※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

32 / 142
第三十話 仲間の転職、自分の転職

 ダンジョンダイブにおける最重要施設とも言える『聖堂(カテドラル)』は、学園の比較的外れたところにある。

 見た目は、白亜の礼拝堂だ。そこまで大きな施設ではないが、重要度は学園屈指だろう。なにせ、転職(クラスチェンジ)は本来ここでしかできないのだ。叶馬(とうま)の『情報閲覧(インターフェース)』や、健太(けんた)の『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』は、例外中の例外だ。

 四月の中旬という今の時期、『聖堂』を訪れるのは主に一年だが、聖堂を遠巻きにしている上級生の姿がチラホラ見える。その大半は、女子生徒だ。

 彼女らは、中堅倶楽部のスカウト、青田買い要因だ。一年の場合、転職(クラスチェンジ)に成功したか失敗したかは、出て来た時の表情を見れば大体わかる。

 ウキウキ軽い足取りで帰ろうとする一年生(主に男子)に声をかけるのだ。「ねえ、君倶楽部に興味ない?」と。

 

 当然、健太と(らん)の二人にも最初はそんな視線が向けられていた。しかし、『聖堂』に入っていくのが蘭で、健太が外で待っているのを見てすぐに興味を失う。

 二年女子に、今更興味はない。もしかすると、彼女たちを派遣している倶楽部の幹部(男子)達の中には、蘭に興味を示す者もいるかもしれないが、そんなライバルを招き入れてやるほど彼女たちもお人好しではなかった。

 

 

 

 

聖堂(カテドラル)』の使用は基本的に一人ずつとなっている。『聖堂』の中の半地下の床一面に多重円や不可思議な幾何学模様が細かい石で刻まれており、そこに等間隔に十本の石柱が立っている。転職(クラスチェンジ)可能な者が近づくと、導くように床の幾何学模様が光り、その光の到達点にある岩に触れると、転職(クラスチェンジ)可能という仕組みらしい。

 

 蘭が一人で『聖堂(カテドラル)』に入っている間、健太は入り口で待っていた。これ位距離が離れても、健太の脳裏には蘭の転職可能な職業一覧が浮かんだままだ。蘭のためを考えれば『聖堂』に入らず、健太が蘭の希望通りの職業を選んでやればよいのだが、それをやるには蘭に『職業安定の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』について教える必要がある。

 それは流石に不味い。健太のチート能力については、叶馬達にすらまだ明かしていないのだ。

 だから、健太は蘭と共にこうして『聖堂(カテドラル)』にやってきた。入り口から一応、蘭の様子は見える。どうやら、蘭はさながらアミダクジのように光る幾何学模様に導かれ、一つの岩のところへと歩み進んでいる。

 そして、蘭がその岩に手を触れた時、健太の脳内の情報に変化が起こった。

 

【蘭は『測量士(サーペイヤー)』に転職(クラスチェンジ)しようとしています。よろしいですか?

 

 はい

 

 いいえ】

 

 確か、蘭は『案内人(パスフェンダー)』か『書記(レコーダー)』か『使役者(テイマー)』を希望していたことを思い出した健太は、試しに『いいえ』を選択してみる。

 

 すると元の蘭の名前と、転職可能職業一覧が出る状態に戻った。

 健太は頭の中で、『案内人(パスフェンダー)』をクリックする。

 

【蘭を『案内人(パスフェンダー)』に転職(クラスチェンジ)させます。よろしいですか?

 

 はい

 

 いいえ】

 

 

 今度は『はい』を選択する。すると、『聖堂』の中の光も消えた。

 

 

 

 

「ご主人様、蘭は『案内人(パスフェンダー)』になれました!」

 

 嬉しそうに報告する蘭に、健太は困ったように笑いながら祝福の言葉を返す。

 

「あー、良かったですね、蘭先輩。その、口調が」

 

 健太の指摘に、口調を取り繕うことを忘れていた蘭は、わざとらしく咳ばらいをすると、

 

「っと、ゴメン。ちょっと間違えちゃった。でも、夢みたい。私が二年の四月中に第二段階職になれるんなんて」

 

 そう言って、言葉通り夢を見るようなふわふわした目で、健太に笑いかけた。

 豊葦原学園では、大体の目安として、一年で第一段階職、二年で第二段階職、三年で第三段階職になることを、「落ちこぼれではない」ラインとしている。

 それに当てはめて考えると、一年の十月に第一段階職になった過去の蘭は劣等生より、二年の四月に第二段階職になった今は優等生よりと言える。

 それも、本気でダンジョン攻略を目指している倶楽部なら、倶楽部に一人は欲しいと言われる『案内人(パスフェンダー)』だ。運が良ければAランク倶楽部に潜り込むことも、夢ではないだろう。

 今の蘭はそんな気はないし、あったところで健太が離さないだろうが。

 

 その後、上機嫌な蘭は健太の腕をしっかり抱えて歩く。

 

「え? 健太君、真っすぐ『白鶴(はくつる)荘』に来てくれないの?」

 

「はい、自分の寮に戻って一度身体を綺麗にしないといけませんから」

 

 学園には、セックスに慣れ過ぎて、行為の前と後は身綺麗にするという基本を忘れている者も多いらしいが、健太は今のところ省略する気にはなれない。

 

「もー、それならせめて夕食はこっちで一緒に取ろう」

 

「え? いや、でも食べた後に歯を磨かないといけないですし」

 

「道具一式こっちに持ってきてるよね。洗面所くらいは、使っても大丈夫だよ」

 

 そこまで言われれば、健太としても蘭と一緒にいられる時間が延びることを、拒絶する理由はない。

 

「分かりました」

 

「うん、待ってるね」

 

 蘭の笑顔に、健太は自分がもう彼女に対する独占欲を絶対に消せないことを確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。『白鶴(はくつる)荘』の蘭の部屋では、裸でベッドの上で仰向けに寝そべる健太の上に、同じく裸の蘭がうつ伏せに覆いかぶさっていた。すでに、二度、健太は蘭の(なか)に精を放った後で、未だ硬度を失わない健太のペニスは入ったままである。

 今夜は蘭の希望で、騎乗位で蘭主導のセックスだったのだが、二度で力尽きた蘭はそのまま健太の胸板の上に倒れこみ、人なれした猫のように健太の胸から首筋にかけて顔を擦り付け、甘えた声を上げている。

 

「……もう、こんなの気持ちよすぎて、全然動けない」

 

「俺もです、蘭先輩の体。全部、気持ち良い」

 

 うっとりと男の自尊心を満たす言葉を漏らす蘭に、健太はそう素直な感想を言って、その言葉を証明するように背中に回した両手で蘭の体をゆっくり撫でる。

 

「んん……」

 

 弱い刺激でも、愛おしいご主人様から刺激だ。隷属状態の蘭にはたまらない快楽となる。あまり続けると、このまま三回戦が始まってしまうと感じた健太は、鉄の意思で手を止めると気になっていたことを蘭に聞く。

 

「ところで今さらですけど、ルームメイトの方は今日も大丈夫なのですか? 昨日は話がついていたんだと思いますけど」

 

 昨晩は、蘭の方から「交渉がしたい。支払いは体。場所は私の部屋」と言われていたから、何も聞かなくともルームメイトとは話がついていると推測できた。だが、今夜は予定にないはずだ。

 そんな健太の懸念に、撫でるのを止められた蘭は、切なそうに全身を健太の体に擦り付けながら、

 

「ああ、大丈夫よ……優梨愛(ゆりあ)なら……五日部屋を開ける約束だ、から……」

 

「五日? ンッ、なんでそんなに?」

 

 上に載っている蘭が体をゆすると、蘭の中に挿入されいている健太のペニスにも、当然微妙な刺激が伝わる。その動きを止めようと、両手で下から蘭の豊かな尻を掴むのだが、その手のひらで感じる感触に性欲はむしろ高まる。このまま、尻を掴んで下から思い切り突き上げたい。その衝動と戦っている健太だが、敗北は時間の問題であることは、確信していた。

 

「や……約束では、五日エッチさ……させてあげるってなってたでしょ? あれが……大体コボルトやゴブリンの『モンスターカード』の相場なの。だから、大体その辺りで済ませようと思って……」

 

 だから、最初からルームメイトには五日間部屋を使わせてもらう交渉をしてあるのだという。

 

「そうなんですか」

 

 つまり、五日間――今夜を含めて後四日は、この部屋で蘭と好きなだけセックスが出来るのだ。その想像が決定打だった。

 

「あ? あん、ん、健太君、すご……ああ! ご主人様……!」

 

 健太は、蘭の尻をがっちりと両手で掴まえ、夢中で下から腰を使い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

 ――第『(さん)』階層、『既知外(きちがい)』領域――

 

 

 

 

 蘭は無事『文官(オフィサー)』の第二段階職である、『案内人(パスフェンダー)』となった。最高到達階も十階と、二年生一学期中間試験でクリアしなければならない八階を超えている。そもそも、普通のメンタルをしている生徒は、男女区別なく毎日はダンジョンダイブをしないらしい。

 健太も元々は、二日に一回のダンジョンダイブを予定していた。しかし、叶馬との一騎打ちに備えて強くならなくては命が危ないこと。蘭のレベリングという、自分のレベリングにはあまり役立たないダンジョンダイブの日が出来てしまったこと。

 

 そうした理由から、蘭のレベリングを手伝う必要がない本日、健太(けんた)は一人でダンジョンダイブを敢行していた。

 

「《祓え》」

 

「ギイィ!」

 

 健太の『除霊(エクソシスム)』を食らったゴブリンは、なんの反応もせず、そのまま健太にこん棒で殴り掛かる。

 健太はこん棒の一撃を丁寧に左腕に装着した丸盾で受け流し、右手に持つ小剣でゴブリンを屠った。

 

「やはり無意味か」

 

 いつも通り、ダンジョンダイブ中は『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太は、そう抑揚のない口調でつぶやく。

 今健太が試したのは、『祓魔士(エクソシスト)』のスキルである『除霊(エクソシスム)』だ。ダンジョン内では人間すらも肉体と魂魄を逆転させ、魂魄がむき出しになった状態とのことだったので、普通のモンスターにも効果があるのではないかと思ったのだが、やはりそこまで上手い話はなかったようだ。

 

 健太は、『祓魔士(エクソシスト)』に転職(クラスチェンジ)していた。

 現在までに健太が習得した職業は、『遊び人(ニート)』『盗賊(シーフ)』『癒し手(ヒーラー)』『文官(オフィサー)』『術士(マギ)』『職人(クラフター)』『戦士(ファイター)』『盾士(シールダー)』『剣士(ブレイダー)』そして、『騎士(ナイト)』である。

 第一段階職が九つに、第二段階職が一つの職業(クラス)を、転職(クラスチェンジ)可能なレベルまであげて、現在は十個目の第一段階職である『祓魔士(エクソシスト)』のレベルアップに勤しんでいるところだ。

 

 今回ダイブしたのは、同じ第三階層『既知外(きちがい)領域』でも、(らん)のパワーレベリングに使った『既知(きち)領域』近くではなく、もっと離れた領域だ。

 コボルトは一切存在せず、いるのはゴブリンとその『逸脱個体(オーバーボーダー)』だけ。必然的に『逸脱個体』に遭遇する確率もグッと上がる、今の健太にとっては、色々と都合の良い空間である。

 

 その、コボルトのいないはずの空間で、今健太が絶滅させたゴブリンのクリスタルを集めて戻ってきたのは、紛うことなきコボルトである。

 

「オン!」

 

「よし、ちゃんと拾って来たな。偉いぞ、ボンド」

 

 健太がボンドと名付けたそのコボルトは、言うまでもなく健太が『モンスターカード』から呼び出した召喚モンスターである。

 すでにこの辺りの敵は、今の健太ならば一人でも敵ではないし、ジュゲムは本格的にレベル上限に引っかかったようだ。経験値がもったいないのでジュゲムを召喚しない代わりに、こうして新たにコボルトを育て始めたのである。

 ちなみにボンドと名付けたこのコボルトカードの能力は『従順(アメナブル)』。蘭に上げた『器用(デクステリティ)』ほどではないが、当たりの能力だ。

 

 蘭から「コボルトは、盗賊系にクラスチェンジしやすい」という情報を得た健太は、何とかこのボンドをソロパーティー用の『盗賊(シーフ)』に育てようとしている。

 なにせ、『既知外領域』を『文官』でもある健太が探索しているのだ。これまで発見した宝箱の数は(『周回レベル上げ(タイムターナー)』の時を除いでも)、二十近くある。健太はその全てをスルーしてきたのだ。ソロである健太にとって、宝箱の罠に引っかかるというのは、高確率で死を意味するからだ。

 一時的に体がマヒする、暗闇のバッドステータスに罹ってしばらく目が見えない。パーティーならちょっとした足止め程度のことが、ソロでは死に直結する。その危険と天秤にかけ、これまで全ての宝箱を諦めてきていたのだが、『戦士の不動心(マインドスイッチ)』をオフにする自室では、ゴロゴロ転がりまわりたいくらいに、未練があった。

 

 ボンドが目論見通り、盗賊系にクランチェンジしてくれることを祈りつつ、ひとまず今は自分のレベル上げを優先する。

 

「『祓魔士(エクソシスト)』は現状、『霊視(スピリチュアル・ヴィジョン)』以外のスキルは使い道がないからな。早めに次の職に移るべきだ」

 

 ちなみにボンドに持たせている短剣(ダガー)は、購買で購入してきたものだ。流石に、三度も『匠工房(アデプトワーカーズ)』でモンスター用の武器を購入したら、純真な蜜柑(みかん)部長でも誤魔化せないかもしれない。凜子(りんこ)副部長ならほぼ確実に怪しまれる。

 ジュゲムも同時に召喚して、ジュゲムのサブウェポンである小剣を使わせることも考えたのだが、ジュゲムの武器をボンドが持ったまま、ボンドがクラスチェンジした時、不具合が起きないか保証がなかったため、やめておいた。

 

「ひとまず、習得しやすい第一段階職を総ざらいすべきか。一度、第二段階職を一つぐらい増やすべきか。悩みどころだな」

 

 健太を悩ませるのは、『盾士』『剣士』を習得したことで、新たに転職可能な職業が、第一段階、第二段階ともに増えたからだ。ガンガン職業を重ねて強くならなければ。

戦士の不動心(マインドスイッチ)』をオンにしていてもなお、今の健太は強くその思いを抱いている。

 叶馬との一騎打ちに備える。叶馬に巻き込まれることに備える。以前はその二つが、強くなる理由だったが、今は別な理由がある。

 

 蘭を守ることのできる力を蓄える。

 

 そのためならば、『周回レベル上げ(タイムターナー)』で第二段階職を一日一つずつ習得していくことも辞さない、と普段の健太は意気込んでいる。

戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている今の健太は、さすがにリスクが分からないままの乱用は控えるべきとは考えているが、問題がないのならば、ガンガンやるべきだとも考えている。

 

「よし、行くぞ。ボンド」

 

「オン!」

 

 健太は、コボルト一匹を共に引き連れ、次の玄室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。