一般的な学校でも、長期休み明けというのは、大きく印象を変える者が出る。
俗にいう「夏休みデビュー」というやつだ。
それが、ここ豊葦原学園のでは、より劇的な変化が起こりうる。
とくに一年の場合、ゴールデンウィークの前後で別人のように変わる女子が出るのは、毎年恒例のことと言っても良い。
ゴールデンウィーク前までは、この学園の常識を頭では分かっていてもまだ実感が伴っていなかった一年女子が、ゴールデンウィーク中男子寮に監禁され、泊まり込みの輪姦、多人数による隷属の上書を繰り返されて、この学園の流儀を肢体に叩き込まれるのだ。
ここ一年辛組でも、そうした豊葦原流『ゴールデンウィークデビュー』を果たした女子は何人か存在する。
だが、それらと比較してなお、ダントツ一番目を引く変化を遂げたのは、実咲であることは疑いようがない。
制服の襟に公式パートナーとなったことを示すパートナーバッチと、倶楽部に所属したことを示す倶楽部紋章のワッペンを付けている実咲は、休み時間の度に来斗の下へと駆け寄り、躊躇いなくそのふとましい膝の上に跨っていた。
「あははどうしよ、来斗。私授業、全然わかんない」
言葉の内容は悲観的だが、その声色と表情は言葉の内容を裏切るように、明るい。まるで、自室で二人きりでいるかのように周囲など視界にも入っていないような、ふるまいだ。
「え? 教養科目の座学はほとんど中学一、二年の復習だったと思うけど」
対する来斗は、挙動不審という言葉を具現化させたような落ちきつのなさで、キョロキョロと視線を泳がせている。そんな来斗も制服の襟にバッチ、胸元に♂♀一対のクワガタの紋章ワッペンが縫い付けられている。パートナーバッチと倶楽部ワッペン。どちらも実咲のそれと全く同じだ。
来斗と実咲がパートナーとなり、同じ倶楽部に入った。一目でわかるその事実に、一年辛組では、無言の衝撃が走っている。
現時点では、一年男子はまだパートナーを持っていない者が多数派だ。それなのに、明確に教室で一番下に見られていた来斗が同じ教室の女子と上手いことやっているという事実に、男子の大半はショックを受けていた。
これで、来斗と実咲がパートナーバッチだけを付けていたら、直接絡んで来る男子も出ていたかもしれない。しかし、同時に倶楽部紋章ワッペンを付けていることが一つの抑止力として働く。
倶楽部紋章ワッペンは一目でランクが分かる様にランクごとに統一された色で縁取りされている。だから、二人が所属する倶楽部『安息所』がFランクであることは知られてしまう。
だが、たとえFランクでも倶楽部所属というのは、牽制となる。Fランクであっても倶楽部設立に必要な人数は十人。最低でも、他に八人の仲間がいることになる。一年にとっては学園内の大半が格上だ。力量を把握していない仲間がいるというだけで、安易な手出しはしずらい。
さらに、実咲の場合は、一時的に上級生のFランク倶楽部に捕まっていた事実を、一部の女子は何となく把握している。そこから、「来斗と実咲が揃って上級生のFランク倶楽部に入れられた」という予想が結構な信ぴょう性を持って噂される。
自分が弱小であることを自覚している上級生のFランク倶楽部の男子は、捕まえた女子でも自分が直接パートナー契約を結ばないことが多い。
パートナー契約は女子の奴隷契約と言われるくらいに圧倒的男有利なシステムだが、男子の義務も存在する。パートナーを守るために『学生決闘』を避けられないケースもある。
そうした面倒を避けるため、自分に逆らえないより弱い男子を被害担当役として自分の倶楽部に入れて、女子とパートナー契約を結ばせるというやり方があるのだ。パートナーとなった男子の許可があれば、パートナーのいる女子とのセックスも問題はない。
実咲がFランクのチンピラ倶楽部に捕まっていたという事実を察している者からしてみれば、今の来斗と実咲の関係は丁度それに見えなくもない。
そんな周りの視線など、実咲は気にしていない。来斗はキョロキョロしているので、自分たちが視線を集めていることは分かるのだが、どう思われているかは分からない。
「なら分かるわけないじゃん。私に中学レベルの学力を求めんな」
実咲はそう言って、ウェブのかかった銀褐色のポニーテールを揺らし、ケラケラ笑う。
見た目も態度もギャルそのものな実咲は、どうやら学力レベルにおいてもその第一印象裏切らないタイプだったようだ。『文官』になったのだから、自頭は悪くないかもしれないが。実咲の『文官』は健太が『職業選択の自由』で選んだものだが、健太の『商業選択の自由』も、叶馬の『情報閲覧』も、その職に対する素質がない者はそもそも候補にも挙がらない。
対する来斗は、こちらも外見のイメージに違わず、成績は悪くないようだ。自頭が良いわけでも滅茶苦茶勉強してきたわけでもないが、すっぱりサボることができるほど思い切りもないため、問題がない程度の成績は維持してきた。そういうタイプだ。
「まあ、この学園は座学は最悪白紙でも進学、卒業には影響ないらしいけど。で、でも一般教養科目はともかく、ダンジョン関係の座学は真面目にやって方が良いよ」
来斗は自分の太い太腿の上でグリグリとショーツ越しの尻を動かす実咲の感触に色々と挙動不審になりながらも、そう大切なパートナーに警告する。
実咲は『文官』なのだ。ダンジョンに対する知識という土台が無ければ、便利なスキルも使いこなせない。
例えば、『文官』には『位置』、その上級職である『案内人』には『地図帳』といった、自分の位置や周囲の地形を把握するスキルがあるのだが、そうして得た情報を有効活用するには、スキルを使った本人の知識が必要となる。
『位置』のスキルで「あっちの方向に宝箱がある」としか言えない『文官』と、「あっちの方向に宝箱がある。最短ルートは真っすぐ行って最初の十字路右折、次のT字路を左折して道なりに左折が最短だけど、そっちだとモンスターが沢山いる玄室の前を通ることになる。それより、最初の十字路を直進して、次のT字路を左折、次の十字路を右折、次の十字路を右折で回り込むほうが安全度は高い」まで言える『文官』ではまったく能力が違う。
それにはスキルに頼るだけでなく、迷宮概論、側図学、迷宮地形学などを身につけておく必要がある。
「えー? この学園まで来てまだ勉強が逃げらんないの? 来斗手伝ってー」
スリスリと猫のように来斗の首元に頬を寄せる実咲に、来斗はすぐに前言を撤回する。
「あ、う、うん。そうだね。どうせ一緒にダイブするなら、俺が地図を見れるようになれば良いのか」
確かに『案内人』のような上級職になれば、地図を本人の脳内ではなく、空間上に3D映像として投射するスキルも存在するため、パーティーメンバーが代わりに地図を読み解くいうやり方もあるにはある。だからと言って、『文官』がお馬鹿なままで良いという理由にはならないのだが。
「ふふーん、ありがと、来斗。頼りにしてるー」
一見するとあからさまに媚びを売るギャルに、篭絡されているオタク少年にしか見えない。ある意味そんな来斗のチョロさが、「実はとっくに実咲は来斗に隷属している」という事実を覆い隠している。
来斗の首元に顔を摺り寄せていた実咲は、少し首を伸ばすと来斗の耳元で囁く。
「ね、知ってる? 一年棟の端の男子トイレ。エッチ専用なんだって。次の休み時間、イく?」
セックス当たり前の学園だが、表向きではそこまでやりたい放題ではない。そのため、暗黙の了解として「ここはセックスをする場所」と決められている場所がある。使い勝手の悪い校舎端のトイレ。主な動線から外れている階段下。中庭の木陰など。
そういうところは不文律で、「便器女は持ち込み」と決められている。ようは、「やりたいから一人で来た」と男子がやってきても使わせてもらえる女子はいない、ということだ。
もっとも、所詮は不文律。時には破られることもある。お仕置き、調教という名目で、自分のオナホ女を裸で男子トイレの個室に固定して、「公衆便女」という札を首からぶら下げて放置されていることもある。それを期待して、一人で様子を見に来る男子もいる。
ともあれ、一足先に学園の流儀に馴染んで来たパートナーの誘いに、来斗はビクリと体を震わせたが、すぐに首を横に振る。
「あ、ああ、い、いや。それはちょっと」
初体験を担任教師で済ませて以降、烏琉羽、実咲とのセックスはベッドの上でしか経験がない来斗に、校内や野外でのセックスはまだ敷居が高い。そういうところでは他の男子も出入りする。出入りするときに、バッタリ顔を合わせることもあるだろう。
来斗は、今の自分が一年の中で結構上の方ではないか、という自負が芽生えてきているのだが、自分の見た目が「なめられやすい」という自覚もある。
対して、実咲は豊葦原学園でも平均以上の容姿とスタイルをしている(今の来斗には烏琉羽と同じくらい美人に見えている)。それもセックスに慣れていそうなギャルそのものの見た目だ。
『安息所』のルール的にも自分の心情的にも、大事なパートナーである実咲に他の男子がちょっかいを出せば立ち向かう覚悟は決めているつもりだが、出来ればそうなることを避けたいというのも、来斗の正直な心情である。
「ん、分かった。我慢できなくなったら言ってね。私はいつでもオッケーだから」
「う、うん」
耳元で囁かれる実咲の言葉に、来斗はそのふとましい首まで赤く染まる。セックスそのものよりも、こうして言葉や態度で示される好意に強い喜びを感じるのは、モテない男子あるあるだろう。
「それならダンジョンはどうする? 倶楽部のダンジョンダイブとは別に、二人だけで行ったりする?」
倶楽部『安息所』では、定期的に倶楽部全体でのダンジョンダイブを行うと決めているが、それ以外の日に個人個人がダンジョンダイブをすることを禁止していない。
そもそも部長である健太自身がソロダイブの常連だし、叶馬パーティーと違ってこちらのメンバーは全員ファーストダイブで「死に戻り」を経験し、『魂魄結晶』を喪失している。冷たい言い方をすれば、死に戻りをしたとしても今更だ。
それでも、「死に戻り」は自我の摩耗や極めて低い確率での「人間のカード化」の恐れがあるため、「死に戻りするくらいなら使え」と健太は全員に『帰還珠』を配布しているが。
通常ダンジョンダイブは、前回ログアウトしたポイントにしかログインできないので、健太達とダイブした厳しい環境にしかログインできないのだが、実咲は『文官』になった。『文官』ならば『位置』のスキルでマーキングしたポイントならば、好きなところにログインできる。
だから、倶楽部でダイブするときは深い階層。二人でダイブするときは浅い階層、という選択が可能なのだ。
だが、そんな実咲の提案に来斗は考えるまでもなく首を横に振る。
「駄目だよ。実咲はまだ今の状態で戦闘を経験してないだろ? 最初は健太さん達と一緒じゃないと不安だ」
今の状態というのは、実咲が『文官』になって『モンスターカード』を入手状態のことを指す。
前回のダイブで、尚典と来斗の二人が倒した『逸脱個体』である『ゴブリン・エリートソルジャー』の『モンスターカード』がドロップしたため、事前に決めていたルール通り来斗が所有権を主張し、実咲にプレゼントしたのである。
ドロップしたてのモンスターカードは元がどうあれレベル1になっているが、それでも『逸脱個体』だ。かなりの戦闘力を期待できる。
だとしても、来斗が言う通り「初めての『モンスターカード』での戦闘」をわざわざ来斗と二人きりでやらなければならない理由はない。
幸いにして来斗は、ある程度自分の強さに自信を抱けるようになった精神的余裕と、健太、尚典という『同類』の話し相手に恵まれたおかげで、ダンジョンダイブを良い意味でゲーム感覚で捉えられるようになっている。
「『帰還珠』が購買で一つ10万『銭』だから、最低でも二人でのダイブの稼ぎが20万『銭』を超えるようになるまで、二人でのダイブは控えておきたい」
金と経験値、どちらかだけでも収支がマイナスになる狩場では絶対に狩りをしない、というのはゲーマーならば意識すらしていない常識だろう。
「ん、来斗に任せる」
隷属してから、急速に依存が進んでいる実咲はそう言って来斗にしがみ付く両腕の力を強める。
この時期の一年が一回のダイブで20万『銭』稼ぐ。そもそも、死に戻りではなく、危なくなったら『帰還珠』で離脱する。
色々と、学園の常識からずれ始めていることを、来斗も実咲もこの時点ではまだ、全く自覚していなかった。
ところ変わって一年辰組の教室。
健太が設立した倶楽部『安息所』のメンバーとなった男女ペア、霊王と珠貴は入学前からの知り合いで、同じ一年辰組のクラスメイトでもある。
最初から男女ペアを組み、(主に霊王が)周囲を警戒し過ぎていたこともあり、二人は教室でも孤立気味であった。
警戒自体は間違ったことではない。この学園の男子というのは控え目に言っても九十九%はろくでなしだ。ただし、警戒というのは過剰に発揮しすぎれば敵意にもつながる。誰だって、まだ何もしていないのに一方的に警戒されて良い気持ちはしないだろう。
過剰な警戒のせいで孤立していてふたりは、倶楽部『安息所』という寄る辺を得て、また自分たちもそれなりに強くなったことでハリネズミのような警戒は説くことが出来た。
しかし、時すでに遅し。すでにゴールデンウィーク明けだ。教室内の人間関係はほぼ固定されていた。
休み時間になっても、霊王にも珠貴にも近づいてくる人間はいない。
「すみません、お嬢。俺のせいでお嬢の立場が」
休み時間になったとたん、珠貴の席まで近づいてきた霊王は、大切なお嬢様に向かって深々と頭を上げる。
「気にするようなことじゃない。身の安全を考えれば、間違った判断じゃなかったさ」
珠貴は自分の席に座ったまま、隣に立つ霊王に向って小さく肩をすくめて見せた。
実際、教室の男子の視線に、邪な欲望を感じることは多々あった。霊王と珠貴が揃いのパートナーバッチと、倶楽部紋章ワッペンを付けてきたことでそれらの視線の持ち主は、あからさまに舌打ちをしていたのだから、案外間一髪だった可能性もある。
吊り目の三白眼を細め、珠貴は付け足す様に言う。
「それに、交友関係は教室内に限ることもない。幸い、烏琉羽姐さんにご紹介して頂いた方たちとは、上手くやっていけそうだしね」
烏琉羽に紹介された者とは、健太達『安息所』のメンバーのことだ。
最初の顔合わせ、その後ダンジョンダイブ。そして、倶楽部結成を祝う席で一通り話をしてみたが、悪い印象を抱いた相手はいない。健太、尚典、来斗の三人は第一印象とダンジョンでの戦闘力が全く釣り合っていなくて、結構な衝撃を受けたが。
「それならお嬢も白鶴荘に転寮するんすか?」
霊王がそう聞くのも当然と言えるくらいに、今白鶴荘は着々と『安息所』の牙城、もっと言えば健太の城になりつつある。
静香と麻衣が麻鷺荘に転寮したことで空いた二人部屋に、風音と幸子が入ることが決まっている。現状、蘭のルームメイトと竹海が一時的に部屋を交換しているから、健太のパートナーは全員白鶴荘住いだ。
霊王の問いに珠貴は少し考える。
「それも考えてはいる。私と実咲で一部屋借りられれば、ほぼ白鶴荘で倶楽部を完結できるからね。空亜先輩は「引っ越し面倒くさい」と言ってたから」
倶楽部『安息所』の女子部員は、実咲、珠貴、蘭、竹海、風音、幸子、空亜の七人。そのうち、蘭、風音、幸子は正式に白鶴荘の寮生。竹海は部屋の交換で一時的に白鶴荘に寝泊まり。これで、実咲と珠貴の一年女子二人が転寮してくれば、空亜以外は全員白鶴荘だ。
女子寮を自分たちの根城にしてしまう男子の集団というのは、この学園ではそこまで珍しくないが、それが女子に受け入れられているケースは少ない。さらに、女子に歓迎されているケースは極めてまれだ。
白鶴荘と倶楽部『安息所』男子の関係は、その極めて稀なケースに今のところ、当てはまる。
その弊害と言うのは流石に言い過ぎかもしれないが、部屋が空かない。上級生女子はこれまでの実感を持って、一年女子は寮の先輩の話や自分の寮生活とクラスメイトの話を照らし合わせて、今の白鶴荘が恵まれた環境であることを理解しているからだ。
とはいえ、それも個人の事情によっては覆る。ミドルクラスの寮に移動できるようになった者。パートナーとなった男子との関係から、別な寮に転寮する者。そして、最初からいなかったことになる者。
いずれはそういう者も出て来るだろう。さらに言えば、現状でも一人部屋には多少空きがある。竹海などは将来的には、白鶴荘の守衛隊に入る条件で一人部屋を確保するつもりらしい。
ただし、現状の『良い踊り子』のままでは守衛隊でも、色仕掛け要員となってしまう。正直竹海としてはそれでもかまわないのだが、それは確実にご主人様が嫌がる。
だから、『踊る勇者』に転職してから、白鶴荘に移ってくる予定になっている。そのためにも、健太が竹海のレベルアップを手伝う約束を取り付けていた。その辺り、竹海は抜け目ない。
まあ、その辺りは倶楽部の問題と言うより健太とそのパートナーの問題のため、霊王と珠貴は知らない事情だが。
「問題は、私と実咲で一部屋ということかな」
「え? 実咲と同部屋だと拙いっすか? お嬢と相性悪くなさそうに見てんすけど」
立ったまま細い首を傾げる霊王に、珠貴は苦笑しながら椅子に腰を下ろしたまま下から霊王の首に手を回し、グッと自分の方へと引き寄せる。
引き寄せた霊王の耳元で、珠貴はわざと耳に熱い吐息かかる様に、囁いた。
「馬鹿。お前と来斗のためだよ。お前達、同部屋じゃヤれないんだろ?」
セックスの為に、カップルごとに部屋を一つ必要とする。この学園では珍獣扱いされる健太たちの価値観は、霊王もある意味で一致している。自分のセックスを他人に見られるのはそこまで抵抗はないが、大切なお嬢様の裸を、ましてやセックスをしているところを他の男子など見られたくない。
「あ……」
珠貴の言葉に、霊王は一瞬で顔を紅潮させる。
「す、すんません。お嬢を守るって言っておきながら、俺が……!」
前回のダイブで霊王が『怪盗』、珠貴が『盗賊』に転職した日の夜。霊王と珠貴は、珠貴の部屋でセックスをした。ノービスから第二段階職にスキップ転職した霊王が、我慢できるはずもない。程度問題だが、それは珠貴も同様だった。
結果、守るべきお嬢様に自分の獣欲ぶつけてしまった霊王は、一通り終わった後(比喩ではなく)死ぬほど落ち込んだ。
その落ち込んだ精神も、珠貴が裸の胸に霊王のヒヨコのような柔らかな金髪で覆われた頭を抱き、落ち着いた口調で「大丈夫だ。私はお前を拒絶していない。私はお前を受けいている。これは私が望んだ結果だ」と言い続けて、どうにか復帰した(その後、別の意味でまた落ち込んだ)。
「いつまでごちゃごちゃ言ってるんじゃない。お前も実感しただろう? ダンジョンでレベル上げた後の衝動。あれは我慢し続けられるものじゃない。むしろ、学園が『こうなっている』のが必然だと理解できた。それなのに、望んだ相手一人とだけ肌を合わせていられる倶楽部の環境は破格だ。望外の幸運と言っても良い」
「あざっす」
「望んだ相手」という珠貴の言葉に、霊王は珠貴と初めてセックスをしたとき以上の幸福感に包まれる。同時に、「なんとしてもお嬢を守る」という決意を強める。
「だから、遠慮するんじゃないよ。ガンガンダイブして、ドンドン強くなりな。それで高ぶったモノは私が全部受け止めてやる。私を守ってくれるんだろ?」
「うっす!」
珠貴の言葉に、霊王は気合を入れなおす。
そのように、珠貴は誘導が上手くいったと安堵しながらも、自分の体の奥からジワリと湧き上がってくる熱を自覚する。
(ヤバいね。すでに堕ちかけてる。なんとかして隷属は回避したいところだけど、難しいだろうね)
第一段階職の珠貴と、第二段階職の霊王がセックスをすれば、当然のように珠貴の肢体は急速に霊王をご主人様として認識し始める。
珠貴自身は、別段霊王に隷属することをそこまで忌避していないだが、霊王は間違いなく珠貴を隷属させることを望まないだろう。
(最悪、堕ちた後で隷属していないふりを続けるか。蘭先輩にその辺りのやり方、聞いておくかね)
珠貴は、もう手遅れなくらいに深く隷属していながら、日頃は先輩としての口調と態度を崩さない蘭のことを思い出し、そんな計画を立てるのだった。