※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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色々考えて書き溜め量を計算してみたのですが、やっぱり基本は今まで通りの4日ペースでの投稿にしようと思います。
ですが期待してくださった方もいらっしゃいますし、書き溜め溜まりすぎなのも事実なんで、ゴールデンウィークはちょっと早めに投稿しようかと。
具体的には29日から7日か9日くらいまで、隔日投稿で。
時間は…折角休みの方も多いし、午前中かな。

しかしGWは忙しい時期ですし、感想返しが出来るかはわかりません。


第148話

 

神無月そろそろコタツ片付けようかな日

 

 思っていたよりは少なかったな。眉唾物だと思われたのか、植物を雑草だと思って捨ててしまった奴の方が多かったのか(トマトとかスゴイ分かりやすいと思うんだが)、或いは植物を長期間育てるよりも今日の飯を心配しなければいけないのか。

 理由はともかく、集まった数人のメンバー全員の共用の農園で実習し、家に帰ってからも試してみれるように種とミミズを渡す。これだけでも随分珍しがられた。ミミズは不評だったが…まぁ、確かにこの世界じゃ、種子だけでも貴重なのは無理ないかもしれんな。

 

 さて、後は農園をどうやって守るかだ。一日くらいなら俺が徹夜して守ればいいが、ずっと続ける事はできないし、ゴッドイーターとして狩りにも行かなければいけない。

 今は何もないのに柵で囲まれた場所にしか見えない。だが、それでも荒らす奴は出る。俺が…フェンリル所属の人間が何かやっている、というだけで、八つ当たりしに来る事は珍しくも何ともない。今まで、あんまりそういうのに遭遇した事なかったけどな…何せ居住区には殆ど関わらなかったし。

 とにかく、あからさまなトラップは禁止。仮にもゴッドイーターが、居住区に危険物を仕掛けたと言われると面倒な事になる。

 

 なので、ここはオカルトを使います。正宗に渡した、狩り技サポート用の道具と同じようなものを作る。特定の条件を満たした時、不動金縛りや虚空ノ顎が発動する。勿論、術者が直接霊力を使ってやるのではないから、威力は下の下、鬼にはまず通用しない威力しか出せないが…相手が単なる人間なら充分だ。

 これを仕掛けておけば、ヘタに農園に触れたらTATARIに晒されるという結果に終わるだろう。 

 

 

 

 農園の防衛については、これでいいとして…一つ、意外な出会いがあった。GE世界の死亡フラグクラッシャー、異能生存体、シスコン、バガラリーならぬバカラリー、藤木コウタ。シスコンの異名が示すとおり、彼には妹が居る。

 確か名前は………ノラミ? …違う、これはシオに名付けようとして総スカン食らった名前だ。そうそう、ノゾミだ、藤木ノゾミ。絵に描いたようなロリっ子(コノハやササユと違って正真正銘のロリだ)で、この世界では珍しく露出度は低い、と言うか普通。年齢を考えれば、天使と言って差し支えないだろう。妙な意味じゃなくて、7歳までは仏の子。

 彼女、今までは専ら兄のコウタに遊んでもらっていたようなのだが、そのコウタはゴッドイーターとして徴兵され、アナグラに行ってしまっている。それでヒマになった為なのか、なんと農園の為に集まったメンバーの中に彼女が居ました。

 

 …いや、ホントに居たんだよ、ノゾミちゃんが。どうやらその辺で見つけた野菜を齧って夢中になったらしく、それをまた食べられると聞いて来たらしい。

 せめて保護者連れてこようよ。お母さんにも黙ってきたらしいし…持って帰って食べさせてあげたいとか、なんと家族想いな。コウタ、いい教育しているじゃないか。

 だが警戒心が足らん。これが人攫い目的の詐欺だったどーしてたんだ。

 

 とりあえず、他にはロリもショタも居なかったから、帰りにこっそり後をつけて護衛しといたけど……いつ襲われるか分からんな。こっちも対策が必要だ。

 

 

 

 

 さて、本日分の農業も農園を守る為の細工も終わったから、狩りだ狩り。リッカさーん、メンテ終わってる?ヒバリさーん、手応えのある相手ダース単位でプリーズ。え、何、榊博士から実験の要望? 狩りの後に行くわ。支部長から呼び出し? あー、悪いようにはしないって言っといて。

 

 したらな!

 

 

 背後からヒバリさんが呼び止める声が聞こえたけど幻聴である。

 

 

 

神無月でも梅雨の時期は寒そうだし日

 

 榊博士の実験(と言うかお話)に付き合った後、支部長からの呼び出しを受けた。理由は、やっぱり農園の事だった。

 別に家庭菜園やる事自体は構わないし、それに居住区の人達を巻き込むのも全く問題はない。ゴッドイーターだからって、一般人と関わってはいけないという理由は無いんだし。

 問題としているのは、育つのが異常に早い植物の事。耳が早いね。

 

 こっちとしては、種とか出来上がった野菜を渡す事に問題はない。元々、その為に作っていたようなものだ。

 支部長としては、自分の下で一括で管理したかったようだが、もう菜園始めちゃってるのでそれは無理です。居住区の人達の不満を抑えるのに使えそうな事、そもそもアナグラ内でやろうにも人手が足りず太陽を受けられない事、その他諸々の利点を話し、何とか菜園続行の許可を貰った。

 

 …なんか、支部長にしては妙に素直と言うかアッサリしていたような…。俺の印象だと、とにかく迂遠な話し方で、「例え話はいいから素直に喋れや」とツッコミ入れたくなるような人だったんだが。

 それに、俺が持ち出した種の出所や詳細について聞かなかったのも気になる。一日で食えるようになる野菜とか、どう考えてもこの世界のものじゃないのにな。一応、特異点モドキの力を使って云々という言い訳も考えていたというのに。

 

 うーむ、思っていたより支部長が俺に対して無反応と言うか、関心が薄いと言うか。別にチヤホヤしろとか監禁しにかかって来いなんて事は言わないけど、どうにも気になる。

 …まぁ……関心が無いなら無いで、好きにやらせてもらうか。

 極端な話、最後の終末捕食の時に居合わせればいいんだから。

 

 

 

 

 

神無月梅雨まで出しててダニが湧いても困るしなぁ日

 

 

 起きる。牛乳飲む。ラジオ体操(※1)する。散歩(※2)する。農園のメンテとフトドキモノの始末する。ジャイアントトウモロコシ食う。ミッションを受ける。昼くらいまで狩る(※3)。帰り際に農業のノウハウを教え込んでノゾミちゃんを家まで送り、途中で(※4)始末した連中を肥料にする(※5)。昼飯食いにアナグラに帰る。牛乳飲む。支部長からの呼び出しから逃げる。ミッションを適当に受ける。ついでに他のゴッドイーターが何処でミッションを受けているか確認。自分のミッション地点への移動ついでに、アラガミを辻斬りして人助け。ミッション標的のアラガミが見つからなくて戸惑う(※6)。捜索中に、邪魔になりそうなアラガミを撫で斬りする。牛乳飲む。ようやく見つけた標的(※7)を蹴っ飛ばしてモグモグする。腹が減ったから帰る。俺の右手疼いているが厨二病的な意味ではない(※8)。帰り道(※⑨)でその辺に適当に(※10)種を撒く。アナグラに帰ってアラガミ素材の清算をする(※11)。牛乳飲む。収穫した野菜で晩飯作る(※12)。風呂入る。寝る時間まで暇なんで狩りに出る(※13)。気が付けば夜中の2時くらいになっている。その場で野宿するか、アナグラに帰って寝るかは気紛れで決まる(※14)。帰ってきた場合、ターミナルを見て支部長と榊博士から呼び出しがかかっているのを発見する。気が向けば翌日行こうと思う(※15)。寝る。トイレに起きて牛乳飲む。

 

 

※1  オカルト要素も入れた新バージョン。

※2  と書いて狩りと読む。

※3  ミッションが終わってないとは言ってない。

※4  教育に悪いため、ノゾミちゃんに気付かれずに。

※5  …殺してないよ、首だけ出して埋めただけで。 

※6  通信オフ・目の前にアラガミが居るけど俺には見えないね!

※7  俺を追いかけていたようだけど、5時間近くようやるわ。

※8  だって右手って神機だし、疼くのは腹が減ってるからもっと食いたいって言ってるんだし。

※⑨  バカ。

※10 植物の。こう注釈しなければいけない辺り、自分への信頼度がよく分かる。

※11 もう専用窓口が作られてしまったんですがそれは。毎日修羅場の時間ができた、と職員さんに愚痴られた。

※12 まだお裾分けできる程量はない。

※13 既にミッション受付窓口は終了しているが知ったこっちゃねぇ。

※14 アナグラに門限はある。ので忍び込んで寝る。

※15 気が向いた事は無いし、朝になったら忘れているが。

 

 以上がここ数日の生活である。むぅ、狩りへの情熱が蘇ってきたか。それとも神機の食欲に釣られているだけか。

 

 今日は神機がメンテナンスで使えないので、一日菜園の手入れにしようと思う。アナグラに帰ってくるのは夕方くらいか。

 …呼び出しに応じるのはその後でいいな。呼び出しを無視しても、支部長は何も言わない…という事は、もう見放されているか、そもそも形だけの話をしようとしているかだろう。榊博士は、段々ヤバげな実験に入り始めているが。

 

 

 そうそう、菜園に行く前に体を少し動かしておこうと思って訓練所に来たら、ツバキさんとコウタがチュートリアルもとい基本訓練をしているところに遭遇した。まだ序盤らしく、コウタも軽く息が上がっている程度だ。…ゴッドイーターになってまず驚くのが、自分の体力なんだよなぁ…。普通の人間でしかなかった筈なのに、重い神機持って平然と動き回って大ジャンプできるくらいに強化されるから。最初は強化された自分の体力がどれくらいのものなのか、把握させる為に徹底して疲労させられるんだよね。ま、頑張れコウタ。

 …場合によっては、またブートキャンプに連れて行くから。そう思った途端、コウタはビクッと震えて周囲を見回し、ツバキさんに怒られていた。うむ、相変わらず妙な所で勘がいい。

 

 当然ツバキさんも俺に気付いていたようだが、今は教導中だし、俺も余計な事はせずに体を動かし始めたんで、何も言われなかった。……久々に見た、ヒップとウェストのラインは目に焼き付けたがな。前ループでは、それはもう愛でまくったんだよなぁ…。ようやく訪れた春が相当嬉しかったのか、普段からは想像もつかない程甘い声で甘えてくるし。今思うと、ベッキーと似たようなタイプかもしれない。

 …ジロッと睨まれた。おお、怖い怖い。いきなり笑いかけるのも警戒されそうなので、平気な顔して「お構いなく」とヒラヒラ手を振った。フン、と息を吐いてソッポを向かれた。ちょっとショック。

 

 …前は酒の勢いだったっけなぁ。今度は正面きって口説けないかな…いやいや、今回の終わり方というかデスワープの仕方は決めてるようなもんだし、それを考えるとな…。

 

 

 

 

神無月唐突に支部長視点日

 

 

 やぁ。はじめまして…と言うべきかな?

 フェンリル極東支部長のシックザールだ。本日の日記は私の視点で語らせてもらう。尤も、普段の私は日記などつけていない。そのような事に時間を割く余裕は無いし、誰に見られるかも分からん手記に、考えを書き残しておくような趣味は無い。

 故に、日記と言うよりは私の心の中の独白のようなものだと思ってもらおう。

 何、難しく考える必要はない。『メタ』と表現すれば分かるだろう? 本来こういった文章はあまり良くないものだろうが、今回は勘弁願う。

 

 

 さて、前置きが長くなったが、私の手元に、一人の青年が居る。この青年、ありとあらゆる意味で胡散臭い。それこそ、私が言うのもなんだが、ペイラーに匹敵するほどの胡散臭さを放っている。

 別段、姿形が変わっている訳ではない。新型の神機を持っているとか、その辺もどうでもいい。ただその言動が信用できん。

 

 そもそもこの青年、私が進めている人類の未来を賭けたプロジェクトに、多大な貢献ができる…と、自称している人間だ。その計画の名はアーク計画。地球上の全ての生命を飲み込む終末捕食を人為的に起こし、選ばれた僅かな人間のみを宇宙へと逃す事で、アラガミの居ない世界を作り出す…要約すればそういう計画だ。

 この終末捕食を意図的に起こす為に、特異点というアラガミが必要なのだが、このアラガミが未だに見つからない。そうそう見つかるような相手でもないので焦っても仕方ないが、我々は今この瞬間にもアラガミの…もっと正確に言えば、終末捕食の脅威に晒され続けている。いつ特異点が覚醒し、我々が意図しない終末捕食が発生するかわからないのだ。もしもそうなってしまえば、人類に限らず地球上の生命は絶滅し、そして再分配されるだろう。

 当然、アーク計画にせよ終末捕食にせよ、一般人もゴッドイーター達も知る事は無い。

 

 だが、彼は我々にコンタクトを取る際、「特異点モドキ」と名乗っていた。知る筈のない情報を知っているのは、まだいい。情報は漏れるものだ。しかしそう名乗る彼の意図が分からない。私に取り入って、甘い汁でも吸おうと考えているのか。

 確かに、特異点が見つかっていない今、その代わりができる存在が手元にあるのは非常に都合がいい。アーク計画の準備さえ整ってしまえば、彼を使って終末捕食を引き起こせばいいのだから。…尤も、本当に彼が言うように、特定点の代わりが勤まるのであれば、の話しだが。

 何れにせよ、彼が珍しい存在なのは確かである。特異点かどうかはともかくとして、自由にアラガミに姿を変えられる人間なぞ聞いた事すら無い。ソーマでさえ、産まれる前に因子を埋め込んで、出来上がったのは強いだけのゴッドイーター。ペイラーに任せ、研究の役に立ってもらうとしよう。

 

 

 色々と考えはしたものの、私の結論は最初から決まっている。

 

 

 彼を信用する事は、無い。

 

 

 彼は終末捕食を起こすのに手を貸す、などと言っているのだ。当然の事ながら、終末捕食の為に特異点…生贄となれば、その者は死ぬ。それを自覚しているとは思えん表情もそうだし、そもそもアーク計画が上手く行こうと行くまいと、終末捕食が発動した時点で殆どの命の末路は決まる。大量の命の火を吹き消す事になるのだ。その切っ掛けになる事を、彼は自覚しているのか? 私にはとてもそうは見えなかった。

 自分から世界を滅ぼそうとする者を、その責を自覚すらしてない者を、一体誰が信用するのか。

 自分の事を棚に上げての考えだがね。

 

 とは言え、どうにも並みのゴッドイーターでは足元にも及ばぬ程の強さを持っているようであるし、先も考えた通りに貴重な研究素材となるのも間違いない。

 万一、彼が本当に特異点の代わりとなる事ができるのであれば、意識を奪って生贄にしてしまえばいい。特異点としての性質を、ノヴァに移してしまえばいいのだ。

 余計な事をするようであれば、始末すればいいだけの話。彼の立場は、利用価値とデメリットの微妙な均衡の上で成り立っている。自覚があるのかは知らないがな。

 

 さて、その辺を踏まえた上で、ペイラー。彼に本当に特異点としての働きができると思うか?

 

 

「現段階では、ノーとしか言えないね」

 

 

 ほう?

 

 

「特異点とは、人間に極めて近く進化したアラガミであって、アラガミに変化できる人間の事じゃない。もっと言うなら、もしも本当に彼が特異点として行動できるなら、アラガミ化しかけているゴッドイーターでも同じ事が出来ると思うよ。アラガミ化しても理性を保っていれば、だけどね。ただ…」

 

 

 ただ?

 

 

「彼が使う奇妙な力、あれが分からない。あれこそが特異点としての働きをする為の力だ、と言われると、その可能性は否定しきれないよ」

 

 

 あれか…私も何度か見たが、実に汎用性が高い力だ。力…というより、エネルギーと称するべきかな。傷を癒す、外傷を防ぐ、動きを止める、虚空に物を引き寄せる…。それも何の道具も準備も使わずに、だ。つまるところ、それはあのエネルギーが彼自身に由来している事を意味する。

 少なくとも、彼には未知の力がある。…だが、所詮はたった一人の人間に宿る力だ。それっぽっちの力で何かしらしたとして、それが終末捕食を引き起こす引金となるか?

 

 

「同意見だね。ただ、私としては『ありえる』と言いたいところだ。たった一人の人間でも、それに秘められた力はとても大きい。将来性や精神力の話ではなく、物理的に見てね。それに、彼が終末捕食において果たす役割があるとすれば、君が言うようにそれは引金だ。ダムを決壊させるのに、大きな爆弾を使う必要はないだろう。場所を選んで穴を空ければそれでいい」

 

 

 少々夢想が過ぎるな、お互いに。しかし、彼が使う力……どこかで聞いた事があるような…。

 

 

「ああ、それは多分ラケル・クラウディス博士が提唱している『血の力』だと思うよ。私もそこまで詳しく聞いてないし、彼女の……なんと言ったか、ヴィスコンティティ?君に発動の兆しが見えるだけで、まだ与太話扱いされているようだけどね」

 

 

 …彼女か。何度か会った事はある。ソーマに使った技術を応用し、昏睡状態から目覚めた少女だ。今でもその時の後遺症で足が動かず、常に車椅子に乗っている。

 その優れた頭脳には私も一目置いている。彼女ほどの能力を持っていれば、アーク計画の対象に選ばれるには充分なのだが…どうにも、彼女は何を考えているのか分からない部分がある。昏睡状態からの回復の為とは言え、アラガミの細胞を埋め込んでいる以上、次の世界に残す訳にはいかない。何よりも、私の直感が非常に危険だと告げている。彼女の父親とは、アーク計画…彼が賛同するとは思えないので、エイジス計画…を進める上で懇意にしてはいるが、残念ながらこれはもう決めた事だ。

 

 ふむ…だが、彼女に貸しを作っておく事は悪くない。彼が使う力が本当に『血の力』だとすれば、ラケル博士以上に詳しい人間は居ないだろう。

 『血の力』が特異点としての性質に関係してくるかは、私にとっても未知数だ。ラケル博士は、現在誰も発現していない血の力を直に見て研究できる。私は彼女に貸しを作り、更に特異点たり得るかの調査をしてもらえる。

 ラケル博士にとっても私にとっても良し、win-winかつ私の方が得。これが取引の正しい姿だな。

 とは言え、何を考えているのか分からない彼女に対し、特異点モドキを預ける事に不安はあるが。

 

 

 期間を決めて、出向させてみるか。最近、正気を疑うような勢いでアラガミを討伐しているようだし、長期休暇の名目で。

 …立場的には私の直属という事になっているからな…。彼がミッション受付を通さず討伐してきたアラガミは、私が命を下した特務だと思われ始めているようだ。つまり、文字通り休む暇も無く部下をこき使い、使い潰そうとしていると思われかねん。

 一応、フェンリルも企業だからな…休みを取らさせないと、監査がうるさい。本人が仕事の外で勝手にやってる事なんで、監査が入っても私にどうこう言われる事はないが…腹を探られて痛くないかは話が別だ。余計な手間は無い方がいい。

 

 確か、ラケル博士は新設しようとしている部隊の為の、専門拠点を作ろうとしていたな。その手助けとでもしておくか。あっちの方で、好きなだけ討伐してきてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し目を離している間に、居住区を使って菜園を始めていた。しかも見た事も聞いた事もない品種の植物で、育つのが異常なぐらいに早い。

 …おい、おい。何をやっている。 

 ぬぅ…これは…上手く使えば、凄まじい手札になり得るが…報告してからやれと……いや、こんな事が出来ると言われても、信じはしないか。それでも万一上手く行った時の算段はつけられただろうに。

 

 それにしても、また妙な事が増えたな。新たな品種の植物、一体何処から持ち出してきたのか。しかも、この困窮した世界に誂えたかのような、食糧難を救う可能性すらある代物。

 どう考えても、真っ当な手段で手に入れた代物ではあるまい。これも特異点モドキとしての、あの血の力を使った結果なのか。

 問い質すか?

 …いや、素直に返答するとも思えんし、何より答えたところで信が置けん。上がってきた結果だけ利用すればいい。

 

 とは言え、ラケル博士の下に派遣するとしたら、あの植物の世話もできなくなる訳か。居住区ではそれなり以上に話題になっているようだし、突然取り上げるような真似はできんな。

 居住区の人間にしてみれば、出所が怪しいながらも自分達の手で作り、そして食べられるようになった植物だ。これが突然無くなれば、フェンリルに対する悪感情は歯止めが利かない程に膨れ上がる可能性が高い。

 モノを取り上げるだけでなく、それを提供する本人が居なくなったら…考えたくもないな。

 幸い、本人にも博士にも話はまだしてなかったし、ラケル博士の下への出張は、暫く先にするか。

 

 

 

 

 

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