ひとまず来斗と実咲の話が一段落ついたところで、尚典がおずおずと口を開く。
「なんだか、色々あったけど、明日はどうするのかな? 予定通りってこと良い?」
予定では明日、健太、尚典、来斗の三人で初めてダンジョンダイブを行うことになっていた。
健太は尚典とも来斗ともダンジョンダイブの経験があるが、三人一緒は初めてだ。本来はそこで初顔合わせの予定だったのだが、来斗のパートナーというイレギュラーの影響で、顔合わせが一日早まってしまった。
だが、それは悪い変化ではないだろう。
「ああ、その予定は変更しなくてもいいだろう。明日は、三人でダイブ。その感触が悪くなければ、ゴールデンウィーク中に蘭先輩と竹海先輩も加えていく。実咲さんは倶楽部入りするにしても、まだノービスだから別枠だな。問題が無くて本人にその意思があれば、最初はパワレベからだ」
多人数によるダンジョンダイブは、人数が多ければ多いほど問題点も出て来る。
攻撃するタイミングのズレ、回避するときの意図しない接触、後衛の射線を遮る前衛等、発生しそうな問題点は容易に想像がつく。
幸いなのは、この倶楽部の中で図抜けた最強戦力で絶対の発言権を有するであろう健太が、一番防御寄りなスタンスであることだ。
タンクという一番危険で割に合わない役割を、一番発言権の強い人間が担当するため、普通よりは軋轢が少ないことが期待できる。それでも、トラブル、ハプニングは絶対にあるだろうが。
「了解。それなら僕もそのつもりで用意しておくよ。ええと、来斗、もそれで大丈夫?」
今日初めて顔を合わせた、将来同じ倶楽部に籍を置く予定の同学年男子に尚典がそう確認する。名前を呼ぶのにためらいがあるのが、やはり尚典もコミュ力が高い人種ではないことをうかがわせる。
「……………………あ、うん。大丈夫だ、明日は予定通り三人でな。ええと、尚典」
対する来斗の返答は、かなり間が開いたものだった。だが、それについては誰も追求しない。来斗の頭の中が、すでに「実咲と過ごす一夜」に向いているは、誰の目にも明らかだったからだ。むしろ、健太と尚典の会話がちゃんと耳に届いてたことを賞賛したいくらいである。
ちなみに三人でのダイブが今日まで伸びていた理由は至極簡単だ。烏琉羽が一人しかいないからである。
健太とのダイブでは、必ず急激にレベルが上がる。イコール性欲、精力が増強される。健太には蘭というパートナーがいたが(今では竹海もいる)、尚典と来斗の相手は、烏琉羽に頼むしかなかった。
現状、健太はもちろん、尚典も来斗も、男複数の乱交にはまだまだ拒絶反応がある。そのため、この学園ではごく一般的な「二人纏めて烏琉羽のお世話になる」という選択肢も取れない。
その旨を蘭たちに相談したところ中々に難航したが、どうにか尚典か来斗の相手をしてくれる女子のめどが付いたため、三人でのダイブの予定が入れることが出来たのだ。
ちなみに、難航した理由は候補がいなかったからではない。下手に来斗と尚典の詳細スペックを知れば「食いついて離れない女子」ばかりだからだ。
そんな話をしている間に、食堂に烏琉羽が戻ってきた。烏琉羽もシャワーを浴びたらしく、身体を締め付けないワンピースタイプのルームウェア姿で、真っすぐで長い黒髪も洗い立ての艶が見て取てる。
「さあ、来斗さん。実咲さんは準備万端ですよ。行ってあげてください。私の部屋は分かりますね?」
「は、はい!」
烏琉羽の言葉を受けて、来斗は勢いよく席を立つ。
「それじゃ」
「ああ」
足早に出ていく来斗の背中を見送った健太は、ふと頭をよぎった疑問を口に出す。
「そう言えば、来斗と実咲さんに部屋を譲って烏琉羽先輩は今夜どうするのですか?」
ひょっとして、いやまさか。と、健太が思っていた予想は半分当たっていた。
「そこはどうとでもなります。飛び入りでも泊めて下さる殿方の心当たりは多いですから。でも、第一希望は蘭の部屋ですね。いかがですか? 蘭?」
烏琉羽の言葉に、蘭はちょっと考えて答える。
「それは健太君が良いと言えば問題ないけれど。どうかしら、健太君?」
その問いの答えるために、健太は視線を蘭の隣に座る長身巨乳美女に向ける。
「その前に一つ確認させてください。今の今まで聞くタイミングが無かったのですが、なぜここに竹海先輩がいるのでしょうか?」
その問いに、ショートカットの長身巨乳美女――竹海はその大きな胸を張って答える。
「うん、実は優梨愛と当面の間部屋を交換することが決まってね。まあ、利害の一致というやつだよ。もちろん、白鶴荘、灰鳩荘、双方の姉妹には話を通してある」
優梨愛とは、蘭のルームメイトの名前である。竹海が暮らす灰鳩荘は白鶴荘のどっこいのエントリークラスの女子寮だが、竹海は一人部屋だ。そのせいもあって、あくまで期間限定の交換である。あまり長期間にわたると、それこそ姉妹払えば誰でも申請が通るというものではない。本人のレベルや所属する倶楽部のランク、そして寮に対する貢献などが一定を超えなければ、申請は却下されるのだ。
二人部屋と一人部屋の交換を長期化させるというのは、その審査を不当に潜り抜ける形になる。
「……今日は竹海先輩が相手をしてくださる予定にはなっていなかったと思うのですが」
「もちろん、ご主人様が嫌だというなら強要は出来ないね。私は寂しく一人で眠るさ。ご主人様と蘭が寝るベットの、隣のベッドでね」
そう言ってウインクする竹海の笑顔に、『戦士の不動心』がオンになっている健太は、「その場合は確実に二人とすることになるんだろうな」と確信する。
元々、女子の側が否と言わないのならば、同時に複数の美女を相手できるというのは嬉しく、楽しく、心地よいだけだ。
特に今夜は第二段階職を三つもカンストしてきたところだ。性欲、精力の高まりは過去最高クラス。蘭一人では精神的な充実は得られても、肉欲と言う意味ではまったく足りないところだった。
相手をしてくれる女子の人数が増えるのは、大歓迎である。
「それは蘭先輩が問題ないのでしたら、俺は」
と言いかけたところで、近寄ってきた烏琉羽が人差し指で健太の口を塞ぐ。
「健太さん。それは駄目ですよ。もう、蘭も竹海も貴方のパートナーなのです。その判断を彼女たちに投げるのは彼女たちの意思を尊重しているのでも、優しさでもありません。ただの責任放棄です。大丈夫です、健太さん。貴方はただ、素直にどうしたいか言葉か行動で示すだけで良いんです」
『戦士の不動心』がオンになっている健太は、烏琉羽の忠告の正しさを認めるしかなかった。
この場合の『パートナーになっている女子』というのは、ただ公式書類を提出しているだけではない。その上で毎晩のように抱かれて隷属し、男子に執着されている状態を言う。
そうした状態の女子に、「君の意思を尊重する」というのは「正解は言わないから、そっちが俺の欲望を読み取れ」と言っているのに等しい。彼女たちにとって、「ご主人様に満足してもらう」ことが第一なのだから。
もちろん、隷属しているとはいっても人間なのだから、受け止められる欲望には限度がある。個人差もある。
だから、そうした欲望を言葉にしたときの反応から、「これはあまりやらせてはいけない」「この欲望はこの人にはぶつけないようにしよう」と男子の側が慮るのが、最善なのだ。
それを実行している男子は、学園全体でも皆無に等しいが。
「そうですね。忠告ありがとうございます、烏琉羽先輩」
そう烏琉羽に礼を言うと、健太は改めて蘭と竹海を交互に見る。
「それでは、今夜蘭先輩、竹海先輩。お二人ともよろしくお願いします。後、烏琉羽先輩も本当にこっちに来るのですか?」
三人相手というのは、健太にとっても未知の領域だが、性欲、精力は全く問題ない。むしろ、三人でも足りないかもしれないくらいだ。
それでも、健太が気にするのは、この場にいるもう一人の男子――尚典の存在である。
来斗が実咲というパートナーと一夜を過ごし、健太が蘭と竹海という二人のパートナーと爛れた夜を過ごす。ならば、烏琉羽には男子三人で現状唯一パートナーがいない尚典の相手をしてもらいたい、というのが健太の率直な気持ちだ。
ただ、烏琉羽はパートナーでもなければ部員内定者でもない。ただの外部協力者に過ぎない。それに、烏琉羽の部屋は実咲と来斗に貸しているので部屋もない。
そんな事情を理解しているのだろう。
尚典はいつも通りの、物わかりの良い笑顔で言う。
「それじゃ、僕は寮に戻るよ。また明日ね、健太」
そう言って席から腰を浮かせる尚典に、烏琉羽が声をかける。
「健太さんと尚典さんがよろしければ、私がそちらの寮に赴いて尚典さんのお相手をして差し上げるのですが」
平然と男子寮に来ようとする烏琉羽に、健太と尚典は揃って否定的な声を上げる。
「烏琉羽先輩、それはちょっと」
「そうです。僕たちじゃ、寮の先輩たちを抑えられませんから」
男子寮に女子が立ち入るということは、引き入れる男子がある程度寮内で立場を確立していない限り、寮の男子たちに襲われる。逆に、後輩思いな面倒見の良い先輩ならそうして自分のオナホ女を連れ込み、後輩たちに使わせてやるくらいだ。
だが、そんな健太と尚典の言葉に烏琉羽は楽し気に笑い、
「まあ、気を使っていただきありがとう存じます。
ですが、大丈夫ですよ。碧鷺寮の波留寮長は話の分かる方ですから。後日、筋を通しに行くと約束すれば、今夜一晩は尚典さんのお相手に集中させてもらえます」
ようは、後日改めて輪姦されに行く約束をすれば、今夜は横やりが入らない、ということだ。
事実、エントリークラスの男子寮ではこれでも温厚な部類に入る。
だが、その提案を健太と尚典が受け入れるはずもない。
「いえ、大丈夫ですよ。僕は今日はダンジョンに潜ってないですし」
ダンジョンダイブをしていないとはいっても、すでに第二段階職の『陰陽師』としてそれなりにレベルが上がっている尚典の性欲と精力は、一年男子の中ではトップクラスに高くなっているはずだ。
ダンジョンダイブをしていない日でも、女子を抱ける機会を我慢できるというのは、理性が強いのか、生来の性欲が弱いのか。
「明日、尚典君の相手をしてもらうように話を通した子だけど、今夜でも彼女の寮に行けば相手をしてもらえると思うわ。麻鷺荘ってちょっと遠くて分かりづらいところにあるんだけど」
という蘭の提案にも、尚典は首を横に振る。
「お気遣い、ありがとうございます。でもほんと、大丈夫ですから。明日の準備もありますし、僕はこれで失礼します。
健太、それじゃまた明日」
「ああ、尚典、また明日。今日は急だったのにありがとうな」
「いいよ、倶楽部の緊急事態は僕にとっても他人事じゃないからね」
尚典は最後に健太とそんな会話を交わすと、白鶴荘を後にした。
尚典が一人で帰った以上、必然的に蘭の部屋には蘭、竹海に加えて烏琉羽も参加することとなる。
男一人に女三人が、なぜか一つのシャワーで体を清めた後、二人部屋の二つあるベッドの一つに四人全員が集まっていた。
言うまでもなく、すでに全員が全裸である。
尚典を見送った時点で『戦士の不動心』をオフにしている健太の股間は、シャワーを浴びているときからずっと立ちっぱなしだ。
エントリークラスの寮のベッドはシングルなので、四人で寝るにはあまりに狭い。
その狭いベッドに、健太から見て右から順に、烏琉羽、蘭、竹海と三人の美女が仰向けに寝そべっている。
髪の長さでは長髪、長髪、短髪。
背の高さでは、普通、高め、長身。
胸の大きさでは普通、巨乳、巨乳。
共通点は全員が素晴らしい美女であることと、これから健太とするセックスを心から歓迎してくれていること。
しみじみと、自分の身に起きている幸運をかみしめる健太は、このまま三人に向ってダイブしたい気持ちをこらえて、確認の言葉を投げかける。
「すみません、始める前にこれだけ確認させてください。実咲さんって黒ですよね?」
健太の言葉に笑い返したのは、三人全員だったが、代表して口を開いたのは右端に寝そべる烏琉羽だった。
烏琉羽は長く艶やかな髪をさらりと流しながら、裸の上半身をもたげるとあっさりと答える。
「ええ。実咲さんは元々、『新人狩り』をやっていた倶楽部の手先だったのでしょうね」
あの時の会話を終始『戦士の不動心』をオンにして聞いていた健太は、思考の冷静さを保っていたおかげで色々とおかしな点に気づくことが出来た。
そもそも特に武闘派でもない一年の女子が『既知』領域第一階層とはいえ、一年男子一人だけに声をかけて二人でダンジョンダイブをしようとすることがおかしい。
そこで、ログインした場所で新人狩りが待ち構えていたというのだから、この時点で実咲と新人狩りはグルだと思うべきだろう。
小さな違和感だが、烏琉羽が「『助け出して』くださる男子」と言ったときに、実咲がなにも言わなかったのも不自然と言えば不自然だ。
来斗と実咲が新人狩りと遭遇したのが本当にただの偶然なら、それは『守る』と呼ばれる行為ではあるが、『助け出す』という表現はあまり相応しくない。もちろん、あまり頭が良くなさそうな実咲のことだ。この点だけならば、単純にそこまで細かなニュアンスの違いが分かっていなかったかもしれないが。
決定的だったのは、烏琉羽が「新人狩りのことをなにか覚えていないか?」と問いかけた時の答えだ。
実咲は事細かに答えた。
三年が二人で残りは二年。職も『戦士』系が一人で、後は『遊び人』系。さらには、何人かについては顔や体つき、使っている武器についても説明した。
暗いダンジョンで一度だけ遭遇した新人狩りについて、これほど事細かに覚えていられるのだとしたら、実咲の記憶力は人類全体で見ても上澄みに当たる。もちろん、実咲にそのような優れた記憶力があるはずもない。
駄目押しは、烏琉羽に「これでその人たちから『解放』される」と言われて、実咲は感極まって泣き出したことだ。
『解放』されるということは、それまではその人たちに『拘束』されていた、と白状したも同然である。
「多分、以前のダイブで彼らに捕まってしまったのでしょうね。それで、今日まで良いように玩具にされていた。来斗さんを誘ってダイブしたのも彼らの命令でしょう。その手の悪趣味な遊びをやる倶楽部は結構あります」
この時期の一年特有とも言っても良い、まだ学園の価値観に染まり切っていない男子。
女子の前で格好をつけて、本気で守ってやろうとしている男子をブチのめし、笑いものにし、その男子の前で守ろうとしていた女子を犯してアヘらせる。
十分楽しんだ後、男子は殺せば記憶を失うので、口封じは簡単確実だ。女子はあえて殺さずに、屈服させて強制的に倶楽部に引き込む。
「確かに人間を倒しても経験値は入るから無意味ではないよ。でも、ノービスを殺して回るくらいなら、ゴブリンを狩る方がまだ強くなれる。エンジョイ勢の考えは理解できないね」
と、ひどくずれた感想を述べて、大きな胸を揺らす様に肩をすくめるのは竹海だ。竹海も下半身は寝そべらせたまま、身体をくの字に折る様にして、上半身だけを起こす。
「エンジョイ勢ですからね。自分たちが強くなることは諦めているのでしょう。その上で、学園生活の娯楽を探しているのでしょうね。本人たちは意識していないのでしょうが、一年を自分たちの同類に落とすことに暗い喜びを覚えているのかもしれません」
一年女子がノービスの段階で上級生のエンジョイ勢に捕まっては、自力で解放されることは難しい。男子の場合でも、四月の時点で殺されまくればスタートダッシュに失敗し、エンジョイ勢になってしまう未来が濃厚になる。
自分にはもう浮かび上がれる目がないと受け入れてしまった者の中には、そうして他人の足を引っ張ることに暗い喜びを見出す者も多い。
「ええと、ということは、「実は最初はグルだった」という点を除けば、実咲さんの話は原則本当と思ってよい?」
健太の問いに、烏琉羽は小さく首肯する。その拍子に体の前に流れていた黒髪で隠れていた烏琉羽の形の良い乳房が露出する。
そちらに意識を奪われている健太に、烏琉羽は耳に心地よい声で説明する。
「はい。一緒にシャワーを浴びる時に、ちょっと実咲さんを詰問したのですが、大筋は事実のようです」
以前のダンジョンダイブでエンジョイ勢の新人狩りに捕まってしまった。
エンジョイ勢の倶楽部というのは、『遊び人』系が多い。中には『遊び人』第二段階職である『男娼』もいることだろう。
『男娼』は、隷属力こそ皆無に等しいものの、女を誑かすためのスキルが豊富だ。スキルが使えるダンジョン内ならば、ノービスの女子をその場限りではなく、以後も自分たちに逆らえないようにすることも可能だ。
そうして実咲を美味しくいただくアクセントとして、実咲に同じ一年男子をダンジョン内に連れてこさせて、返り討ちにあった。
その推測に、健太は首を傾げる。
「返り討ちにあった。というのが正直ちょっと信じられないのですが。確かに今の来斗は随分力を付けてますけど、まだ第一段階職ですよ? 六対一で勝てますか? 最低でも一人は『戦士』系がいたんですよね?」
当然と言えば当然だが、戦力を表面的な数値でしかとらえていない健太の疑問に、竹海が答える。
「大金星だったことは間違いないね。ただ、絶対起こりえないことではないよ。
元々、新人狩りをやるような輩は実力の近い相手との死闘を繰り広げるほどの根性はないからね。たとえ職は『戦士』系だとしても、その性根は『遊び人』系と大差ないはずさ。
だから、来斗君が覚悟を決めて本気で暴れたのなら、勝算はあるよ。もちろん、高くはないけれどね」
「……なるほど」
その言葉ほど納得していない健太のように、蘭たち三人は思わず苦笑する。
どうも健太は自分がどれほど異常な存在なのか、正確に理解していない節がある。
現状、『戦士系』系の第一段階レア職の『殴打士』が15レベル以上になっている来斗は、まぎれもなく学年トップ層なのだ。
健太自身や良く接する叶馬パーティーが規格外すぎるせいで、頭では分かっていても感覚の物差しが狂っている部分がある。
ともあれ、健太は状況を整理して最終確認を取る。
「実咲さんは、新人狩り倶楽部の手先だった。来斗を填めようとして、その罠を来斗に食い破られた。
でも、実咲さんにとっても新人狩り倶楽部から解放されることは、願ってもないこと。
だから、来斗のパートナーになったことは本心から望んでいること。
そして、新人狩り倶楽部は自分たちを一人でブチのめした来斗にちょっかいをかけてくる可能性は低い。
結論としては、来斗のパートナー枠として実咲さんを俺の倶楽部に入れることに問題はない。という結論で良いですか?」
健太の言葉に、ベッドの真ん中に寝そべっていた蘭は、寝そべったまま小さく頷く。
「ええ。それで良いわ。もちろん、一切問題ないとまでは断言できないけど、そこまで用心深くなったら倶楽部の設立も難しくなってしまうわ。それに、実咲さんの状況はある意味で『好都合』とも言えるし。ねえ、烏琉羽?」
蘭は確信をもった声で、隣で上体を擡げている烏琉羽にそう問いかける。
その言葉に、烏琉羽は悪びれず、一糸まとわぬ姿には不釣り合いなほど楚々たる笑顔で答える。
「そうですね。正直この時期の一年生女子は、まだまだこの学園を甘く見ている方が多いです。その点、実咲さんは早い段階でこの学園がどんなところなのか、彼女のような女子にとってどれほど残酷な空間であるか知れたのは、良かったと思います。
そのような経験がない一年女子が健太さんの倶楽部に入部しても、そのありがたみが実感できないでしょうし」
「それは……」
笑顔で辛辣な現実論を述べる烏琉羽に、健太は絶句する。一方蘭と竹海は、「それが当然」と言わんばかりの表情で、烏琉羽の言葉に同意している。
健太は、作ろうとしている倶楽部は、この学園内では女子にとって限りなく最善に近い居場所だ。二年女子である蘭、烏琉羽、竹海は今日までの一年の学園生活で、その価値を理解している。
だが、一年女子の場合、最初から健太の倶楽部に入部してしまえば、そこがどれだけ奇跡的な空間であるのか、理解せずにその恩恵を享受する可能性が高い。それは、学園の現実を知っている二年女子としてはちょっと面白くない。
「ま、大筋において問題はないということだよ。ただ、新人狩り倶楽部に調教はされているだろうから、来斗君が早めに墜としてあげるべきだろうけどね」
竹海の乱暴な言葉は、正しい。新人狩りにあった女子が逆らえなくなるのは、恐怖や苦痛よりも快楽による部分が大きい。エンジョイ勢には高確率で混ざっている『遊び人』系第二段階職である『男娼』。彼らのもたらす快楽は強烈だ。
実咲の心身の安定には、早めの『隷属』が手っ取り早い。
「でも、そうなると場所が」
健太がそう懸念を口にする。男複数プレイも、野外プレイもまだまだご法度な来斗にとって、セックスできる場所は限られている。
「大丈夫です。実咲さんがちゃんと来斗さんのものになるまで、私の部屋を使っていただきます」
烏琉羽の言葉に、健太は少し驚きを見せる。
「良いのですか? 流石にそれは烏琉羽先輩に悪い気が」
部外者である烏琉羽にそこまで世話になるのは気が引ける。そんな健太の視線に、烏琉羽は透明感のある笑顔のまま答える。
「お気になさらず。どうしても気になると仰るのでしたら、その間ずっと健太さんが体で払ってくださいまし」
そう言うと烏琉羽は両手で健太の右腕を掴むと、健太を引き込むようにして上体を倒す。
もちろん、健太と烏琉羽の筋力差ならば、耐えようと思えば簡単に耐えられるのだが、あえて抗う理由もない。
丁度蘭と烏琉羽の間に垂れ込んだ健太に、すぐに左右から蘭と烏琉羽が体を寄せて来る。
「さあ、健太さん」
体の左半身にすり寄る蘭の柔らかな肢体。
「堪能してください」
右半身に触れる烏琉羽の艶やかな裸体。
「おや、これはちょっと当てが外れたか」
蘭の逆隣にいた竹海も一度立ち上がると、うつ伏せ状態で蘭と烏琉羽に左右から挟まれる健太の背中にその胸も尻も大きな体で覆いかぶせる。
こうなると、もう真面目な話は終わりだ。
最後の理性の部分で健太は、(明日のダンジョンダイブでは最低でも来斗を『殴打士』をカンストするまで鍛えよう)と決める。
「蘭先輩」
「はい、健太さん。んん……」
下はベッド。左右と上は裸の女子。身動きの取れなくなった健太は蘭と口づけを交わすと、後は理性をかなぐり捨て、ただ衝動に身を任せるように、肉欲を満たすのだった。