『既知外』領域での戦闘が推奨されない理由の大半を占めるのが、『超越個体』の存在である。
単に「出没するモンスターが階層規定値の最大になっている」、「モンスターの数が多い」だけならばむしろレベルが上がった者にとっては「美味しい狩場」になるはずだ。
それなのに、『既知外』領域を主戦場としている者が極めて少ないのは、『超越個体』の存在が誰にとっても脅威だからだ。
『超越個体』は、その名の通り本来の種族レベルや階層規定値を超越している個体である。そのため、『超越個体』とひとくくりにしても、その幅は広い。なり立ての『超越個体』と永きを生きる『超越個体』では、ミツバチとオオスズメバチ以上の差がある。
その個体は、この辺りを彷徨う『超越個体』の中では出飛びぬけて古株だった。元はゴブリンだったのだが、永きを生きる間に複数回の突然変異を起こし、今に至る。
身長百九十センチ前後というのは、ゴブリン系の『超越個体』としては小柄な部類だが、その体はまるで鋼を編んだような強靭な筋肉で形成されている。
その体に秘めた膂力は、オーガーやトロールを超え、その敏捷性は雪狼や砂岩豹に勝る。
そして永い年月の実戦で磨きあげた剣技、戦技は熟練の戦士を凌駕するだろう。
まさに、『超越個体』。放浪する脅威。遭遇する者にとっては具象化した絶望。
そんな『ゴブリン・レジェンダリー・ヒーロー』は、現在四肢を切り落とされて、絶望の鳴き声を上げていた。
「ヒギィ…………」
「危ないな」
仰向けに倒れたゴブリンの『超越個体』――『ゴブリン・レジェンダリー・ヒーロー』の頭の側に立つ健太は、淡々とした口調のまま小剣の切っ先を、その口に差し込む。
「ギッ! ヒギッ! フガッ!?」
口内が切れたのか、以後呼吸するたびに赤い液体を吹き出すようになったが、まあ些細なことだ。
モンスターの中には声さえ発することが出来れば、発動可能なスキルを有する個体も存在するだ。油断は禁物である。
健太は、四肢を失って倒れた『ゴブリン・レジェンダリー・ヒーロー』の口の中に小剣を突き刺し、油断なくその様子を注視しながら、今日のゲスト二人に声をかける。
「運よく殺さずに、無力化出来ました。風音先輩、竹海先輩。今のうちにとどめを」
健太の言葉に、本日のゲストである二年生女子二人は表情の抜け落ちた顔を見合わせる。
「ええと、とどめと言われても」
「これ、私たちの武器で歯が立つのかな?」
風音の片手槍も、竹海の洋刀もそこまでの業物ではない。
「大丈夫です。思い切りやれば、ノーダメージということはありません。少しずつでもダメージを積み重ねて、先輩たちでとどめを刺してください」
健太の言葉を受けて、風音と竹海は恐る恐る『超越個体』に近づき、武器を突き立てる。
「うわ、固っ!?」
「これは、手ごわい。いや、無力化しているモンスターに対する表現としては、おかしいけどね」
風音も竹海も、この一年で格上と戦って『死に戻り』せずに戻ってきた記憶を、多少は有している。その記憶の中でも、ここまで固いモンスターは存在していない。まともに戦えば、自分達では勝ち目がないどころか、ダメージを与えることすら不可能なモンスターであることが分かる。
「ええい、こうなったら。せーのー、《おりゃあ》!」
途中で業を煮やした風音が、『戦士』の攻撃スキルである『強打』を使い、槍を振り下ろす。
「ヒギッ!」
「おっと」
これは流石に効いたのか、悲鳴を上げる『超越個体』は、口に突っ込まれている小剣で舌を斬る。
「良いね、『戦士』は。攻撃スキルがあって」
一方、竹海は羨ましそうにそんな愚痴を漏らしながら、左右の洋刀を何度も何度も『超越個体』の体に突き立てている。竹海が言っている通り、『遊び人』には直接攻撃の役に立つスキルは存在しない。地道に攻撃を繰り返すしかない。
「俺がこれ以上ダメージを与えるのは好ましくないのだが」
動いた拍子に『超越個体』の口内を斬ってしまった健太は、ポツリとそんな言葉を漏らす。とはいえ、そこまで目くじらを立てるほどの問題でもない。
元々、健太が今使っている小剣は、ゴブリン装備を元に『匠工房』で作り直してもらったものだ。風音の片手槍や竹海の双洋刀と比べて特別優れているというほどのものではない。
健太が力いっぱい突き込むのならばともかく、口に突っ込んだ状態で暴れたくらいでは大したダメージは与えられないだろう。
先ほど『超越個体』の四肢を一瞬で斬り飛ばしたのは、健太が自分に『筋力増強』と『敏捷増強』を、小剣に『攻撃力増強』をかけ、攻撃時には『強打』と『斬撃』を同時に発動させていたから出来たことだ。
『強打』は『戦士』の攻撃スキルで、「武器を問わず一撃の攻撃力を上げるスキル」であり、『斬撃』はその『剣士』版で、「剣を用いた攻撃の『切り裂く力』を上げるスキル」だ。
この二つのスキルを重ねることができることに気づいたのは、ちょっと前のソロダイブでの実験時だったが、なかなか使い勝手が良い。
『戦士』と『剣士』はどちらも第一段階職のため、『強打』と『斬撃』の両方が使える者は健太以外には、恐らくいないだろうが。
そうしているうちに、どうにか『ゴブリン・レジェンダリー・ヒーロー』はこと切れた。
死体はすぐに瘴気へと返り、胴体があった場所に大きなクリスタルと鞘が、右腕があった場所に曲刀が残る。
「残ったのは、曲刀か。盾だったらよかったのだが」
『匠工房』製の『呪い避け手袋』を填めた手で、鞘に納めた曲刀とクリスタルを拾い上げながら、健太はそう呟く。
このゴブリンの『超越個体』は、右手に曲刀、左手にヒーターシールドという武装だった。健太としてはその盾を狙っていたのだが、希望はかなわずドロップしたのは曲刀。
健太の主武器は、小剣。最近は、雑魚ちらし用の副武器として大剣を自分のモノしようとしているところだ。ここで、さらに曲刀に浮気できるほど、健太の戦闘センスは優れていない。
これも購買で売却コースか。そう思った健太はふと視線をずらすと、竹海がこちらに熱い視線を向けていることに気づく。
そう言えば、竹海は洋刀の二刀流だ。武器のジャンルとしては一応合う。
「竹海先輩? 欲しいのでしたら、お譲りしますか?」
健太の申し出に、竹海は驚きで一瞬言葉に詰まる。
「っ良いのかい?」
竹海の価値観で測れば、この武器は「パーティー崩壊の引き金」になりかねないレベルの貴重品だ。
無造作に譲るという健太の言葉信じられない。
今回のダイブのリーダーは健太だし、実力的にもこの四人の中で健太だけが突出している。しかも、この曲刀をドロップした『超越個体』は、事実上健太一人で倒したのだ。
これを譲ってくれるというのは、気前が良いを通り越している。
「ええ。使える人が使った方が良いでしょう」
健太にとって、風音と竹海は、大切な蘭の友人だ。少しでも好印象を持ってもらいたいという打算もある。
「ただ、失礼ですが、竹海先輩が使われるには、少々長さも重さもオーバーしているのではないかと思うのですが」
そう言いながら、健太は鞘に仕舞った曲刀を竹海に手渡す。
『匠工房』の杏が作ってくれた『呪い避けの手袋』は優れモノで、呪いを防ぐだけでなく、呪いの装備に触れた場合には黒く変色するという機能もついている。
手袋の色が変わらない時点でこの曲刀が呪いのアイテムではないことは確定している。
「ありがとう、健太君。大丈夫、使いこなしてみせるよ、絶対に」
竹海はそのまま健太に抱き着くのではないかと思うほどに喜びを露わに、受け取った曲刀を両腕で抱くのだった。
予定外の『超越個体』というボーナスタイムに遭遇したが、今日の予定はまだ消化しきっていない。
次の玄室では、当初の予定通り、蘭がゴブリンの相手をする。
もちろん、『文官』である蘭が武器を持って直接戦うのではなく、戦うのは蘭が『具象化』のスキルで召喚するモンスターだ。
小剣を構えたコボルト――コボルト『遊撃手』は、五匹のゴブリンを相手に一方的に押している。
「シッ!」
「ギャッ!?」
「ゴオ! ゴ?」
高速で動くコボルト『遊撃手』が一匹のゴブリンの腹に小剣を付き刺し致命傷を与え、別なゴブリンがコボルト『遊撃手』の背中にこん棒を振り下ろしたときはすでに、その場から消え去っている。
移動速度、攻撃速度、判断速度。すべての速度があまり違う。後ろから見ていても、援護の必要がないと確信できるほど一方的だ。
それでも、万が一、コボルト『遊撃手』を抜けて蘭に直接攻撃してくる不届きなゴブリンを警戒して、健太は蘭の側に控えてる。
そのさらに後ろに立つゲストの一人、風音が少し躊躇した後、思い切ったように口を開く。
「ねえ、健太君。その、少し質問しても良い?」
「はい、構いません」
健太は油断なく視線は戦闘状況と蘭に向けたまま、風音にそう了承の意を伝える。
その言葉を受けて、風音は勢い込んで問う。
「蘭は「カードを育てた」って言ってたの。ということは、あれ最初はレベル1のコボルトだったってことよね? レベル1コボルトじゃ、この辺りのゴブリンにはどうやっても歯が立たないと思うんだけど、どうやってレベル上げさせてあげたの?」
「俺がゴブリンを無力化、具体的には殺さないように四肢を切断して、とどめだけ蘭のコボルトに刺させました。ようは先ほど、『超越個体』にやったあれのくり返しですね」
特に秘密でもないため、健太は正直にそうやり方を明かす。
その答えを予想し、期待していた風音は興奮を抑えきれず、
「そ、それならさ、最初に言ったよね? 私たちのレベル上げを手伝ってくれるって。さっきも、やらせてくれたし。それってひょっとして」
「はい。お二人に異論がなければ、残り時間は、同じようにしようと考えています」
健太の答えに、風音の顔がパアと明るくなる。
その装備から健太が推測した通り、風音は戦闘職であってもあまり強い方ではない。同時に、男に依存することにほとんどためらいのない気質でもある。
一応風音もCランクの倶楽部に所属しており、そこの男子がある程度面倒を見てくれてはいる。だが、あくまである程度だ。健太がやっているような、「モンスターを完全無力化してとどめだけ刺させる」というのは、ある程度の域を超えている。
原作で、叶馬も誠一も女子のレベリングを助けてやるときは、このような手段を取っているので当たり前の行為としているが、学園の基準では大サービスと言っても良い扱いだ。
「あはっ」
満面の笑みを浮かべる風音の健太を見る目は、すでに「優良物件」を見つけた目だった。
コボルト『遊撃手』が最後のゴブリンを仕留めたところで、健太は一度視線をゲスト二人に向ける。
冷静な観察眼で、二人が今の提案にそれぞれどのような思いを抱いたのか見て取った健太は、予定になかった提案を重ねる。
「無論、ご希望されるのでしたら、無力化してとどめを刺すだけではなく、戦闘のお手伝いをする形でも構いませんが」
その提案に対する二人の反応は、劇的であり、対照的でもあった。
「遠慮しまーす」
と力づくよく首を横に振る風音と、
「是非、お願いする」
と、今日一番の笑顔を浮かべる竹海。
戦闘を忌避する『戦士』の風音と、自己研磨のため出来るだけ戦闘経験を積みたがる『遊び人』の竹海。
前者は学園女子で珍しくないが、後者は極めて珍しい存在である。
ゴブリンを殺さずに無力化することに関しては、すでに熟練の域に達している健太である。
「よし、こんなところか」
次の玄室に屯してた十数匹のゴブリンを、先ほど同様『挑発』で引き寄せて、今度はとどめを刺さずに四肢を斬り飛ばしていく。
当たり前が、ただ仕留めるよりも必要な手数が増える上に、手加減も求められる。
だが、一連の作業を健太は、最初の玄室でやった全滅と大差ない時間で終える。
「風音先輩。では、とどめを刺してください」
「はいはーい」
すっかりご機嫌な鼻歌交じりに、片手槍でプスプスと止めを刺して回る風音の側で、健太は万が一に備えて警戒を怠らない。四肢を失っているゴブリンの反撃などまずありえないと思うが、念のためだ。
その様子を後ろで見ていた竹海は、終始ニマニマ笑っている蘭に、わざと聞こえるように大きくため息をつく。
「はあ。それで、健太君はいつもあんな感じなのかな?」
「うん、いっつもあんな感じ。強くて、優しくて、可愛くて、格好いいの」
「はいはい、ごちそう様」
目をハートにする友人を、竹海はあきれたように手をヒラヒラさせてあしらうが、正直蘭がそうなってしまうのも分かる。
これまで判明した部分だけでも、健太は優良物件を超えた、夢の具現化だ。
まず何といっても強い。ゴールデンウィーク前の一年としては、破格を通り越して、前例がない強さと言っても良い。強力な『逸脱規格』職としか思えないほどの強さだが、それにしては『規格外』特有の精神的な危うさ、アブノーマルさが皆無だ。
ダンジョンの外では、学園に適応できないのではないか、と心配になる程に温厚なのに、ダンジョンダイブ中は安心して寄りかかれる、安定した冷静さを発揮する。
「これは、最後の問題さえクリアできたら、私も跳ぶこむべきかな。ねえ、蘭?」
「なに、竹海?」
「健太君は、自分の倶楽部のメンバーを募集しているんだったね。それは部員兼『健太君のパートナー』希望でもオーケーかな?」
「大歓迎」
自分ひとりでは健太を繋ぎ留められないかもしれない。そんな不安を常に抱いている蘭は、「頼もしい援軍」の出現に、笑顔で即答した。
次の玄室は小さく、中にいたゴブリンはほんの四匹ほどだった。
これ幸いと、健太は『挑発』も使わず、ただ身体能力に任せてゴブリンに高速で接近し、三匹のゴブリンの四肢を斬り飛ばす。
「ヒッ?」「ヒギッ!?」「ギャア!」「……ヒギッ!」
自分の置かれた状況も理解できないまま、床に転がり悲鳴を上げる三匹のゴブリン。それから、少し遅れて唯一五体満足なゴブリンが健太の存在を認識し、悲鳴を上げて逃げようする。
「駄目だ」
だが、健太は素早くその逃走進路に立ちふさがると、ダメージにならない程度に、軽く左腕の方形盾でゴブリンを押す。
「ヒギャッ!」
たまらずゴブリンは一メートルほど後ろに飛ばされ、転ぶ。
「最初は一匹からです。竹海先輩、お手並み拝見です」
「分かったよ、健太君。お膳立て、ありがとう。ちょっと過保護すぎる気もするけどね」
竹海は口元に苦笑を浮かべながら、大きな胸の下で両腕を交差させるようにして、両腰から左右の手で洋刀を抜き放つ。流石に、譲ってもらった曲刀をぶっつけ本番で使うつもりはないらしく、そちらは床に置いていく。
やはり竹海は二刀流のようだ。動きやすさを重視しているのか、竹海の防具は学園女子の制服に、両腕に籠手、下半身に薄手のレザーパンツを付け足しているだけだ。
学園女子の制服はスカートが短いので、そのあたりを考慮してのレザーパンツなのだろうが、肌の露出は激減しているのに、尻から足のラインがピッチリと浮き上がって、かえって艶めかしい。
左右の洋刀の切っ先を外に開いた体勢で、竹海は素早くゴブリンとの距離を詰める。
「ギッ!」
対するゴブリンの武器は短いこん棒が一本切り。身長でも腕の長さでも武器の長さでも、竹海が大きく勝っている。
「はっ!」
そのリーチ差を生かす様に、竹海は巧みな歩法で自分の攻撃だけが届く距離を保ちながら、左右の洋刀でゴブリンに切りつける。
ゴブリンもこん棒でどうにか身を守ろうと懸命に防御するが、速さでも手数でも竹海が勝っている。
「ヒギッ? ギャッ! グガ!」
防御一辺倒のゴブリンの防御をかいくぐり、二回に一回は竹海の洋刀はゴブリンの細い体を捉える。残念ながら、一太刀でゴブリンを屠る程の威力はないようだが、二刀を巧みに振るう剣戟は安定していて、見ていて安心感がある。
「凄いな。職の補助なしであれだけ戦えるのか」
健太は、ぼそりとそう呟いた。
職には、その職に属する行為が「なんとなく出来る」ようになる効果がある。
『戦士』ならば武器の振りまわし方が様になるようになるのだ。もちろん、それだけでは「センスの良い素人」の域を出ず、正しい武器の使い方を身に着けるには、武器別の講義を受講し、ダンジョンダイブで実戦を重ね、磨いていく必要がある。
それにしても、最初に職のアシストがあるかないかは、大きい。『遊び人』である竹海にはそれがない。
それなのに、難易度が高い二刀戦闘術をこれほど使いこなしているというのは、高い意識を持って修練をしてきたことは当然として、竹海本来の運動神経が優れている証拠でもある。
戦闘に対する意欲も高く、臆するところもない。ゴブリン相手とはいえ、戦闘中の竹海の表情はイキイキとしている。
それでいて、血気に逸り、無駄な手傷を負うような真似もしていない。早く倒すことより、自分が無傷で倒すことを優先する理性を残しているのだ。
「本当になんで、この人が『遊び人』なんだ?」
健太もそう疑問を抱かずにはいられない。『聖堂』による転職は、基本的に「らしい」職に割り振られる。確かに例外はいくらでもあるが、竹海はその運の悪い例外だったのだろうか? なんとなく、健太にはそうではないように思える。
「はあ!」
ほどなくして、ゴブリンは倒された。後には、小さなクリスタルだけが残る。
四肢を斬り飛ばされた三匹のゴブリンが、まだどれもこと切れずに残っている。健太が予想していたより、かなり早い。
(竹海先輩は、技量はもちろん、身体能力でもゴブリンを圧倒していた。となると、ゴブリンよりも総合レベルがずっと高いと思うべきだ)
ここのゴブリンは例外なくレベル20だ。
第一段階職の『遊び人』である竹海は、ノービス10+『遊び人』1の合計11レベルから、ノービス10+『遊び人』19の合計29レベルのどこか。
『遊び人』レベル10で合計レベルがゴブリンと互角。あれだけ、圧倒出来たのだから、『遊び人』はカンスト直前のレベル18か19くらいあってもおかしくはない。
そんな健太の予想は、すぐに証明された。
「竹海先輩、まだ息があるゴブリンにとどめを刺してください」
「ありがとう、遠慮なくいただくとしよう」
軽く息を弾ませていた竹海がそう言って、健太が四肢を斬り飛ばして転がしてあったゴブリン三匹に、洋刀でとどめを刺して回ると、突然健太の視界にその文字列が表示されたのだ。
竹海
『踊り子』、『良い踊り子』R、『本場の踊り子』SR
『常夏の踊り子』R、『極北の踊り子』SR
『踊る勇者』GR
に転職可能。
『遊び人』系の第二段階職である『踊り子』とその派生レア職、スーパーレア職が一つずつ。
さらに、スキップ転職で第三段階職の『踊り子』系レア職とスーパーレア職が一つずつ。
ここまでは良い。
「ああ、この人は『踊り子』の才能が有りすぎて、『遊び人』に転職が固定されていたのか」と納得できるくらいだ。しかし、最後の一つが問題だ。
『踊る勇者』。
GPバーを持つ、『逸脱規格』職。
名前からすると、『勇者』の派生職だと思われる。
原作では、『七つの大罪』と『七つの救済』は資質がある者が複数しても、その職につくのは一度に一人だけと説明されていたが、『勇者』は違うのだろうか? それとも、『勇者』と『踊る勇者』は違うということなのか?
考えても、この場で真相は分からない。
「さて、どうするべきか」
『戦士の不動心」の効果で平静を保っている健太は、側にいる蘭たちに聞こえないよう、そう独り言を漏らすのだった。