※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

91 / 142
第八十三話 日曜日のデート、日曜日の夜

 

 

 ゴールデンウィークが明けて数日たてば日曜日になる。

 豊葦原学園でも、日曜は当然のように休日だ。休日でも午前、午後の二回『羅城門(らしょうもん)』ダンジョンは開閉しているが、健太(けんた)は特別な用事がない限り、日曜日はパートナーと過ごす日と決めている。

 最初は(らん)、翌週は竹海(たけみ)。パートナーとなった順番で言えば今日は幸子(さちこ)の番なのだが、女子の間の話し合いで本日は風音(かざね)、来週日曜日に幸子(さちこ)という運びになった。

 一対一のデート。さらに、女子同士の話し合いの結果が反映される関係。世間の常識で言えば、四股男、それもほぼ毎晩四人同時にセックスをしているという、女の敵扱いされる健太(けんた)だが、ここ豊葦原学園では女子がこれより上の扱いを求めるのは非現実的、と言われるくらいに恵まれた関係である。

 

 とはいえ、これは別段健太(けんた)がパートナーへのサービスのため行っている行為というわけでもない。四人のパートナーと毎晩のようにセックスをするようになっても、価値観が童貞の頃からあまり変化していない健太(けんた)にとって、昼間のデートは夜のセックスに勝るとも劣らない憧れのイベントなのである。

 

 

 

 

 

 

 豊葦原学園は陸の孤島だ。そのため、たとえ休日でも出歩くことが出来るのが学園内か、学園から『中野駅』までの真っすぐな道の左右に広がる商店街――学生街だけだ。

 学園の学食はメニューが豊富だし、購買はちょっとしたデパートの規模があるので生活必需品はすべて揃う。

 だが、せっかくのデートなのだから、毛色の違う場所に向かうべきだろう。

 そんな思考から、健太(けんた)のデートは大体学生街がメインとなるのだった。

 

 

 

 

 

 多少毛色が違うと言っても所詮は、小さな学生街。デートで使える店舗は限られる。とはいえ先々週、(らん)と行ったデートコースほぼそのままもう一度なぞろうとしているのは、健太(けんた)の女性経験とデート適正の貧困さを表している。

 

 半月前、別な彼女と行ったデートコースに別な彼女を連れていく。

 

 そんな普通なら、バレた瞬間引っぱたかれて破談になるのが当たり前な対応でも、全く問題ないどころか「女子の扱いが良い男子」に分類されるのだから、この学園はつくづく、一部の男子にとって(表面上は)都合の良い箱庭であると言えるだろう。

 

 

 

「うわ、これ可愛い! ねえ、健太くんこれ可愛くない? 今の私可愛くない?」

 

 学生街で唯一の女子向け一般衣装を専門に取り扱うブティックで着替えた風音(かざね)はテンション高めに、くるりと回って見せる。

 

「え、はい、か、可愛いです、風音(かざね)先輩」

 

 答える健太(けんた)はテレを隠せず、視線を微妙に泳がせている。

 風音(かざね)健太(けんた)のパートナーとなって数日。毎晩セックスをして、とっくに風音(かざね)健太(けんた)に隷属している。当然、風音(かざね)の裸体は何度も見ているし、触っている。

 だがこうして昼日中、きっちり化粧をしてオシャレをする彼女に「可愛い?」と聞かれて見るのは、また違った恥ずかしさがある。

 

 下はデニム生地のハーフパンツで上はへそ出し肩だしの黒いシャツ。その上から青みを帯びたシースルー素材のシャツを重ね着している。シースルーシャツは前のボタンを一切止めていない。

 かなり大胆なファッションだが、学園外でも都心の繁華街ならば普通に街に溶け込める程度の大胆さだ。学園の基準で言えば、特に大胆でもない可愛いファッションでしかない。

 

「んー……うん! じゃ、これにする! ありがとうね、ご主人様!」

 

 健太(けんた)の反応がお世辞ではないことを確信した風音(かざね)は、勢いよく健太(けんた)に抱き着いた。

 

 

 

 

 

 

 

「くっふー! あー、久しぶりにちゃんと休日してるわー!」

 

 風音(かざね)は食べていたアイスクリームクレープの包み紙をゴミ箱に投げ込むと、思い切り伸びをする。

 事実、今の風音(かざね)は学園の門をくぐってから最もストレスの少ない時間を過ごしていた。

 学園普通科の女子にとって、主だったストレス原因は日々の男女関係、ダンジョンダイブのノルマ、『銭』の枯渇、そして補習レイドの回避。

 

 天候に恵まれた日曜の午前ということもあり、学生街には多くの男子、女子が歩いている。学生街を歩いている女子達もその大半は、笑顔で休日を楽しんでいる、ように見える。

 実際には、彼女たちの大半は本気で楽しんでいるわけではない。極めて近い(場合によっては明日から)の暗い未来から、全力で目を逸らして休日を楽しむふりをすることで、どうにか精神の摩耗を抑えている。そんな女子が多数派だ。

 

 一方、今の風音(かざね)は差し迫った問題がなにもない。週一のダンジョンダイブには頼もしいご主人様が連れて行ってくれるし、そこで獲得した『銭』はどんな場合でも頭割りなので、懐は温かい。その上で、こうしたデートの費用は丸ごとご主人様が持ってくれる。

 もちろん、もっと視点を遠くに向ければ、「今のままで無事卒業できるのか?」とか「卒業したあとの身の振り方はどうするのか?」といくらでも問題はあるのだが、そんな遠い視点を風音(かざね)は元から持ち合わせていない。

 むしろ、学園入学前を含めても今が人生で一番恵まれている状態と言えるくらいだ。

 

「けーんくん!」

 

 風音(かざね)は年下のパートナーの頼もしさを確認するように、隣を歩く健太(けんた)の腕に抱き着き、両足を地面から離す。

 女子の中でも小柄な部類に入る風音(かざね)の全体重など、(クラス)を馬鹿みたいに重ねている今の健太(けんた)にとっては、負担とすら感じられない。

 

「はい、風音(かざね)先輩」

 

「えへへ」

 

 抱き着く自分を自然に受け入れて微動だにしない、健太(けんた)の優しさと頼もしさを再確認した風音(かざね)はだらしのない、だが魅力的な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 単純な男女の相性という意味で言えば、実のところ健太(けんた)の現パートナー四人の中で風音(かざね)が一番良い。

 それは、健太(けんた)が自分に自信がない(というより前世の経験から「自分は異性に好かれないと結論を出している」)男子のため、女子に対してはいつまでたっても臆病な反応になるからだ。「好かれる」ことより「嫌われない」ことを優先な言動を取る。

 そして、好かれるための行動は安直に「相手の望みをかなえる。相手のいうことをきく」という方向ばかりになる。

 歯に衣着せぬ言い方をすれば、恋愛市場における最下層の思考と言える。いわゆる「頂き女子にとって格好のカモ」と言えば、分かりやすいかもしれない。

 

 この辺りが、健太(けんた)に捨てられることを文字通り死ぬほど恐れている(らん)幸子(さちこ)とは、相性が悪い理由だ。男女双方が相手に遠慮するのでは、その関係は色々ともどかしいことが多発してしまう。

 

 対して風音(かざね)は、ある意味学園普通科女子の典型とも言える、男に依存する――言い換えれば男に寄生することに躊躇いも罪悪感も抱かない質だ。

 むしろ健太(けんた)のようなタイプは適度におねだりをして、くれたモノやったくれたことに対して、ちゃんと喜びを表す方が良いという判断が下せる人間である。

 

 だから、本日午前のデートが大成功に終わったのも、その夜のセックスが非常に盛り上がったのも、意外なことではないのだった。

 

 

 

 ベッド上、裸で仰向けに寝る風音(かざね)の両太腿を割って、同じく裸の健太(けんた)が上から覆いかぶさっている。当然のように熱く固くなった健太(けんた)のペニスは、熱く潤う風音(かざね)(なか)に入っており、覆いかぶさる健太(けんた)が腰を動かすたびに、激しく出入りを繰り返している。

 正常位の体勢だ。

 

「あ、ん、い、いい!」

 

 上から覆いかぶさる健太(けんた)の背中に、風音(かざね)は下から両腕を回し、積極的に嬌声を上げる。

 

「もっと、もっとギュッてして」

 

 うるんだ瞳で見上げる風音(かざね)の要求にこたえ、健太(けんた)は覆いかぶさった体勢から両腕をベッドと風音(かざね)の背中の間に差し込み、風音(かざね)の華奢な体を強く抱きしめる。

 もちろん、十分に加減した上での強く、だ。

 日本人男子のほぼ平均な健太(けんた)が、日本人女子の中でも小柄な部類に入る風音(かざね)の上から覆いかぶされば、ほとんどすっぽり隠れてしまう。健太(けんた)にとっては新鮮な感覚だ。

 中肉中背の幸子(さちこ)はともかく、(らん)でも健太(けんた)の下に収まるサイズではないし、竹海(たけみ)に至っては「健太(けんた)竹海(たけみ)の体にしがみ付いている」ようなビジュアルになってしまう。

 (らん)竹海(たけみ)のような豊満な体つきが健太(けんた)の好みなのは間違いないが、こうして小柄で華奢な女子をすっぽり「自分の手の中に収める」感覚は、それとはまた違った達成感がある。

 

「んんー、チュッ、ン、ンチュッ」

 

 上から覆いかぶさられて抱きしめられた正常位で突かれながら、風音(かざね)は積極的にキスを強請り、口内で舌を絡め合う。上と下で粘膜結合し、身体も密着し合う体勢は、隷属状態の女子にとっては至福の快楽だ。

 隷属状態のセックスは嫌悪しているチンピラ男子にやられても抵抗できないくらいの快楽なのに、理性的にも感情的にも全面的に健太(けんた)を受け入れている風音(かざね)の場合、何の不安も不満もなくただ強い快楽と深い安心感にどっぷりと浸かってしまう。

 

 乳房の大きさは平均以下の風音(かざね)が仰向けになると、胸はないに等しい。だが、触れあう女子の肌の柔らかさはそれだけで心地よい。

 健太(けんた)は覆いかぶさった体勢で、風音(かざね)の小柄な体を抱きしめ、口づけを交わしたまま激しく腰を振りまくる。その必死さは、とても四人の上級生女子を隷属させている強者男子には見えない。

 

 ほどなくして健太(けんた)は限界を迎える。

 

「っすみません、風音(かざね)先輩、出ます」

 

 ずっと舌を絡めていた口を離してそういう健太(けんた)に、

 

「出して、いっぱい、出して!」

 

 風音(かざね)は媚と依存で完全に染まった甘い声で中出しを強請る。

 

「あ……あああ!」

 

 中に健太(けんた)の熱い体液を感じた瞬間、脳が焼き切れるほどの快楽を覚えた風音(かざね)は、快楽と幸福に包まれたまま意識を失うのだった。

 

 

 

 

 

 

 正常位で一回、後背位で一回、そして途中まで騎乗位(途中から対面座位)で一回。

 その度に快楽で意識を飛ばしていた風音(かざね)は、三度目の目覚めの後「ごめん、今日はもう限界」とギブアップの声を上げた。

 

「分かりました。じゃあ、これで終わりにしましょう」

 

 ギブアップをした女子をさらに攻める趣味などない健太(けんた)は、あっさりとそう答える。股間はまだ全く萎えていないのだが、我慢できないほどではない。

 そもそも、今夜の相手が風音(かざね)一人だけなのは、健太(けんた)から言い出した我が儘だ。

 

「出来ればデートの日は、夜もデートした相手と一対一でしたい」

 

 複数相手のハーレムセックスはもちろん大興奮ものだが、それはそれとして普通のデートからの普通のセックスにやけに高い価値と幻想を抱いているのは、モテない男ならば珍しくない価値観だろう。

 

 これまでは、白鶴荘でセックスが出来る部屋は(らん)(と優梨愛(ゆりあ))の部屋だけだったのでそんな我が儘も言い出せなかったが、幸子(さちこ)風音(かざね)が白鶴荘に転寮してきて二人部屋に入った今ならば、そんな我が儘もきく。

 

 (らん)竹海(たけみ)幸子(さちこ)の三人は、今夜は(らん)の部屋で就寝しているはずだ。久しぶりにご主人様と別の部屋でちゃんと眠れているかは分からない。

 ご主人様を感じられない夜に不満はあるだろうが、裏を返せば四週間に一度は「ご主人様を独占できる夜」があるということだ。

 現在、その特権を風音(かざね)は満喫していた。

 

「ふふーん、健太(けんた)くーん。ゴロゴロ」

 

 裸で寝そべる健太(けんた)の胸に頬を摺り寄せ、風音(かざね)は裸の華奢な体を目いっぱい健太(けんた)に押し付ける。

 

「…………」

 

 健太(けんた)はされるがままに受け入れて、風音(かざね)の背中に回した左手で風音(かざね)の行為を肯定するように、軽く抱き寄せる。

 何をしても受け入れられる。好意には絶対に好意が返って来る。そして、自分とご主人様のじゃれ合いの邪魔をする者は誰もいない。隷属した女子にとっては夢のような時間だ。

 

 健太(けんた)にとっても風音(かざね)と過ごした今日の時間は、午前のデートも夜の閨も精神をリフレッシュさせてくれる効果を感じていた。

 隷属していながら物おじせず、「あれが欲しい、こうして欲しい」と要求を言葉にしてくれる風音(かざね)の相手は、健太(けんた)のような男女の機微や駆け引きに疎い男子にとってはありがたい。

 (らん)は遠慮しがちだし、幸子(さちこ)に至っては「どうして欲しい?」と聞くことすら難しいので、表情や態度から推測し、対応を決めなければならない。竹海(たけみ)はどちらかというと風音(かざね)よりだが、その口にする要求が少々変則的だ。

 

 風音(かざね)との関係は分かりやすく、ホッとする。

 

 健太(けんた)がそんなことを考えていると、ふと何かを思い出した風音(かざね)はベッドの上に置いてあるデジタル式の置時計を手探りで掴むと、現在時刻を確認する。

 

「あ? 健太(けんた)くん、大変大変。もう、0時過ぎてるよ。お風呂行こ」

 

 にんまり笑う風音(かざね)の言葉に、健太(けんた)も横から風音(かざね)が持つ時計を覗き込む。確かに、時計は0時を少し過ぎた時間を示していた。

 

「あ、いえ。俺はもう少しゆっくりしてから、シャワーでも」

 

 一応抵抗を試みる健太(けんた)が、それが無駄な抵抗であることはこの数日で明らかだ。

 白鶴荘の寮長である四葉(よつば)から健太(けんた)が「大浴場の使用許可」が出ていることは、寮生ならば誰もが知るところだ。

 それを知った(らん)たちは案の定、健太(けんた)との入浴を希望していた。

 すでに(らん)たちに押し切られて、大浴場を使用した経験がある健太(けんた)だが、女子寮の大浴場に男子が一人で混ざる経験というのは、率直に目の保養であるし、ものすごく興奮する。間違っても悪いものではない。

 だが、身の置き所がなくて入浴本来の醍醐味である、まったり感やさっぱり感は全く味わえない。

 

 だから、出来れば遠慮したいという健太だったが(らん)幸子(さちこ)ならばともかく、風音(かざね)健太(けんた)の口先だけの拒絶で意思を曲げるはずもない。

 

「えー、やーだー、お風呂ー。健太(けんた)君と一緒にお風呂入るのー。シャワーだけじゃヤー、湯船につかりたーいー」

 

 そう言って健太(けんた)の裸の肩にアムアムと甘噛みを繰り返す。

 

「わかった、分かりましたから」

 

 結局健太(けんた)は、簡単に風音(かざね)のおねだりに押し切られる。

 

「やった。んじゃ、いこ」

 

 早めにギブアップしていた風音(かざね)はすでに体力が戻っているらしく、小柄な裸体をベッドの上で弾ませるようにして床に降りる。そして、薄いピンク色のバスタオルを探し出すと、慣れた手つきで体に巻き付けて、洗面道具一式を手に持つ。

 

「準備オッケー」

 

「ち、ちょっと待ってください」

 

 どうせ女子寮の中だ、とバスタオル一枚巻いただけで大浴場に向かうつもりの風音(かざね)に対し、健太(けんた)は慌ててウェットタオルで股間を吹き、トランクスとズボンをはき、Tシャツを着こむ。

 いくら寮長直々の許可が出ているといっても、そこには守るべき分別というものがある。その一線を守っているから、自分は女子寮に寝泊まりすることを許されているのだ、と健太(けんた)は考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 健太(けんた)に『白鶴荘の大浴場使用許可』が下りたことが寮生全員に周知されてしまったとき、ある程度観念した健太(けんた)は一つの声明を出した。

 

 それは「自分は深夜の0時から1時の間しか大浴場を使用しない」というものである。

 

 (らん)たちパートナーに押し切られて大浴場を使うことになるのはもはや避けられないにしても、白鶴荘の寮生達に迷惑をかけるのは忍びない。まだすれていない一年女子を中心に、男子と一緒の入浴に拒絶反応を示す女子もいるだろう。

 そうでなくとも、この学園では女子が男がらみでひどい目にあうことは日常茶飯事だ。普段ならば気にしない女子でも、昼間に男子に滅茶苦茶に輪姦(まわ)された日の夜などは、ゆっくり体を綺麗にしたいと考えるのが普通だ。

 それなのに、本来男子禁制の女子寮のその中でももっとも男子の立ち入りが制限される大浴場に男子がいつ入って来るか分からないとなれば、彼女たちの穏やかな入浴時間を奪うことになってしまう。

 

 だから、男子と一緒の入浴が嫌な者は避けられるように、時間を区切ったのだ。それも、比較的使用する人間が少ないはずの深夜0時から1時という時間に。

 それは、確かに健太(けんた)との混浴に忌避感を覚える一部の寮生からは歓迎された。健太(けんた)の意図したとおりである。

 

 問題は、それ以外の大多数の寮生だ。

 彼女たちは大歓迎した。0時から1時の間ならば健太(けんた)と混浴が出来る、と健太(けんた)自ら白状してくれたのだから。

 

 

 

 

「あ、来た来た!」

 

「やったー、今夜も粘った甲斐があった」

 

「まだ前タオルで隠してる。かわいー」

 

健太(けんた)くーん、こっちこっち。こっち空いてるよ」

 

「いや、こっちだよ。空いてないから、私の膝の上どうぞ」

 

 脱衣所で服を脱いでいる時からすでに分かっていたことだが、白鶴荘の大浴場は深夜という時間にもかかわらず、二十人近い寮生達がひしめき合っていた。

 当たり前だがいずれも全裸で、健太(けんた)を見ても腕やタオルで体を隠すそぶりも見せず、歓声と嬌声を上げている。

 

「すみません、通してください」

 

 エントリークラスの女子寮に過ぎない白鶴荘の大浴場はそこまで広く作られていない。これだけの人数が同時に入ると、先客と触れあわずに空いている洗い場までたどり着くのも困難なくらいだ。

 

「はーい、踊り子さんには手を触れないように」

 

 タオルで前を隠す健太(けんた)とは裏腹に、堂々と裸体を晒した風音(かざね)がそう言って道を開けるように指示するが、皆大きく下がってはくれない。通ろうと思えば通れるが、体と体が触れ合ってしまうくらいの距離を維持している。

 覚悟を決めた健太(けんた)がその狭い女体トンネルをくぐると、

 

「あん!」

 

「ふふっ、オッパイ触られちゃった」

 

「私はお尻」

 

「きゃっ!?」

 

 もう声だけで何が無事ではすまなかったことが分かる声が上がる。ちなみに最後の悲鳴はものすごいわざとらしい。ソープで足を滑らせた、ということらしいのだが、健太(けんた)の方に倒れこむように転ぶのはどう考えてもわざとだろう。

 だからといって健太(けんた)が避ければ、固い浴室の床に体を打つことも間違いないので、健太(けんた)としては避けることも出来ない。

 

「大丈夫ですか、詩織(しおり)先輩」

 

 ため息をつきながら、裸の女子を裸で受け止めた健太(けんた)に、その女子はさらにわざとらしく目を潤ませて、

 

「ありがとうございます、貴方は命の恩人です。お礼は私のこの体で」

 

 と言って、流石に風音(かざね)にストップをかけられている。

 

「こーら、それはやりすぎ。ほら、健太(けんた)君の邪魔しないの」

 

 

 

 白鶴荘の大浴場を利用するのはまだ片手で数えられるほどだが、その少ない経験で健太(けんた)は一つのことを学んだ。

 それは、「人間は顔と頭を洗うときは、どうしようもなく無防備になる」という事実である。

 特にこだわりがあるわけではないが、健太(けんた)は習慣で最初に頭、次に顔。それから体という順番で洗う癖がついている。だが、白鶴荘の大浴場では自分で体を洗ったことがない。

 

 目を瞑って頭と顔を洗っている間に、いつの間にか全身が泡だらけになるのだ。主犯は一緒に大浴場に来るパートナー(今夜なら風音(かざね))だが、多くの(クラス)を重ねて感覚が鋭敏になっている健太(けんた)には、目を瞑っていてもわかる。

 自分の体を泡立てたボディソープで(まさぐ)る腕は、絶対に二本以下ではなかった、と。

 

「ふう、ふう、ふう……」

 

 どうにか今夜は射精せずに耐えきった健太(けんた)は、頭からシャワーを浴びて自分で洗った頭のシャンプーと、いつの間にか全身に塗付されたボディーソープを洗い流す。

 

「大丈夫、健太(けんた)君? ほんとにいやだったらこいつら吹っ飛ばしても良いんだよ?」

 

 全く抵抗せずにおもちゃにされている健太(けんた)に、流石にちょっと心配になった風音(かざね)が小首を傾げるようにしてそう言う。

 

「いえ、大丈夫です」

 

 万が一が怖い健太(けんた)としては、そう答えるしかない。裸の女子など健太(けんた)が少し力加減を間違えただけで怪我をさせてしまうのだ。とてもではないが、実力行使に出ることなど、出来るはずもない。

 それに、学園女子は全員美女、美少女だ。裸の女子に全身を弄られて、羞恥心や困惑はあるが、嬉しさや気持ちよさがないと言えば嘘になる。

 

「まあ、健太(けんた)君が良いなら良いけど。でも、今夜は私が優先。でしょ?」

 

「はい。それはもちろんです。風音(かざね)先輩」

 

「なら、よろし」

 

 健太(けんた)の答えに、風音(かざね)は日頃はサイドテールに結んでいる赤い長髪から水しぶきが飛ぶほどに、強く頷いた。

 

 

 

 

 どうにか頭、顔、体を洗い終えれば、湯船につかることになる。

 大浴場の醍醐味は、やはりこの広い湯船だろう。思い切り足を延ばして湯につかるのは、リラックス効果が非常に高い。

 湯船の中では、寮生たちもあまり過激ないたずらはしてこない。初日に(かなり上手に)股間をいじられた健太(けんた)が、珍しく「ここではやめてください」とかなり強めの声を出したからだ。

 流石に、湯船の中で『暴発』しては、羞恥心と申し訳なさで死にたくなる。その結果が、洗い場でのいたずらに全力を向けられる現状になったのだが。

 

「ふー」

 

 思わず気持ちの良さが声に出てしまった健太(けんた)に、隣でくっつくようにして湯船を使っていた風音(かざね)が体を摺り寄せて来る。

 

「ふふ、健太(けんた)くーん。チュッ」

 

 最近少しずつ筋肉が発達してきた健太(けんた)の胸に横から抱き着くようにして、風音(かざね)健太(けんた)の頬に口づけをする。お互い裸なのに、風音(かざね)のその行為には不思議と性的な接触を目的とした雰囲気がない。ただ、素直に好意を行動で表しているだけ。

 そんな風音(かざね)の気持ちが伝わったのか、健太(けんた)は半ば無意識のうちに右腕を風音(かざね)の肩に回す。

 

「ん、ふふ。ふふふ」

 

 健太(けんた)の行動に、風音(かざね)は目を細めてご機嫌な声を上げるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。