※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

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※感想で指摘を頂いた通り、本文下部の『選択可能職業一覧』に大幅な誤りがありました。
一応、一番新しいデータを確認して修正したのですが、時系列ごとのまとめデータに誤りがあったので、再度修正することになるかもしれません。
ご了承ください。


第八十六話 第十階層の『界門守護者(ゲートキーパー)』、第十一階層の探索

 

 

――穿界迷宮『YGGDRASILL』、接続枝界『黄泉比良坂』――

 

 

 

 

 

 

 

 ――第『(じゅう)』階層、『既知外(きちがい)』領域――

 

 

 

 

 

 その(ドラゴン)は大きかった。ただひたすら大きかった。四足歩行で首の長い恐竜タイプの(ドラゴン)だが、全高――地面から頭頂部までの距離――は五十七メートルくらいはありそうだ。全長――鼻先から尾の先端までの距離――ならば余裕で百メートルを超えている。

 体重も五百五十トンどころではない。一千トンの大台を超えて居そうな威容である。

 

 その巨竜に両手剣を構えた健太(けんた)は、単身立ち向かっていた。柄は数十メートルほども伸ばして、刀身にもSPを大量に注いで『鋭刃(シャープネス)』を強く発動させている。

 健太(けんた)の大剣の刀身は、普段は灰色の岩のような鈍く大きく分厚い刃だが、SPを注いで『鋭刃(シャープネス)』を発動させることで、その刀身は黒く、薄く小さく、それでいてなぜか重くなっていく。

 現在、その刀身は僅かに灰色がかった黒、厚さは通常の槍の穂先程度、大きさはギリギリ一尺(約三十センチ)強。健太(けんた)が獲得している侍系SR職『大身槍士(オオミヤリツカイ)』は装備が「大身槍であること」という制限がある。

 大身槍とは、穂先が一尺以上ある槍のことだ。そのため小さくし過ぎると『大身槍士(オオミヤリツカイ)』のスキルが使えなくなるのだ。

 

「《せい》!」

 

 健太(けんた)は数十メートルも伸ばした大剣――大身槍を巧みに振るい、巨竜の長い首を切り裂き、突き穿つ。巨竜の外皮は天然の鎧だ。並みの武器ではダメージが通らない。しかし、侍系の攻撃スキルには意図的にクリティカルを起こせるものがある。クリティカルは大半の防御を無視してダメージを通す。事実、健太(けんた)の攻撃で巨竜の表皮には切り傷が生まれ、そこから鮮血が滲んでいる。

 しかし、巨竜はその見た目通り、外皮の防御力以上に巨体ゆえの生命力が尋常ではない。

 

「グラララ!」

 

 遥か上空で雷鳴にも似た鳴き声を上げる巨竜はおもむろに右前足を持ち上げる。

 

「ッ! 《はっ》!」

 

 その動きを察知した瞬間、健太(けんた)は『強盗(ローグ)』のスキル『俊動(スイフト)』を発動させ、一気に距離を取る。

 確かに、巨竜の脚は太い。その足の裏だけでちょっとした一軒家がすっぽり踏みつぶせそうなほどだ。だが、健太(けんた)が回避した距離はそれを考慮してもあまりに大げさだ。

 

 健太(けんた)の大げさなまでの回避距離の理由は次の瞬間に判明した。

 

 巨竜の右前足が地面に振り下ろされた瞬間、轟音を立てて大地は揺れ、同時にその足の周囲から黄金色の雷撃が周囲に迸ったのである。

 

「ッ。これだけ離れてもダメージが来る、か。『雷震竜(ブロントサウルス)』とはそう言う意味ではないだろう」

 

 理不尽な広域攻撃に『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっているのも関わらず、健太(けんた)の口から愚痴めいた言葉が漏れる。

 ブロントサウルスのブロントは古代ギリシャ語の雷(ブロントス)に由来する。だがそれは「足音が雷鳴の如く響きそうな巨体」だからであって、「実際に一歩ごとに周囲に雷撃を迸らせる」というわけではなかったはずだ。

 

 まあ、ここはあくまでダンジョンでこのモンスターもブロントサウルスを連想させる姿かたちというだけで、実際のブロントサウルスではない(そもそも実際のブロントサウルスはここまで大きくない)。

 だが、ここまで理不尽な全方位攻撃を連発されると、多少は愚痴も出てしまうのだろう。

 

司祭(プリースト)』や『増強術士(エンハンサー)』の防御スキルを大量に付与している健太(けんた)だが、『雷震竜(ブロントサウルス)』の雷撃は、余波でもその守りを貫き、健太(けんた)にダメージを与えていた。

 とはいえ馬鹿のように(クラス)を重ねている分、生命力も上がっている健太(けんた)にとっては無視できる程度のダメージだし、それらはすぐに『遊び人(ニート)』のスキル『自慰(リジェネレート)』をかけているので、あっという間に回復する。

 一方『雷震竜(ブロントサウルス)』は、外皮の防御力と巨体ゆえの生命力は絶大だが、目に見えるような回復力は有していないようだ。だから、削り合いの持久戦ならば最終的に勝利は転がり込んでくる。

 健太(けんた)としては持久戦上等なのだが、ダンジョン内では同じ場所に一時間以上とどまり続ければ『天敵者(アグレッサー)』が出没するという問題が付きまとう。

 

 なるほど、学園の戦闘職の大半が攻撃偏重になるわけだ。

 

 そんな納得を今更ながら感じた健太(けんた)は、すぐに思考を切り替える。

 

「《はっ》《ふっはっ》」

 

 『盗賊(シーフ)』のスキル『空歩(ステップ)』と『強盗(ローグ)』の『二歩(ダブルステップ)』の連続発動で健太(けんた)は、六十メートル近い『雷震竜(ブロントサウルス)』の頭上より高く、駆け上がる。

 

「グラ?」

 

 強さのほぼすべてが大きさに由来するのか、あまり頭の良くない『雷震竜(ブロントサウルス)』は飛び上がる健太(けんた)を見上げるように、呑気に上を向く。

 その視線の先で健太(けんた)は両手で持つ大剣の切っ先を向けていた。

 

「《尖れ》《伸びろ》」

 

 先ほど同様、大剣の二つの能力『鋭刃(シャープネス)』と『伸縮自裁(テレスコープ)』を発動させる。ただし、込めるSPは先ほどの比ではない。穂先は一寸(約三十センチ)未満どころか三センチほどまで圧縮され、厚さはさながら単分子刃(モノモレキュアエッジ)の如き。

 その十数メートルまで伸ばした槍を健太(けんた)は空中で構えると、ちょうど再使用制限時間(クールタイム)が終わった『空歩(ステップ)』で空を天井裏のように蹴り、こちらを見上げる『雷震竜(ブロントサウルス)』の顔めがけて超高速で落下する。

 そして、

 

「《はっ》!」

 

 最善のタイミングで『闘士(ウォーリア)』のスキル『豪撃(クラッシュ)』を乗せて、槍と化した大剣で突きを放つ。

 

「グララ!?」

 

 大剣は健太(けんた)の思惑通り『雷震竜(ブロントサウルス)』の長い鼻面を上あごと下あごを縫い付けるように貫いた。

雷震竜(ブロントサウルス)』の巨体を比べれば、健太(けんた)の大剣など針どころか髪の毛のような細さだ。ダメージとしては大したものではないだろう。しかし、どれだけ細くとも口を縫い付けるように貫かれれば、不快感は激増する。

 

「グ、グウ、グラララアア!」

 

雷震竜(ブロントサウルス)』はイヤイヤをするように長い首をブンブン振りまわし、四本の野太い足で地団太を踏む。その一歩ごとに大地に黄金色の雷撃が放射状に広がるので、地上はさながら輝く黄金の大地だ。

 今、地上にいたらさしもの健太(けんた)でも、結構シャレにならないダメージを負っていただろう。しかし、健太(けんた)は『雷震竜(ブロントサウルス)』がどれほど激しく首を振っても、両手でしっかりと大剣の柄を掴んでいた。

 両手がふさがっていても健太(けんた)には、攻撃手段が残っている。どれだけ激しく振られても、この状態からならばその攻撃を目標に当てるのはたやすい。

 

「《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》」

 

 健太(けんた)は振り回されてもずっと視界に移っている『雷震竜(ブロントサウルス)』の頭部目掛け、連続して『岩投槍(ロックジャベリン)』を放つ。『岩投槍(ロックジャベリン)』は、『精霊使い(シャーマン)』の攻撃スキルだ。その名の通り、岩でできた長い槍のような弾を高速で打ち出す魔法である。『術士(マギ)』の『石弾(ストーンブリッド)』の上位攻撃魔法とも言える。

 ただの『精霊使い(シャーマン)』でも『岩投槍(ロックジャベリン)』は使えるが、健太(けんた)の場合はそれに重ねて『土精霊使い(アースシャーマン)』でもある。

 元々健太(けんた)は地水火風の四属性では、土が一番相性が良い。そのおかげもあり、竜種は魔法に対する抵抗力も極めて強いのだが、健太(けんた)の『岩投槍(ロックジャベリン)』しっかりと『雷震竜(ブロントサウルス)』の頭部に突き刺さっていた。

 

「グラアア!!」

 

「《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》《岩石射出(ロックシュート)》…………」

 

 狂ったように頭を振ります『雷震竜(ブロントサウルス)』だが、『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)は全く動じず、淡々と『岩投槍(ロックジャベリン)』を打ち続ける。

 

 モンスターは瘴気が固まってできた存在だが、形を取っている間はその形の生命に引きずられてしまう。すなわち、動物の形を取るモンスターは動物の急所がそのまま急所として働く。それは、竜種とはいえ恐竜に原型を求めるこの『雷震竜(ブロントサウルス)』も同様だ。

 連続する岩槍に外皮が抉られ、頭蓋骨が破られ、ついに何十投目かの岩槍が、巨体からは想像もつかないくらいに小さな脳に達した時、『雷震竜(ブロントサウルス)』の命脈は尽きたのだった。

 

 

 

 

 

 ほどなくして、『雷震竜(ブロントサウルス)』の巨体が瘴気へと返り、空中に放り出されたけた健太(けんた)は空中で体勢を立て直して、『魔術士(ウィザード)』のスキル『落下制御(フォーリングコントロール)』で落下速度を緩めて、問題なく着陸に成功する。

 健太(けんた)が下りた大地は、元々豊かな草木が生い茂っていたのだが、『雷震竜(ブロントサウルス)』の足踏みでずたずたに耕され、雷撃に焼きはらわれてしまっていた。

 

「当たり前だが、『界門(ゲート)』は無事か」

 

 健太(けんた)は『雷震竜(ブロントサウルス)』が守っていた第十一階層に続く『界門(ゲート)』が無事存在しているのを見て、そう呟く。

 大地は深いところで十メートル以上陥没し、今も雷撃で焼き払われた草木の焦げる臭いが立ち込めている。そんな地獄のような周囲の風景とは裏腹に、『界門(ゲート)』はなんの影響もうけていない。

 

「第十一階層『砂漠草原(デザートサバンナ)』。ジュゲムの騎獣を探すならそこだな」

 

 第十階層は原則竜種しか出没しない階層だ。竜種は強力なモンスターだが、騎獣にするには『竜騎兵(ドラグーン)』のようなそれ専用の(クラス)についている必要がある。ゴブリン『槍獣騎士(ランスビーストナイト)』であるジュゲムの騎獣となるモノは見つからない。

 

「しばらくは、第十一階層を広く探索するか」

 

 そんなことを呟きながら、健太(けんた)は第十一階層に繋がる『界門(ゲート)』の前まで足を運び、ふと手の中にある今回の戦利品に目を落とす。

 

 

 

 名称:『雷震竜(ブロントサウルス)

 

 種族:竜

 

 属性:雷

 

 階位:1

 

 能力:『竜因子(ドラゴンジーン)』 『雷獣(サンダービースト)』 『無限成長(インフィニティグロース)』『物質主義(キムラヌート)

 

 存在強度:☆☆☆☆

 

(よわい)を重ねる度に肥大化を続ける竜。大きく、どこまでも大きく】

 

 

 

「いや、どうしろと?」

 

 健太(けんた)は『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっているにも関わらず、困惑の声を上げる。

 

 全高五十七メートル、全長百数十メートル、体重千数百トン。背中に余裕で学園の体育館が乗るサイズのモンスターの使い道は、簡単には思いつかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第十一階層、通称『砂漠草原(デザートサバンナ)』。健太(けんた)が降り立った場所はその中でも砂漠のイメージが強い場所だった。

 乾燥してひび割れた大地に、強力に降り注ぐ太陽。これでも自然領域(ネイチャーフィールド)の中では優しい環境だというのだから、なるほど十階層より下はただ戦闘力があるだけではクリアできないというのも納得だ。

 

「ジュゲム、ボンド。周囲を警戒してくれ《地図帳(アトラス)》」

 

「ブイ」

 

「オン!」

 

 重短槍を構えるゴブリン『槍獣騎士(ランスビーストナイト)』のジュゲムと、韋駄天の短剣を構えるコボルト『無法者(アウトロー)』のボンドが守りを固める中、健太(けんた)は『地図帳(アトラス)』のスキルで周囲の情報を集める。

地図帳(アトラス)』は『文官(オフィサー)』系の上級職『案内人(パスフェンダー)』のスキルだ。効果は「広範囲の詳細な地形情報の把握」だ。『文官(オフィサー)』のスキル『位置(ロケーション)』の上位互換と言っても良い。

 

 健太(けんた)は脳裏に映る広大且つ詳細な地図を半ば自動的に『脳外記憶領域(クラウドストレージ)』に落しながら、方針を決定する。

 

水場(オアシス)があるな。ひとまずはそっちを目指すか。エロール、トレミー、モモノスケ《来い》」

 

 健太(けんた)は、ジュゲムとボンドだけでなく、『赤梟頭熊(レッドヘッドオウルベア)』のエロール、『徹甲虫(ペネトレイトビートル)』のトレミー、そして『応龍(ヒィンロン)』のモモノスケを召喚する。

応龍(ヒィンロン)』のモモノスケは、全長十メートル近い東洋龍だ。細長い胴体は鱗に覆われ、顔には神秘的な長い髭。短い四本の脚にはそれぞれ五本の爪が生えている。

 名前に反して鱗の色合いは桃色ではなく、灰色がかった青。強い水の属性を持ちながら空が飛べて、火も吹けるという非常に万能で強力なモンスターだ。

 健太(けんた)が召喚したモンスター五匹の中では一番新参者でレベルもまだ1のままだが、間違いなく一番強力なモンスターだろう。

 

 エロールの巨体と浮遊するモモノスケは非常に目立つが、元からこの『砂漠草原(デザートサバンナ)』は、身を隠すところがほとんどない平坦な地形だ。開き直って最大戦力で進むのが正解だと、健太(けんた)は判断を下す。

 

「行くぞ。ボンドは先頭で索敵、ジュゲムはボンドの護り。エロールは俺の後ろ。トレミーは俺の右肩の上。モモノスケは俺の頭上を浮遊してついてこい」

 

 健太(けんた)と五匹のモンスターは、地平線の向こうにある水場(オアシス)目掛け、ゆっくりと歩きだした。

 

 

 

 

 

既知外(きちがい)』領域は、上の階層に繋がる『界門(ゲート)』周辺の安全地帯を抜ければ、モンスターラッシュが待っている。それは、ここ第十一階層『砂漠草原(デザートサバンナ)』でも変わらない。

 健太(けんた)が『地図帳(アトラス)』で発見した水場(オアシス)にたどり着くまでのさほど長くない道中、健太(けんた)一行は何度もモンスターの大群を駆逐していた。

 最初は『大牛羚羊(ジャイアントヌー)』百数十頭の群れ。次に、『蛇尾山羊獅子(キメラ)』数十頭。砂砂漠地帯に入ると、地中から無数の『砂蚯蚓(サンドワーム)』が大口を開けて、健太(けんた)たちを飲み込もうとしてきた。

 

 だが、いずれも今の健太(けんた)たちの敵ではない。『大牛羚羊(ジャイアントヌー)』の群れはモモノスケの火炎吐息(ファイヤーブレス)でほとんどが健太(けんた)たちに到達する前に消し炭になったし、『蛇尾山羊獅子(キメラ)』の群れはエロールのぶちかまし一発で半壊した。

砂蚯蚓(サンドワーム)』の地中からの奇襲はどこからやって来るか分からない厄介な代物だが、事前に察知したボンドがそちらに短剣を向けて示してくれるので、楽勝だった。

 

 そうして、水場(オアシス)が見えてきたところで、健太(けんた)は第十一階層での戦闘を振り返る。

 

「数は多いが、強さはさほどでもないな。経験値やドロップ品のおいしさでも格段に下がる。単純にレベルアップだけを考えれば、第十階層で竜種相手に連戦する方が良い」

 

 今健太(けんた)は安全のため五枚のモンスターカードを『具象化(リアライズ)』しているため、入って来る経験値は基本的には六分の一になっている。だが、それを加味しても、第十階層ならばこれくらいの時間戦闘を繰り返していれば、とっくに今ついている(クラス)もカンスト出来ていたはずだ。

 

「多様なモンスターが売りな第十一階層だから、騎獣候補には期待してるんだが。『砂着馬(サンドホース)』も『粘土馬(クレイホース)』も全く見当たらん。『既知外(きちがい)』領域の弊害だな」

 

既知(きち)』領域では大手を振って歩いているモンスターが『既知外(きちがい)』領域では絶滅しているというのはこれまでの階層でも多々あった。

砂着馬(サンドホース)』と『粘土馬(クレイホース)』はどちらも第十一階層の『既知』領域でよく見られるモンスターだ。攻撃力が低いし騎獣としての移動速度もさほどでもないが、タフで扱いやすいので『騎士(ナイト)』系ならばひとまず騎獣候補に数える。

 だが、それ以上に人気なのは、馬型モンスターの多分に漏れず、どちらのモンスターもモンスターカードになった場合確定で『馬蹄(ホースシュー)』のスキルが付いていることである。

馬蹄(ホースシュー)』は使い勝手の良い移動系スキルだ。主に靴系の装備に『合成(エンチャント)』すれば、鈍足の(クラス)の底上げになる。

 健太(けんた)としては、自分の騎獣用としても、来斗(らいと)の装備の『合成(エンチャント)』用としても是非確保したいところだったのだが、本気で狙うならばもっと『既知(きち)』領域に近づく必要があるだろう。

 

 そんなことを考えながら歩いていると、先頭を任せていたボンドが警戒の声を上げる。

 

「オン!」

 

 ボンドの視線の先を追うように視界を動かすと、健太(けんた)にもすぐそれが見えた。

 

 水場(オアシス)からこちら向って飛来するモンスターの群れ。

 

「なるほど。あの水場(オアシス)は『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の縄張りだったか」

 

 健太(けんた)の言葉通り、それは『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の群れだった。『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』はその名の通り、トンボのような四枚の羽をはやしたカバである。

 大きさは通常のカバを一回り大きくした程度だが、トンボのような薄い四枚の羽で理不尽にもかなり高速で飛ぶことができる。現実のカバがそうであるように、『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』も非常に縄張り意識が強く、縄張りに入って来るよそ者には極めて高い攻撃性を示すことで知られている。

 

 瞬く間に、頭上の青空が『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の大群で陰る。並みのパーティーはもちろんのこと、Aランクの下位倶楽部のパーティーでも全滅を覚悟するほど状況だ。だが、『戦士の不動心(マインドスイッチ)』がオンになっている健太(けんた)は冷静に、戦闘を選択する。

 

「よし、落すか。モモノスケ、乗せてくれ。ジュゲム、ボンド、エロールは落ちて来た敵を叩け。トレミーは指示があるまで肩に止まってろ」

 

 健太(けんた)は素早く指示を出すと、地面すれすれまで高度を下げた『応龍(ヒィンロン)』のモモノスケの背中に飛び乗る。

騎士(ナイト)』系だけでも複数の(クラス)についている健太(けんた)の騎乗適性は劇的に上がっている。それは、騎乗難易度が高い飛行系騎獣であっても十分なほどだ。『文官(オフィサー)』の『具象化(リアライズ)』で召喚しているモンスターは、『騎士(ナイト)』系の(クラス)として契約を結んだ騎獣ほどではないが、召喚者の指示通りに動いてくれる。

 

「《伸びろ》《はあ》《せい》」

 

 密集して飛来する『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の群れに飛び込んだ健太(けんた)は、モモノスケに跨ったまま右手一本で長大に柄を伸ばした大剣を振りまわし、同時に左手からその大剣に負けないほどに長い火炎を放ち、こちらも無造作に振りまわす。

 

「ガア!」「ギッ!?」「バッ!」「ヤッベ!」「ゴバッ!?」

 

蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』は、健太(けんた)が右手の大剣を振るたびに数匹、左手の火炎を振りまわすたびに数匹と、まるで殺虫剤に撒かれた虫のようにバタバタと地上に落ちていく。

火炎放射(フレイムスロワー)』は『魔術士(ウィザード)』の攻撃スキルだが、それを騎乗状態で武器攻撃と同時に行使しているのは、『術騎士(マギナイト)』のパッシブスキル『騎乗術適性』の効果だ。

術騎士(マギナイト)』は、第一段階職である『術士(マギ)』と同程度の魔法攻撃を、武器攻撃と並行して操ることができる。他の騎士に比べれば一段落ちるが、それでも騎士である以上防御力も高いし、『挑発(プロヴォーク)』などで味方を守るスキルも使える。

 そのため『術騎士(マギナイト)』のさらなる上級職になれば、攻撃、防御、魔法を全く同時に繰り出すことが出来るとも言われている。

 

 ひとまず、今の健太(けんた)にとっては空飛ぶモンスターに乗ったまま、自在に武器と魔法を操ることが出来るだけで、十分に使える(クラス)だ。

 

「よし、次々落すぞ。《はあ》!《召喚・風》」

 

 健太(けんた)は右手一本で振るう大剣で『豪撃(クラッシュ)』を放ちながら、飛行能力を有する風の下級精霊も次々と召喚し、『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポタマス)』にけしかけていく。風の下級精霊の操る程度の風では致命傷には程遠いが、上手く羽を傷つけることが出来れば地上に不時着させることができる。

 

 ちらりと見たところ、地上に落してしまえば、ジュゲム、ボンド、エロール達の敵ではないようだ。

 ほどなくして、百匹を超える『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の群れは、全て健太(けんた)たちの成長の糧になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事、『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の群れを撃太はした健太(けんた)だったが、その後少し予定外の出来事に遭遇していた。

 

「ジュゲム、本当にそいつで良いのか?」

 

「グウ」

 

蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』に跨ったジュゲムは、満足そうな顔で頷き返す。地上に落ちた『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』を倒して回っていたゴブリン『槍獣騎士(ランスビーストナイト)』のジュゲムは、『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の一匹を騎獣としていた。

蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の羽は正確にはトンボというよりイトトンボに近い。現在ジュゲムを乗せて地上に降りている『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』の羽は、地面に伏せるように下ろされるのではなく、身体の左右に沿うように閉じられている。

 現在のジュゲムは百七十センチの七十キロ強はあるのだが、並みのカバより一回り大きな『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』は、完全武装のジュゲムを乗せても全く問題ない。恐らくは、走行、飛行の速度もほとんど落ちないだろう。

蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』は地上を走るのも苦手としてない。速度も持久力もなかなかのものだ。その上、分厚い皮膚に覆われている体は防御力も高いし、大口による噛みつきの攻撃も脅威。

 騎獣としては、バランスの取れた結構なハイスペックと言えるだろう。問題は、見た目がとても悪いことだけなのだが、厳ついゴブリンのジュゲムが騎乗する分には、これくらいの方がつり合いが取れているのかもしれない。

 正直、真っ白な天馬(ペガサス)や金色の鷲獅子(グリフォン)にゴブリンのジュゲムが騎乗するより、似合っていることは間違いない。

 

「分かった。お前が良いなら問題ない」

 

 幸い、騎獣は後から乗り換えることも可能だ。そうでなければ、強力な騎獣の選択肢が少ない第二段階職の『騎士(ナイト)』は、更なる転職(クラスチェンジ)まで騎獣を我慢しなければならなくなる。

 

 ジュゲムの騎獣の話が終わったところで、健太(けんた)は脳裏に映る文字列に意識を向ける。

 

 

 

 

義賊(ソーシャルバンデッド)R』

 

 

 

大剣士(グレートソーズマン)R』『槍騎士(ランスナイト)R』『(サムライ)

 

詠唱術士(キャスター)方士(ファンシィ)R』『火精霊使い(フレイムシャーマン)R』『風精霊使い(ウィンドシャーマン)R』『水精霊使い(アクアシャーマン)R』 

 

神官戦士(プリーストファイター)SR』

 

鍛冶士(ブラックスミス)』『金細工士(オルフェーヴル)R』合成士(シンセサイザー)SR』

 

書記(レコーダー)』『使役者(テイマー)SR』『測量士(サーペイヤー)創札士(クリエイター)SR』

 

独りよがり(オナルシスト)SR』

 

 

 

戦闘士(グラディエーター)』『襲闘士(ストライカー)剛拳士(ナックルロード)R』重装騎士(ヘヴィアームドナイト)』『堅牢盾士(ロバストシールダー)R』『鏡盾騎士(ミラーナイト)R』魔法騎士(マジックナイト)SR』竜騎兵(ドラグーン)R』馬上槍武者(バジョウヤリムシャ)SR』『浪漫闘士(ロマンチックウォリアー)SR』『小妖精騎士(ピクシーナイト)SR』

 

略奪者(バーグラー)』『山賊団長(バンデッドリーダー)R』

 

魔女男(ウォーロック)咒法師(コンジャラー)退神師(ゴッドリパレント)SR』精霊契約者(エレメンタルコントラクター)土精霊契約者(アースエレメンタルコントラクター)』『拡大術士(ブースター)R』『紋章魔術士(エムブレムウィザード)SR』

 

司教(ビショップ)SR』

 

牢名主(ロウナヌシ)一人達者(グッドオナニスト)SR』

 

 

 に転職可能。

 

 

 

 ※お客様のご契約、ご利用状況では、以下の職クラスは選択できません。

 

 

 

聖賢見習い(リシサン)GR』『石猿見習い(メイホウサン)GR』伝承の英雄(スクリーンヒーロー)GR』称号獲得者(タイトルホルダー)GR』

 

 

 

 

 追加された(クラス)には、予想外のものも混ざっている。

 

「ひとまずは、水場(オアシス)まで行くか。『蜻蛉河馬(ダムザルフライヒポポタマス)』は排他的なモンスターだから今の水場(オアシス)はモンスターの空白地帯になっているはずだ」

 

 そこで一休みしながら、可能であれば補習レイド用の装備を整えたい。『文字魔術士(ルーンウィザード)』だけでなく、『職人(クラフター)』系の『彫金士(ホワイトスミス)』と『素材製造士(マテリアルメーカー)』をとった今の健太(けんた)は、出来ることが格段に増えているのだ。

 

 レイドクエストを円滑に進めるためのマジックアイテムを自作する。そのためのアイディアはいくつかある。

 

「水の確保は文字魔術でどうにかなる目途がついた。食料は流石にレイドのモンスターや植物を狩るしかないとして。問題は住居だな。最初から蜜柑(みかん)先輩達と合流できればいいが、出来なかったらとしても学園が用意している『ベースポイント』は断固拒否だからな」

 

 そこには他の補習受講者が集まっているのだ。当然、女子だけではなく男子も。当然のように『ベースキャンプ』の中では補習レイドの間中、大乱交が続く。そんなところに泊まるくらいならば、野宿する方がよほどましだ。

 

「よし、行くぞ」

 

 健太(けんた)は次の(クラス)決めをいったん棚上げにして、水場(オアシス)に向って歩き出すのだった。

 

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