敵を倒すことで
結果、健太は探索が進めば進むほど、戦闘が楽になっていった。こっちはみるみる強くなるのに、敵の強さは変わらないのだから、当たり前の話だ。おそらく、今の健太ならば、『
そうして、順調にゴブリン達と相対し続けてきた健太は、少々予想外の出来事に、掃討の終わった玄室で足を止めていた。
「なんでこのタイミングで、もう
脳裏に浮かぶ、『
「なぜだ? あれからまだゴブリンを何十匹か倒しただけだぞ?」
健太の記憶が正しければ、原作の主人公達は、最初の
そのレベル20のゴブリンを、健太は『
首を傾げる健太だったが、これに関しては単なる健太の勘違いである。
原作主人公たちは、皆才能の塊だ。だから、
20レベルのゴブリン如きでは、いくら倒してもなかなかレベルアップしないのも当然である。
健太が見落としていることは、もう一つある。その時の叶馬達は、四人でダンジョンダイブを行っていたということだ。この世界のダンジョンは、何人で倒しても全員に同じだけ経験値が入るほど親切な設定になっていない。基本、とどめを刺した者に経験値の大半が行く。
だから、叶馬達は仕留める役を一人に偏らせず、経験値を四人で分けている。一方、健太は一人だ。
第一段階職と第二段階職のレベルアップに必要とされる経験値の違い。一人と四人の人数の違い。二つの要素を鑑みれば、健太がこの時点で
だが、もう一つの疑問は、確かにこの世界の常識に照らし合わせれば、不可解だった。
「しかも、表示されるのは、『
普通ならば、第一段階職のレベルが20に達すれば、レベル20になった第一段階職と同系統の第二段階職が解放されるはずなのだ。健太の場合『
「まさか、才能がなさ過ぎて、第二段階職になれないのか?」
その可能性に思い至った健太は、淡々とした口調で自分の可能性をそう評価する。
原作で、そのような描写があったことを思い出したからだ。ちゃんとダンジョンで戦っているのに、なぜかノービスのまま『
健太には辛うじてアーキタイプの第一段階職になる才能はあったが、第二段階職になる才能はなかった。この可能性を否定する材料は、現状ではない。
健太が、素の精神状態でこの考えに至っていたら、この瞬間恐慌状態に陥ってもおかしくはない、お先真っ暗な可能性である。
『
「今これ以上考えても益はないな。とりあえず、『
そう言って、健太は(推定)20レベルまで育てた『
当初の予定では『
傷は完全に癒えているのだから、今は『
流石に『
『
第一段階アーキタイプ六職のうち、『
その後、数度の戦闘を経て、健太の予想は良い方向に外れた。
「本当に俺は弱くなってるのか? 正直強くなっているようにしか思えんのだが」
たった今、大きめの玄室で、ゴブリンリーダーが率いる総勢七匹のゴブリンを短時間で殲滅した健太は、息も切らず首を傾げていた。
『
叶馬の『
だから、健太は前世の知識と、現世の知識と、現在の体感を組み合わせて、正解を導き出すしかないのだが、現状は情報が足りな過ぎて、推測すら立てられない。
「今は、気にしないに限るか」
健太はそう自分に言い聞かせると、探索を再開した。
その後も、健太の戦闘はいっそ肩透かしと言っても良いくらいにひたすら順調だった。
ゴブリン達がいる玄室に、通路から一気に『
強くなることで、レベルアップはさらに加速していく。リスクを考えて、最初はゴブリンの数が少ない小さめの玄室を探して通路をウロウロする時間が長かったが、強くなればもっと数の多い大きめの玄室もターゲットになる。結果、通路をうろつく時間が減り、撃墜数はうなぎ上りになっていく。
そろそろ、盗賊も転職可能なレベルに達するのではないか。そんなことを考えながら通路を歩み進んでいると、健太の耳が足音をとらえる。
「…………」
健太は即座にその場で足を止め、最大限に警戒を高める。
ゴブリンの大半は玄室にいるが、まれに通路を歩いていることもある。だから、通路で足音を耳にすること自体はそこまでおかしくはない。だが、これは明らかにおかしい。
まず第一に、足音が一つしか聞こえない。これまで健太が狩ってきたゴブリンは、最低でも三匹の群れだった。瘴気濃度が薄い空間にいるレベル1ゴブリンは単独行動が主だが、瘴気濃度の濃い空間にいる高レベルゴブリンは群れで行動するはずなのだ。
第二に、足音しか聞こえないというのがおかしい。ゴブリンは静かにするという機能がないのか、常にギャアギャアと意味不明な喚き声をあげているものだ。
そして第三に、足音のリズムがありえない。ゴブリンは小さい。足が短い。だから、ゴブリンの足音はもっと小刻みなのだ。これは、二足歩行の生き物だとすれば、ゴブリンよりもずっと歩幅の広い生き物の足音だ。
(まさか、『
健太は、原作の知識から、一つの可能性を導き出し、警戒をいっそう高める。
『
職業ではないが、それは一種のクラスチェンジと言っても良いだろう。ゴブリンの場合は、ゴブリンキング、ゴブリンロード、ゴブリンヒーロー等が確認されているが、それらは大概二メートルを超える筋骨隆々とした体躯を誇り、その見た目通り、ノーマルのゴブリンなど比較にもならない強さを誇る。
今の健太が一人で相手取るのは、相当分が悪い。
(逃げるか? いや、駄目だな)
逃亡が可能ならば、即座にそうするべきなのだが、それでも健太がその場にとどまっているのは、『
下手に逃亡する姿勢を見せたら、逆に相手を調子付かせる可能性がある。ゴブリンは強いものに弱く、弱いものに強い性質がある。『
「…………」
だから、健太はその場でとどまり、近づく対象を待つ。
ダンジョンの中は『
緊張を解かず、警戒を最大にして、近づいてくる影がはっきりと見えるところまで、待つことしばし。影の正体が判明する。
豊葦原学園の制服の上から、両腕と上半身をピッタリとした黒くて薄いゴムのような布地で覆った男。
それは、原作主人公、
「!!」
それを認識した次の瞬間、健太はゴブリンスピアを投げ捨て、『