※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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ランサムウェアからのデータ復旧が可能らしいんで、PCを業者さんに送ることになりました。
その間執筆できない…かな?
実家に帰る時用の予備PCを注文したから、そっちで書けるかな…。

これが無ければ、討鬼伝2発売に合わせる為に、2日おきくらいに投稿しようかと思ってたんですが。
と言うか、データが無事だったの、本気で奇跡だったんだな…冗談抜きで間一髪だった。
もしもあの時データをもう一回保存せずに終わらせていたら、丸ごとふっとぶところでした。


第172話

神住月

 

 

 俺だ。

 なんか最近色々な夢を見るな。桃毛蟻と繋がってる夢じゃなくて、時々見ては妙なスキルを覚えるようなあーいう夢でもなくて…なんだろ、単なる夢でもなさそうなんだけど。

 

 ま、夢の話はどーでもいい。他人の夢…将来的な夢じゃなくて寝ている間の夢の話を聞かされる事ほど、無駄な時間は無いだろう。尤も、今の俺は無駄にしても余りあるくらいに時間を持て余している訳だが。

 地球では、そろそろ何やら話がクライマックスに向かっているっぽい。

 と言うのも、桃毛蟻の力がどんどん強くなっているのを感じるからだ。流石はノヴァの欠片と言うべきなのか、アラガミの進化速度と考えても異常な速さで成長している。

 終末捕食が起こるのも、時間の問題だろう。

 

 という事は、ゲームのストーリー的に考えると、勝って生き残るにせよ、失敗して地球が終末捕食に飲まれるにせよ、その分岐点。ストーリーとしては一番盛り上がる所だろう。これ以上の盛り上がりとなると、完全に詰んだ状態からの乾坤一擲の大博打くらいか。

 さて、ここにどう介入するべきか。

 

 介入自体は可能だ。ノヴァと桃毛蟻を通じて分身を出現させればいい。多分、ストーリー的にサクヤさんも近くに居るだろうから、力を送る基点が2つある事になり、その分強い分身が出せるだろう。

 だけど、介入した結果がどうなるのか分からない。それ以上に、どのタイミングで介入するべきか。

 

 地球の状況を知るには瞑想しないといけないんだけど、そうすると桃毛蟻が俺との繋がりを感じ取ってより強力になる可能性があるんだよなぁ…。

 ここぞというタイミングでないと、逆に足を引っ張る事になってしまう。

 

 

 …いや、目印は一つあるか。

 桃毛蟻が更なる成長、パワーアップをする寸前か直後。そこが恐らく決戦だ。

 桃毛蟻にこちらからの接続を悟られず、一方的にあっちの状態を感知する…。出来るかなぁ?

 そもそもどういう理屈で桃毛蟻と繋がってるかも分からないんだし、「こっそり瞑想接続する気分で」なんてファジーなやり方で出来るんだろうか…。まぁ、やってはみるけども。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …ん……んーー?

 

 

 うん、接続はできた、接続は。桃毛蟻に気付かれているかまでは分からないけど、桃毛蟻の内部エネルギーを感知できる程度には繋がっている。

 …のはいいんだが、なんかこう……リンドウさんの気配っぽいのがするんですが?

 

 なんだろコレ。何かしら関係があるのは予想してたけど、命の気配そのものがあるのは予想外だ。

 ムシャムシャされたのなら、もうとっくに死んでる筈。なのに生命の気配があるって事は………取り込まれた? どうやって? 何の為に?

 アラガミが獲物を食わずに取り込んだ理由…正直、想像もつかないな。

 

 ただ、激烈に悪い予感はする。

 …とりあえず、リンドウさんが生存していると言うなら、生還させる手を考えたい。考えたいが、情報がまるで足りん。

 地球の皆は、桃毛蟻の中にリンドウさんが居るって事に気付いているだろうか? …桃毛蟻の表面に、リンドウさんの顔でも出てりゃ気付いてるかもしれんが…夢の中で見る限り、そういった事は無いなぁ。

 

 どうすっかな…そう言えば、リンドウさんの神機の幽霊(?)は出てきたんだろうか? レンって言ったか。結局男なんだろーか女なんだろーか。個人的には女が嬉しいけど、神機を相手にヤる気には流石にならんな。多分、ハタから見たら虚空に向かってパンパンエレクトしているようにしか見えないだろうし。…何より、俺の神機が妙な事に使われるんじゃないかと怯えている気がするし。

 ゲームでは、リンドウさんの神機と主人公の神機の二刀流(ただしあまり意味は無かった)で、「生きることから逃げるな」と叫びつつ吶喊、どうやったのか全く分からない展開でリンドウさんをズルッと引き摺り出したんだっけ。

 そういや、あそこでも感応現象みたいな事が起きてたな。リンドウさん新型じゃないのに。

 

 …仮に、リンドウさん救出にレンこと神機…ブ、ブラッドサルベージだったかな? やはり何か違う気がする。が必要だとしたら、どうすればいいだろうか。

 多分、極東の保管庫に入ったままだよな。都合よく誰かが持って来てくれればいいんだが。戦って時間を稼いで、誰かに持って来てもらうしかないか。

 仮にあったとしても、俺にゲームストーリーと同じことが出来るとは思えないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そんな事を考えていたら、ビリッと来た。

 桃毛蟻から何かが伝わってくる。…危険を感じている? ふむ、思ってたより早かったが、決戦か。

 後は出たトコ勝負。リンドウさんの悪運に賭けるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞑想を始めると、桃毛蟻が見ているらしき視界が見えてくる。その辺のアラガミをムシャムシャしているようだが、何かに気付いたように周囲を見回し始めた。

 …時間は夜、場所は何処かの山岳地帯。

 他のアラガミの気配は無い…ノヴァの欠片に怯えて逃げたか?

 

 他のアラガミが居ないこの状況で警戒するものっつったら……接続した俺に気付いたか、或いはゴッドイーターか。どうやら今回は後者だったようだ。

 衣擦れの音がする。

 

 体を起こそうとする桃毛蟻の意識に介入すべきか悩んだが、どの道もう開戦間近だろう。手札はもっと決定的なタイミングで切る。

 

 

 桃毛蟻に気付かれた、と分かったのか、物陰から現れるゴッドイーター達。ソーマ、アリサ、コウタ……3人だけ?

 いやいや、余計な疑問は持つまい、それこそ桃毛蟻に伝わりかねん。

 

 

 

 威嚇するように吼える桃毛蟻に、動き出す3人。正面からのソーマに、援護のコウタ、アリサは…見事な隠密で影から接近しようとしている。俺が教えた隠密術、随分練習したようだ。

 何度か桃毛蟻に切りつけたようだが、やはり効いてない。厄介な性質持ちやがって。

 

 しかも賢く用心深い。3人と戦いながらも、周囲への警戒を解いていない。…介入するなら、ここか。 

 

 

 桃毛蟻に伝わるように意識して、イメージする。

 3人からの攻撃に怯んだように見せかけて体勢を崩し、近寄った所に反撃。

 

 それを自分の思いつきと判断したのか、それとも俺の意識に誘導されただけなのか、桃毛蟻はそれに忠実に動こうとした。

 体勢を崩す。

 

 そして崖の上から唐突に出現するサクヤさん。やっぱり居たか。リンドウさんの仇なのに、出てきてない訳ないわな。

 月を背後に銃口を向ける姿は、殺意と美貌が合間って何とも神秘的な雰囲気が漂っている。が、桃毛蟻の感性にそれが引っかかる筈もなく。

 

 …いやコイツ凄いわ、マジで賢い。サクヤさんが現れた瞬間から、弾道予測までしてやがる。しかも隠れていたのが出てきたのには、攻撃の効かない自分に対する為の『何か』がある、とまで理解しているようだ。

 

 だが、体勢を崩したのはフェイク。桃毛蟻は『避けられる』と思っている事だろう。

 

 

 しかしそれこそ甘いッ! バランスを崩したように見せかけ、しかしすぐに立て直せる状態というのはヒジョーに難しい! 汎用性の高い人間ボディだって難しいのだ!

 

 つまりッ!

 

 

 

 

  動 く な ッ ! ! 

 

 

 

 

 

 一瞬だけでも動きが乱れれば、フリだった体勢の崩れは本物となるのだッ! 

 

 桃毛蟻の動きが止まった!

 弾道射出!

 

 

 直撃ィッ! ビューティホゥ!

 

 

 

 痛みに叫ぶ桃毛蟻。ふむ、介入は上手くいったようだな。

 しかし、同じ手は使えそうにない。咆哮には痛みだけでなく、怒りと不信の色が混ざっている。自分の意識が俺に誘導された事に気付いた? どちらにせよ、小細工をするのは止めて、自分のスペックで押し通すつもりのようだ。

 

 

 ここからが本番、と気合を入れなおす4人。成程、これで攻撃が通じるようになった訳ね。

 この桃毛蟻、火力(使うのは氷のようだが)に関しては目を見張るモノがあるが、同時にダメージに対する耐性…というより慣れが無いようだ。体質のおかげで、今までロクにダメージ受けた事ないんだろうな。あったとしても、まだひ弱だった幼生の頃か。

 

 

 さて、ここからどうなるか…。

 桃毛蟻の能力は、俺も殆ど把握してない。ハンニバルそっくりの手甲の意味も、リンドウさんの気配がする理由も、二足歩行して超高速攻撃が出来るかもしれないって事も、全て不明のままだ。

 ここからは桃毛蟻も本腰を入れるだろう。

 

 意識による介入が弾かれそうな今、俺に残された手札は一つだけ。

 桃毛蟻とサクヤさんを通して、今までの中で最も力を持っている分身を出現させ、戦う。正直な話、どれだけやれるか完全に未知数だ。

 幻にどれだけの耐久力があるか分からないし、動きも遠隔操作みたいなもの。…それでもやるしかない、か。撃破されても分身だから、本体の俺は死にはしない。

 最悪、誰かを庇って分身が壊れる事も考慮に入れておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そうこうやってる内に、青筋立てた桃毛蟻が暴れまわってる訳だが…まぁ強い強い。いやホントに大したもんだわ。

 体は脆くなってる筈だってのに、属性攻撃がロクに通じてないっぽい。…妙だな、桃毛蟻の攻撃を見るに、こいつの属性は氷、弱点は炎っぽいんだが……明らかに炎に耐性がある。

 

 それに加えて、異様に高い攻撃力。そしてこの動きは……うーん? 体格にや骨格に明らかに合ってない、その癖妙にスムーズな動き。

 なんか…チグハグだな、こいつ。

 アレだ、ビーナスみたいに複数のアラガミを組み合わせたような…………組み合わせ?

 

 

 

 

 

 あ。

 

 

 

 まさかコイツ…?

 

 

 

 それに思い当たった頃、桃毛蟻は追い詰められていた。確かに強いが、ゴッドイーター達の強さはそれ以上だ。

 ついでに、他にも何か小細工してるなコレ。桃毛蟻の動きを阻害するような何かっぽいけど…。

 

 桃毛蟻は包囲され、各所に結構な傷、部位破壊されている部分も見える。という事は…。

 

 

 札を切るなら、このタイミングって事か。俺も、桃毛蟻もね。

 ご丁寧にも、フラグを立てるようにサクヤさんが叫ぶのが聞こえた。

 

 

 

「これでトドメ! リンドウの仇!」

 

 

 

 …その叫びは、逆襲フラグじゃなくてリンドウさんの生存フラグである事を祈る。

 叫びを聞いた桃毛蟻は、わざわざサクヤさんに顔を向けて……嘲笑うように顔を歪めた。言葉まで理解しているのか、それとも単なる偶然や本能なのか。

 

 何れにせよ、変化は劇的だった。

 

 

 桃毛蟻の背中の羽が、大きく盛り上がる。いや、盛り上がってるんじゃない? 形を変え……いやこれも違う。

 

 

 

 桃毛蟻の背中が裂けて、中から人型の上半身が起き上がる。それを人型と言うべきかトカゲ型、竜型と見るかは別として……俺はその形を知ってる。

 

 

 

 ハンニバルだ。ただし、桃毛蟻の背中についていた羽が、ハンニバルの背中についている。

 しかも篭手は右腕……これって普通だっけ、侵食種の方だっけ。ゲームではリンドウさんの右腕がアラガミ化状態だったから、侵食種の方か。

 

 

 

 下半身(と言うか腰から下)は桃毛蟻。上半身はハンニバル。

 分かりやすく言えば、ケンタウロスのような状態だろうか? いや、FF8版のアルテマウェポンって言った方が分かりやすいか。…俺のループの状態を考えると、討鬼伝世界のトコヨノキミが一番近いか。

 

 で、リンドウさんの気配があって、ハンニバル侵食種って事は。

 

 

 

 

 ハンニバルの胸元が、メキメキとグロテスクな音を立てて開く。

 

 

 予想はしてたが、そこにはリンドウさんが上半身マッパ状態でハンニバルに取り込まれていた。

 ちなみになんかベトベトしてるっぽいが、アレはハンニバルか桃毛蟻の体液だったんだろうか…。

 

 

 

 リンドウさんの姿を見て、なんか色々混乱するゴッドイーター達。普段ならサクヤさんが落ち着かせるんだろうけど、そのサクヤさんが一番衝撃的だからな。

 予想はしてたが、ハンニバルが篭手付きの手を握り締めて、サクヤさんに向かってファイアーパンチ!

 

 

 

 

 

 アラガミ状態分身、介入!

 

 

 ガードすると衝撃で分身が消えるので、ブレードで腕を逸らす。ちょっと切れたら、リンドウさんの顔が歪んだ。

 どうやら痛覚が繋がっているらしい。人質のつもりか?

 

 

 

「あ…あぁー!」

 

 

 俺を指差しながら叫ぶアリサ。落ち着け。E・T的なカンジでアリサの指に指を合わせ、感応現象開始。

 色々語り合いたいトコだが、そんな時間は無い。ついでにアラガミボディ状態なので真っ当に喋れない。

 

 余計な事(知られたら怒られそうな事)は伝えずに、戦闘に必要な情報だけ流す。

 この状態の桃毛蟻が使うだろう攻撃法方、弱点部位、そしてリンドウさんを救出するにはどうすればいいか。

 

 

 …いやホントどうしようね。

 リンドウさん帰還エピソードにおいて、レン…は、まぁ主人公に情報を伝える為の存在と割り切れば、ぶっちゃけ遭遇してなくても問題はない。

 リンドウさんを「介錯」するなら、レンことリンドウさんの神機は必要だが…まぁ、これも要らない。一番攻撃が通りやすいってだけで、他の攻撃で倒せない訳じゃない。

 

 んじゃ何が問題かと言うと、リンドウさんを叩き起こす為、精神世界に侵入する………必要があるか?

 確かにアラガミ化して、意識も無いっぽいが…………。

 

 

 ま、その辺はとりあえず『切断』してから考えるか。意識が無いなら、かなーり痛い思いしたって大丈夫だろ。むしろ気付けになるかもしれん。他人事丸出し。

 放っておいたらリンドウさんは完全に取り込まれて死亡、躊躇っていたらリンドウさん救出どころかこっちが全滅するんだから、とりあえず切り離してから後の事考えよ。

 

 リンドウさんの姿を見て、動揺しているサクヤさんを強引に下がらせ、俺参戦。

 

 という旨を、アリサから皆に伝えてもらおう。返事は聞いてない、と言うより聞いてる暇が無い。

 突然出現して獲物を庇った俺が気に入らないのか、それとも自分と俺との何かしらの繋がりに気付いたのか、既に桃毛蟻ハンニバル…何か略称考えよ…は俺に狙いを定めている。

 ハンニバル部分に至っては、最初から逆鱗が崩壊しているのか、猛烈な炎が吹き上がっていた。…アレ、リンドウさんの体も炙られてるな…早いトコ鎮静化させんと、全身ヤケドで死んでしまいかねない。

 しかも桃毛蟻が出した氷にバンバンぶつけて、水蒸気爆発っぽいのまで起きている。むしろ反作用ボム?

 水蒸気が強すぎて、視界にも徐々に霧がかかり始めた。

 

 …こりゃ洒落にならんな。霧は俺の炎か何かで爆発起こしてフッ飛ばせばいいけど。

 

 

 まぁ、何はともあれ…外野の騒ぐ声を無視して、バトル突入である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神済月

 

 

 来た、見た、勝った! …なーんて一言で済ませられるレベルだったら、どれだけ楽だったか。

 いやもう、ガチで強かった。

 

 単純なスペックも高かったんだが、それ以上にハンニバル部分の動きが…。

 ゲームとはまるで違う。ゲームのハンニバルは、火炎攻撃、尻尾攻撃、それに剣を振り回すような攻撃だけだったと思うが…その他、パンチ、炎剣の投擲、桃毛蟻と連携しての突進しながらの剣振り回し…。それに何より、こっちの攻撃を篭手で受け流すなんて技は無かった筈だ。

 いやもう、ソーマのスライディング斬りと、俺のチャージクラッシュ(アラガミ状態だとチャージ時間殆ど無いけど)の同時攻撃を腕で振り払った時はマジでビビった。

 

 「パリイ!」って思わず叫んじゃったよ、上手く声が出せないぁら「バァイ!」くらいにしか聞こえなかったと思うけど。動き的にも、パリイ!な感じだった。

 その他、体の使い方が上手い上手い。肘打ち裏拳を初め、マ・ワ・シ・ウ・ケモドキまでやりやがった。更に反撃のラリアットが淀みなく続く。

 暫くすると、桃毛蟻の動き方も変わり、ハンニバル部分の行動と連携するようになるは、位置取りや移動の仕方が明らかに戦術戦略的になるは。

 炎で桃毛蟻を攻撃しようとすればハンニバル部分で受け止め、先にハンニバルをどうにかしようと氷を使えば、逆に桃毛蟻が打ち払う。

 互いの弱点をアラガミバレットで付けはするんだけど、攻撃がマトモに当たらない。

 

 

 

 勿論、幾らアラガミがかしこいからって、ここまでやれる筈が無い。この手の技術が人間の専売特許だとは思わないが、アラガミが覚えるような技術じゃないだろう。

 そこまでやれる理由は明らかだった。

 

 あんにゃろう、リンドウさんを殺さずに取り込んだ狙いはコレか。自分ではハンニバル部分を効率的に扱えないから、制御ユニットとしてリンドウさんを利用しようとしやがった。ハンニバル部分を攻撃したらリンドウさんも苦しむ…というのは、狙ってやったのか分からない。

 よくもまぁ、そんな事を思いついたもんだ。ひょっとして、俺との繋がりが妙なインスピレーションを与えてしまった…なんて事はないよな?

 もしそうだとしたら、ここまで話がややこしくなったのは俺が原因…いやでもそうなったからこそ、リンドウさんも無事生還できた訳だし…いやいや、そもそもリンドウさんが片腕吹っ飛ばされたのは、俺のイメージが桃毛蟻に伝わったから…でもそれも推測…。

 …まぁ、結果よければ全て良しか。

 

 

 

 

 で、かなーり梃子摺ったんだけど、やっぱりあの状態は桃毛蟻にもかなりの負担がかかったらしい。

 考えてみりゃ当然だな。リンドウさんの意識かハンニバルの意識か、とにかく文字通り身の内に敵が潜んでいるようなもんだ。それを抑え込む為にかなりのエネルギーを使っていたようだ。

 そんなリスクがあるって事は、当然今まで多用は出来なかった。だからあの戦闘体勢になる事のデメリットを自覚できていなかったようだ。

 

 即ち、不自然な体勢によるバランスの崩れ。

 

 どんな形であれ、生物ってのは必要があってそのような姿をしている…というのは至言だと思う。それはアラガミだって例外ではない。

 特に四足歩行と言うのは、安定感という点で見ればこれ以上無いくらいの完成形だと思う。

 だが、それに不自然な形で要素を付け加えたらどうなるだろう? 安定した台の上に、安定しないヤジロベーを乗せるようなものだ。

 

 確かに、ハンニバルの上半身を乗せ、更にリンドウさんを制御装置に使う事で、防御力・攻撃力共に跳ね上がったのは事実だった。

 だが同時に、安定感という面では大幅な低下を見せていたのだ。

 

 桃毛蟻が走ればハンニバルの体が揺れ、ハンニバルが拳を振るえば桃毛蟻がひっぱられ。

 もしもハンニバルにも意識があって、互いに合わせて戦っていたなら、この欠点はほぼ消えていただろう。しかし、実際は桃毛蟻の上でハンニバルは半ばオートモードで動いていただけ。

 流石に桃毛蟻にも、俺達と戦いながらハンニバルを完全制御し、更に人獣一体を成し遂げる程のキャパシティは無かったようだ。

 

 

 まぁ、それでも猛烈な勢いで慣れていってたけどな。完全に慣れる前に決められるかどうかが勝負の分かれ目だった。

 カギになったのは……リンドウさんの神機だった。

 ご都合主義な事に、現場まで持って来てたんだよねーこれが。「何で?」って思ったけど、一応理由はあった。

 

 そもそもね、桃毛蟻が妙に脆い…と言うか、怯みやすいなーとは思ってたんだ。それに、周辺一帯から妙な感覚を感じていた。俺自身も、何だかバランスを崩しやすかった気がするし。

 …なんとね、どういう訳だかリンクサポートが動いてたんだよ。

 リンクサポート。GE2の、出撃してない人の神機使って、色んな効果を出すアレだよ。…なんで今動いてんの?

 疑問はあったが、とにかく都合がいいのは変わりなし。

 

 リンクサポートの機械に繋がれていたリンドウさんの神機を引っこ抜いて、二刀流しました。双刀的に、アラガミ状態+鬼人化!

 ハンニバルのパンチを避けて、腕が伸びきった所にザクッと差して、腕を地面に縫い止めた。

 

 

 …で、このタイミングで何故か感応現象が起きた。ただし、相手はアリサじゃなくてレンだったが。リンドウさん…の気配も薄っすら感じたんだけど、姿が見えなかった。

 怒涛の展開だったなぁ…。

 

 レン曰く、自分はレンといい、ここはリンドウさんの意識の中……なんだそーだけど、ぶっちゃけ知っています。

 先手を打って、「レンはリンドウさんが使っている神機で、アラガミと化したリンドウさんを介錯できないかと考えてたら、リンドウさんは桃毛蟻に取り込まれるはレンはリンクサポートとかいう得体の知れない機械に繋がれるは、挙句の果てには俺が平然と掴んだ上に感応現象まで起きてワケワカメなんですねわかりますん」とぶっちゃけてみた。

 戦慄された。「アラガミ化といい僕の事といい、恐ろしい人です…」だそうな。

 

 

 まーとにかく、予想外のところでレン登場した訳だが、そんでどうしろと? 意識を辿っていって、リンドウさんを呼び覚ませと?

 

 

「大体そんな所です。ここで数年くらい暮らさないと、現実では1秒も経ちませんから、時間は気にしなくて結構です。尤も、どっちにしろリンドウを起こさないと、出るに出られそうにありませんが」

 

 

 …レンを殺せば、感応現象消えるんじゃね? リンドウさんと俺だけで、現象が成り立つとは思えんし。

 

 

「さらっと恐ろしい提案をしないでください。…そうですね、可能ではあるかもしれませんが…もしもそうした場合、或いはそうしようとした場合、こっちにも反撃の手段があります」

 

 

 別にやる気はないけど、その手段とやらに興味はあるな。具体的には?

 

 

「教えたら対策練られちゃうじゃないですか……でも、そうですね…脅しとして伝えておきますが……僕は今でもリンドウと、ある程度の繋がりがあります。そして、今ではアナタとも」

 

 

 ほほう。

 

 

「そして、僕が死、或いはそれに近い状態になったら、リンドウに『置手紙』が渡るようにしましょう。内容は……貴方が僕に危害を加えようとした事と。………泥酔したサクヤさんと寝た事でどうです?」

 

 

 

 絶対リンドウさんを救い出すんで、それだけは勘弁してください。アレは俺も本意じゃなかったです。

 

 

 

「結構。…ああ、リンドウにこの情報は渡ってないですよ。僕も確信したのはついさっきです」

 

 

 …感応現象で余計な情報まで読み取ったか…。迂闊だったな。

 ところでさ、さっきから(実際はゲームプレイヤーだった頃から)気になってた事があるんだけど。

 

 

 君、男? 女?

 

 

 

「…僕は武器だから、性別無いんですけど…」

 

 

 でも人格はあるだろ。増して、神機の中身はアラガミっつー生物だし

 

 

「アラガミにだってオスメスあるか怪しいものですが…意識的には男、でしょうか。僕の性格も、リンドウの影響を多大に受けて、データが蓄積されたものだと思うと…」

 

 

 意識的には、という事は…。それに人間にはアニマ、アニムスという女性の中の男性像、男性の中の女性像があってだな。

 

 

「…そんなに僕を女にしたいんですか?」

 

 

 そのセリフ、聞き様によっては卑猥だな。まぁ、男より女の方が嬉しいのは確かだが。

 まー流石に、俺もこの状況で手ェだそうとは思わんよ。現実じゃ戦闘中だし、まかり間違ってレンの意識や感覚がリンドウさんに行った日にゃ、ぬふぅなカンジになってしまいかねん。

 それはそれでリンドウさんが飛び起きるかもしれんけど、後が怖いし。

 

 

 しかし、リンドウさんの意識を呼び戻したとして、どうする? 仮にアラガミボディから引き摺り出せたところで、アラガミ化が再発するんじゃないか?

 

 

「ソレに関しては、正直行き当たりバッタリですが、アテがあります。あなたという前例もありますし」

 

 

 確かに俺もアラガミ化は制御できてるが、理屈がわかってる訳じゃないんだぞ?

 

 

「勿論、リンドウが自力でコントロールできるなんて思っていません。それが出来ていれば、『介錯』は無くなっているでしょうし。…簡単な話です。僕がリンドウのアラガミ化を抑えます」

 

 

 ほう。

 

 

「本来の使い手以外の人間が神機を持てば、ゴッドイーターであっても侵食されます。逆に言えば、やろうと思えば『使い手を侵食する』事も不可能ではないんです。僕がそれに干渉する事も」

 

 

 

 でも、それってリンドウさんが24時間神機を持ち続けなければいけないって事にならんか?

 

 

「死ぬよりはいいでしょう。その間に、何かしらの手を見つけてくれればいいんですが。…さて、話はこの辺りにしておきましょう。リンドウの救出、手伝ってくれますね?」

 

 

 

 

 そういうセリフは、「ちくり帳」と書かれたノートを見せ付けながら言う事じゃないと思います。まぁ、やるけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そんな流れで、リンドウさんの意識を目覚めさせる為、サクサク狩りをするのだった。

 

 

 

 狩り自体は、そんなに厄介なものじゃなかった。俺の知ってるアラガミが殆どだったし、状況もそんなに悪くない。レンがオペレーターみたいな事をやってくれたから、バックアップもバッチリだ。

 その後の展開も予想できてた。あの崩れかけた教会…では別に死に掛けたりしなかった(と言うか俺が大暴れして切り抜けた)から、別の場所でハンニバルとやりあう事になるんだろうな、と思ってたんだ。

 

 

 

 

 …ただ、そこに桃毛蟻まで居るのは予想外だったけどな!

 

 考えてみれば当然だったかもしれない。ゲームでは、リンドウさんを侵食しようとするアラガミ…ハンニバルのみとの戦いだった。

 が、今はそのハンニバルを桃毛蟻が取り込んでいる。当然ながら、合意の上で融合している訳ではないだろう。抵抗しようとするリンドウさん、リンドウさんを塗りつぶそうとするハンニバル、更にハンニバルを抑え込もうとする桃毛蟻。

 酷い乱戦である。しかも、今度は現実での戦いのように、不自然な体格ではなく、ちゃんとした体で自由自在に動き回る。…リンドウさん、よく生き残れてたなぁ…。どんな精神力してんだか。

 

 まあ、そこまで行けば後は何とかなる。なまじ図体デカくて力も強い、挙句耐性や攻撃属性まで反対なもんだから、同士討ちに持って行きやすい。アラガミバレットの効果も高いし、現実での戦いみたいに耐性の高い部位で弱点を庇う動作も無い。

 状況の厄介さで言えば、こっちの方が上だったが……リンドウさんが正気に戻って援護してくれたのも助かった。

 

 最終的には、目出度く精神世界内でのミッションは全て完了。ゲームだとレンがオダブツした記憶があるが、それも無しだ。

 桃毛蟻とハンニバルを討伐した後、リンドウさんとレンが何やらお話していたが……まぁ、ここで聞き耳立てるのも無粋だな。何より、まだ状況は終わってない。

 現実世界では桃毛蟻inハンニバル…この場合はonかな…状態だし、リンドウさんの切り離しもやらなきゃいけない。桃毛蟻本体の討伐もあるし、リンドウさんのアラガミ化を止められるかどうかも未知数だ。

 俺の個人的な用事を言えば、アリサやレアとも話したいし、できればGE2に向けての布石も打っておきたい…何すればいいのか全然考えてないけど。

 

 やる事が山積みだぁ、とゲンナリして、現実での桃毛ニバル(…語呂が悪い。却下)に八つ当たりしようと決めた時、スーッと景色が薄れ始めた。どうやら感応現象が終わるらしい。

 

 その薄れていく光景の中で、レンが話しかけてきた。…非常にビミョーな顔付きで、だったけど。

 

 

「ありがとう。…僕が思っていた結末より、ずっと素晴らしい未来が見られそうです」

 

 

 …そう思うなら、その嫌そうな顔はなんぞ。妙なタテマエとかマエガキとかいいから、はよ本題。話せる時間も短いだろ。

 

 

「………ええ、そうですね、嫌ですけど…。リンドウの体の事ですが、やはり僕が協力しても、アラガミ化を抑えるのは至難の業です。なので、貴方に協力を仰ごうと思うのですが」

 

 

 協力するのは別にいいけど、俺に何をしろと?

 

 

「貴方が使っている、レア博士が『血の力』と呼んでいる力を使います。僕にもあれの正体は分かりませんが、意思に左右される力なんでしょう? 僕がその力を持てれば、リンドウの体により強く干渉できます」

 

 

 レンがあの力を使える確証はあるのか?

 

 

「はい。リンクサポート機能を通じて、どのように操ればいいかは大体分かっています」

 

 

 …ああ、そういやあの機能って、血の力で何故か動くって代物だったか。何でこのタイミングで完成してるのかと思ったら、レンがそれに近い力を持ってたって事か。

 一応理屈は通るな。俺からノヴァの欠片を通して桃毛蟻へ、桃毛蟻からリンドウさんへ、リンドウさんからレンへ、レンからリンクサポートの機械へ、か。

 で、リンクサポートは何故かリンドウさんの神機でしか起動しなかったから、「一緒に仇討ちしよう」みたいなノリで実戦投入されたと。

 

 

「大体そんな流れでしたね。結果オーライと言うべきか、僕がずっとリッカさんに向けて密かに主張を続けた成果と言うべきか…。いえ、その話は置いておきます。とにかく、貴方のその力が必要です。文字通り」

 

 

 オーケイ協力しよう。で、霊力受け渡しの方法だが…。

 

 

「…サクヤさんにしたのと同じ方法が、一番効率がいいんだと思いますが」

 

 

 マジか!

 

 

「思いますが! 生憎悠長にR-18やってる暇がありません。もう1分もしない内に、この感応現象も完全に終わります。なので、キスだけで終わらせてください。出来るでしょう? 出来ないとは言わせません」

 

 

 

 …出来るけどお前、ビビってるだけじゃないか? 俺がどうやって霊力受け渡しするかなんて、今のところ誰にも教えてないぞ。サクヤさんのを見ただけで、ハッタリかましてるだろ。

 

 

「ええそうですよビビりもします! 何でもいいから、さっさと終わらせてください! もう感応現象が30秒保ちませんよ!?」

 

 

 へいへい、雰囲気ねーな…。でわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドサクサに紛れて色々触ってみた。

 

 

 

 …ふたなり二人目、か。千歳は個人的にセーフだったし、レンもセーフかな…。指までは入れたし。

 

 

 

 

 

 

 そんな按配で、現実に戻ってきたのだ。

 延々と精神世界内で狩りしてたんで、どういう状況だったか思い出すのにちょっと戸惑い、逆撃を受けそうになったが、そこはアリサとコウタが牽制して防いでくれた。

 今度はリンドウさんが目覚めたおかげか、ハンニバルの動きが固まったんで、レン…と言うかリンドウさんの神機をハンニバルの腕から引き抜いて潜り込む。

 

 そいやぁ! とばかりにリンドウさん近辺をぶった切ってくり貫いた。

 

 …ここで分かったんだけど、確かにレンの中に霊力が宿ってるな。これでアラガミ化を抑えるらしいから、リンドウさんと一緒に下がらせておくか。

 

 

 さて、リンドウさんも何だかんだで救出できたんで、後は桃毛蟻の討伐だ。むしろこれは簡単なくらいだった。

 何せ、制御装置を失ったハンニバルボディが、桃毛蟻の体の上に鎮座したままなのだ。バランスは無茶苦茶、死体みたいに動かなくなってるから邪魔にしかならない。

 ここぞとばかりに攻め立て、前線のゴッドイーター総出のラッシュで仕留めました。

 

 …正直、この後ハンニバルのコアが再生して連戦…って事も考えてたんだが、どうやらそれも無いようだった。

 

 

 何はともあれ、ミッション完了。周辺に敵影無し、オールクリアだ。

 完全に戦闘が終わったと気を抜いて。

 

 アリサが神機を放り出して、抱きついて…と言うか飛び掛ってくるのを受け止めようとしたら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間には、分身は消えて月に意識が戻ってきましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 

 何で?

 

 

 

 

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