※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

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第七十二話 二人のパワレベ、二人の転職(クラスチェンジ)

 

 

 

――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

 

 

 ――第『(さん)』階層、『既知外(きちがい)』領域――

 

 

 

 

「…………だいぶ落ち着いたようだな。返事が出来るならしてくれ、幸子(さちこ)

 

「は、はい、御主人様…………」

 

 ダンジョンの通路上で、健太(けんた)に抱きしめられた幸子(さちこ)は震える声で、そう返事をする。

 体も声もまだ小さく震えているし、接触面積を少しでも増やそうとしているか、両手両足を健太(けんた)に絡めている。とてもではないが、「落ち着いた」と言える状況には見えないが、これでも当初と比べるとかなり落ち着いたのだ。

 

 ダンジョンダイブ直後などは、『既知外(きちがい)』領域の瘴気圧に声も出ないを通り越して、呼吸すら困難な状態だった。

 それを、健太(けんた)は辛抱強く抱きしめ、「大丈夫だ」「安心しろ」「俺がいるから」と声をかけ続けること五分弱。

 やっと、どうにか意味のある言葉を発して、自分の足で歩けるところまで回復したのである。

 

「ああ《落ち着いた》な。これなら大丈夫だろう」

 

 念のため、健太(けんた)は『増強術士(エンハンサー)』のスキルである『精神増強(エンハンス・メンタル)』をかける。自力である程度精神を立て直したタイミングだから、さほど不自然には感じられないはず、と『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太は判断する。

 

(らん)竹海(たけみ)風音(かざね)。護衛と見張り、ありがとう」

 

 健太(けんた)はそう言って、幸子(さちこ)が最低限落ち着くまで、周囲の警戒を続けてくれた同行者三人を労う。

 

「勿体ないお言葉です。何なりとお申し付けください、ご主人様」

 

 細い小剣を構えたコボルト――コボルト『遊撃兵(パルチザン)』に見張りをさせていた(らん)はうっとりとした表情でそう答え、

 

「どういたしまして、ご主人様」

 

 長さの違う曲刀を両手に一本ずつ抜いて立っていた竹海(たけみ)がそう続く。

 

「終わり? あー、ドキドキした。モンスター来たらどうしようかと思った」

 

 最後に、明らかに緊張した様子で左手に盾、右手に片手槍を構えていた風音(かざね)がそう言って、肩の力を抜く。

 その様子を見ていた健太(けんた)は、幸子(さちこ)を抱きしめるために通路の壁に立てかけていた大剣を手に取ると、

 

「では、移動するぞ。ダイブ前に言った通り、今回の目的は皆のレベルアップだ。まず幸子(さちこ)、次に風音(かざね)を優先するが、(らん)竹海(たけみ)にもちゃんと経験値を割り振る。ついてこい」

 

 二年女子四人を先導するように歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

既知外(きちがい)』領域の瘴気圧に対しては、一年並みに不甲斐ないところを見せた幸子(さちこ)だが、流石にモンスターに対する態度は一年並みということはなかった。

 

「よし、幸子(さちこ)。とどめを刺せ。無力化しているが、油断はするな」

 

「は、はい」

 

 玄室内にいた十数匹のゴブリンは全て、健太(けんた)によって四肢を切り落とされて無力化されている。ゴブリン達が抵抗どころか悲鳴を上げるより早くそれをやり遂げたのだ。

 それも使い慣れた腰の小剣ではなく、細かな作業には向かなそうな大剣でだ。

 正確に言えば、今のそれは大剣ではなく槍と呼ぶべきだ。大剣の柄に宿る能力『伸縮自在(テレスコープ)』で柄を二メートルほどに伸ばしているそれは、大剣ではなく槍――大身槍(おおみやり)に分類される。

 

大身槍士(オオミヤリツカイ)』の(クラス)を会得した今の健太(けんた)は、その柄二メートル刃渡り一メートル六十という異形の槍を軽々と振るい、身長一メートル前後しかないゴブリン十数匹を殺さず、四肢だけを切り落として無力化することに成功したのである。

 

大身槍槍士(オオミヤリツカイ)』とは、乱暴に言えば「槍に特化した(サムライ)」である。

(サムライ)』が武装を刀に限定されるように、『大身槍槍士(オオミヤリツカイ)』は武装を大身槍(おおみやり)――穂先が一寸(約三十センチ)以上ある槍に限定される。

 差し専門のランス系はもちろん、穂先が小さなタイプの槍も駄目だ。武器の入手難易度が上がりすぎるので人気薄の(クラス)だが、武器さえ手に入れば強力だ。

 

 なにせ、槍の射程で『(サムライ)』の刀と同じことが出来るのだ。

(サムライ)』は『戦士(ファイター)』系では素早さに偏った、クリティカル攻撃の専門家だ。

 

 通常、ダンジョンのモンスターや(クラス)を獲得した人間はSP(ソルポイント)を無意識のうちに体に纏い防御している。レベルが上がればその分纏っているSPガードも上がり、打たれ強くなっていく。

 そんなSPで守られているモンスターや人間にダメージを与えるには、こちらもSPを込めた攻撃でSPガードをブチ破るのが常道だ。だから、極端にレベルに差があると、渾身の一撃でも相手のSPガードを破れないという絶望的な状況に陥ることがある。

 

 それに対してクリティカルとは、そのSPガードをすり抜ける攻撃だ。クリティカルヒット自体は、相手の虚を突けば誰にでも起こせる行為だが(極端な話、相手を眠らせるもしくは気絶させて攻撃すれば高確率でクリティカルになる)、『(サムライ)』系は正面から相対した敵に対し、速さと技でクリティカルを意図的に起こすことができる。

 

(サムライ)』系のレア(クラス)である『剣豪(ソードマスター)』になっている沙姫(さき)など、健太(けんた)が知る限り全ての攻撃がクリティカルになっているほどだ。まあ、沙姫(さき)は天才中の天才のため、流石に例外だが。

 

 だが天才でなくとも、(クラス)を何十も重ねた圧倒的身体能力を有する健太(けんた)が、ゴブリン程度を相手にするならば、全ての攻撃をSPガード無効攻撃(クリティカル)とすることは難しくはなかった。

 

「はあ……終わりました、御主人様」

 

 四肢を落とされて転がっている十数匹のゴブリンに、上から槍を振り下ろして止めを刺して回った幸子(さちこ)は、それだけで少し息を弾ませていた。

 幸子(さちこ)がとどめに使っている槍は、健太(けんた)からの支給品だ。先日オークの集団を殲滅した時にドロップした武器のうちの一つを、『適合(アジャスト)』で人間サイズに縮小して確保しておいたのだ。

 ジュゲム用の短槍よりずいぶん長いが、重量は半分にも満たない。それでも、十キロは優に超えているだろう。低レベルの『遊び人(ニート)』に過ぎない幸子(さちこ)に武器として振りまわすことが可能な重さではない。

 だが、第一段階職になっているということは最低でもノービスのレベル10はあるということだ。

 十キロ越えの槍を武器として振りまわすことは出来なくとも、持ち歩いて無力化したモンスターにとどめを刺すくらいは出来る。

 

「よくやった、幸子(さちこ)。偉いぞ」

 

戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)はそう言いながら幸子(さちこ)に近づくと、幸子(さちこ)の頭を丁寧に撫でた。

 

 それは他のパートナー女子に対する労い方とは一線を画する。むしろジュゲムやボンドといった『モンスターカード』に対する扱いに近い。今の幸子(さちこ)にはそうした扱いが正解だと、健太(けんた)は判断した。

 

「ふわあ……」

 

 事実、その良くて配下、悪ければペットに対する扱いに思える褒め方に、幸子(さちこ)は目を細めて嬉しそうにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 健太(けんた)の『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』は叶馬(とうま)の『情報閲覧(インターフェース)』と違い、転職(クラスチェンジ)に特化したスキルだ。だから、転職(クラスチェンジ)可能状態になるまで相手が何レベルなのか、自己申告の現(クラス)は本当に正しいのかわからない。

 だが、転職(クラスチェンジ)可能状態が分かるだけでも大きなアドバンテージだ。

 特に今回のような、複数人のレベ上げ、転職(クラスチェンジ)を目的としている時は。

 

 

 

 

 風音(かざね)

 

槍士(ランサー)R』『盗賊(シーフ)』『遊び人(ニート)

 

 

闘士(ウォーリア)』『盾槍闘士(ヒュパスピスタイ)R』『槍騎士(ランスナイト)R』『娼婦(ニンフ)

 

 

 

 に転職(クラスチェンジ)可能。

 

 

 

 

 健太(けんた)が四肢を斬り落とした大きなゴブリン(推定ゴブリンキング)に風音(かざね)が頑張って止めを刺したところ、健太(けんた)の脳裏にそんな文字列が浮かび上がった。

 どうやら、風音(かざね)は無事『戦士(ファイター)』レベル20に達したらしい。

 

「よし、次に行くか。風音(かざね)。大物を倒したから、次からしばらくは幸子(さちこ)を優先する。良いな?」

 

 この場で転職(クラスチェンジ)させる気がない以上、今の風音(かざね)にこれ以上経験値を稼がせるのはただの無駄だ。

 だから、そんな言葉で風音(かざね)への経験値優遇停止を告げる。

 

「うん、分かった」

 

 風音(かざね)は、軽く息を弾ませながら頬を紅潮させた顔で小さく頷く。『逸脱個体(オーバーボーダー)』である推定ゴブリンキングは、無力化した状態から止めを刺すだけでも、風音(かざね)にとっては結構な重労働だったのだろう。付け加えれば、『戦士(ファイター)』20レベルになってもなおあまりある経験値が流れ込んできた影響で、性欲が過剰増加しているという点もある。

 

風音(かざね)先輩も近い将来俺のパートナーになってくれると言っているが、現時点では俺のパートナーではない。それどころか、別な倶楽部に籍を置いたままだ。俺が相手をして良いのか?)

 

 学園の常識で考えれば全く問題ない。学園内ではパートナー制度を始めとしたいくつかの校則が、性的行為を抑止しているがダンジョン内はそれすら意味をなさない完全な治外法権だ。

 特に今回のように、高レベルの男子が低レベルの女子のレベリングを手伝ってやるとき、ダンジョンセックスはマストと言っても過言ではない。

 風音(かざね)自身はもちろん、風音(かざね)が今籍を置いている倶楽部の男子が知っても「そりゃそうなるだろ」としか思わないだろう。

 

 同時に健太(けんた)は考える。

 

風音(かざね)先輩の転職(クラスチェンジ)先はかなり順当だな。『聖堂(カテドラル)』の自動割り振りでもほぼ問題ないレベルだろう)

 

 とはいえ、万が一『娼婦(ニンフ)』になられたら勿体ない。念のため、『聖堂(カテドラル)』まで付いていき、健太が『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』で選んでやるべきだろう。

 幸い、『娼婦(ニンフ)』以外の第二段階職は『闘士(ウォーリア)』『盾槍闘士(ヒュパスピスタイ)』『槍騎士(ランスナイト)』と全て『戦士(ファイター)』系の第二段階職だ。

 これならば健太(けんた)の『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』で転職(クラスチェンジ)させても問題はない。『聖堂(カテドラル)』の転職(クラスチェンジ)では同じ段階の職を取り直した場合前の(クラス)がロストするが、健太(けんた)の『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』では(クラス)が重なるという違いがある。

 だが、『戦士(ファイター)』から『戦士(ファイター)』系第二段階職への転職ならばどちらでも違いは生じない。

 

(問題はこっちだな)

 

 健太(けんた)は、自分の左下側に視線を向ける。

 

「ん、んん、ああ……ご主人様……」

 

 そこでは幸子(さちこ)健太(けんた)の体に肢体を押し付け、健太(けんた)の太腿を両足で挟み、擦り付けていた。普段はビクビクオドオドしている幸子(さちこ)の堀の浅い顔が、性欲で蕩けている。薄い唇は半開きになり、だらしなく舌がはみ出ている始末だ。

 当然と言えば当然ではある。健太(けんた)の目算では、幸子(さちこ)は今日だけで『遊び人(ニート)』のレベルを3から20以上まで上げている。急激なレベルアップは急激な精力、性欲の増強をもたらす。

 精神力が強ければある程度抑えも聞くのだが、幸子(さちこ)はお世辞にも精神が強靭なタイプではない。それでも、健太(けんた)が「やめろ、離れろ」と言えば恐怖が性欲を上回り、離れるのだろうが『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている今でも、そんなことを言う健太(けんた)ではない。

 深く隷属している、つまり強い情愛の対象であり、最高の快楽を授けてくれる相手がすぐ隣にいて、自分がやることを一切咎めず受け入れてくれるのだから、幸子(さちこ)の発情が止まる道理はなかった。

 

(だが、まあ良い兆候ではあるか)

 

戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)は、幸子(さちこ)の行動を助けてやるように、左腕を幸子(さちこ)の細い腰に回し、ガッチリと抱きしめてやりながら、そんなことを考える。

 

 健太(けんた)に抱き着き(もしくは絡みつき)、その大きな胸や股間を擦り付けている幸子(さちこ)の現状は、健太(けんた)が「こっちに来い」と言ったわけではない。レベルアップによる発情が我慢できなくなった幸子(さちこ)の自主的な行動だ。男子に対する恐怖心が勝って言えれば、どれほど発情しても向こうから抱き着いてくることはなかったはずだ。

 多少なりとも「今度の御主人様は大丈夫」と思い始めている証、と考えるのは少し楽観的すぎるだろうか。

 

「ふう……ふう……はあ……」

 

 首元に熱い吐息を感じながら、健太(けんた)幸子(さちこ)について考える。

 

幸子(さちこ)先輩は現状『遊び人(ニート)』。だが『遊び人(ニート)』系の第二段階職はあまり良いのがないからな。たとえ第一段階でも他に良い(クラス)が候補に挙がっていれば、そっちにしたいのだが)

 

 問題はその場合、『遊び人(ニート)』がロストしないことである。

 この学園の常識では、ロストしているはずの『遊び人(ニート)』のスキルを使えることに幸子(さちこ)が気づいたら、多少面倒なことになるかもしれない。

 

幸子(さちこ)先輩が今後、俺がいないところでダンジョンダイブする可能性は低いからまず大丈夫だとは思うが)

 

 現状、幸子(さちこ)健太(けんた)の言いなりだ。週一か二で今日のようにダンジョンに連れていってやった上で、「それ以外はダンジョンダイブ禁止」と言えば本人が自主的に破ることはないだろう。他の男子のちょっかいを警戒する必要は当然あるが。

 

(どちらにせよ、転職(クラスチェンジ)に漕ぎつけてからの話だな。現状では無駄な心配になる可能性も十分にある)

 

 幸子(さちこ)転職(クラスチェンジ)先が、『遊び人(ニート)』系しかない可能性も十分にあり得る。

 

「よし。次の玄室に行くぞ」

 

 健太(けんた)はそう考えて、ひとまず意識を切り替えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事、午前のダンジョンダイブを終えた健太(けんた)(らん)竹海(たけみ)風音(かざね)幸子(さちこ)の五人はその足で真っすぐ『聖堂(カテドラル)』へとやってきていた。

聖堂(カテドラル)』に入っていた風音(かざね)が出て来る。『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』で転職(クラスチェンジ)させた健太(けんた)じゃなくても、その弾むような足取りと満面の笑みを見れば、結果は予想できるだろう。

 

転職(クラスチェンジ)出来た。それも『盾槍闘士(ヒュパスピスタイ)』だって」

 

 ゴールデンウィーク中ということもあり、『聖堂(カテドラル)』周辺には人がいないため、風音(かざね)は言葉に出してそう言う。大声で言うほど不用心ではないところは、学園で一年以上生きてきた上級生だからだろう。

 

「おめでとうございます、風音(かざね)先輩。大体希望通りってことですか?」

 

 知らないふりをしてそう尋ねる健太(けんた)に、風音(かざね)は赤いサイドテールを弾ませるように何度も頷くと、

 

「もう、希望通りというか希望以上だよっ。『闘士(ウィーリア)』だったらまあよし。『槍騎士(ランスナイト)』とか『槍闘士(スピアウォーリア)』とかなら槍に補正が付くから最高、って思ってたら『盾槍闘士(ヒュパスピスタイ)』だからね。槍にも盾にも補正が付く。めっちゃ最高!」

 

 そう言って健太(けんた)に抱き着く。健太(けんた)は空いている右腕で風音(かざね)の小柄な体を抱きとめる。

 

「それは良かったですね、風音(かざね)先輩」

 

 すでに『戦士の不動心(マインドスイッチ)』をオフにしている健太(けんた)は、内心安堵の息を漏らす。

 以前、風音(かざね)から聞いた希望転職(クラスチェンジ)先は、「『槍騎士(ランスナイト)』か『槍闘士(スピアウォーリア)』」と聞いていたのだ。

 そして、『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』には、『槍闘士(スピアウォーリア)』こそなかったが『槍騎士(ランスナイト)』はあった。それなのに、あえて『盾槍闘士(ヒュパスピスタイ)』を選択したのは、風音(かざね)が「槍闘士(スピアウォーリア)」か『槍騎士(ランスナイト)』」を希望したのは、「槍が使い慣れてるから」という理由だった。

 風音(かざね)の戦闘スタイルは、右手に槍、左手に盾である。ならば、槍だけでなく盾にも補正がある『盾槍闘士(ヒュパスピスタイ)』が最善なのではないか、という健太(けんた)の予想は幸いにも当たっていたようだ。

 

 一般的に(クラス)はノーマル程性能が平均的で、R(レア)、SR(スーパーレア)になる程性能が尖っていくとされている。

 だから、基本的にはノーマルの『闘士(ウォーリア)』や『騎士(ナイト)』が、レアの『槍騎士(ランスナイト)』や『槍闘士(スピアウォーリア)』より強いということはない。

闘士(ウォーリア)』ならば、剣、刀、薙刀、十手、槍、斧、斧槍、こん棒、槌矛、メリケンサック、トンファー等、何を持ってもおよそ全てのスキルが使用可能なのに対し、『槍闘士(スピアウォーリア)』は槍を持たなければほとんどのスキルが発動しない。その代わりに、どちらも槍を持った時には『闘士(ウォーリア)』より『槍闘士(スピアウォーリア)』が勝る。

 だから、風音(かざね)のように「私の戦闘スタイルはこれ」と決めてしまっている者にとっては、レア(クラス)の方が望ましい。

 逆に、戦闘センスに恵まれて、どのような武器でも自在に操れる者からすれば、武器の制限が少ないノーマル(クラス)が良いらしい。ダンジョンでは階層ごとに出没するモンスターはある程度決まっているため、モンスターに合わせて有利な武器に持ち替えられるし、強いマジックアイテム装備がドロップすれば、剣だろうが斧だろうが装備できる。

 

匠工房(アデプトワーカーズ)』の蜜柑たちを見ていると感覚が狂うが、ダンジョンドロップ品と同等もしくはそれ以上の武器を幅広く制作できる『職人(クラフター)』はものすごく珍しいのだ。

 

「うん、これも健太(けんた)君のおかげだよ。今晩はちょっと無理だけど、正式に健太(けんた)君のモノになったら、一杯お礼するね」

 

 抱き着いた風音(かざね)は、健太(けんた)の耳元でそう囁く。体型こそ健太(けんた)の好みから外れるが、風音(かざね)とてこの学園で一年以上過ごして適応した学園の女子だ。その声に含まれる艶に、『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオフになっている今の健太(けんた)は無反応ではいられない。

 

「っ、幸子(さちこ)先輩。次は幸子(さちこ)先輩の番ですからっ!」

 

 いい加減慣れろとツッコミを入れたくなるくらいに動揺する健太(けんた)はそう言うが、それは完全に墓穴だった。幸子(さちこ)の存在を意識したとたん、健太(けんた)のズボンの前はもっと固く熱く滾る。

 

「ふわあ……ご主人様?」

 

 幸子(さちこ)はとろんとした目で小首を傾げる。その拍子に幸子(さちこ)のワンレングスのストレートヘアが健太(けんた)の制服の肩にかかる。

 今まで必死に意識を逸らしていたが、幸子(さちこ)はダンジョンからログアウトしても、ずっと発情状態が収まらず、先ほどから健太(けんた)の左腕にへばりついたままなのだ。

 健太(けんた)の左腕はずっと細身の体には不釣り合いに大きな幸子(さちこ)の双乳で挟まれ、左手は素足の太腿に挟まれている。大好きな巨乳の感触はもちろん、素肌で感じられる太腿の感触も、気持ちいい。

 ただ、触れているだけで性感を高めるような魔力が、幸子(さちこ)にはあった。

 

 振りほどいて幸子(さちこ)に『聖堂(カテドラル)』に入るよう促さなければならないのだが、健太(けんた)はとっさに動きが止まってしまう。

 

幸子(さちこ)先輩は俺に依存してるから、ここで振りほどいたら、拒絶されたと勘違いして危険かも)

 

 という思考はもちろんただの言い訳だ。端に健太(けんた)がその心地よい感触を引きはがしたくないだけである。

 

幸子(さちこ)先輩。『聖堂(カテドラル)』に入ってください。転職(クラスチェンジ)を試しましょう」

 

 それでも、そう言って幸子(さちこ)の両乳、両太腿から左腕を抜いたのは、流石の健太(けんた)も多少は女慣れして来たからだろうか。

 発情状態で頭が蕩けている幸子(さちこ)だが、だからこそ「愛しの御主人様」の言葉は絶対だ。

 

「はい、分かりました」

 

 幸子(さちこ)がフラフラとおぼつかない足取りで、『聖堂(カテドラル)』の中へ入っていくと、健太(けんた)の脳裏に浮かんでいた文字列に変化が訪れる。

 

 

 

幸子(さちこ)は『娼婦(ニンフ)』に転職(クラスチェンジ)しようとしています。よろしいですか?

 

 

 はい

 

 

 いいえ】

 

 

 予想されたことだが、幸子(さちこ)はすでに、『娼婦(ニンフ)』コースに乗ってしまっていたようだ。この学園で女子が生きていくだけならば、『娼婦(ニンフ)』も悪い選択ではないのだが、他に選べる道がある上であえて選ぶものではない。

 入学前からその性根が『娼婦(ニンフ)』向きならばともかく、幸子(さちこ)の場合は入学以来のセックス漬けでそちらの道に修正されただけだろう。

 健太(けんた)は軽く念じて、幸子(さちこ)転職(クラスチェンジ)可能一覧を呼び出す。

 

 

 

 幸子(さちこ)

 

槍士(ランサー)R』『術士(マギ)』『文官(オフィサー)

 

 

呪詛師(カースキャスター)R』『幻想使い(ソーサラー)』『娼婦(ニンフ)』『遍歴詩人(ジョングルール)R』

 

 

性隷姫(スレイブレディ)SSR』『人形姫(ハートレスクイーン)SSR』

 

 

 に転職(クラスチェンジ)可能。

 

 

 

 

 

 この一覧を見れば、幸子(さちこ)本来の資質が『術士(マギ)』系であることが分かるだろう。

 現在の幸子(さちこ)が『遊び人(ニート)』で、転職(クラスチェンジ)可能になっている第一段階職は『槍士(ランサー)』『術士(マギ)』『文官(オフィサー)』。

 対して転職(クラスチェンジ)可能な第二段階職は『呪詛師(カースキャスター)』『幻想使い(ソーサラー)』『娼婦(ニンフ)』『遍歴詩人(ジョングルール)』の四つ。

 

呪詛師(カースキャスター)』と『幻想使い(ソーサラー)』は『術士(マギ)』系の第二段階職で、『娼婦(ニンフ)』と『遍歴詩人(ジョングルール)』は『遊び人(ニート)』系の第二段階職だ。

 現在の幸子(さちこ)は『遊び人(ニート)』なのだから、『遊び人(ニート)』系の第二段階職が出るのは今日までの学園生活による経験が導いた結果と言えるが、『術士(マギ)』系の第二段階職が候補に浮かぶのは、純粋に本人の資質だと推測できる。

 その証拠に、『戦士(ファイター)』系レア第一段階職の『槍士(ランサー)』と『文官(オフィサー)』はあっても、『戦士(ファイター)』系、『文官(オフィサー)』系の第二段階職は候補に挙がっていない。

 

 経験だけで言えば、武器戦闘の方がよっぽど経験しているだろうにだ。

 

(やっぱり、『術士(マギ)』系の第二段階職か。でも『遍歴詩人(ジョングルール)』なら『職業選択の自由(プリースト・オブ・ダーマ)』を使っても齟齬が発生しないんだよな。それなりに強いらしいし)

 

 健太(けんた)は、少し悩む。

 

遍歴詩人(ジョングルール)』は『遊び人(ニート)』系の中ではダンジョンダイブで「使える(クラス)」とされている。『鼓舞(ファイトソング)』『誇張(エグザジュレーション)』『再演(リフレイン)』といった、戦闘向きのスキルがあるのだ。

 ダンジョン内で幸子(さちこ)が『遊び人(ニート)』レベル20になってから今までずっと考えてきたのだが、まだちょっと悩んでいる。とはいえ、すでに幸子(さちこ)は『聖堂(カテドラル)』に入っているのだから、これ以上迷っている時間はない。

 

 

(仕方がない。度胸を決めるか)

 

 

 

 健太(けんた)は、脳内のカーソルを『幻想使い(ソーサラー)』に合わせる。

 

 

 

幸子(さちこ)は『幻想使い(ソーサラー)』に転職(クラスチェンジ)しようとしています。よろしいですか?

 

 

 はい

 

 

 いいえ】

 

 

 

 健太(けんた)は脳内で【はい】をクリックした。

 

 

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