――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――
――第『捌』階層、『既知外』領域――
麻鷺荘で叶馬が乙葉と手合わせを済ませた数日後。
叶馬達はいつものメンバーに乙葉を加えてダンジョンダイブを敢行していた。
「とろくせえ『影刃』」
いつも通り先陣を切る誠一は、オークナイトが振り下ろす長槍をフットワークで回避し、足元に伸びる影に逆手で持った二丁のナイフを突き立てる。
固い床に阻まれることなく、二丁のナイフが影に沈むと当時に、オークナイトの足の甲を突き破る様に影の棘が生えて来る。
「ピギャア!?」
たまらず悲鳴を上げるオークナイトだったが、その悲鳴を最後まで上げることも出来なかった。
「オークってゴブリンより大きい分、狙いやすいよね」
後方から麻衣が放った『魔砲』がその頭部を消し飛ばしたからである。
「ギャッ!?」「ヒギッ!」「イテッ!」
高威力で直線的な『魔砲』はそのまま後ろのオークナイト数匹にもダメージを与えた。
それでも敵対するオークの集団は、密集方陣を大きく乱さず、群れ全体で一つの生き物のような統率で近づいてくる。
オークは通常の個体でも身長二メートル、体重二百キロを超える巨体だ。この群れの場合末端がオークナイトのため、それよりさらに一回り大きい。
武装も通常のオークのような裸に腰蓑、武器は棍棒などという貧相なものではない。皆が最低でも部分鎧を纏い、武器は片手槍か長剣。そして、全員が大きめの盾を持ち、自分だけではなく隣の仲間も守れるようにギチギチに密集している。
その総数は優に百を超えている。
その威容は、半端なダンジョン攻略勢でも死に戻りを覚悟するほどだ。
しかし、ここは地下迷宮型階層の玄室。冗談のような広さを誇っていてもその床は平たん。同じ高さの開けた場所で彼女――沙姫の前に立つのはあまりに悪手だった。
「ちぇい!」
と気合一閃。『鉄擬態木』製の鞘から抜き放たれた『水虎王刀』は、とてつもなく伸びた『水』の刃でオーク密集方陣を横薙ぎに斬り抜ける。
結果、
「ヒギッ!?」「ギャア!!」「ワアアン!」「ブヒイ!?」「パイア!」「フギイ!?」「パピィ!」
驚異の密集方陣を築いていたオークの軍勢は、下半身を失った経験値の塊に成り下がったのだった。
下半身を失っても、すぐには死なないくらいの生命力がオークにはある。その中でも、ごく少数混ざっていたオークマギは動けなくとも魔法という攻撃を遠方に届かせる手段がある。
「ワオーン! ワン、オン!」
そんなオークマギを雪狼が氷雪の吐息で容赦なく氷漬けにしていく。もちろん、オークマギを狙ってもピンポイントにオークマギだけを仕留めることはできない。周囲のオークナイトも多少巻き添えになるが、そこは大した問題ではない。
「良い感じです」
「よくやったです」
戻ってきた雪狼は、海春、夏海の双子に頭や顎を撫でられて嬉しそうに目を細めて、太い尻尾をブンブン振っている。
「パイアアア!!」
そんな中、ただ一匹まだ戦意を失っていない群れのボス――オークハイロードは、床を這いずり三メートルを超える大剣を杖に、どうにか立ち上がろうとする。
しかし、無情にもそのオークハイロードの頭上で『重圧の甲冑』を纏った叶馬が大きく足を上げる。両手を両ひざの上に載せたまま左足一本で立ち、右足の足の裏が天を向くほどに上げた足を一思いに踏み下ろす。
「よいしょっ!」
「パッ!?」
叶馬の四股で後頭部を踏みつぶされたオークハイロードは、そのまま瘴気へと返っていった。
全員が足を失い、オークマギが氷雪に散り、ボスであるオークハイロードが踏みつぶされれば、後はただの経験値稼ぎだ。
足、もしくは下半身を失い、うめき声を上げるしか出来なくなっているオークナイトの群れに、叶馬一行はとどめを刺して回る。
「はっ、せいっ」
特に静香には優先的に回される。海春、夏海の双子がモンスターカードという戦闘力を入手した現状、静香がダントツで戦闘力が低い。こうしてパーティーがとどめを譲る形で経験値を稼がせてやらないと、一人レベルアップが遅れてしまうのだ。
「あ、んっ。すみません、これはちょっと私の力では」
現在静香が使っている槍は、『匠工房』製のそれなりに良いものなのだが、今の静香の力では分隊長格であるオークロードには中々ダメージが通らない。
「んじゃそれは俺が貰うわ。俺も今回あんま倒せてないし」
「だったら、もう一匹は私がもらうー、ほい、《オレンジボール》」
だからその二匹は、誠一と麻衣がとどめを刺す。
そうして全てのオークにとどめを刺し終えたところで、叶馬達は現場に残っているクリスタルとドロップアイテムの物色に入る。
「いつもありがとうございます」
「静香姉様は戦闘が役割ではありませんから」
「ですです」
「姫ちんもおつ。人型のモンスターはドロップ装備が美味しいよね」
「ああ。蜜柑先輩達のとこに持ち込めば、良い感じにしてくれるだろ」
剣、槍、盾、鎧。他にも牙、骨、皮、内臓といった生体器官も含めて、大量のドロップ品がボロボロ落ちていることを、ごく当たり前として受け止める叶馬パーティー一同の前で、乙葉は一人頭を抱える。
「待って、いやほんとちょっと待って。なんでこんなにドロップ品が落ちるの? え? なに? 君たちの中になんかすごいパッシブのレアスキル持ちとかいたりする?」
「うむ?」
乙葉の言葉に叶馬は、いつも通りの無表情のまま小首を傾げたが、特に何も言わずに拾い集めたモンスターカードを手の中でシャッフルして楽しんでいる。
「叶馬さん。ドロップアイテムは一度まとめて管理するルールです」
「むう」
静香の言葉に叶馬は無表情のまま、分かる者には分かるちょっと未練がましい声を上げながら、モンスターカードの束を手渡す。
基本、叶馬はこうした一度決まったルールは積極的には破らない。緊急時には別だし、その緊急事態を叶馬は超常の勘で察していることも多いので、はたから見ると約束を破りまくる奴にも見えたりするが。
「ていうか、そもそもなんでオークの上位種がぞろぞろ出て来るわけ? ここって第五層なんでしょ?」
叶馬達の主張を信じて、第五層のつもりでこの場についてきていた乙葉は、見ていて面白いくらいに混乱している。
ちなみに、オークが出没し始めるのは第六層からだ。それも第六層で出るのは通常個体のみ。オークナイトは第七層からたまに顔を出すレア個体で、オークロードは『階層守護者』以外で出没したという話を聞かない。
叶馬が踏みつぶしたオークハイロードに至っては、曲がりなりにもダンジョン勢である乙葉が聞いたこともない。
ちなみに乙葉の所属する倶楽部の主力パーティー(乙葉もその一人だ)でも、オークナイトの群れには苦戦を強いられるし、オークロードに統率されていれば高確率で全滅する。
オークハイロードならば、一匹相手でも全滅必至だろう。
そのオークロードの使用していた大剣もドロップしている。
「あ、一番偉そうなオークが持ってた剣もドロップしてるー」
「『蛇母の贈り物』、だそうだ」
「うーん、強そうだけど刀じゃないなら無用ですねー」
「では、これも蜜柑先輩のお土産だな。試し斬りに使いたいなら沙姫に分配しても良いぞ?」
「あ、それ良いかも。じゃ、もらって良いですか?」
レア個体からドロップしたレア武器を「試し斬り」に使うという恐ろしい話に、乙葉は頭痛をこらえるように片手で頭を抱える。
「そういや、叶馬。お前、前の大剣はどうしたんだ? 『獅子王大剣』とかいう御大層なやつ」
ふと思い出したように尋ねる誠一に、叶馬はしばし視線を泳がせた後、観念したように口を開く。
「……折れた。やつは『餓鬼王棍棒』との対決に敗れた。見た目ばかり立派な根性なしだ。蜜柑先輩に修復を依頼したのだが、先輩のラブリーな悲鳴と表情を引き出すことが出来たのが、唯一の戦果か」
「おまっ!? もう一本は大丈夫だろうな!? 『聖雄長剣』は預かってるだけで、所有者は健太だろ!?」
「むろん、健太の所有物に手を出すほど俺も落ちぶれてはいない。大剣が折れて以降、なぜか長剣に刻まれていた文字が光を失ったのだが、大剣が折れた事との因果関係は不明だ」
「どう考えても、そのせいだろうが! 同時にドロップした、同じ意匠の大剣と長剣だぞ! 健太への弁償はどうすんだよ!?」
長剣の一件が無くても、健太への債務が返済不能レベルで積み重なっていると感じている静香は、誠一の言葉に密かにため息をつく。
「本当にどうしましょう」
マジックアイテムとマジックアイテムのぶつかり稽古というそら恐ろしい話に意識が遠のきかけていた乙葉だったが、途中出て来た名前に意識を取り戻す。
「健太くんって確か前に一緒に麻鷺荘に来てた子よね? 随分中良さそうにしてたけど、彼はパーティーメンバーじゃないの?」
「健太は強敵と書いて親友と読む、いわゆるライバルです」
「健太さんは別な倶楽部を自分で立ち上げていますから。ダンジョンダイブはご一緒することも多いのですが、正式なメンバーではありません」
自分の言いたいことを言ってあまり問いの答えになっていない叶馬の回答を補足するように、静香がそう後に続ける。
「そう。一番まともそうな子なのに、別なのね」
残念そうにため息をつく乙葉に誠一は不本意そうに、
「あ? 健太がまとも? 俺よりもか?」
「ちょっと見ならそうだよ。叶馬くんのおかしさと違って健くんのヤバさって、すぐには分かんないから」
麻衣がそう言って誠一のフォローと、健太への追撃を同時にこなした。
一通り確認を終えたドロップアイテムを叶馬の『空間収納』に放り込み(また乙葉が騒いだ)、少し落ち着いたところで乙葉から強い疑問の声が上がる。
「いくらなんでもおかしい。ここ本当に第五層?」と。
急速にポンコツ女騎士として親しまれて始めている乙葉だが、れっきとしたダンジョン勢の上級生であることも事実である。その乙葉がはっきりと「おかしい」と言い切れば、流石に叶馬達も確認ぐらいはするか、と考える。
「ええと『位置』を『具象化』です」
夏海は少し戸惑いながらも、そう言って『文官』の基本スキルである『位置』を少々特殊な形で発動させる。
『位置』はその名前の通り、自分の現在地を知るスキルである。それは本来スキルを使用した人間の脳内に映像と座標数値として浮かび上がるのだが、モンスターカードからモンスターを召喚するスキル『具象化』と組み合わせることで、第三者にも見えるように映像を投射することができる。
夏海の両掌の上に、開かれた本の幻影が現れ、その本の上にダンジョンの立体地図が浮かび上がる。
多くのスキルに共通することだが、『位置』のスキルは使用者のレベルが上がると、スキルの効果が上昇するようになっている。具体的に言えば、入手できる情報が増えるようになっているのだ。なり立ての『文官』ならば現在地の座標の数値しか分からないが、今の夏海の『位置』では、現在地の階層もしっかり表示される。
表示される階層情報は「第八階層」。
「第五階層じゃなくて第八階層か。‥………いつからズレてた?」
誠一がため息をつきながら、首を傾げる。基本的に、下の階層に移動するには下の階層に繋がる『界門』を潜る以外に方法はない。
一年が最初にダイブした時は、極めて稀な例外の除き、必ず第一階層から始まる。一つ、『界門』を潜れば第二階層。二つ目で第三階層。叶馬達はこれまでに四つ『界門』を潜ったので第五階層だとごく当たり前に考えていた。
だが、『文官』のスキルはここが第八階層であると示している。
学園の資料でオークが出没するのは、第六階層からと記されている。最高到達階層が第十二階層(もちろん『既知』領域だが)だという乙葉も、それは間違いないと言う。
ならば、ここは第八階層なのだろう。
三階層分のズレ。そのうち二階層分については、原作を知る健太に聞けば教えてくれるだろう。「最初からだ」と。
一年が最初にダイブすると、第一階層の既知領域にログインするとされているが、この場合の最初というのは、「ファーストダイブ」のことではない。
新入生全員が教室単位で第一門――『始界門』から行う『ファーストダイブ』は普通科の場合、死に戻り前提で『羅城門』に魂魄パターンを登録するためのものだ。
その後、通常のダイブは第二、第三、第四の『常世門』で行われる。この時、ファーストダイブで死に戻りしている新入生はログインポイントを持っていないため、自動的に第一階層の『既知』領域にログインすることになるのだ。
しかし、叶馬(と健太)は、その例外。ファーストダイブの生き残り。そのため、『常世門』を用いた最初のダイブでも「前回ログアウトした情報」が残っているため、自動的にログインポイントはそちらになる。
「ファーストダイブ」でランダムに飛ばされた『既知外』領域第三層に。
つまり、叶馬達が第一階層だと思ってた階層が実は第三階層だったのだ。一のつもりが三。この時点で、階層は二つ下にずれている。
しかし、実態として叶馬達は第八階層を第五階層だと思っていた。ズレは下に三つ。もう一つ分多くズレている。
「そういや、俺達が今日まで潜った『界門』は四つじゃなくて五つだったわ」という大ボケを叶馬パーティーの全員がやっていない限り、この一つ分のズレは不明である。
考えられるのは、どこかの『界門』が一つ下ではなく二つ下に繋がる『界門』だったという可能性だろうか。『既知外』領域ならばそのくらいの狂いはあってもおかしくないのかもしれない。
「あー、三階くらいなら誤差の範囲内?」
「ちゃんと斬れば死ぬから問題ないです」
「少々不思議ですが、まあ叶馬さんと一緒にいれば気にするほどのことではないかと」
そもそも、その程度のズレを気にしているのは、叶馬パーティーには誠一しかいない。
実際、全員この階層でも問題なくやっていける能力を有している。そういう意味では「気にしない」という判断も間違いではないだろう。
この学園で生きていけば、説明がつかない謎現象に遭遇することは、大なり小なり誰もが避けられないのだから。
「うむ。皆なら大丈夫だ」
・船坂叶馬(雷神、レベル3)
・小野寺誠一(忍者、レベル23)
・芦屋静香(巫女、レベル22)
・薄野麻衣(魔術士、レベル25)
・南郷沙姫(剣豪、レベル28)
・神塚海春(司祭、レベル16)
・神塚夏海(案内人、レベル16)
・青葉城乙葉(騎士、レベル18)
『情報閲覧』で自分を含めた皆の状態を確認した叶馬は、そう言って無意味に重々しく頷くのだった。
翌日、新たなる倶楽部が正式に設立された。
その名は倶楽部『神匠騎士団』。麻鷺荘のミーティングルーム入り口に、堂々とその名を記した看板が掲げられている。看板の隅に(仮設部室)と書かれている。
感慨深げにその看板を見上げる叶馬達の横で、怒りと呆れでブルブル震えているのは、麻鷺荘寮長の乙葉である。
「ちょっと、なによ、これ?」
「え? あれ? 乙葉ちゃんの許可を取ってるってリンゴちゃんが」
乙葉の怒りの形相に、小柄な蜜柑は戸惑った様子で怒りに震える乙葉といつも通りの眠そうな目をした凛子をかわるがわる見る。
「取ってるわよ。「好きにしていい」って」
「このミーティングルームに『匠工房』の機材を置かせてくれ」という交渉の時、確かにそのようなことを言った覚えのある乙葉は、少したじろぐ。
「い、言った、けど……だからって常識ってものがあるでしょ!?」
と乙葉ががなるのも無理はない。
現『神匠騎士団』仮部室、元麻鷺荘ミーティングルームは、原形をとどめないほどのリフォームがされている。現在進行形である。こうしている間も、旧『匠工房』の面々がカンカン、ギコギコ、ジュウジュウ、ギュインギュインと改造の真っ最中だ。
旧『匠工房』の『職人』達がその腕を振るえるように、色々増設しているらしい。
すでに、麻鷺荘の他の寮生達には根回しが住んでいる。寮生の武具は無料でメンテナンスをする。ポーションや料理、お菓子、香水などを一定数無料で配布などで、彼女たちは全員買収済みだ。
ただ一人、そういう買収もきかなさそうで、事前に制止する権限を持つ寮長の乙葉だけが今の今まで蚊帳の外にされていた。
「シャアア……!」
目を吊り上げて、威嚇音を発している乙葉の後ろから、静香が小声で囁く。
「その辺りの話は夜にでもじっくりしましょう。もちろん、叶馬さんも交えて」
「…………」
その言葉に、乙葉は表情を一変させる。頬を赤らめて俯いて、ちらっと叶馬の方を見ている。すでに、堕ちているのだ。抵抗は無意味と言えば無意味だった。
「健太に後れを取ったが、これでも俺も約束を果たせそうだな」
正式に部長となった叶馬は、そう言ってまた何度も頷く。
「そういや健太も無事倶楽部作ったんだっけか。『安息所』だったか?」
「はい。倶楽部『安息所』。健太さんを部長とする、総勢十一名の新制Fランク倶楽部です」
『神匠騎士団』の面々にとって健太は知らぬ中ではない。手の空いているメンバーは、(叶馬以外)皆自分の電子学生手帳で倶楽部『安息所』について検索する。
学生手帳で調べられる正式データなど、部員の名前、性別、学年、所属教室程度だがそれだけでも興味を持ってみるとそれなりに気が付くことがある。
「一年男子が四人、一年女子が二人、二年女子が五人。男女比率は四対七か。結構歪な人数比かな。まあ、私たちは人のこと言えないけど」
一般的にダンジョン勢の倶楽部は男子の比率が高く、エンジョイ勢の倶楽部は女子の比率が高いとされてる。ダンジョン勢の上位層倶楽部ならば、そもそも自分の倶楽部に囲っておかなくても女子に困らないし、なんなら同盟を結んで傘下に組み込んだ倶楽部に女子を大量にキープしていたりする。
「あれ? この空亜ちゃんって麻鷺寮の子じゃなかった?」
「そうですね。となると、尚典君はあの子ですね。あの可愛い子。泊まりに来るたび、朱音と紫苑に食べられてる。確かそんな名前だったはず」
「霊王君と珠貴さんは私と同じ教室です」
「どういう人です?」
「弱そうなチンピラとヤクザの若姐さんです。いつも二人でいます。他に仲間はいないみたいです。そう言えば以前はピリピリして周りを威嚇してたけど、最近は落ち着いてたです?」
「蘭先輩はやっぱりいるんだ。そうだよね。健太君の最初のパートナーだもんね。健太君ドはまりしてたし」
「ああ、白鶴荘の。そう言えば、そうでしたね」
「男子は四人だけですか」
「案ずるな、沙姫。あの健太の眼鏡にかなった男子、いずれも劣らぬ兵に違いない」
「そうですね、御屋形様!」
叶馬達が盛り上がっている中、一人ハブられていた乙葉はその輪に入らず、いじけている。
「乙葉も見ないの? この寮の子もいるらしいわよ」
「別に気にするほどのことじゃないでしょ。この寮の子達だってほぼ全員どこかの倶楽部には所属してるんだし」
すっかり拗ねてしまった乙葉は、意地を張ってそう答えてしまうのだった。