※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

26 / 142
第二十四話 休日午後のダンジョンダイブ、天才の剣技

 休日の午前。現実時間でも三時間、体感ではその百倍近い時間のダンジョンダイブを済ませた健太(けんた)は、前日の約束通り、学食で叶馬(とうま)パーティーと合流していた。

 健太が学食を訪れると、叶馬たち五人はすでに席に座っていた。

 誠一(せいいち)の隣に麻衣(まい)叶馬(とうま)の左右に静香(しずか)沙姫(さき)。その座り位置と、何より沙姫と叶馬の距離感から、どうやらあの後は、原作通りの流れになったのだ、と健太は察する。

 原作ではあの後、夜には叶馬、誠一、沙姫の三人でセックス。翌朝の午前中は、叶馬、静香、沙姫の三人でセックスという形になった。

 叶馬と誠一の墜とす力の違いから、二人同時に相手にしておきながら、沙姫は一晩で叶馬にほぼ墜とされてしまったのだ。それを叶馬以外の全員が察したため、翌日の午前中、誠一と麻衣が「買い出し」という名目で、叶馬、静香、沙姫の三人にした結果、叶馬は静香と沙姫を並べで犯しまくり、めでたく沙姫も叶馬に隷属することとなる。『魂魄結晶(ソルデバイス)』で繋がる静香は、正確には隷属とは違うから(もっと深く、濃い)、沙姫が第一号と言えるかもしれない。

 

「やっほー、健くん。こっちこっち、ここ、ここ」

 

 大きな声で手を上げる麻衣に逆らうほどの理由もなく、健太は麻衣の隣にトレイを置いた。

 昼はパン派の健太は、ホットドッグ定食だ。メインのホットドッグにカップスープとグリーンサラダが付いている。

 

「はい、健くん」

 

「ありがとう。どうやら、そっちはうまくいったみたいだね」

 

 卓上のウォーターピッチャーからグラスに水を注いでくれた麻衣に礼を言いながら、健太は視線を沙姫と叶馬に向ける。『戦士の不動心(マインドスイッチ)』は使っていないが、流石にこれくらいの受け答えは出来るくらいに慣れた。

 

「うん、姫ちゃんは無事叶馬くんのものになりました。健くんなら分かってると思うけど、そういうことだから、今更変なことしないように」

 

「分かってるよ。沙姫さんも、おめでとう」

 

 一晩男二人に嬲られ、翌日の午前中は女二人で一人の男に尻をささげた少女に「おめでとう」はおかしな気がしないでもなかったが、当初から沙姫が申し出ていた望みと照らし合わせても、今の沙姫の表情を見ても、めでたい事なのは間違いない。

 

「あ、ありがとうございます。これも、健太さんのおかげです」

 

 そう言って、沙姫はモリモリと食べていた和食定食から箸を離し、座ったまま綺麗に頭を下げる。

 沙姫が叶馬パーティーの仲間と受け入れられた決定打は、健太がもってきた沙姫の『魂魄結晶(ソルデバイス)』だったのだから、健太のおかげというのもあながち間違いではない。

 

「俺は大したことしてないよ。聞いてるかもしれないけど、俺は叶馬の正式なパーティーメンバーじゃないけど、今日みたいに一緒にダイブすること事はある。今日に限らず、ダンジョンで一緒になることは多いと思うから、よろしく」

 

「は、はい。お任せくださいっ」

 

 ダンジョンダイブの話に、緊張と恐怖がぶり返したのか、一気に表情を悪くした沙姫は、それでも気丈に戦意を言葉にする。

 

「本当気負わずにね」

 

 現状の沙姫は『剣士(ブレイバー)』レベル1だ。これまでのダンジョンダイブは、輪姦セックス中に全て死に戻っているのだから、経験値はほぼ稼げていないのにすでに第一段階職なのは流石だが、それでもこれからダイブする地下第三階層『既知外(きちがい)』領域では、きついだろう。

 最初のうちは、周りに引っ張られるパワーレベリングの時間になる。沙姫の場合はあっという間に頭角を現すだろうが。

 

 簡単に挨拶を終わらせて、昼食に取り掛かっていた健太だが、ジッとこっちを見ている叶馬の視線に気づいた。恐らくだが、その視線は健太というより健太に表示されている『情報閲覧(インターフェース)』で見ることができる情報を、注視しているのだろう。

 ひょっとしたら、唯一の第二段階職である『騎士(ナイト)』と表示されるのではないか、と少し期待していたのだが、叶馬の様子からするに、現在レベルアップ中の職業(クラス)が表示されているようだ。

 まあ『騎士(ナイト)』だとしても、そこには『騎士(ナイト)』レベル30と表記されるはずなので、注視されることには変わらないだろうが。しかし、その場合叶馬はもっと嬉しそうな無表情を浮かべるはずだ。今は、純粋に不振がってる無表情だ。

 

「健太、許可を求める」

 

 言葉だけを聞けば唐突に感じる言葉だが、それまでずっとこちらを見ていた経緯を鑑みれば、何の許可を求めているかは、一目瞭然だ。

 以前、健太は叶馬と約束した。「お前の『情報閲覧(インターフェース)』で俺を見た情報は、俺が許可しない限り、誰にも教えないでくれ」と。別な約束を破ってしまっている叶馬は、その約束を受け入れた。

 だから、今律儀に許可を求めているのだろう。

 

「駄目だ」

 

 健太はにべもなく断る。

 

「むう」

 

 不満を漏らす叶馬の迫力に押され、健太は言い訳をするように情報を漏らす。

 

「大丈夫、俺は強くなってる。弱体化はしてないよ」

 

「……ならば良い」

 

 しばし、健太を睨み(本人は見ていただけと言うだろうが)続けた後、納得したように叶馬はそう言った。

 

 叶馬の『情報閲覧(インターフェース)』の存在を知っている者が聴けば、健太が今洩らしてしまった言葉から、かなり真実に近い情報を救い上げることができる。

 つまり、叶馬の『情報閲覧』で見た今の健太は、以前の健太よりも弱く見えること。だが、健太の言葉を信じれば、健太はむしろ強くなっていること。

 

「ふーん」

 

 それをすぐさま理解した誠一は、意味ありげにそう声を上げ、健太の方を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

 ――第『(さん)』階層、『既知外(きちがい)』領域――

 

 

 

 

 学食で食事を済ませた健太は、叶馬達と本日二度目のダンジョンダイブを敢行した。

 今回は、叶馬が中心となっているので、同じ第三層『既知外(きちがい)』領域でも、午前中に何十周もしていたところとは、全く違う。

 見た目はあまり変わらないが『文官(オフィサー)』でもある健太には、この場所の座標が分かる。午前中に戦っていた場所とは、『既知(きち)』領域の地図で言えば、二十枚分ぐらいズレている。

 

 叶馬、誠一、静香、麻衣、沙姫、そして健太。一度にダイブできる最大人数である六人が、誰もはぐれていないことを確認し、すぐにレベル上げ、とは残念ながらいかない。

 今日まで第一階層『既知』領域しか知らない、それも一度も生還したことのない沙姫は、この第三層『既知外』領域の次元の違う瘴気圧に、歯の根も合わないくらいに震えていた。

 震える沙姫を優しく静香が抱きしめ、その静香ごと叶馬が抱きしめる。本日午前中、ずっと肌を合わせていた『ご主人様』と『お姉さま』の体温で包まれた沙姫は、やがてどうにか震えが収まった。

 

「もう大丈夫? 沙姫?」

 

「はい、ありがとうございました、静香お姉さま」

 

 静香は女子としては比較的背が高いが、沙姫はそれよりさらに背が高い。もちろん、二人は同い年なのだが、沙姫が静香を「お姉さま」と呼ぶことに意外と違和感がない。姉体質と妹体質。この辺りは性格によるもので、体格によるものではないということだろうか。

 

「ほい、姫ちんも落ち着いたみたいだし、近くの玄室掃除して、そこでちょい話ししようぜ」

 

 誠一が、そう提案する。豊葦原学園は、あちこちに盗聴器、隠しカメラがあるらしい。そこまで密な監視網ではないらしいが、絶対に人に知られたくない話をするときは、ダンジョン内が一番安全だ。

 

「たたた、戦いですね。は、はい。頑張ります」

 

 今度は気負いでガチガチになった沙姫が、腰からショートソードを抜くが、その沙姫を後ろから静香が抱き留める。

 

「ほわ?」

 

 身長こそ女子としては高めだが、いかにも運動とは縁が無さそうな容貌の静香が、自分より背の高い沙姫を簡単に拘束する。

 

「あ、あの、静香お姉さま?」

 

 戸惑う沙姫をたしなめるように、静香は穏やかな声で言う。

 

「沙姫、貴女は最初は見学です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後流れは、おおよそ健太が覚えている原作のままだった。

 入った玄室にたまっていた十匹前後のゴブリンを、最初は麻衣が魔法で、次は誠一が忍術を駆使して塹壕(トレンチ)ナイフで、最後は残った数匹のゴブリンを叶馬が六角六尺金棒の一振りでまとめ屠り去った。

 

 その次元の違う戦闘力に、すっかり自信を喪失した沙姫が「修行して出直してきます」と涙目になってしまった。

 いくら沙姫が天才と呼べるレベルで才能があるとはいえ、現状は第一段階職である『剣士(ブレイバー)』のレベル1だ。すでに第二段階職についている誠一や麻衣、ましてや『逸脱規格(イリーガル)職業(クラス)である、叶馬とは比較にならない。

 

 そこからの流れも、大筋においては原作のままだ。

 代表して、誠一が沙姫に(ところどころ嘘も交えながら)説明する。

 自分たちは、ダンジョンで一度も死んでいない。その分、他の一年と比べるとレベルが高い。今後も誰も死なないように、やっていくつもりだ。

 

「あの、それは健太さんも、ですか」

 

 正式なパーティーメンバーではない、と名乗っている健太に沙姫は恐る恐る、そう聞く。

 すでに『戦士の不動心(マインドスイッチ)』をオンにしている健太は、動揺することなく答える。

 

「ああ。だからこそ、準メンバーとして加わっている」

 

「ほわあ」

 

 純真な沙姫は、健太も含めた全員に尊敬の視線を向ける。『魂魄結晶(ソルデバイス)』を『陰摩羅鬼(おんもらき)』に保存されていたせいで、沙姫はダンジョンで何度も殺された記憶がそのまま残っている。ダンジョンの怖さは分かっている。だからこそ、今日まで一度も死んでいないという言葉に、尊敬の念を受けずにはいられない。

 

 その後の説明も、主導するのは変わらず誠一だ。元々、一番情報に詳しいのも、口が上手いのも誠一なのだから、これは必然の役割分担である。

 ダンジョンで一度も死んでいない――『魂魄結晶(ソルデバイス)』を失っていない者は、ダンジョンの外でもスキルが使えるので、間違って使ってしまわないように注意すること。

 

 そして、『魂魄結晶(ソルデバイス)』を失った者は、「子供を作る能力を失い」、「寿命も極端に縮む」こと。

 

 後ろの二つは、沙姫だけではなく、他の叶馬達にとっても初耳だった。玄室内は、重い沈黙が支配する。

 その支配を破ったのは、誠一だった。

 

「健太は、知ってたっぽいな」

 

 その言葉に、皆の視線が健太に向けられる。

 

「ああ。外れて欲しかった推測が外れていないなかった、という感想だな」

 

 健太の言葉に、誠一はいぶかし気に首を捻る。

 

「推測でたどり着けるような、隠し方じゃねえと思うんだがな」

 

「冷静に見れば結構ヒントはあるぞ。一番わかりやすいのが、教師を始めとした学園の職員だな。男も女も極端な年配者はいないだろう? 少なくとも、定年間近という人を、見た覚えがない。それに女教師で産休を取ったという話は、聞いたことがない。女教師は、生徒だけじゃくて、男の教師や職員にも犯られてるはずなのに、な」

 

 ダンジョンダイブをしている間は、女子は生理も来なければ妊娠もしないことは、正式に告げられている。だが、女教師はダンジョンダイブをもうやっていない。それなのに、妊娠した女教師はいない。

 

 正確に言えば、学園の卒業生でも例外的に長生きする者も、それよりもっと数の多い例外で妊娠する者もいるのだが、そこを話すと話がややこしくなるだけだと、判断した健太はあえて、そう言い切った。

 

「…………」

 

 誠一の情報、その情報を裏付ける健太の情報に、一同はまた重く口を閉ざす。

 ちなみに深刻にとらえているのは、麻衣くらいで、静香は叶馬以外に興味がないし、沙姫は情報が多すぎて今一理解しきれていない。

 叶馬は、そもそも深刻になっていようがいまいが、外見からは分かりづらい。

 

「とまあ、この学園が胡散臭せえのは、理解できたと思う。だから、学園の思惑通りにいけば、俺たち普通科の生徒はあまりいい目は見られねえ。せっかく、叶馬と健太のおかげで、俺たちはその思惑から今のところ逃れられているんだ。用心を忘れず、このまま上手いことやっていこうぜ、って話だ」

 

 誠一は、重い空気を一掃するように、あえて明るく軽い口調でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 重い秘密の話が暴露されても、当面やらなければならないことに変わりない。

 気を取り直した沙姫は、一対一ならどうにかなるからやらせてくれ、と叶馬に頼み込む。

 玄室のゴブリンを一匹だけ残して全滅させるというのは、今の叶馬達にとってはさほど難しいことではない。

 

「イヤアアッ!」

 

「ギャッ!?」

 

 要望通り、ゴブリンとの一騎打ちに挑んだ沙姫は、見事その安物のショートソードで、ゴブリンの喉笛を切り裂いた。

 急所に一撃を食らったゴブリンは絶命し、その場にクリスタルだけを残し、瘴気に返る。

 

「やった。やりましたよ、旦那様、お姉さま!」

 

 今日初めて、満面の笑みを浮かべる沙姫に、叶馬と静香がねぎらいの言葉を返す。

 

「凄い」

 

「頑張りましたね」

 

 実際、叶馬の言う通りこれはかなり凄い。ここにいるゴブリンはレベル20のゴブリンだ。

 対して、沙姫は『超人(オーバーマン)』10+『剣士(ブレイバー)』1の合計11レベル。一騎打ちのお膳立てがあったとはいえ、天才のなせる業だ。

 

「うん、姫ちゃんの加入は大正解だねー」

 

「ありがとうございます、麻衣さんっ。ぜいたくを言えば、刀があれば、もっといけるんですけど」

 

 叶馬と静香に撫でられ、犬のように目を細めていた沙姫は、麻衣からも明らかに距離が縮んだ賞賛の言葉を受け、思わずそんな本音を漏らす。

 今も、ショートソードを無理して両手で使っている沙姫だ。実家で剣術をみっちり学んできた沙姫にとって、実力を十全に発揮できるのはやはり日本刀なのだろう。

 

 その言葉を受けて、叶馬と静香が目配せをして、何やら頷き合っている。

 

 原作を知っている健太としては、少し悩みどころだ。

 今、叶馬と静香は、お金を出し合って、沙姫に購買で売っている一番安い日本刀を買ってやろうとしている。

 これは、静香が仕組んだ叶馬へのちょっとした罠だ。食堂のテーブルを破壊してしまった叶馬は、現在静香に借金をしている。ここで、今回のダンジョンダイブの稼ぎを丸々沙姫の日本刀購入に当てれば、借金生活がさらに長引く。

 静香としては、それが狙いだ。『(せん)』という首輪をつけて、少しでも叶馬の行動を制限する。それに、金銭的に自分を頼るしかない状態の叶馬が、静香にとっては嬉しいのだろう。

 

 健太は自分がどうすべきか考える。

 叶馬を借金地獄から救ってやるならば、『銭』を貸してやるか、叶馬パーティーの休日に叶馬をダンジョンダイブに誘ってやれば良い。

 そうすれば、叶馬には感謝されることだろう。代わりに静香には恨まれること請け合いだ。

 

(考えるまでもなかったな。静観だ)

 

 叶馬に感謝されてもさほど嬉しくないし、静香に恨まれるのはとても怖い。

 

「よし、それじゃ次は俺が全部のゴブリンをひきつけるから、沙姫さんは攻撃してみよう。大丈夫、そっちには一切攻撃はいかせないから」

 

 叶馬と静香の借金問題に結論を出した健太は、頭を切り替えて沙姫にそう提案する。

 

「はい、よろしくお願いします、健太さん」

 

 一匹倒したことで、恐らく沙姫のレベルはひとつくらい上がっているはずだ。今の沙姫ならば、健太にヘイトが集まっている状態のゴブリンを倒していくことは、さほど難しくないはず。後衛組と違い、沙姫には手足をへし折って達磨にしたゴブリンのとどめを刺させるより、こちらの方がより向いたパワーレベリングになるはずだ。

 

 事実、健太には見えないが、この日のダンジョンダイブを終えた沙姫のレベルは、原作のそれよりわずかに高かった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。