているから、そろそろ3時間になる。それでも、傷は一つも負っていないし、『戦士の不動心(マインドスイッチ)』のおかげで、精神的な疲労も無視できる。

 ダンジョンダイブ開始から、ずっとオンにしていた『脳外記憶領域(クラウドストレージ)』で、確認する。今から一時間前の自分はどこにいたか……大丈夫だ。いきなりモンスターの目の前に出ることもない。

 

 確信の持てた健太は、玄室で油断なく周囲に気を配ったまま、心の中で呟く。

 

(《時間軸逆走、一時間》)

 

 次の瞬間、健太はダンジョン内の全く別の場所にいた。

 そこは先ほどまでいた広い玄室ではなく、モンスターの気配が感じられない静かな通路。

 

「よし、恐らくはうまくいった」

 

 そう呟きながら、すぐに健太は腕時計で現在時刻を、『位置(ロケーション)』のスキルで現在位置を、そして『脳外記憶領域(クラウドストレージ)』のデータで、『一時間前の自分の視界情報』を確認する。

 

 現在時刻、午後3時47分。現在地は、『羅城門(らじょうもん)』ダンジョン『既知(きち)領域』よりマップ十枚ほど外れた『既知外(きちがい)領域』。そして、『脳外記憶領域』に保存されている『一時間前の自分の視界情報』と、今自分の前に広がる現実の風景に、大きな差異がないことも確認。

 

「問題なく、戻ってこれたようだな」

 

 健太は、始めてつかった第三のチート能力が、問題なく作動したことを確認した。

 

 第三のチート能力。その名は『周回レベル上げ(タイムターナー)』という。

 効果は健太一人を過去に戻すこと。ただし、制限は非常に多い。

 まず第一に、出来ることは過去に戻ることだけで、未来に進めることは出来ない。

 その過去も、「健太が知るこの世界」の時間に限られるため、最大戻せて「健太が碧鷺(へきさぎ)荘の自室に転生させられた瞬間」まで。

周回レベル上げ(タイムターナー)』を使った時間に追いついた時点で、元の時間軸に戻る。

 つまり、今の状態を例に挙げると、これから健太が一時間かけてダンジョン内を、さっきとは全然別な方向に移動したとしても、午後4時47分になった時点で、健太は『周回レベル上げ(タイムターナー)』を使う前にいた、あの広い玄室に戻ってしまう。

 その一時間の間に、どれほどドロップアイテムを拾っていたとしても、それもなくなる。『周回レベル上げ(タイムターナー)』で、移動していた時間軸から本来の時間軸に物を持ち帰ることは出来ない。

 持ち帰ることができるのは、経験と記憶だけ。一時間の間に上がったレベルはそのまま。転職(クラスチェンジ)をしていたとしたらそれもそのまま。試してはいないが、『モンスターカード』を成長させるのもあくまで健太の経験値なので、恐らくジュゲムのレベルも上がったままだろう。

 

 レベルは上げられるが、資金を増やしたり、アイテムをコンプリートしたりは出来ない。最終的には、元の時間軸に戻るのだから、「過去に戻ってやり直す」という使い方も出来ない。

 

 その名の通り『周回レベル上げ(タイムターナー)』なのだ。

 

 使用回数に制限はないため、健太がその気になれば、一日で現在健太が転職(クラスチェンジ)可能な職業を、すべてコンプリートすることも可能だろう。流石に、そこまでやれば、いかな『戦士の不動心(マインドスイッチ)』で守られている健太の精神と言えども、どうなるか予想がつかないので、やるつもりはないが。

 

「さて、始めるか。《出番だ。ジュゲム》」

 

「ギイ!」

 

 カードから召喚され、元気に返事をするゴブリン槍兵(ランサー)のジュゲムに、『槍』『小剣』『盾』を手渡してやる。

 ジュゲムはカード化したときに持っている自分本来の槍を床に捨て、健太に教えられた通り、『小剣』を腰に吊るし、『盾』を左腕に嵌め、『槍』を両手で持つ。

匠工房(アデプトワーカーズ)』製の武器は、本当にすごい。槍を持ち換えただけなのに、ジュゲムの戦闘力は跳ね上がった。ジュゲムがゴブリンからゴブリン槍兵(ランサー)にクラスチェンジした時よりも、劇的に強くなっているのではないか? と思えるほどだ。

 

「よし、行くぞ」

 

「グゲッ!」

 

 健太は、召喚モンスターのジュゲムだけを供に、レベル上げのダンジョンダイブを再開するのだった。何度も、何度も、同じ時間を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日の午後5時。『羅城門』ダンジョンから無事生還した健太の状態は、ノービス』10+『遊び人(ニート)』20+『盗賊(シーフ)』20+『癒し手(ヒーラー)』20+『文官(オフィサー)』20+『職人(クラフター)』20+『術士(マギ)』20+『戦士(ファイター)』20+『騎士(ナイト)』1。

 基本(アーキタイプ)クラス六種と『癒し手』。合わせての七つの第一段階職業を習得することに成功した。

 

 なお、ジュゲムはゴブリン槍兵(ランサー)から、ゴブリン槍騎士(ランスナイト)へ、無事クラスチェンジを果たしている。

 健太の目論見通り、ゴブリン槍騎士(ランスナイト)となったジュゲムの『モンスターカード』には、『匠工房(アデプトワーカーズ)』製の『槍』、『盾』、『小剣』を装備したジュゲムが描かれていた。

 

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