※この作品はR-18です。

ハイスクール転生アンド巻き込まれ   作:ミタライ

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第八十八話 土下座の謝罪、精一杯の奉仕

 

 

 

 

「すみませんでした!」

 

 その日の夕方。白鶴荘の蘭(らん)の部屋で、健太(けんた)は四人のパートナーの前で土下座をしていた。帰ってきたばかりの健太(けんた)は制服のジャケットを脱いだだけの姿だが、女子四人は全員ラフな部屋着に着替えている。

 

「嘘……ご主人様が補習?」

 

「…………」

 

「学生手帳が壊れていたことを忘れていた、か……なるほど?」

 

「健くんのあほー! ぼけー! なにやってんだー! 三連休が台無しじゃんかー!」

 

 呆然とする蘭(らん)。言葉もない幸子(さちこ)。驚きは示しつつも、なにか面白がる表情を浮かべる竹海(たけみ)。はっきりと怒ってくれる風音(かざね)の存在が、ものすごくありがたい。

 

「あ、うん。そうなんだ。うん、わかったわ。そ、それなら準備、準備は出来てるのかしら? 補習レイドは長期間、レイド空間に拘束されるから準備が大事よ」

 

「お待ちしております、御主人様」

 

 無理に微笑んで理解を示そうとする蘭(らん)と、とにかくすぐに従順な反応を繰り出す幸子(さちこ)の姿に、健太(けんた)の良心はザクザクと痛む。

 

「本当にすみませんでした、蘭(らん)先輩、幸子(さちこ)先輩。竹海(たけみ)先輩。風音(かざね)先輩。この埋め合わせは、出来るだけ早めにちゃんとしますから」

 

「気にしなくていいのよ、健太(けんた)君。私達のことは気にしないで」

 

「そうです、御主人様。すべては御主人様のなさりたいように」

 

 頑張って微笑む蘭(らん)と、儚く笑う幸子(さちこ)に罪悪感を刺激されまくり、このままでは精神ダメージが致死量に達しそうになりかけていた健太(けんた)を救ってくれたのは風音(かざね)だった。

 

「蘭(らん)と幸子(さちこ)はちょーっと静かにしてようか。二人の言動はナチュラルな精神攻撃になってる。それ以上は過剰攻撃だから」

 

 そう言って蘭(らん)と幸子(さちこ)の理解ある言葉(せいしんこうげき)を止めてくれた風音(かざね)は、ゆったりとしたハーフパンツ姿で床で正座する健太(けんた)の目に足を広げて立つ。

 

「健くん。今回のこと、悪いと思ってるんだね?」

 

「はい」

 

 きっちり非難してくれる風音(かざね)の言葉に、健太(けんた)は元気を取り戻し、はっきりと答える。

 

「うん、よろしい。それじゃ、今回のお詫びとして三日にもう一日利子を付けて、四日。四日、私達とデートする事。もちろん、いつもの日曜のあれとは別にだよ。平日の午後を私たちに使って」

 

「風音(かざね)!?」

 

「蘭(らん)、ここは風音(かざね)に任せて」

 

 学園の男女関係の常識で判断すれば、あまりに図々しい注文を付ける風音(かざね)の言葉に、白いタオル生地のワンピース姿の蘭(らん)が蒼白になるが、竹海(たけみ)が後ろから蘭(らん)を制止する。ちなみに竹海(たけみ)はタンクトップに下は下着のパンツだけだ。ブラジャーすらつけていない。

 

「はい。分かりました!」

 

 分かりやすい具体的な形で「お詫び」の仕方を提示された健太(けんた)は、救われた表情で何度も首肯する。

 平日の午後は、ダンジョンダイブとトレーニングジムと図書館で大体予定が埋まっている健太(けんた)だが、ダンジョンダイブは階層深度もレベルも予定よりかなり進んでいる。蘭(らん)たちへのお詫びならば、四日ぐらいどうということもない。

 

「決まったね。蘭(らん)、幸子(さちこ)。私達のご主人様はこういう人だよ。君らの過ごしてきた学園生活を思えばすぐには無理だろうけど、少しずつ慣れていこう」

 

 竹海(たけみ)はパンと手を打ち鳴らし、我が儘を言うことを恐れている蘭(らん)と幸子(さちこ)が何か言う前に、そう言って話を纏める。

 

「それが分かってるなら、竹海(たけみ)先輩も口添えしてくれても良かったのでは」

 

 詫びが終わったことで正座を崩す健太(けんた)が、少し恨みがましい口調でそう言うが、竹海(たけみ)はベッドの上でその長くて肉付きの良い足で胡坐をかきながら、

 

「そこまで親切にしてあげる気にはなれなかったね。ご主人様の『うっかり』に、私もそれなりにショックは受けているんだよ」

 

 そう言って笑いながら、圧をかけるように床に座る健太(けんた)を見下ろす。

 

「すみません」

 

 再び恐縮する健太(けんた)に、竹海(たけみ)はヒラヒラと手を振る。

 

「うん、ごめんなさいはその辺にしておこう。キリがないから。ご主人様が補習を受けなければならない事実は私達には変えようがないのだから、補習を無事に終えられるように動くべきだ。

 ご主人様は、補習の内容は理解してるかな?」

 

「はい。レイドに突っ込まれるんですよね。それもクリア不能状態の高難易度レイドに」

 

 豊葦原学園のダンジョンダイブでは、『レイド』という言葉に複数の意味があるので少々ややこしいのだが、ここで健太(けんた)が言う『レイド』とは、『羅城門(らしょうもん)』ダンジョン内で発見される特異点――『レイド領域』のことを指す。

 

『レイド領域』とは簡単に言えば、ダンジョン内で発見されるダンジョンだ。

 

 階層を移動する『界門(ゲート)』とは別の『異界門(レイドゲート)』と呼ばれる扉が見つかることがある。

 その中は、完全な異世界だ。レイド領域と通常のダンジョンの最大の違いは、「死に戻りで出られない」ことがあげられるだろう。

 通常のダンジョン内で死ねば、ダンジョンの外に「死に戻り」するが、レイド領域では「死に戻り」で戻るのはレイド領域内なのだ。

 そして、通常通り二、三、四の『常世門』を使ってのダイブの延長でそのまま突っ込んだ場合、死の戻りで記憶を失うのも変わらない。

 しかも、通常のダンジョンダイブならば『羅城門』の閉門時に強制的にログアウトさせられるのに、レイド領域に入っているとそのレイドをクリアするまで内部に捕らわれたままになってしまう。

 

 それがどんな結果を招くは言うまでもないだろう。死に戻るたびに死に戻ったことすら忘れて、『レイド領域』のスタート地点からやり直すのだ。やり直している自覚もないのだから、同じように進めて大体の場合はまた同じように死ぬ。戻る。また、死ぬ。

 そうして、擦り切れた者は『レイド領域』に捕らわれて、もう戻ってこられない。

 

 死に戻りの際、0.02%の確率で起こると言われている『人間のカード化』と同じくらい発生している『ロスト』の主要原因の一つだ。

 

 その危険を防ぐため、一般的に『レイド領域』へのダイブは、第五門『極界門』を使用することが推奨されている。

『極界門』からのダイブでは、死に戻りによる記憶の喪失が起こらない。そのため、レイド内で死に戻っても自分が死んだことも、どのようにして死んだのか記憶しているため、行動の修正が出来る。

 ただし、それはイコール「死ぬときの苦痛もすべて覚えている」ということでもあるのだが。補習レイドを含めたレイドクエストが大多数の女子に死ぬほど恐れられている理由である。

 

 さらに、『極界門』はダイブ前に、内部に滞在する時間を一日単位で設定ことができる。その日数を過ぎれば、強制的にログアウトされるのだ。

 それは時には「あとちょっとでクリアできるところだったのに!」という事態を生むことにもなるが、「レイド領域に捕らわれる」という最悪は高確率で防ぐことができる(その規定日数内で死に戻りしまくった場合は間に合わないことがあるので、絶対ではない)。

 

「まあ、その辺は理解してるか」

 

 竹海(たけみ)はそう言って、部屋の片隅で存在感を放っている、本格登山用のような大きなバックパックに視線を向けた。

 それは先ほど健太(けんた)が、購買で購入してきたものだ。補習レイドは定期試験の後だけだが、『レイドクエスト』自体は頻繁に行われているのでレイドクエスト用の装備は、ある程度学園側でパッケージを作って販売している。

 それに、健太(けんた)が事前に考えていたあれこれを足したり引いたりして作り上げた、『レイドクエスト用装備』である。ちなみに武装やマジックアイテム各種はまだロッカーに預けてあるので、ここには持ち込んでいない。

 

「見せてもらっても良いかな?」

 

「もちろんです。というか、先輩たちのアドバイスを頂きたくて持ってきました。皆さんで見て、忌憚ない意見をお願いします」

 

 竹海(たけみ)の言葉にそう答えた健太(けんた)だが、それは本心からの言葉である。

 心構えは一カ月前からしていたし、それとなく情報収集をして必要な物リストは、『脳外記憶領域(クラウドストレージ)』にリストアップしてあり、今回はそれと照らし合わせて、すべて購入してきたつもりだ。

 だが、健太(けんた)は所詮実際の『レイドクエスト』は未経験の身だ。そういう人間は、とんでもないものを忘れていてもおかしくはない。

 

 健太(けんた)の言葉に、最初は竹海(たけみ)と風音(かざね)が、少し遅れて蘭(らん)が、最後にずっと遅れて幸子(さちこ)が好奇心に負けたように、バックパックを覗き込む。

 

「うわ、スゴイ。水の『元素結晶(エレメンタルクリスタル)』がこんなに!?」

 

「野戦食(レーション)と栄養菓子(カロリーバー)も購買の最高級品がぎっしりだよ。まるきり、AやSランク倶楽部のレイドクエスト並みだ。こんな贅沢装備で初めての補習レイドクエストに挑む一年生は、間違いなく前代未聞だろうね」

 

 風音(かざね)の驚きの声に、竹海(たけみ)はあきれたような笑い声でそう返す。

 

 風音(かざね)が見つけた水の『元素結晶(エレメンタルクリスタル)』とはその名の通り、四元素(エレメンタル)を摘出、純化、結晶化したものだ。水の『元素結晶(エレメンタルクリスタル)』の場合、中底に特殊な魔方陣が描かれた水筒に放り込めばほどけて、水を生み出し続けてくれる。

 爪の先ほどの大きさで、水十リットルほどを生むという、水を小さく、軽くして持ち込める夢のようなアイテムである。

 

 竹海(たけみ)が言う野戦食(レーション)と栄養菓子(カロリーバー)は言うまでもなく、食料だ。

 水と食料。何はなくとも、この二つが無ければどうにもならない。

 

 補習レイドクエストは、現実時間では三日だが、ダンジョン内は時間が歪んでいる。学園では『時空圧差』と名付けている現状だ。

 通常の『羅城門(らしょうもん)』ダンジョン内は、第十階層で一.一倍、第二十階層で一.五倍、第三十階層でも二倍程度に収まるが、レイド領域は話が変わる。

 レイド領域は、その難易度ごとに『時空圧差』が変わる。下から順に初級で二倍、中級で四倍、上級で六倍、超級で八倍、極級で十倍だ。

 

 補習レイドクエストの目的はクリア不能状態のレイドに人を入れることで一時的に鎮静化させることのため、使われるレイドは超級以上。原作通り、『轟天の石榴山』レイドに入るのならば九倍になる。

 九倍。補習期間は現実で三日間。つまり体感的には二十七日、レイド領域に閉じ込められることになる。

 健太(けんた)が狙っている原作の『轟天の石榴山』は、水も食べられる植物も(ついでに食べられるモンスターも)豊富なレイド領域だが、レイドによっては人間が飲食可能な水や食べ物が一切ないレイド領域も存在する。

 

 補習に使われるレイドは一つではない。直前まで、今回の補習レイドで用意されるのがどのレイドクエストかは分からない。そのため、水と食料の持ち込みは必須と言えた。

 ただし、健太(けんた)の場合は、食料はともかく、水は『梵字』の自作マジックアイテムで無限に出せるめどがついているので、水の『元素結晶(エレメンタルクリスタル)』はアリバイ作りや、万が一の予備という意味合いしかないのだが。

 

「健太(けんた)君、下着はもう少し多く持った方がいいかも。その代わり、上着の類は減らしも良いわ。最悪、上と下の替えが一組あればどうにかなるから。破損させたときが怖いけど。後、タオルはともかくバスタオルまで持ち込む必要はどうかしら。『万能石鹸』もここまで持ち込む必要はないと思うわ。健太(けんた)君の体力なら重さとしては問題なくても、荷物が大きいのは、思った以上に動きを制限されるから」

 

「あ、あの御主人様。トイレットペーパーはいくら持って行っても全然足りません。その……肌触りが良くて、洗って使えるいらない布をある程度の枚数持ち込むしかないかと思います」

 

 蘭(らん)と幸子(さちこ)は遠慮しながらも、健太(けんた)の用意の至らない点を指摘してくれる。どちらも、元はBランク倶楽部に所属していたのだが、どうやら補習レイドは結構経験しているようだ。その経験から発せられるアドバイスは正直有難い。

 原作ではそうした細かな描写はないし、そもそも原作の主人公である叶馬(とうま)は『空間収納(アイテムボックス)』という反則スキルがあるので、全く参考にならない。

 

 蘭(らん)はさらに付け加える。

 

「塩、砂糖、胡椒、カレー粉。調味料も随分たくさん持ってるね。野戦食(レーション)と栄養菓子(カロリーバー)も十分あるなら、ここまで必要ないかもしれないわ」

 

 食事は現地調達可能なレイド領域であるならば、現地調達したほうが良い。その際、塩のあるなしで食事の豊かさがまったく変わる。砂糖は、純粋にカロリー源としても心強い。胡椒、カレー粉はまあ、どちらかというと贅沢品だろう。

 食べられるモンスターは意外と食べやすい肉質のものが多く、「カレー粉を使わなければ食べられたものではない肉」というのは、少ないらしい。

 

「荷物を全部一つにまとめてしまうのもリスクです。つけたままでも戦闘に支障がないくらいの小さなウェストポーチに最低限の食べ物とお水を入れておいたほうが」

 

 ゆったりとしたグレーのスウェットの上下を着た幸子は、そう自分の言葉がご主人様の間違いを指摘しているともとれることに気づいたのか、ビクリと体を震わせる。

 

 だが、幸子の言っている内容は間違いなく、有益なものだ。

 数日にわたるレイド領域での生活で、巨大なバックパックをずっと背負いっぱなしにできない。そうである以上、荷物を絶対にロストしないという保証はない。戦闘中に下ろしてそのままどこかに落してしまうこともあるだろうし、キャンプ地を勝ち目のないモンスターに襲われれば、荷物を捨てて逃げなければならない。

 さらに、補習レイドの場合、気を付けなければならないのが、自分以外の補習参加者だ。健太(けんた)ほど強ければ、脅されて奪われることは考えなくても良いが、盗まれるリスクはゼロにはできない。

 

「なるほど、参考になります。ありがとう、幸子(さちこ)先輩」

 

 弱者の視点からアドバイスをくれる幸子(さちこ)に、健太(けんた)は努めて穏やかに礼を言った。

 

 

 

 

 

 一通りの荷物チェックが終わったところで、これまであまり口を挟まずにいた竹海が不意を突くように、健太に問いかける。

 

「ところで、ご主人様。食事と睡眠の用意は随分贅沢に揃(そろ)えているみたいだけど、あと一つ、レイドクエストには必要不可欠な『準備』があるんだけど。そちらはどうするつもりなのかな?」

 

 意味深な竹海の言葉は、鈍い部類の健太にも理解できる。

 ダンジョン内に満ちる瘴気圧は、人間の生物としての本能を増幅させる、とされている。それは、五感や第六感という戦闘系の能力もそうだが、ここで竹海が指摘しているのはそちらではない。性欲、精力の増強だ。

 ただでさえレベルアップで増強されている性欲、精力が超級もしくは極級レイドという極めて瘴気圧の高い空間に長時間閉じ込められることで、さらに増幅される。その性欲は我慢できるものではない。しかし、

 

「それは、その、あまり考えていませんでした。最悪は、我慢すれば良いだけの話ですから」

 

 学園の常識からは遠く離れている健太の楽観極まる予定だが、健太としてはしっかりと目算があっての言葉だ。

 相手をしてくれる女子がいなければ、久しぶりに自分で処理すればよい。レベルアップや瘴気圧で高まる性欲、精力は本来自慰ではほとんど解消されないのだが、そのための『一人上手(オナニスト)』取得である。

 

『遊び人(ニート)』系にしてもあまりにふざけた名前の第二段階職だが、その名前から「ひょっとして」と思った健太は取得してみたのだが、健太の期待は見事に当たっていた。

『一人上手(オナニスト)』には例外的に、自慰で性欲を発散できるスキルがある。普通科の生徒の場合、通常空間ではスキルが使用できないのだが、健太には関係のない話だし、そうでなくともレイド領域内ならば誰でもスキルは使用可能だ。

 

『一人上手(オナニスト)』には他にも、精神干渉系に対する防御スキルなど意外と使えるスキルが豊富で、健太としては嬉しいような虚しいような、なんとも言えない気持ちになったものだ。

 

 だが、そんな健太の事情を知らないパートナー一同は揃って健太の楽観を咎める。

 

「健太君、それは駄目」

 

「御主人様無理です、それは無理」

 

「健くん、考え甘すぎ」

 

 その中で、質問を投げかけた竹海だけは、少し健太の答えを予想していたらしく、

 

「うん、やっぱりその辺は不器用なままか。それなら、ある意味好都合かもね」

 

 とにんまりと人の悪い笑みを浮かべる。

 

「好都合、ですか?」

 

 と首を傾げる健太に竹海は、

 

「そう、好都合。ご主人様は、そのいかにもバックパックを背負って白鶴荘の玄関や廊下を通って来たんだよね? その姿を誰にも見られなかった、ということはないね? ところで、ご主人様。白鶴荘はエントリークラスの女子寮の中でも、どちらかというと下に分類される寮なんだ。最下層とまではいかないけどね。

 そんな女子寮に、補習受講者が一人もいない、なんてことがあると思うかい?」

 

「あ……」

 

 竹海の言わんとしていることを理解した健太は、間の抜けた声を発する。

 明日からテスト休みの三連休という日に、バックパックの大荷物を背負っていれば、「俺、明日から補習です」と宣言しているようなものだ。

「健太が補習レイドに参加する」。その情報が健太の強さと性格を知る白鶴荘の補習レイド参加組にとって、地獄に垂れて来た蜘蛛の糸に等しいことは、自己評価が低い健太でも想像が付く。

 

「ええと、蘭先輩」

 

 許可を求めるような健太の揺れる視線を受けて蘭は、にっこり笑うと、

 

「うん。助けてあげて。そして、助けてもらうと良いよ」

 

 そう、健太にアドバイスを送るのだった。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 アドバイスを受けた健太(けんた)は、パートナーの四人と一緒にもう一度購買に足を延ばした。

 もちろんメインは健太(けんた)の補習レイドクエスト用の買い足しだが、お詫びとお礼としてパートナーの四人にも色々買わせてもらった。主に「あれが欲しい、これが可愛い」と強請ったのは風音(かざね)だが、購入したのはもちろん全員分だ。

 

 新しい下着、可愛い柄のタオル、新発売のお菓子、高めのコンビニコスメ等。

 

 そうして思いつく限りの買い物を済ませた後、健太(けんた)たちは白鶴荘の部屋に戻る。

 明日から三日、離れ離れになることが決まっている男女の夜の過ごし方など、決まり切っていた。

 

 

 

 

 

 

 ベッドの上、裸の健太(けんた)が仰向けに寝そべっている。

 

「ン、チュ、ジュルッ」

 

「ジュル、ンン……グッ」

 

 その足元に裸の女子が二人寝そべり、固くソリ立つ健太(けんた)のペニスに舌を這わせている。

 健太(けんた)の右足を跨ぐようにして蘭(らん)が、左足を跨ぐようにして幸子(さちこ)が。二人でのフェラチオだが、お互いの邪魔はしない。蘭(らん)が裏筋に舌を這わせるときは幸子(さちこ)が鬼頭に舌を這わせ、幸子(さちこ)が鬼頭を口の中に飲み込むと蘭(らん)は睾丸から下に舌を這わせる。

 特別息があっているというほどの話ではない。この学園の女子ならば、一人の男子に複数の女子が奉仕するやり方は、大半が身についている。

 

 幸子(さちこ)がフェラをやめて顔を離すと、自然と蘭(らん)が健太(けんた)の腰の上に上がり、とっくに熱く濡れた秘所に健太(けんた)のペニスを宛がいゆっくりと腰を下ろした。

 

「ン……アアア!」

 

 愛するご主人様との結合はそれだけで、蘭(らん)の脳を焼く。

 

「ア、アン……クッ……フウン!」

 

 だが蘭(らん)は全身を支配する快楽に負けず、その肉付きが豊かな尻を上下に振り、必死に奉仕を続ける。騎乗位で腰を振るたびに、学園基準でも大きな双乳が揺れて、健太(けんた)の目を楽しませる。

 

「御主人様……」

 

 一方、幸子(さちこ)は健太(けんた)の上半身に這い上がるとその骨格の細い華奢な体に不似合いな豊かな乳房で健太(けんた)の腕を挟み、最近少しずつ筋肉がついてきた肩から胸にかけて舌を這わせる。

 

 フェラチオからの騎乗位。毎晩行われている健太(けんた)たちのセックスとは毛色が違う。健太(けんた)はただ寝そべるだけで、女子が一方的に奉仕するセックス。

 それは、どちらかというと健太(けんた)の好みからは外れている。

 現にこの前まで隣のベッドで竹海(たけみ)と風音(かざね)の二人を相手に行っていたセックスは、健太(けんた)が竹海(たけみ)の大きく豊かな肢体と、風音(かざね)の小柄で感度の良い体を欲望のままに積極的に貪るようなセックスだった。

 その影響で風音(かざね)はまだ気を失ったままだし、竹海(たけみ)も意識こそ失っていないが起き上がる体力は残っていないようで、目線だけこちらに向けている状態だ。

 

 それなのに蘭(らん)と幸子(さちこ)相手には、一方的な奉仕プレイのスタイルになったのは、蘭(らん)と幸子(さちこ)がそれを望んだからだ。日頃から、大切なパートナーの望みは可能な限り答えるようにしている健太(けんた)だが、今日はその中でも特別だ。言ってなかった補習レイド参加の件で悲しませてしまった。

 

「ア、ンンン……ア。ご、ご主人様……」

 

 蘭(らん)は強い快楽と多幸感に頭を支配されながらも、健太(けんた)の空いている左手を掴み自分の胸元へと導く。そうすれば、より一層快楽が増すのだが、一つでも奉仕できることを増やしたいのだ。

 

 蘭(らん)と幸子(さちこ)の健気な奉仕プレイは、強い恐怖から来ている。

 補習レイドに健太(けんた)が参加する。それは、蘭(らん)や幸子(さちこ)にとってはとてつもない恐怖だ。

 それは、言っては何だが健太(けんた)の身を心配しているわけではない。健太(けんた)の心が変わり、自分たちが捨てられることへの恐怖からだ。

 補習レイドは確かに高難易度だが、ただ時間切れまで生き延びるのはそう難しくない。

 誰も逃げられない閉鎖空間で過ごす時間は、弱者女子にとっては地獄そのものだが、強者男子にとっては最高に楽しい空間にもなりうる。

 健太(けんた)がその気になれば、補習レイド空間は限定的なハーレムの王様のような世界が味わえるだろう。いや、健太(けんた)が意図的に拒否しようとしない限り、そうなる可能性が高い。

 

 補習レイド領域では、男子が女子を支配するのと同時に、男子同士のいざこざも多い。

 だが、健太(けんた)の力量、そしてダンジョン内で見せる割り切った精神状態ならば、そちらの心配もないだろう。補習レイドを受ける男子など、たとえ上級生でも基本皆雑魚だ。

 結果、健太(けんた)は男子を力で駆逐して、女子を独占する生活を味わうことになる。

 それは、健太(けんた)の価値観を一変させうる体験だ。三日後の健太(けんた)は「普通の学園男子」になっていてもおかしくない。

 その場合、健太(けんた)は普通の強者男子のように、自分の周りに侍らせる女子を厳選し始めるかもしれない。そうなった場合、蘭(らん)や幸子(さちこ)は自分が残れるとは全く思っていなかった。

 一つ、救いがあるとすれば、補習レイドに参加する人間は男子同様、女子も学園の下層だということだ。

 ある程度男子に気に入られている女子は、多少の庇護欲、独占欲、所有欲を刺激して、補習レイドに参加させるのは「もったいねえ」と思われるくらいにはなっている。

 つまり、補習レイドに参加している女子というのは、その大半は女子の魅力という意味でも、下層集団なのである(無論、例外は混ざっている)。

 

 それならば、自分達にも勝ち目はある。と、蘭(らん)と幸子(さちこ)は考える。これが健太(けんた)の本来の格に相応しい、A、Sランク倶楽部の正部員クラスの女子ならば挑む前に心が折れるが、補習組女子相手ならば、つなぎとめられる。

 

 そんな思いからの、大ご奉仕の一夜だったのだが、ここまでレベル差があれば、体力的にも隷属の深さ的にも、二人でどうにかなる話ではなく。

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

「すう…………」

 

 全く無抵抗の健太(けんた)に一方的に奉仕していたはずの蘭(らん)と幸子(さちこ)は、それぞれ騎乗位で一発ずつ膣(なか)出しされただけで意識を失っていた。

 それでも無意識のうちに、二人は左右から健太(けんた)に抱き着き、裸の全身を少しでも密着させようと抱き着いている。

 

「蘭(らん)先輩、幸子(さちこ)先輩」

 

 健太(けんた)は左腕で蘭(らん)を、右腕で幸子(さちこ)を抱き寄せる。

 裸の健太(けんた)の股間は、全く衰えを見せずに隆々といきり立っているが、その欲情を二人にぶつけようとは思わない。蘭(らん)はもちろん幸子(さちこ)も健太(けんた)にとって、大切な人だ。欲情を発散するために酷使して良い存在ではない。

 

「すみません。お詫びは帰って来てからちゃんとしますから」

 

 聞こえていない二人に、健太(けんた)はそう言って全身で感じる幸せを再確認するように、抱き寄せる両腕の力を少しだけ強める。

 

 蘭(らん)と幸子(さちこ)が心配しているのは、「健太(けんた)が自分たちのもとに帰ってこないこと」なのだから、返ってきた時点でお詫びは必要ないのだが、その辺りは健太(けんた)が自分の立場を理解はしていても実感は得ていない以上、どうしても生まれる齟齬なのだった。

 

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