※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

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第六十四話 副会長の推測、ゴアとリョナ

 

 

「デッドリフトは目的筋肉が多数存在する。広背筋、中背筋、僧帽筋の背中。腸肋筋、最長筋、棘筋の脊柱。大臀筋、中臀筋、小臀筋の尻。太腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の太腿裏(ハムストリングス)。さらには見逃されがちだが、腹筋、前腕筋にも効果がある。

 前腕筋は手首(リスト)と握力に直結し、握力はダンジョンダイブにおける武器戦闘の最重要ポイントの一つだ。一撃を入れる、受け止める時に握力――クラッシュ力が無ければ攻撃は半減するし、防御は受け止め損ねる。

 さらに、握力――ホールド力は、そのまま持続可能戦闘時間だと思っても良い。

 どの筋肉を重点目標とするかで、フォームは微妙に異なるのだが、君はまだその段階にはない。まずは基礎のフォームを固めることだけに集中すべきだな」

 

 眼鏡男子こと豊葦原学園前会長にして、現副会長である礼治(れいじ)の言葉を『脳外記憶領域(クラウドストレージ)』に書き留めながら、健太(けんた)は黙々とデッドリフトに励んでいた。

 使用するバーベルの重さは六十キロ。叶馬(とうま)礼治(れいじ)副会長はもちろんのこと、麗華(れいか)庶務と比べても軽い重量である。

 

「……十四、十五」

 

「よし、そこまで!」

 

 礼治(れいじ)副会長の言葉を受け、健太(けんた)はバーベルから手を離した。

 礼治(れいじ)副会長にフォームをチェックしてもらいながら、麗華(れいか)庶務に回数を数えてもらうデッドリフト。無駄に豪華なトレーニングを終えた健太(けんた)は、ただひたすら荒い息をついて、呼吸を整える。

 

「今の感覚がオールアウトだ。覚えておきたまえ。そこまではやってよい。それ以上はオーバーワークだ。君のような初心者は半年は、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスの三種目で十分だ。それを週二回、やりたまえ。重量も固定だ。余裕が出来てきたら、まずは回数を増やすべきだな」

 

 礼治(れいじ)副会長のアドバイスに、横でずっと見ていた叶馬(とうま)が無表情のまま口を挟む。

 

礼治(れいじ)副会長、重量を増やしてはいけないのですか?」

 

「重量を増やした方が、筋肉が付きやすいことは確かだ。筋力もそちらの方が上がる。だが、そのやり方は常にけがの危険が付きまとう。回数を増やすのは、筋力アップという意味では遠回りだが、筋持久力が上がりやすいというメリットもある。長時間にわたるダンジョンダイブに適応することを考慮すれば、むしろ筋持久力の方が重要とすら言えるだろう」

 

「なるほど。ご教授ありがとうございます」

 

 叶馬(とうま)礼治(れいじ)副会長がそんな会話を交わしている間に、健太(けんた)麗華(れいか)庶務の指導を受けて、自分が使ったバーベルの分解、後片付けをする。

 バーベルの組み方、ばらし方はそう難しいことではないので、見よう見まねで出来なくもないのだが、怪我や事故を防ぐための正しい手順というものは定まっている。

 今回のように熟練者が常に側にいてくれるわけではないだのだ。次からは自分で組めるようにならなければならない。

 指導された通りに後片付けを済ませ、Tシャツとトレーニングウェアを着こんだ健太(けんた)は、叶馬(とうま)と並んで礼治(れいじ)副会長、麗華(れいか)庶務に告げる。

 

礼治(れいじ)副会長、麗華(れいか)庶務。今日はご指導ありがとうございました」

 

「今後も、ここでお会いできることを願っています」

 

戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)と、いつも通り無表情な叶馬(とうま)

 穏やかな湖面を通り越して、凍てついた氷面という表現が相応しい一年男子二人の言葉に、生徒会のナンバーツーである礼治(れいじ)副会長は泰然とした態度で受け止める。

 

「フン、私が仕事があるからな。確約は出来ん。行ってよし」

 

「失礼します」

 

「はっ」

 

 健太(けんた)叶馬(とうま)は最後に一礼するとトレーニングルームを後にした。

 

 

 

 

 

 

 健太(けんた)叶馬(とうま)の姿が見えなくなったところで、麗華(れいか)は遠慮しがちに小声を発する。

 

「何者なのでしょうか、あの二人は?」

 

「さて? どちらもただの普通科の一年ではないだろうが、気にするほどのこともあるまいよ。所詮は普通科だ」

 

 タンクトップを着込んだ礼治(れいじ)は、そう言い切ってそのシャープに盛り上がった肩をすくめる。

 礼治(れいじ)は特級科の最エリートとして、普通科を見下しているのも事実だが、言葉の内容そのものに嘘はない。

 豊葦原学園の普通科は、その大半がただの生贄であり、そこを五年間生き延びた僅かな例外も、所詮は学園のコントロール下にあることに変わりはない。

 学園の経営、運営に携わるのは、特級科の卒業生のみだ。

 普通科の最エリートコースが学園に残留できるがそれはあくまで講師として。現場の教官でしかない。

 

「あの健太(けんた)という一年は、私のことを麗華(れいか)庶務と呼びました。礼治(れいじ)様のことを副会長とは、先に私が呼んでいたのでおかしくはありませんが」

 

 麗華(れいか)の言葉に、礼治(れいじ)は小さく頷く。

 

「事前に知っていたのだろうな。生徒会の名前は、電子生徒手帳に記されている」

 

「ですが、手帳のデータには顔写真はありません」

 

 電子手帳に記されている生徒会の情報は、名前と学年と性別くらいだ。

 それらの情報を頭にインプットしてあったとして、あの短時間で「副会長と呼ばれた男子が礼治(れいじ)と名乗った。と言うことは彼は礼治(れいじ)副会長。対して女子は麗華(れいか)と名乗った。ならば、彼女は麗華(れいか)庶務だ」と判断を下したのだとすれば、相当判断が早い。

 わざわざ「礼治(れいじ)副会長」「麗華(れいか)庶務」と呼んだのだから、意図してこちらに自分の能力を見せつけ形になる。よもや、ただのうっかりということはあるまい。

 

「入学一カ月の一年がオールアウトを出来る時点で異常だ」

 

「はい」

 

 礼治(れいじ)の言葉に、麗華(れいか)が同意を示す。

 

 筋トレでいうところのオールアウトとは、簡単に言えば「全力を出し切って一時的にその部位がもうこれ以上何もできなくなった状態」を言う。

 これを、豊葦原学園の生徒が行うのは凄く難しい。彼らにはSPがあるからだ。オールアウトまで追い込む筋トレは、とてつもない苦痛が伴う。人間には苦痛から逃れようとする本能がある。つまり、無意識のうちにSPを活性化させてしまうことが多い。

 それを避けるには、本能的な衝動を理性で抑えて、あえて苦痛な状態を維持し続ける強い意志が必要となる。

 入学一カ月の一年生で、それだけ強く理性でSPの発動を抑えられる者はまずいない。

 

「その上で、私と君の素性を知っていた。となると、単純に考えればどこぞの『草』だろうな」

 

『草』とは、特級科に子息を送り込んでいる名家が、普通科に忍び込ませている家の息のかかった生徒のことだ。

 例えば、現生徒会長である徹朗(てつろう)の実家綾小路(あやのこうじ)家が徹朗(てつろう)の異母弟にあたる誠一(せいいち)を普通科に潜り込ませているように。もっとも誠一(せいいち)の場合は、叶馬(とうま)と出会ったことで実家の『草』をやめて叶馬(とうま)と共に生きていくことを決意しているが。

 

「わざわざ向こうからアピールしてきたということは、狙いは『鞍替え』でしょうか?」

 

「その可能性は高い。その路線で考えれば、今の飼い主は『三善』か『五条』あたりか」

 

 特級科に子息を送り込む名家と一言でいっても、そこには明確な上下がある。

 生徒会会長の座を狙うような名門中の名門から、そうした名門に尻尾を振るためにロスト前提で自分の娘を送り込む、末端名家まで。

 上にせよ、下にせよ立ち位置が定まっている家はある意味平和なのだが、大変なのは今現在浮いたり沈んだりしている家だ。

 この学園で大きいのは『ロスト』、つまりダンジョンダイブで死に戻りを経験している否かだ。

 普通科では秘密にされている、「一度でも死ねば、生殖能力を失い、寿命も激減する。一度も死んでいなければ、ダンジョン外でもスキルが発動する」という事実は、特級科ならば当然のように知られている。

 そのため、ダンジョンダイブで一度でも死んでしまった者は、その時点で特級科内カーストの最下層に移行する。これは、どれほど名家の子息でも変わらない。

 生殖能力を失い、寿命が極端に縮んだ者など、家を継ぐ者としてはすでに死んだも同然だ。

 もちろん普通科と違い、特級科のダンジョンダイブは、手続きをすれば学園の教師やS、Aランク倶楽部の精鋭をガードにつけることが出来るのだが、それには家の格と学園に対する献金が求められる(『銭』ではない)。

 さらに、そこまでやっても事故はゼロには出来ない。最初からロストすること前提の下層女子生徒や、最低限のガードしか付けられない下層男子生徒はもちろん、しっかりガードを付けたはずの上層生徒からも『ロスト』は発生する。

 

 今、礼治(れいじ)が上げた二つの家名は、在学中に跡取りを『ロスト』させてしまった実例だ。

 

 礼治(れいじ)の予想に、麗華(れいか)は嫌悪感を隠さない。

 

「彼らの立場も理解は出来ますが、裏切りなど」

 

 礼治(れいじ)に心酔し、文字通り命がけの忠誠を誓っている麗華(れいか)は裏切り、鞍替えという思考が受け入れられない。

 

「上がそれにふさわしい能力を維持できなければ、下が離脱するのは当たり前のことだ。私もそれを学んだ」

 

 今年度から生徒会長から副会長に格下げされ、自分の『派閥(フラクション)』から大量の離脱者を出したばかりの礼治(れいじ)は、自省を込めてそう呟く。

 

「あれは礼治(れいじ)様のせいではありません! ただただあの者達が恩知らずの恥知らずだっただけです!」

 

 麗華(れいか)は反射的に声を荒らげる。麗華(れいか)は元々、特級科では最下層の立場だ。本来ならば、早い段階で『ロスト』して、上層家格の男子に飼われるべき立場。送り込んだ家も最初からそうなって家格の高い家への『贈り物』となることを望まれた存在。

 それが今日まで『ロスト』を免れ、庶務という一番下の存在とはいえ生徒会に名を連ねることが出来ているのは、礼治(れいじ)に拾われたからだ。

 礼治(れいじ)は特級科でも最上級の家柄でありながら、本来受けるべき特別扱い――ズル(実際公式には許可されていない)をすべて拒み、己自身の力と、自分で見出したクラスメートたちの力だけで、今日までダンジョンダイブを成功させてきた。麗華(れいか)はそんなクラスメートの一人である。

 (ゆえ)麗華(れいか)礼治(れいじ)に対する忠誠と愛情は、絶対的なものがある。礼治(れいじ)の命令ならば、『ロスト』前提の任務でもためらいなく実行するだろう。

 

 そんな麗華(れいか)の熱い言葉に、礼治(れいじ)は顔を見られないように背中を向けると、口元を少しほころばせながら答える。

 

「それでも、だ。奴らが見る目がない愚か者であったことは事実だ。事実であると私が証明してやる。だが、それでも私が自省しなければならない事実は覆らない。

 私は人の上に立つ者として、そんな見る目がない愚か者の目にも一目瞭然な、絶対強者としての力を見せつけるべきなのだ。去年までの私はそれが足りなかった」

 

「ご立派なお考えです」

 

 人に厳しく、自分にはもっと厳しい。

 礼治(れいじ)の言葉を、礼治(れいじ)全肯定マシーンである麗華(れいか)は絶対的に支持した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

 

 

 

 

 ――第『()』階層、『既知外(きちがい)』領域――

 

 

 

 

 

 

 

 筋トレの効果を最大限にするには、筋トレの後には出来るだけ筋肉を使わずゆっくり休める休養も重要とされる。

 特に、オールアウトの後は、下手な運動は即オーバーワークに繋がり、怪我に直結する。

 そして、ダンジョンダイブではどれだけ中で体が汚れても、怪我をしてもログアウトした時には、ログインする前の体に戻る。

 つまり、筋トレの後にダンジョンダイブは、体を休めるのに最適だ。

 そんな叶馬(とうま)の誘いに「そうかな? そうかも」と首を傾げながら、健太(けんた)は久しぶりに叶馬(とうま)パーティーと一緒にダンジョンダイブを行っていた。

 

 具体的には、叶馬(とうま)誠一(せいいち)静香(しずか)麻衣(まい)沙姫(さき)海春(みはる)夏海(なつみ)健太(けんた)を加えた八人パーティーである。

 

「キュイイイイ!」

 

 第五階層の広い玄室で、『鎧犀(アーマーライノセラス)』がこちらに向かって突進してくる。

 その前に立ちふさがるのは、ごつい鎧を纏った叶馬(とうま)。このままでは衝突する。

 

「はっ!」

 

 その直前、叶馬(とうま)は驚異的な跳躍力で跳びあがった。だが、完全に回避するには、まだ高さが足りない。『鎧犀(アーマーライノセラス)』はその鼻から伸びた長い角を空中の叶馬(とうま)目掛け突き刺す様に首を上に向けようとする、より一瞬早く。

 

「ふっ!」

 

 叶馬(とうま)は空中を蹴ると、跳びあがったのに倍する速度で、落下する。

 

「むん!」

 

 超速度の落下、纏っている鎧――『重圧の甲冑(ストレッサーアーマー)』の能力で増している馬鹿げた重量が掛け合わさった叶馬(とうま)の落下式パンチは、見事『鎧犀(アーマーライノセラス)』の背中に叩き込まれた。

 

 

 

叶馬(とうま)くん、ゴア禁止」

 

 パンチ一発で前と後ろに引きちぎられた『鎧犀(アーマーライノセラス)』の血と臓物をあたりにばら撒いた叶馬(とうま)の戦い方に、麻衣(まい)が半眼でツッコミを入れる。

 

「理不尽な」

 

 戦闘とは、見た目を意識して行えるものではない。ただ、敵を倒すための最善を尽くすのみ。という叶馬(とうま)の主張だったが、

 

「でも、あんな状態で回収したら、取り出したとき蜜柑ちゃん先輩泣いちゃうよ」

 

「むう」

 

 麻衣(まい)の反論に一理あることは、叶馬(とうま)としても認めざるを得なかった。

 本来モンスターを倒しても、クリスタルとドロップ品以外は、瘴気に返ってしまうのだが叶馬(とうま)の場合、モンスターの死体が瘴気に返るまでの間にモンスターの死体を『空間収納(アイテムボックス)』に収納することで、死体を丸ごと持ち帰ることができる。

 そうして持ち帰った死体から蜜柑を始めとした『匠工房(アデプトワーカーズ)』の面々が角、牙、爪、革等をはぎ取り、装備を整えてくれるのだ。

 難点は、この裏技で死体を丸ごと持ち帰ると、モンスターを倒しても経験値は全く増えないことだ。 だから、必要なだけ集めたら、あとは普通に倒す必要がある。

 

 ただし、これまでのゴブリンやブラックドック、『梟熊(オウルベア)』などもそうだったが、静香(しずか)海春(みはる)夏海(なつみ)の後方組は地力でそれらのモンスターを倒すのは難しい。

『モンスターカード』で戦力が上がっている海春(みはる)夏海(なつみ)の双子はともかく、静香(しずか)のレベルアップには周囲の強力が不可欠だ。

 

「しっかし、お前今の何よ? いつから空飛べるようになった? いや、あのヘンテコ雲で飛べるのは知ってたけどよ」

 

 呆れたような誠一の問いに、叶馬は真面目に答える。

 

「ヘンテコではないが、あの雲の応用だ。こうして、足の裏に小さく発生せて、空中を蹴っている」

 

 そう言って見せる叶馬の足の裏には、以前半裸雷様ごっこをしたときの雲の超小型版が張り付いていた。

 叶馬がGPを消費して作り出すこの雲は雷を落とす、空中に留まる、ゆっくりと動くなどいくつかの能力がある。

 そのうちの一つ、「空中に留まる」という性質を利用し、叶馬は「空中を蹴って」飛び回る立体起動を確立させたのだ。

 

「このように、空中機動が可能となる」

 

「非常識な……」

 

 呆れが過ぎて消耗ぎみの声を漏らす誠一の頭上を、『重圧の甲冑(ストレッサーアーマー)』を纏った叶馬が縦横無尽に跳び回っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クオオオオン!」

 

 次の玄室。突っ込んでくる『鎧犀(アーマーライノセラス)』の前に立ちはだかったのは、健太(けんた)だった。

 小剣サイズの主武器『金狼木霊剣』は腰に下げたまま、両手で大剣を構える。

 

「《伸びろ》《尖れ》《はっ》!」

 

 健太(けんた)は大剣の柄を伸ばし、刀身の鋭さを増し、『闘士(ウォーリア)』のスキル『豪撃(クラッシュ)』を発動させ、横薙ぎに小さく振る。

 柄が長大に伸びているため、手元は数センチ動かすだけで刀身は数メートル横に動く。

 

「ピギイ!?」

 

 見事、横薙ぎに払った健太(けんた)の大剣は、『鎧犀(アーマーライノセラス)』の四本脚をまとめて切り飛ばした。

 足を失った『鎧犀(アーマーライノセラス)』は慣性に従い、床を豪快に滑っていく。

 

「はっ、ふっ!」

 

 そこに滑るような足取りで距離を詰めた健太(けんた)は、柄の長さを元に戻した大剣を二度振るい、武器となる『鎧犀(アーマーライノセラス)』の鼻から伸びる長い角と、念のため短い尾も切り落とす。

鎧犀(アーマーライノセラス)』を殺さずに無力化することに成功した健太(けんた)は、後方に控えていた非戦闘員の三人に声をかける。

 

静香(しずか)さん、海春(みはる)さん、夏海(なつみ)さん。これにとどめを刺すと良い。安全に経験値が入るから」

 

 尚典(なおふみ)来斗(らいと)をパワーレベリングするときには、角と尻尾は残していたが、静香(しずか)たちの直接戦闘力は相当低い。可能な限り無力化することが望ましい。

 なぜか近づいてこない三人の代わりに、深いため息をつきながら、ツッコミの言葉を入れたのは麻衣(まい)だった。

 

「健くん、「ゴア禁止だからリョナにしました」って、そんなトンチは誰も求めてないよ?」

 

 叶馬(とうま)の同類を見る目が『戦士の不動心(マインドスイッチ)』を貫通し、健太(けんた)の心に突き刺さった。

 

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