※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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最近、カカトのひび割れがちょっと直っているような気がする。
普通冬の方が乾燥して悪化するんじゃないの?
…コタツのおかげかなぁ。




第126話

 

NTD3DS月エリアル大剣の心得~日

 

 

 激戦だった。

 回復薬やら罠やら、アイテム全部使いきっちゃったよ。

 流石に今日はもう、何もする気にならない。

 

 …いや、追悼くらいはしようかな。

 デスワープしても、また巡りあうかはわからない。

 尾を只管に鍛えていた、あのディノバルドに黙祷。

 

 

 

 …黙祷終了。

 

 いやもう本当に怒涛の戦いでしたよ。

 最後の超展開まで。

 

 とりあえず剣術バルドには、ディノセイジューローの名を送ろうと思う。

 

 

 

 …うん、冗談半分で飛天御剣流か!なんて言ってたけど、ガチでそう思えてきたんだ。

 ジャンプからの切り下ろし・龍槌閃は以前にも使ってたが、再戦したら技が増えてた。

 尾だけではなく、体全体を使って戦うようになっていた。

 

 例えば、尾の攻撃の後、勢いを殺さずに一転し、攻撃後の隙を狙おうとした俺をカウンターで噛み付きに来る。

 …双龍閃モドキ。

 

 例えば、逆に体当たりして俺の動きを阻害して、そこを狙って尾を振り払う。

 …双龍閃・イカズチモドキ。

 

 例えば、尾をアッパーカット気味に振り上げる攻撃。

 …龍翔閃モドキ。

 

 例えば、こちらの攻撃をステップでかわし、それと同時に横回転して斬撃。

 …龍カン閃モドキ…だったかな?

 有名所の技しか覚えてないや。

 

 尾で斬った木やら石やらを、蹴っ飛ばしてぶつけてくる土龍閃モドキ。

 ただし、コイツには蹴飛ばす前に火をつけたり、飛ばしたと同時に炎を放ってきたりする。

 

 尾を牙で研ぐ音を、どうやってか異常に高くし、ハンターにまで影響を及ぼす音爆弾みたいな効果…というか、ぶっちゃけガラスキーキーみたいな音を出す……えーとアレだ、なんか抜刀術じゃなくて剣を収める技。

 

 

 

 …流石に九頭龍閃は無かったが、あのまま修行し続けてたらいつかは身につけていたような気がするぜ。

 

 

 

 なのに、天翔龍閃はナンデ使えちゃってるんですかねェ!?

 

 

 

 そうだよ、使っちゃってるんだよ何故か!

 行動自体は、他のディノバルドでもやってる尻尾攻撃だった。

 威力や鋭さは段違いと言うか比べるのも失礼な程だったけど、以前遭遇したディノバルドもやっていた、尻尾叩き付け攻撃だ。

 

 アレ、怒ってる時には2連続でやってくるんだよ。

 で、一発目の振り下ろし(正直、横を掠めただけで体半分もって行かれたと錯覚した)を何とか回避して、そのまま2発目に備えよう…としたんだが。

 

 急に突風が吹いて、引っ張られた。

 何がなんだか分からなかったが、ちょうど周囲についていた火(剣術バルドが放った炎だ)が、引っ張られてフッと消えた事で直感した。

 尾の攻撃があまりに鋭く強烈すぎて、空気が吹っ飛ばされ、それが戻ろうとしている。

 

 …それだけで人間の体を動かなくするくらいの風が起きるのかとか、そーいった疑問はあるが、正直言って今更だ。

 咆哮で人間を吹っ飛ばすモンスターだって居るくらいなんだから。

 MH世界特有の物理学(別名・アタリハンテイ力学)に照らし合わせれば、そんなに不思議な事じゃない。

 

 

 

 …で、動けなくなった俺に、2発目の尻尾叩き付け攻撃。

 正直、これを凌げた……と言うには、受けた傷が大きすぎた。

 

 

 て言うか右腕飛んでった。

 

 

 普通だったらショック死か、どんなに良くてもハンター廃業モノの傷だろう。

 が、どーも俺の人間離れも随分と侵攻していたようで。

 

 命に危機に瀕したからか、体が勝手にアラガミ化し……無くなった右腕が、鬼達がやっているような霊体で構成された。

 …血ぃ止まってなかったし、頭がおかしくなる程痛かったけど。

 デスワープで何度も死の苦しみを味わってなきゃ、確実に行動不能になってたな。

 

 というか、体の一部が無くなるのは初めてな気がするな…何だかんだで、今まで五体満足のまま死んでたし。

 体内の、ハンターボディやらゴッドイーター因子やら霊気やら蝕鬼の触媒やらのバランスが、またしても崩れたのが分かった。

 

 

 

 

 そして、更なる怒涛の展開はここからだった。

 なんか知らんが、アラガミ化がいつもと違う。

 もんのスゴイエネルギーを感じた。

 短時間だったが、体の全ての機能が全開放されていたような…いや違うな……普段は制限されているものが、全て取り払われたような……。

 

 そういや、片方だけだったけど背中から羽状にエネルギーが放出されていたな。

 上手くやれば空飛べたんじゃなかろうか。

 

 

 …というか片方だけの羽って…そういやアラガミ状態になった時には、武器が太刀状になってたし…。

 エンサンシメジヒラメデメキン…。

 

 

 

 

 溢れ出る全能感に身を任せたまま、剣術バルドを一気に蹂躙。

 いやもうケタハズレだったよ、今までのアラガミ化と比較しても。

 尾の一撃は流石に回避したけど、炎も踏みつけもパンチも、防御なんぞしなくても素で跳ね返せてしまった。

 更に攻撃力の上昇は、ちょっと全力を出すのが怖くなるくらいの代物だった。

 

 …やっておいて何だが、技比べの結果が突然発現した謎の能力で打ち切られるのは、少々切ないものがあるな。

 出来れば、剣(尾だけど)の技術を全て受けきって、その上で俺自身の力で倒してやりたかった。

 

 あの剣術を叩き伏せてやる、って思ってたのになぁ…。

 ああでも、もしあの天翔龍閃が最終奥義だったとしたら、それを受けても…まぁ片腕飛んだけど、生きてはいたって事だし。

 一応誓いは果たしたって言えるのかなぁ…。

 でも普通に考えれば、生きてるだけじゃなくて、完全なカウンターでも決めるか、完全に回避しないと勝った事にはならないだろ。

 

 …だけど、もう一度アイツと戦えるかは分からないし…やれやれ、勝ったと自分で認められないのがこんなにモヤモヤするとはね。

 

 

 

 

 

 認める?

 

   

 どっかで話に出たような……別に特別な言葉でもなければ、滅多に使わない表現って訳でもないが……そういえば、あの後の神機の様子がちょっとおかしかったような…。

 

 

 日記はここまで。

 少し読み返そう。

 

 

 

 

 追記

 吹っ飛んだ腕は、霊体で構成された腕に重ねるようにくっつけてみたら、なんか繋がった。

 モーオレサマニンゲンジャナイ。

 

 

 

 

 今更か。

 別にいいけど。

 

 

 

NTD3DS月一つ、最大溜めに拘らず当てられる時に斬ること!日

 

 

 思えば色々あったもんだ。

 日記には書かれてるけど、「そんな事あったっけ?」と思う様な事も多々ある。

 単に俺が忘れてるだけなのか、クソイヅチに何か食われたのか…。

 

 

 それはともかく、「認める」「神機」をキーワードにして読み返してみたところ、あの時のパワーアップはこれじゃないか?と思う現象を発見した。

 神機は常に拘束されており、一度それが解かれれば、使い手にさえ牙をむき浸食する。

 だが、もしも神機に自分が使い手である事を認めさせる事ができ、その上で拘束を解放するのであれば…常日頃とは比べ物にならない、桁外れの力を震えるようになる、という理論だ。

 

 …でも自分が勝ったと思えてないんだよな…。

 俺じゃなくて神機が認めた?

 でも神機は今となっては俺の体の一部に等しい。

 例えるなら、右手が自分の意思を持っていて、俺を認めたから普段は30%しか使ってない筋力を100%まで発揮させたと?

 …しかし、アラガミ化前なら俺の体とは別の存在なんだから、神機が自分の意思を持っててもおかしくはないし…。

 

 

 …少し考え方を変えてみたらどうだ?

 そもそも、神機は今でも本当に拘束されているのか?

 拘束される必要はあるのか?

 

 神機が俺の体の一部であるという事は、確かな実感として俺の中にある。

 それこそ、右手を動かすのと同じ感覚で、変形させたり振るったりする事だって出来る。 

 ある意味、神機は道具と言うよりは手と同じなのだ。

 当然、それを好きに動かす事もできる。

 ハンター式肉体操作術を使えば、普段使ってない70%の力を引き出す転龍呼吸法モドキだって出来る。

 

 …いや、本当に100%の力を引き出せているのなら、あの時のパワーアップも好きに引き出せる筈。

 という事はやはり拘束されているのか。

 或いは、拘束はされていなくても、その力を引き出すのに何か条件があるのか。

 

 命の危機?

 それなら、今まで何度もあった。

 体が今の状態に落ち着いた今回のループに限ったって、ユクモ村でのタマミツネ・ラギアクルスのコンビ攻撃により、強制的にアラガミ化させられる程のダメージを負った。

 命の危機というなら、あれも今回と同等だ。

 

 じゃあ、体の欠損?

 これは考えたくないが…でも繋げる事はできたから、運用出来なくは無いんだよな…。 

 

 

 …試してみないと分からないな。

 それと、神機の使用は暫く控えた方が良さそうだ。

 自分の体の一部に等しいのに、異常なのかさえ分からないってのもおかしな話だが………なんつーのかな、右手の間接が、ふと気がつけば全部逆側にも曲がるようになっていて、それなのに全然苦痛を感じない、普段通りの動きもできる感覚?

 異常なのにそれを感じさせないってのが、一番怖い。

 

 

 

 

 そうそう、剣術バルドを倒した事は、既にベルナ村にも伝わっている。

 他にもディノバルドは何匹か居ると思うが、流石にあれ程の異様な個体はそうそう出てこないと思う。

 村に流れた素材の幾つかを見ても、普通のディノバルドじゃなかったのは明らかだった。

 

 JUNがキラキラした視線を向けてきた。

 「実力に差がありすぎて、これじゃコンビを組めないね」とも言われたが。

 

 …いや…俺としては別にコンビを組む事事態は問題ないんだけど。

 酒飲ませなければ、おかしな事もしないし。

 寄生でなければ、実力に差があるハンターが組む事だって珍しくない。

 というより、拮抗した実力のハンター同士が出会う可能性はあんまり高くないし。

 

 そう言ったが、自分が納得できない、とJUNは譲らなかった。

 この辺は男の娘とは言え、男として、或いはハンターとしてのプライドの問題だろうから、こっちからあまり強くは言えないが…。

 

 

 

 結局、チーム結成は無しになったか…。

 ふっ、今回ループもソロばっかだよ…。

 

 まぁ、外回りハンターになった時点で、ほぼ確定してたけどな…。

 

 

NTD3DS月一つ、無理なエア回避は使わず防御を活用する事!日

 

 

 異様な個体が、これでココット村を除く3箇所に出現した事になる。

 それも、俺が外回りに到着したのを見計らったかのように。

 

 

 …先日、日記を読み返してたんだが…これってひょっとしてアレか?

 ユニスとくっついていたループで、出かけて戻ってくる度にメゼポルタがデカブツに襲撃されていたのと同じ理屈か?

 外回り1回目に何事も無かった(ティガとか狩ったが)のは、「戻ってきた」のではないから、とか?

 …別に「戻ってくる」、に拘る理由もないと思うが…いや、仮に運命とか因果律とかそーいうのがあったとしたら、それはきっと理屈や理由なんか関係なしに決まっているんだろう。

 少なくとも、俺達には見えない理解できない公式で、俺が何処かから戻る⇒なんか変なのが出てくる、という回答が決まって出てくるようになっているんだ。

 

 しかしそうなると、外回りに行くのは危険かなぁ。

 でも一度はその異様な個体を退けたんだし……ああ、だけどメゼポルタは一回だけじゃなくて度々襲撃されていた。

 

 …どっちにしろ、外回りハンターになっている時点で、いやでも行かなきゃいけないのは確定事項か。

 シャーリーさんや、コノハやササユにも会いたいし、心配だ。

 俺が行かなかったら、出てきた個体が散々暴れまわるんじゃないかって事も考えられる。

 

 やれやれ…今度は何が出てくるやら。

 

 

 

 とりあえずベルナ村での不安な事は大体終わったし、今度はポッケ村か。

 色々な意味で心配だ。

 シャーリーさんの怒りが特に。

 

 …後は、遺跡やらウカム復活やら古龍やら塔やら…。

 うぅむ、やはりポッケ村は魔境だ。

 

 

 

 という訳で、またも外回りに出発して、ポッケ村に到着。

 最も恐れていた魔獣・G級受付ジョー…は出現していなかった。

 ちゃんと出迎えてくれましたよ?

 駆け寄ってきて抱き付かれました。

 飛行船で冷えた体に、人肌の温もりとG級が嬉しいね。

 

 …正直、出会いがしらに「タマ取ったらぁ! 下も命も!」も覚悟していたんだが、そういう事は全然無く。

 むしろスッゴイ心配されていました。

 「あの二人に襲われて、トラウマになったりしてない?」とさえ言われた。

 

 …本当にナニやらかしたんだ、あの二人。

 結局、懇ろになってしまった件については、コノハとササユは自分から一服盛って襲い、そこからもそれをネタに迫っている…と自分達を悪役にして説明したようだった。

 実際悪役と言うか、仕掛けてきたのはあの二人な訳だが。

 

 これについて、シャーリーさんからのコメントは…「思うところが無いではないけども、とにかくあの二人の手綱を握っておいて頂戴」との事だった。

 …謎が深まる…。

 

 

 

 さて、仕事の話に移るが、ポッケ村で今一番ホットな話題と言えば、俺が発見した謎の遺跡である。

 今でも龍暦院の学者さん達が調査の為の作業を続け、レジェンドラスタの二人が遺跡の横の謎の横穴を調査していた。

 もうかなり時間が経ってるのに、まだ横穴の底は見えないのか?

 一体どれ程続いていて、どこまで調べているんだろうか。

 そこまで穴を進んで何も無いのなら、やっぱり何も居ないんじゃないだろうか。

 

 

 そんな事をシャーリーさんと話していたら、なにやら少し言い淀んだ。

 そして周囲を見回してから、こっそり耳打ちされた。

 

 

「レジェンドラスタのお二人と、話をしてください。

 決して誰にも聞かれないように、人払いをして」

 

 

 と。

 …そりゃ話は聞かせてもらうが…シャーリーさん、つまりG級受付嬢からこういう指示が出て、周囲に話を聞かせないように秘匿している。

 ………G級クラスでないと、本来は聞く権利すら無い話?

 レジェンドラスタ2人が揃っていて、尚そこまで警戒しなければいけない話?

 

 厄ネタってレベルじゃねぇ。

 というか、第一発見者とは言えそれを俺に話していいのか?

 

 

 そして誰の邪魔も入らない、3人きりの状態であの二人と話か…。

 前に話した時は距離が近かったなぁ…。

 色香に耐えられるだろうか…。

 まぁ襲い掛かったところで、あの二人に軽く返り討ちにされると思うけど…。

 

 

 

 

 「変な事しちゃ駄目ですよ」って真顔で言われた。

 

 

 

 

 …この間、コノハとササユに襲われてさ…変な事「される」のもいいよねって思うようになったんだ…。

 

 

 

 

NTD3DS月一つ、前転に時間がかかるので炎やられ対策は怠らない事!日

 

 

 色っぽい展開は無かった。

 というかそれどころじゃなかった。

 うん、秘密にされてたのも納得だわ。

 

 例によって距離が近い二人に「元気だった~?」って手を握られました。

 息をするようにコミュニケーションしてくるね?

 …でも、他のハンター達にはどういう訳だか、そこまで接近してないらしい。

 

 これってアレか?

 何故か俺の好感度がやたら高いとか、そういう話か?

 とか思ってたが、シャーリーさんの観察によると、どうもちょっと違うっぽい。

 

 と言うのも、まず第一にフローラさんの距離が近い事だが、これは単にフラウさんに引っ張られているだけである。

 フラウさんが近くに居ない時は、フローラさんのパーソナルスペースは普通と言える程度には広い。

 よって、顔を間近で覗き込むような真似はまずしない。

 

 次にフラウさんだが…この意見は、シャーリーさんでも俺でもなく、フラウさんの祖父からだ。

 以前にシャーリーさんが仕事で少しだけ耳にしたそうだが、フラウさんのお祖父さんは彼女の事を、「人を見て、その人のお好みの態度を取れるオンナ」と称したそうな。

 故意にやっているのか、それとも天然なのか…どっちにしろ恐ろしい話であるが、今は置いといて。

 

 

 俗な話になるが、男が女に望む態度とは何だろうか?

 趣味嗜好による差はあるが、美人からは好意を寄せられたいと思うだろう。

 が、人間、理由も分からず一方的に好意を寄せられると戸惑うものだ。

 それが自分とは明らかにステージが違う、高位の人間からのモノであれば尚更だ。

 そして、この世界においてレジェンドラスタと言うのは、下手な貴族や王よりも強い発言力や影響力を持っている。

 

 そんな人間に、唐突に懐にまで踏み込まれたらどうなるか?

 大抵の人間は、喜びよりも先に恐怖すら感じるだろう。

 何故自分なのか、何故そんな態度を取られるのか…と。

 

 要するに、皆尻込みしている訳だ。

 フラウさんは、それを感じ取って皆からは一歩距離を取り、それが無い俺に対しては踏み込んでくるんだろう。

 なので、俺が特別好感度が高い訳ではなく、これが素なのだから勘違いしないように……と延々とお説教されました。

 勿論俺はシャーリーさんの前で正座です。

 

 

 

 

 

 …ちょっと待て、一般人に隠されていた秘密について書こうとしていたのに、何故にレジェンドラスタの二人の態度に話が移っているかな。

 ある意味そっちも重要ではあるけど。

 

 

 

 改めて書き直す。

 昨日の俺は、レジェンドラスタの二人に連れられ、あの遺跡と横穴へ潜った。

 遺跡は大分氷がどかされて、細かい所まで見えるようになっていた。

 やっぱり既視感を感じたが、どこで見たのかは思い出せない。

 

 で、横穴なんだが…ひどく小さな明かりを頼りに、俺達は密着して進んでいった。

 …左右から柔らかい感触が感じられる程密着していたが、あいにくとあんまり幸せは感じなかった。

 何故ならホットドリンクも通じないくらいに寒すぎて、人肌に触れててもまだ凍える。

 堪能している余裕なんぞありませんでした。

 

 

 

 

 …そしてある程度進んだ辺りから感じ始めた…なんというか、途轍もなく大きなナニカがいる気配。

 敵意を感じる訳じゃない、意識だって多分無い。

 そんな状態なのに、威圧感だけで足が重くなった。

 何とか堪えて進んでいった先にあったのは……大きな大きな氷の壁。

 

 

 

 そしてその中で蹲っている、ウカムトルムだった。

 

 

 

 悲鳴を上げなかった俺を褒めてほしい。

 

 

 そしてウカムルバスではなくウカムトルムと呼んだ俺は、それだけ動転していたのだとご理解いただきたい。

 

 

 ウカムトルムは分厚い氷の中に閉じ込められて微動だにしない。

 というより、完全に凍り付いてしまっているようだった。

 氷の壁の様子を見るに、ひび割れの一つも無いので、少なくともこの何十年間の間で動いた事は無いのだろう。

 よく見れば体のあちこちに大きな傷跡ができており、そこから流れ出したらしい血…あれって古龍の血…じゃないな飛竜なんだよなコイツ…も凍っている。

 生きているウカムを知らないので比較対象は無いが、全体的に痩せている印象もあった。

 

 …凍死?

 いや、死んだ後に遺体が凍り付いて冷凍保存された?

 

 

 レジェンドラスタの二人も、コイツは死んでいるのだ、と判断したらしい。

 …最初は。

 

 それを覆したのは、よくよく見ると見える、一本の角だった。

 俺も実物のウカムトルムの形がどうなっているのか知ってる訳じゃないんだが、大雑把な形は覚えている。

 白くてアゴがスコップみたいになってて、そしてトゲトゲ。

 トゲトゲと言うよりは、甲殻が何重にも重なっていたような気がするが、そこら辺はよく覚えてない。

 

 

 

 …が、あんな『角』は存在していなかった筈だ。

 少なくとも、ウカムトルムの角を部位破壊した、なんて話は聞いた事もないし、それを使った攻撃方法も無かったように思う。

 

 

 

 だがそれ以前に、氷の中で平然と小さくなったり大きくなったりするような角なんてあってたまるか。

 そこだけ氷が無くなっている訳じゃない。

 『氷という物質を擦り抜けて存在している』のだ、あの角は。

 

 そんな事ができる存在を、俺は一つだけ知っている。

 言うまでもない、霊力だ。

 どんな物質でも擦り抜けられるとは言わないが、俺だってある程度の障害物を擦り抜けて霊力を通す事は出来る。

 

 

 注意深く探ってみれば、感じるだけで頭が痛くなってくるような存在感の中に、確かに霊力らしいモノが混じっている。

 そして霊力とは生命の力だ。

 体の外に出して形にする程の霊力があるのならば、このウカムトルムが死んでいる筈が無い。

 更に言うなら、以前のティガレックスを例に考えるに、本来ならない筈の角…しかも霊力の角…を持つウカムトルムは、何かしらの特殊能力を持つ可能性が高い。

 

 

 アカムと揃えば世界が崩壊すると言われる程のバケモノが、本来ならない能力を持つ。

 例えばティガレックスと同様、スタンド能力なんか持っていたら?

 

 

 …考えたくもない。

 

 

 

 あの角はまるで鼻提灯のように、大きくなったり小さくなったりを繰り返す。

 下手にこの場でちょっかいを出す…例えば鬼払い(ここから氷のには届かないけど)をすると、それこそ鼻提灯を割られて飛び起きるという珍風景が見られるかもしれない。

 ただし代償はこの辺一帯の崩壊である。

 冗談じゃぬえ!

 冗談じゃぬえぇぇぇ! ぬえっ、ぬえぇぇ!

 

 

 

 

 ふぅ、落ち着いた。

 そしてまたもウカムをウカムトルムと呼んでいた事に気がついた。

 なんか言っちゃうんだよな……もうウカムでいいか。

 

 

 

 とにかく、当面ウカムに手を出す事はできない。

 接触して分かった。

 今のアレには歯が立たない。

 たとえアラガミ化して、先日の謎のパワーアップを再現できたとしても、捨石になれれば御の字ってくらいの差がある。

 というか物理的にデカすぎるわ。

 

 仮に目覚めたらどうする?

 シャーリーさんを掻っ攫って逃げるか?

 レジェンドラスタの2人と……いや、2人が挑んでも勝てるかどうか。

 

 じゃあ討ち死に、無駄死に覚悟で突貫する?

 俺の損害は軽微だけど、あまり意味が無い。

 というかシャーリーさんとコノハとササユとの縁が切れるのがとても痛い。

 どうしようもないのかな…。

 

 うーむ、飛行船から爆撃でもすりゃ意識くらいは反らせるかなぁ…打ち落とされる気がしてならない。

 どうすんべぇ、ウカムトルム。

 

 

 

 

 またウカムトルムと書いてしまった。

 なんか妙にシックリくるんだよな…しかも語感だけじゃなくて霊感レベルで。

 

 

 ……名は体を現すとか、呪的霊的に名前って重用なんだよな…。

 そしてウカムトルムがしっくりくる…………まさか?

 

 

 




剣術バルドは流石にやりすぎだったか、とちょっと反省してます。
強さ云々じゃなくて、転生者疑惑的な意味で。


恐ろしい事に、天然で生まれたディノバルドです。
そのまま成長していれば、新たな二つ名持ちが生まれていた事でしょう。
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