⑥ 動かぬ女体
地獄のふたが開くといわれる旧盆の8月16日がやってきた。この日は朝から空は晴れわたっていた。
庭の片隅で赤い実をつけていた鬼灯(ほおずき)を彼女にあげようと離れへ行き、
「中川さん、おはよう・・・・・・」
と、叫んだが返事がない。
2度3度と呼んだがやはりシ~ンと静まり返っている。
不審に思って、カーテンの隙間から覗いてみたところ、パンティ1枚の姿で寝ていた。
未だご就寝なので、いったん母屋に戻ると仏壇に灯明をともして線香をたて、お経をあげていた。
このとき、カーカーとカラスが離れの方でうるさく鳴きはじめた。
縁側へ出てみると、5~6羽が屋根の上でクルリクルリと旋回している。
―まさか!?―
と、足がすくんだ。
カラスという奴は人が死ぬと、どうして分かるのか、妻が亡くなったときもそうだが、屋敷の上をうるさく鳴きながら旋回した。
―大変な事が起きたのかもしれない!―
私は下駄をつっかけると、急いで離れへ走った。
そして、
「中川さん」
と、何度も叫んだが返事がない。
それで裏の勝手口の引き戸のカギを引き壊して、中へ入った。
「中川さん!」
「中川さん!」
と、叫びながら座敷へ飛び込むと、最初に目に入ったのは、普段から白い顔や全裸同然の肉体が、まるで雪ででも作られたように真っ白に変わっていた。
でも、本当に彼女が死んだとは思わなかった。
だが、枕元には遺書らしき封筒が2通あり、その1通は私に宛てたものだった。
封筒の中央に 太田長一郎様へ と、ボールペンで上手な楷書体で書いてあり、中の便せんに、
【大家さんには色々とお世話になりました。私には事情があって、これから生きていく元気がなくなりました。優しかった父の元へ参ります。私の遺骨はご面倒でも、火葬後太田家のお墓へ納骨してください。ごめんなさいね。それから葬儀に必要なお金と滞在費として2百万円をお受け取りください。中川由美子改め太田由美子】
茶色の角封筒が一緒に添えられており、中を見ると札束が入っていた。
―どうして自殺なんてしたんだよっ!―
どんな事情があったのかは、わからないが自ら命を絶つなんて、そんなことは絶対に許されることではない。
夜具のそばには、睡眠薬の空き箱と少し水が残ったコップが置かれていた。
―ウソでしょ。これは悪い夢じゃないのかな?―
一度大きく深呼吸して、縁側のガラス戸に写っている自分の姿をみた。
そこには老いぼれたいつもの自分が居て、まるで幽霊のような顔や姿をしていた。夢ではなさそうなのだ。
彼女の手を握ってみたところ別に冷たくはないのである。
―こんなに美しいオンナが死ぬわけがないっ! 中川さん悪い冗談はやめてくださいよ―
彼女の手を元に戻すと、全裸状態の肉体をつくづく眺めた。
美女というものは、顔はもちろんだが、首の細さや肩の線、乳房の形などあらゆる部分が非の打ちどころがないくらいすべてが美しいのに驚くのだった。
―どうして・・・・・・こんなにすべてが美し過ぎるんだろう―
こうして眺めているうちに、私は自制心というものを次第に失くしていった。
それにしても手の込んだ自殺偽装である。
彼女が死んでいるなんてウソだとしか思えなかった。
「身体を触ってもいいですか?」
と、訊ねたが返事はない。
そっと肌に触れたがピクリともしない。
顔を見ると穏やかな表情で、私のような汚いジジイが触っても嫌がっているようには見えなかった。
―食べたいくらい綺麗だね―
と、形の良い乳房へオドオドしながら触ってみた。
今に彼女が、
「やめてよっ。この変態ジジイッ!」
と、目を覚まして怒鳴るのではないかとビクビクしていたのだが、無反応で口元では微笑んでいるかのようにも見えなくもなかった。
それで、大胆になった私は乳房へむしゃぶりつくと、顔中で揉みくちゃにした。
白髪の無精ひげなのだが痛がる風でもないのだ。
絹の肌触りがすごく気持ちよくて、もう使い物にならなくなったはずの男のシンボルがヒクヒクと痙攣を始めるのだった。
おそらく海綿体に血液が集中し始めたのだろう。
「珍しく勃ちそうだよ。本当だよ。貴女があまりにもいいオンナだからさ」
耳元でこう私語(ささや)くと、ウフフ・・・・・・と、笑った。
やはり、死んではいないと思った。
これは彼女が死んだふりをして、私をたぶらかしているに違いないと信じた。
―あははは・・・・・・―
そして急に笑い出して、
―私、死んだ真似をしていました。ごめんなさいね。うふふ―
と、今にも明るい笑顔を見せそうな気がした。
本当は生きているのだから、
「パンティ脱ごうよ。こんなものは邪魔でしょう。感じやすくてデリケートなところを拝見させてもらいたいよ」
一応は彼女の承諾を得てからパンティを下げると、デルタには真っ黒なヘアが覆っていた。
白い肌とのコントラストが見事で、しかも四方八方に下ヘアがささくれ立っていたりしないで、櫛で梳(と)いたように整然と行儀よくデリケートな部分を隠していた。
「美女というのは下のヘアまで綺麗だから神秘だよ。神様はどうしてこうも美醜の違いを創造されたのだろうね」
耳たぶを軽く噛みながら私語いた。
しかし、反応もない。
「こんなことを言っては亡くなった妻にはすまないが、貴女みたいに美しいところなんて全くなかったよ。でも良く働いてくれたけどね・・・・・・」
こんな話をしながら、下腹部へ顔を移動して股を嗅いだらプ~ンと、女特有の匂いがする。
「んん。いい香りだよ」
鼻をクンクン鳴らしても、まだ彼女は特別な反応を示さなかった。
⑦ 老人のトチ狂い
そっと股を押し広げてみた。
しかし、まったく嫌がる様子でもないのだ。
かまうものかと、大胆になって、
「見ますよ。いいですね」
また断ってから、両股の間へ顎を据えて眺めると、下ヘアの陰に隠れてピンクの粘膜の一筋のワレメが見えた。
下ヘアを左右に分けると、メラニン色素が沈着した大陰唇が、そのピンクの一筋のワレメの両側を形成していた。
白い内ももとの対比が美の極致を思わせ、これほどの美しさに勝る芸術作品が、果たして世界に存在するだろうかと考えさせられた。
―この美しさを表現する言葉はないっ!―
そして、また私は芸術やエロチシズムを超えた何か得体の知れぬパワーを感じて、この老いぼれた体の中に若々しい血潮が沸き立つのを覚えるのだった。
「おおおっ!」
と、驚きの声を発したのは、両手指で大陰唇の扉をこじ開けた瞬間だった。
ドロリとした半透明でゼラチン状の幕によって性器の粘膜全体が覆われていたからだ。
それが何であるかは、医学知識に乏しい私にはわからない。
多分に生理的な体液の一種ではないだろうか。
―匂いは無臭に近いな・・・・・・―
舌の先でぺろりと掬(すく)い舐めてみると、それはゼラチンというよりも寒天に近く、海藻類(かいそうるい)をいろいろと煮込んだ潮汁(うしおじる)のような味であった。
はじめはペロペロと舐めていたが、途中からジュルッジュルッと音を立てて啜(すす)っていた。
特に美味というのではないが、何か体に良さそうな気がしてならなかった。
―あああっ!―
啜っているとき、彼女がヨガったように聞こえた。
―やっぱり生きているのではないか―
こう思ったが、次第に女性性器が冷えてきたような感じなのだ。
ところが・・・・・・また、
―んんんっ!―
と、呻いて自分から性器を回すのだ。
亡き妻も生前舐めてやると気持ちがよくなり、そうしたものだった。
妻みたいに彼女は激しくはないのだが、私も刺激を受けて、
「ううう・・・・・・ううう」
獣のように唸っていた。
驚いたことに男のシンボルが若いころのように力強く勃起している。
それもリンリンとそっくり返っているのだ。
―これはすごい!―
片手で握って確かめると、まるで石斧のように硬くなっていた。これには仰天だ。
それで若いころによくやった マラ叩きをはじめてみた。
石斧の代用に男のシンボルで、女の肉体をペッタンペッタンと叩きつけるのだ。
村では昔から男は女をマラで叩くのが伝統として受け継がれてきたのである。
歴史的にどんな意味があるのかよく分からないが、封建的な男尊女卑の名残ではないのだろうか。
膝で立って片手でシンボルを持つと、
「どうじゃ・・・・・・これでどうじゃ・・・・・・」
と、言いつつ、彼女の美しい顔や形の良い乳房や柔らかな腹をペッタンペッタンと繰り返し叩いた。
こんなとき亡き妻は、
「もっと、下され、もっと下され・・・・・・」
と、せがんだものだ。
だが、これは女がこのように答えるのが習わしでもあった。
しかし、彼女は何も答えない。
この村で生まれてないので習わしを知らないのか、それとも本当に死んだのか、愛らしい唇をシンボルの先で叩いても、
「・・・・・・」
何も答えなかった。
ところが、真っ黒な下ヘアの生えたデルタを叩いているとき、
「フゥ~」
小さく叫んだようだった。
この時ばかりは、絶対に生きていると信じたものだ。
自殺したかのように装って、私を誘惑しているのに違いないと思った。
何故にこんな冗談をするのかといえば、年齢的にも男なしでは眠れない女ざかりの肉体である。
だからといって、彼女のプライドが私みたいなジジイを言葉や態度では誘いたくはなかった。
それでこのような回りくどい手を使ったのではないだろうか・・・・・・。
あの墓場でのパンチラにしても、夜の床での裸同然の根乱れ方にしても誘惑的である。
生きているのか本当に死んでいるのか、分からないままで、このような淫戯をして良いものかと、さすがに私は迷い始めた。
それで心臓に耳を当ててみた。
耳はかなり遠くなっているので、ハッキリはしないがドックン・・・・・・ドックンと確かに心臓の鼓動が聞こえてくるのだ。
今度は手首の脈をとってみたが、これもよく分からなかった。
ピクピクピク・・・・・・伝わってくるものがあるのだが、自分の親指の脈かもしれないので、はっきり言って確信はもてなかった。
だが、勃起は痛いくらい張り切っていた
我慢できないほどに興奮している。
―生死の区別はつかないが、このままでは収まりがつかない。ヨシッ! やっちゃえ!―
と、決断した。
それはこんなに完全に勃起することは2度とないかもしれぬという思いからだった。
股を大きく広げると、座したままでワレメを引き寄せて、見ながら勃起をズルズルと肉穴の中へ挿入していった。
内部はヌルリとしていたが、ヒンヤリとしていて気持ちが良いのだ。
奥まで入ったところで身体を重ねた。
そして、肉体を抱くとこちらもヒンヤリとして気持ちがいい。
女の肉穴の中へ勃起を入れたのは20年振りのことだった。
「ううっ・・・・・ううっ」
と、呻きながら腰を上下させた。
イキそうになったとき、彼女の美しい顔を見ながら射精しようと、両手で抱え込むようにして見た。
そして、精液が出始めた瞬間、確かに彼女が目を見開いて、
「ああああ~!」
と、叫んで、彼女もイッたのだ。
私はあまりの快感で、しばらくの間そのままでいた。
気が遠くなりそうなくらい気持ちよかった。
長い人生のなかで、一番の快感だった。
身体を離すと、私の前身は汗まみれていたが、彼女はまったく汗をかいていないばかりか、氷のように冷たかった。
締め切った部屋の中は蒸し風呂のように暑かった。
逃げるように離れを出ると、山風が吹いてきて汗まみれの私の体を心地よく撫でた。
離れの屋根には、村中から集まったのか何十羽ものカラスが私を見下ろしていた。
離れを出る前に、遺書や金はそのままにしておいた。
彼女にはパンティを穿かせ、寝間着に浴衣を着せ、タオルケットを掛けておいた。
この時も私は彼女が生きているのか死んでいるのか、判然とはしていなかったのである。
翌日も、ガラス窓から覗いたが、彼女はそのままの姿だった。
―やっぱり死んだのかな・・・・・・―
と、思った。
だが、警察に報せようものなら即刻病院へ運んだり解剖をしたりなどして死因を調べられるではないかと、不安に襲われるのだった。
不安の原因は、もし彼女が死んでいるのに淫らな行為をした私が、罪に問われるのではないかということである。
どうしたらよいのかと、迷っているうちに日にちが過ぎて、彼女が村役場で契約した日数10日も過ぎて、8月も終わりに近づいていた。
「太田さん、太田さん」
と、叫ぶ声で目を覚ますと、村おこし課長が玄関に立っていた。
この日も残暑が厳しい朝だった。
「はい・・・・・・」
「中川さんはまだ居るのでしょ?」
「ああ、未だ居るようですよ。ほら車が未だそこにありますから・・・・・・」
「契約はもう過ぎているのに、ちょっと声をかけてみます」
課長は離れへ行った。
「中川さん、中川さ~ん。・・・・・・」
彼女の名前を何度も呼んでいた。
大きな声なのでカラスが驚いて一斉に飛び立った。
「なんでカラスが集まっているのだ」
課長はしきりに首をかしげながら部屋の中を覗いていた。
「太田さん、なんだか変ですよ。なかで寝ていますが動かない警察を呼びましょう」
課長は顔色を変えて走り去った。
それから2時間も経っただろうか、警察や医師や役場の人がやってきて、大騒ぎになった。
誰もが、
「自殺だっ!」
と、騒いでいた。
警察は、私に彼女の行動などを訊ねたが、
「もう私は年なので、役場の人からの依頼で空き家を貸しただけで、何もわからないのですよ」
この一点張りで答えるばかりだった。
遺書や車などの彼女のモノはすべて、警察が持っていき、9月を迎えてから、彼女が私に残した2百万円が渡された。
その金で寺の住職とも話し合って、ねんごろに彼女の遺骨を先祖代々の墓へ納めた。
警察では遺書の筆跡鑑定や遺体の解剖などを行ったそうだが、私の死体淫戯についての調べはまったく行われなかったようだ。
遺書が私に対して好意的だったからだろう。
それに、今年の猛暑で遺体がかなり腐乱していたそうで、身体に残された精液などは調べようともしなかったようだ。
それで、胸をなで下ろしたところだが、離れに今も彼女の姿が見え隠れするので、幽霊ではないのかと、新たな不安に襲われている。
完