※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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討鬼伝2体験版の今までのデータは引き継げないんだろうか…。
レベルの上がる速度を見ると、発売までに結構鍛えられそうではあるけども。

それはそれとして、ランサムウェアのおかげで今まで集めてきたデータが全滅。
中にはHPや作品が削除されて、もう手に入らないものとか、あまり胸を張れない経緯で入手したものもあるというのに…。
しかし業者に連絡しても無理ならどうにもならん。ヤケ酒&ヤケ投稿します。
しかも郵送代+着払いで1万近く飛んだ。
今考えると、バックアップデータを外付けHDに移して、そっち送ればよかった。
少なくとも郵送代は節約できたろうに。

まだ残ってるやつは、ゆっくりダウンロードしなおすしかないか…。


第173話

神住月ガーリックのパンが美味い日

 

 

 …多分、あの後アリサは俺の分身が消えて、そのままズサーッとコケたんだろうなぁ…。恋人が再会する割と感動的なシーンだったと言うのに、いきなり消えるとは空気が読めてないな。

 あの流れはさぁ……ほら、なんだ、こう……久々に再会した仲間達と、一言ずつでも語り合って、再会を約束してから光に包まれて消えるとか、そーいうシーンだろぉ?

 

 …シオならともかく、俺みたいな色ボケ外道に、そんなヒロインみたいな演出は無い? ああそうですかそうですね。

 

 

 …しかし、考えてみれば当然の結末だったかもしれない。

 何せ、俺の分身をあっちに出現させられていたのは、ノヴァの欠片が地球で活動していたからだ。つまりは桃毛蟻。

 それをぶった切って完全に沈黙させたからなぁ…。完全に活動停止して、分身を出現させる為の送受信機が無くなってしまった状態だ。そりゃ分身も即消えるわ。

 

 一応、霊力的な繋がりだけならレアやアリサ、あと細いけどサクヤさんにもあるんだけど、純粋に月と地球間で通信できるだけの出力が足りない。今までは、ノヴァがそれを補ってたんだけどな。

 ちなみにレンには繋がりは無い。あの時のキスでは、繋がりを作らずに霊力だけを吹き込んだから。

 

 

 

 うーむ、何と言うか…すっげー不完全燃焼感。デスワープした時と同じレベルでモヤモヤする。

 結局、地球に現れてやった事と言えば、ちょっと観察してちょっと情報交換してちょっと強敵と戦ったくらいだしなぁ……サクヤさんとのアレは無かった事にする方向だし。

 

 大体、リンドウさんがどうなったのかも不明のままだ。ハンニバルから解放したはいいけど、本当にレンが言うようにアラガミ化を抑えられるのか。

 シオも居るけど、特異点でなくなったシオにアラガミ化を抑える能力は残っているのか。……そういや、シオとも全く話せなかったな。

 うぅむ……なんていうか、キャラゲーに空気参戦(しかも会話シーンほぼ無し)したらこんな気分じゃないだろうか。

 

 

 

 

 

 しかし、これからどうすっかな…。有体に言って、やる事が無い。ヒマだ。

 

 これまでは何だかんだ言いつつ、地球の様子も見れていたし、厄介事に対応しないといけなかったから、真剣に考えてたし、ヒマという程のヒマは無かった。

 が、ノヴァの欠片が活動停止した今、瞑想しても地球の様子は全く見れない。分身なんて影も形も出来てないだろう。

 月のノヴァ全体と同調したりしてエネルギーを取り込むのも、もう頭打ちに近い。ノヴァ自体はもっと強いエネルギーを持ってるけど、俺の器が限界だ。

 

 なぁんかやる事無いかなぁ。

 瞑想してばっかでも死にはしないけど、それでアリサ達が迎えに来てくれるのを待つってのはな…。地球の状態を考えれば、月までやってこれるだけの条件を整えるのに何十年かかるか。

 流石にそれまで瞑想してジーッとしながら待つのもなぁ…。

 

 

 

 

 

 …分身、分身…か。考えてみりゃ、出来たんだよな。ノヴァのサポートがあったとは言え…。

 地球に分身を出現させる事もできたんだから、俺のすぐ傍に出現させる事も出来るんじゃないか?

 

 もし出来たら………俺二人、女一人のサンドイッチプレイとかにも行ける訳か。分身の感覚や思考は共有できるから、他の男に触らせてる感も無い。素晴らしいな!

 

 …でも出来たとしても、地球に戻れなけりゃ相手も居ないか。

 結局そこに辿り着くんだよなぁ。月からどうやって脱出するか。

 

 最終手段デスワープという手もあるにはあるんだが、自殺だけはする気にならない。今まで何だかんだ言っても、それだけはしなかったしな。

 となるとやっぱり脱出か…。現実的・非現実的を問わず、月から移動する方法。

 

 

 ①ロケットを作る。

 ②生身で飛んでいく。

 ③テレポートする。

 ④月を落下させて地球と地続きにさせる。

 ⑤月ではなくコロニーを落下させる。

 ⑥いっそ太陽が爆発する。

 ⑦縮退砲が流れ弾で飛んでくる 

 

 

 

 ……冗談半分で考えてはみたが、ロクなもんじゃねーな。

 この中で一番現実的なモノは………③かな? テレポートの何処が現実的だ、と言われるとその通りだが、俺にはミタマの力がある。タマフリ『縮地』を使えば、短距離だがワープは可能なのだ。

 霊力をもっと篭めて、術を改良して……上手くやれば、地球にテレポートするのも不可能ではない? 人間の身じゃそんな霊力は振るえないが、そこはノヴァ本体というバックアップがある。

 

 よし、この方向で考えてみるか。

 

 

 

 

神帰月ウィルキンソンとポッカに嵌っています日

 

 

 新しい月に突入。していると思う。下手すると新しい年に突入しているかもしれん。

 延々と術式の改良やら、霊力の増大やらの実験をやってたら、完全に月日の感覚が無くなってしまった。

 

 で、結論なんだが……やっぱ霊力が足りん。ノヴァのバックアップで量自体はあっても、俺が一度に使える量に限界がある。

 テレポートの距離も大分伸びたが、月と地球の間だからなぁ。文字通り、天文学的な距離だ。そりゃ人間が生身で移動しようなんて、考えただけでバカにされる距離だったわ。まぁ、他にやる事がないから、それを大真面目に考えてる訳だけど。

 

 

 さて、続けて考えていくが、とにかく霊力を扱える量を増やさなければいけない。地道に上げていったら、何十年かかるか分かったものではない。

 もっとこう、バーンと力を跳ね上げるよーな、「お前世の中ナメてんの?」的な発想を実現させなければいけない。

 

 

 

 

 

 まぁ、心当たりは一つある訳ですが。

 

 前のMH世界で腕を剣術バルドに切られた時に発生し、GE世界に来てもまだ詳細不明だったパワーアップ現象。アレをどうにか実現できないかと思うのだ。

 日記を読み返し、リッカさんとの会話を思い出し(多分歪曲されてるが)、条件を纏めてみた。

 

 まず、神機の拘束がゆるい、或いは解かれている事。これは問題なし。

 次に、何でもいいから神機に認められる事。例えば誓いを全うし、「こいつなら力を貸してもいい」と思わせる事。

 ……神機、もう俺の一部なんだけどな…まだ独立した意識あるのかな…。

 

 とにかく、現状確定しているのはこの2件だろう。

 後者が問題だな…誓いって何でもいいんだろうか? 極端な話、オナ禁とか逆に休まず何連発とか、 或いは一週間くらい瞑想して微動だにしないとか。

 いや、考えてみれば剣術バルドに腕を斬られた時は、そんな誓いは立ててなかった。

 

 と言う事は、もっと単純に「協力してもいい」と思わせる事が条件か。「このままでは自分も死んでしまう」とか、それくらい追い込めばいいのか?

 ……いや待てよ、もっと簡単な方法があるんじゃないか?

 

 「あまりにもヒマだし、ちょっと手ぇ貸してやるか」みたいな感じで。俺だって退屈には耐え切れないんだ。神機だってそうかもしれない。食える相手も居ないし、斬りつける相手も居ない。何もする事が無い場所に人間を放り込んでおくと、発狂するって話も聞いた事があるしなぁ…。

 そうだな、とりあえずは神機の協力を何かしらの方法で得る事を考えよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神逝月でもしんどかった日は飲んでいいよね日

 

 

 

 えーっと、はじめまして!

 私は香月ナナだよ。好きな物はおでんパン。これでもゴッドイーターなんだ! まだ見習いだけどね。

 「ブラッド」っていう特殊部隊に所属してて、今は「血の力」や「ブラッドアーツ」っていう必殺技? の訓練中なの。でも、全然使えるようにならなくて…ちょっと焦ってるんだけど、ロミオ先輩が「普通はそんなものらしいから、とりあえずやれる事をやってけ」って言ってくれたんだ。

 

 ロミオ先輩が言うと、説得力があるよね。別にバカにしてるんじゃないよ? …まぁ、最初に会った時、何となく「三枚目ポジションの人かな?」って思っちゃったのは事実だけど。

 ロミオ先輩は、3年くらい前から血の力を扱う訓練をしてて、ブラッドアーツも使えるようになってるんだけど、「血の力」はまだ使えないんだって。

 昔はそれでとっても焦ったりしたらしいんだけど、「使える使えないで焦るより、使える物で何が出来るかで悩め」と訓練………と言うか本人曰く「躾けられた」だって……されて、落ち着いたんだって。

 今では「例え俺に血の力やゴッドイーターの才能が無かったとしても、俺がやる事に変わりは無い。やる事さえ間違えなければ、足手纏いにはならないもんだよ」って笑ってた。よく分からないけど、すごい説得力があったような気がする。

 

 

 実際、ロミオ先輩…「ロミオでいい」って言われたから、ロミオで…やジュリウス隊長と一緒にミッションに出たんだけど、二人ともメッチャ強いの。

 ジュリウス隊長は、動きが綺麗で迷いが無くて、「凄い人だ!」っていうのが一目で分かるんだ。

 ロミオの場合は、同じように迷いが無いんだけど、慎重で、上手に動いて、特別な才能や血の力が無くてもこんなに強くなれるんだー、って思えるんだ。

 

 なんていうんだろ…似てるんだけど似てなくて対照的で。

 そうだ、ジュリウス隊長は、ジュリウス隊長にしか出来ない必殺技とかで、バーッとアラガミをやっつけて、皆をわーって盛り上げる感じなんだね。

 それでロミオの場合は、誰にでも出来るような地道で重要な作業を、物凄く早く正確にやってる感じ?

 

 私も、はやくあれくらい強くなりたいなぁ。その為には、ブラッドアーツや血の力…じゃなくて、もっと考えて動いたりしないとね。考えるの苦手だけど。

 

 

 

 ところで、これからブラッドの3人でミーティングなんだけど、何を話せばいいんだろう? 難しいお話とか分からないよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 ミーティングは、ブラッドがこれからどうするかについての話し合い…って言うより、発表だった。喋ってたの、殆どジュリウスだけだったね。

 あと2人くらい合流してから、ブラッド…フライアは極東地区に向かう、んだって。

 

 極東地区って言うと、ゴッドイーターになって日が浅い私でも「ウソでしょ?」みたいな噂を幾つも聞いた、地獄の代名詞らしいけど…なんでそんな所に行くの?

 

 

「理由は色々ある。ブラッドは新世代の教導部隊だ。当然、相応の実力を持たなければならない。地獄と名高い極東地区でも通じるような実力でなければな」

 

「………極東…か」

 

 

 ジュリウスの言ってる事も分かるけど、私、まだ見習いなんだけどなぁ…いきなりそんな所に連れて行かれるって、ちょっと緊張するんだけど。

 ロミオもロミオで、何だか妙に深刻な顔してるね? いつもだったら、お気楽そうな表情で、「大丈夫、とにかく奇襲して奇襲して奇襲して罠にかければ、大体のアラガミには勝てる!」みたいな事言うのに。

 

 

「…ロミオ? 何か気になる事でもあるのか」

 

「いや…気になるって訳じゃないんだけど。極東はほら、教官が死んだらしい所だから…。あんなに凄い人が死んじゃうような所って、一体どんな地獄なんだろうなって思って」

 

「教官…ロミオに血の力の使い方を教えた、というあの人の事か。あの人が残した技法には、俺も血の力を会得する上で、大いに助けられた。一度会ってみたいと思っていたんだが…」

 

 

 教官? 誰の事? あー、でも死んだ人らしいし、あんまり突っ込まない方がいいかな…。

 …あれ? 今、二人の目がちょっとだけ変わったような? …なんだろ、ちょっとだけイヤな空気を感じた気がする。

 

 

「ん? あー、そっか、ナナには話した事なかったっけ。俺を鍛えた人なんだけどさ、ジュリウスよりも先…と言うか、多分この世界で一番早く血の力を会得してた人なんだ。あの人が現れるまでは、血の力はラケル先生の机上の空論って言われてたんだ」

 

「正直な話、俺も最初は半信半疑だったな。話に聞いただけだが…恐らく、血の力の使い手としては俺より数段高みに居るだろうな。ロミオも実際に目にしたらしいが、幾つもの種類の力を自在に使いこなしていたらしい」

 

 

 え? 血の力って、一人一人違う物…なんだよね?

 

 

「ああ。そして一人が持つ血の力は、一つだと考えられている。尤も、血の力を応用したブラッドアーツは、使い方次第で幾つもの派生を生み出せるだろうが…あまり現実的ではないな。幾多の武器を操る者より、一つの武器を極めた者を恐れよ、と言う話だ。だが、その教官は全ての力をほぼ実戦レベルで使用できたらしい」

 

「アレは実戦レベルで使えるって言うより、本人の地力が段違いだから、オモチャでも使いどころを見つけられるって感じだったけどな。ジュリウスの血の力…『統率』みたいな事もできたぞ。リンクバーストとは違う感覚だったけど、確か『渾身』って呼んでたな。文字通り、敵を攻撃した時の威力がデカくなるんだよなー」

 

 

 他にもスキルがどうのと言ってたけど、と続けたロミオは、何て言うか…死んだ人の事について話している、って感じじゃなかった。

 

 

「ま、要するに教官は、言ってみれば「始まりのブラッド」みたいな人だったんだ。本人は単なるゴッドイーターのつもりだったみたいだけど、色々と特殊な立場だったらしいよ」

 

「ああ、俺も調べてみた事があるが…殆ど情報を得られなかった。どうやら機密事項として扱われているらしい。…存在そのものが、な」

 

 

 

 どういう事なんだろ? そんなに凄い人をどうして隠さないといけないのかな。

 

 

「…他のゴッドイーターとの軋轢を考えた、という事も考えた。だがこの徹底した隠し方には、別の原因があるんだろう。明らかに、『存在してはならない事実』に対する隠蔽だ」

 

 

 

 存在してはいけない? …ちょっと考えてみたけど、やっぱり想像もつかない。でも、そこまで隠されるとむしろ好奇心が湧いてくるよね。

 だからって、調べ方も分からないんだけど。

 

 

「正直、俺は今でもあの人が死んだなんて信じられないんだ。極東のエイジス計画やアーク計画に関わって死んだ、って言われてるけど、墓も無いらしいし、詳しい情報は全然無い。それこそ、実は何かの極秘ミッションの為に死んだって事にしてるだけじゃないかって思ってる。だから、案外どこかでバッタリ鉢合わせするんじゃないか…ってね」

 

 

 ロミオはその人が、本当に生きているって信じてるみたい。それくらい信頼してる人なんだな、って思ったけど……「ま、どっちにしろ何も変わらないんだけどさ。死んでようが生きてようが、連絡も取れないんだし。縁があったらまた会えるってだけだよ」と自分に言い聞かせるみたいに言ってた。 

 私は、そういう考え方はあんまり好きくないなー。…死んじゃった人を「生きてるんだ」って思いこんでも、きっといい事にはならないと思う。

 

 

「フッ…もしもその縁とやらに恵まれたら、必ず俺に会わせてくれよ。以前はゴタゴタの為に会えず終いだったからな」

 

 

 あ、私も私も。一緒にブラッドになってくれたら嬉しいな!

 

 

 

「………あー、いやでも会わないがいいと思う」

 

「ん?」

 

「多分、人生狂うから」

 

 

 

 …ロミオの顔に、物凄い影が落ちてる…。どう言う事なのか気になるけど、怖くて突っ込めない…。

 口調も物凄く真剣だったんで、私もジュリウス隊長も口を開けなくなっちゃった。

 

 

 

「入りますよ」

 

 

 あ、ラケル先生! いいタイミングで来てくれた!

 

 

「…先生? 今日は研究の為の打ち合わせがあるのでは?」

 

「ええ、大丈夫です。問題なく終わりました。それより、突然で申し訳ありませんが、ブラッドに緊急ミッションがあります」

 

 

 

 緊急ミッション? それって断れないって事だよね。何があったんだろ。

 

 

「つい先程、北に半日ほど進んだ辺りで異常な反応が検地されました。感応種が出現した可能性もあります。そこに赴き、反応の元の情報を集めてください」

 

「情報を集める…って事は、アラガミが居ても討伐とかは考えなくていいんですか?」

 

「ええ。アラガミと遭遇しても、無理に交戦する必要はありません。初見の相手、正体がわからない相手の場合、まずは情報収集。これはロミオも同じ考えでしょう?」

 

「そうですね。了解っす。そんじゃ俺はミッションに備えて準備に入りますんで」

 

 

 …あれ、何だろ。またちょっとだけ嫌な空気。さっきのジュリウス隊長とロミオの間みたいな…。

 ま、いいか。それより。

 

 

「ロミオせんぱーい、一緒に行っていい? 準備ってどんな事をすればいいのか、まだ分からないよ」

 

「オッケーオッケー、ミッションで重要なのはまず前準備だかんな! 教官直伝の注意事項の数々、解説しながら語ってやるよ。あと、やっぱ先輩って響きいいな…そっちで頼むわ」

 

「ロミオ、すまんが俺の分の準備も頼む。その間に、俺は異常な反応とやらの詳細を見てくる」

 

 

 

 そのままミーティングは終了。私はロミオ先輩と一緒に準備を始めた。

 それにしても異常な反応かぁ。一体何があったんだろ。正直、まだ二人みたいに戦える自信は無いし、足を引っ張らなければいいんだけどな…。

 

 

 

 

 

 

神逝月討鬼伝2まであと少しか…日

 

 

 どうも、ロミオ・レオーニです。

 近い内に極東に行くって聞かされて、内心ガクブルしてます…そんなトコ、教官に見られたらエライ目に会うから表情には出さないようにしてるけど。

 

 死んだって言われてるけど、正直いろんな意味で疑わしいんだよなぁ…。いや、どんなに強くても死ぬ時は死ぬっていうのはわかってるんだけどさ。

 「あの人は死にません!」なんて幻想を信じていられるような鍛え方されてないし。そういう幻想に酔ってると、それこそ周囲を巻き込んで死ぬのがオチだし。

 

 

 ま、教官のコトは置いといて、まずは目の前の緊急ミッションだな。ナナと一緒に準備中だ。

 緊急と名がつくだけあって、この手のミッションは大抵準備する時間が短い上に、断れるような状況じゃない事が多い。正直、事前に標的の種類が分かるだけでも僥倖なくらいだ。

 

 今回もそうだな。調査と言われちゃいるけど、何が出てくるか分からない。こういう場合に必須な物は、何を置いても回復手段だ。そして敵に見つかった時の為のスタングレネード、ホールドトラップ。

 

 

「えっと、最初から逃げる事を考えてるの?」

 

 

 お、いいカンしてるじゃん。無理に戦う必要はないし、新種のアラガミといきなり決戦ってのは色々と危険だからな。

 んで、さっきも言ったけどこの手のミッションは準備している時間が少ない。だから必要な道具はセットにして予め準備しておくといい。実際、俺も4パターンくらいにセットにしておいてあるんだ。

 

 

「なるほどー、状況に合わせて、そのセットを持っていけばいいんだ」

 

 

 そういう事。で、ミッションが終わったらすぐ補充するクセをつけるんだ。使ってないセットも、週に1回くらいは点検した方がいい。回復錠なんかの賞味期限が切れてました、なんて事になったら笑えないからな。まぁ、回復錠の賞味期限は年単位だけど。

 とりあえず、今回は予備のセットがあるから、ナナはこれ使っていいよ。

 

 

 次に、装備とかの選択だけど…これは大きく分けて2パターンある。一つは、敵に合わせて有効な武装を選ぶ方法。もう一つは、敵が何だろうと自分の得意な武器で行く方法。

 大体のゴッドイーターは後者だな。何せ、同じ種類の武装でも、刀身のバランスとかは微妙に違う。下手に武器を変えると、思った通りに動けなくなるんだ。だから、相手が何でも関係なくある程度通じる、無属性の武器を強化させていく事が多い。

 …ナナもこっちがいいと思うぞ。前者は相手の弱点とかに合わせて武器を変えるだけじゃなくて、動き方は勿論、そもそもアラガミ達の弱点を覚えていかないといけない。慣れないうちからやろうとすると、頭がこんがらがってくる。相手のデータが無いと出来ない方法だしね。

 

 

「はーいロミオ先輩、でも今回は緊急ミッションで、装備強化も素材が無いからできないんだけど。何か方法ありますか?」

 

 

 うん、いい質問だ。スキルインストールって知ってる? 3年くらい前、極東で発見された技術なんだけど、神機にある程度好きなようにスキルを入れられるんだ。

 これも無償で出来る訳じゃないんだけど、今回は例外。

 そうだなぁ…今回入れるスキルは……あ。

 

 

「入るぞ」

 

「あ、ジュリウス隊長」

 

「事前準備の講義中だったか。ロミオ、後にした方がいいか?」

 

 

 いや大丈夫。それより、異常な反応の詳細を確認してきたんだろ? 情報プリーズ。じゃないとスキル構成も考えにくいし。

 

 

「そうか。では簡潔に伝えるが…どうやら隕石が落下したらしい」

 

「隕石? 宇宙から降ってくるアレ?」

 

「ああ。相当大きな物だったらしくてな。落下している時の映像は無かったが、落下地点のクレーターはここからの映像でもはっきり見える程だ。隕石が残っているかも分からないが…どちらかと言うと、周辺のアラガミへの影響の調査と言った方が正しいかな」

 

 

 隕石かぁ…。昔の映画とかだと、実は侵略者の宇宙船だったなんてストーリーもあるよな。

 俺、あんまり詳しくないんだけどさ、侵略者はともかくとして隕石に宇宙から来た病原菌が付着している…なんて事はあるの?

 

 

「無い…とは言い切れないな。付着していたとしても、落下時の大気摩擦による高温を耐え切れるかという疑問もある。そもそも、宇宙で繁殖していた病原体が居たとして、俺達が知っている病原体と同じ性質を持つかすら怪しいが」

 

 

 そっか。…効果があるかは分からないけど、今回のスキル構成は各種状態異常耐性にしておこうか。ジュリウスは大丈夫?

 

 

「ああ、スキル因子にもストックはある」

 

「スキル因子? それって何?」

 

「ん? なんだ、まだ説明してなかったのか?」

 

 

 スキルインストールの事は言ったけど、具体的な方法までは教えてないなぁ。

 

 

「そうか。では軽く説明するが、スキル因子とは読んで字のごとく、スキルを神機にインストールする為の素材だ。これを神機に食わせる事で、神機はそのスキルを得る」

 

 

 消耗品だし、狙って必要な物が手に入る訳でもないからね。素材が手に入ったら、それをスキル因子に加工して、皆ストックしてるんだよ。

 

 

「ロミオのストック量は凄まじいぞ。コレクションでもしているのかと思うくらいだ。…そして、このスキル因子の素材だが………」

 

 

 …ジュリウス、今はまだ…。これから緊急ミッションなんだし。

 

 

「…そうだな。とにかく、ミッションに備えろ。俺は各種手続きを進めてくるから、ナナはロミオと一緒に準備の仕方を学ぶといい」

 

「はーい。いやーそれにしても初出撃が緊急ミッションかぁ。波乱万丈だなぁ」

 

 

 …ナナが食べてるおでんパンほど、波乱に満ちてはいない気がする。いや、結構美味かったけどね。串は食えなかったけど…。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そんな訳でミッションに出撃した訳だけど。

 確かにでっかいクレーターだ。周囲には荒廃した建物とかあったみたいなんだけど、綺麗サッパリ吹き飛んでしまっている。

 もしこれが居住区とかアナグラとかに落ちてたら、大惨事だなぁ…。

 

 まぁ、アラガミしか居ない場所だったからいいんだけどさ。そのアラガミも、殆ど吹き飛んでしまっているようだ。アラガミはアラガミ細胞の攻撃じゃないと傷付かないから、文字通り吹き飛ばされただけで死んではいないのかもしれない。要注意だ。

 

 

「ロミオ先輩、なーんにも居ないねー」

 

 

 それでも注意はしてないとな。ひょっとしたら新種が出るかもしれないし。

 

 

「新種?」

 

 

 ほら、アラガミって食べた物を模倣したり反映させたりする性質があるって言うだろ。だったら、例えばアラガミが隕石を食べたりしたら…って思うと…。

 

 

「あ、隕石の性質を持ったアラガミが生まれるって事? でも、隕石の性質って?」

 

 

 さぁ…物凄く硬くて重いって話を聞いた事はあるけど。ま、そうでなくても隕石があるなら、ちょっと見てみたいな。何というか宇宙のロマンを感じられるかもしれないし。

 

 

「ロマンねぇ…。隕石があるとしたら、やっぱりクレーターの一番下かな?」

 

 

 一番ありそうではあるな…。

 ジュリウス、そっちはどう? 合流して一番真ん中に行こうと思うんだけど。

 

 

『こちらジュリウス。特にアラガミも居ないし、妙な物も無い。これから合流する』

 

 

 よし、ジュリウスが来るまで少し待ちだな。

 

 

「だね。うーん、ラケル先生に、隕石の事とかもうちょっと聞いてくればよかったかなぁ」

 

 

 …ラケル先生に、ねぇ…。

 

 

 

 …そういえば、最近ラケル先生と顔を合わせてないなぁ…。まぁ、ちょっと気まずいからいいんだけどさ。

 

 別に俺が何かやらかしたって訳じゃない。いや、原因が俺にあるのは事実なんだけど。

 ……ナナは勿論、ジュリウスにだって言ってないけど……実は俺、ラケル先生の行動にちょっと疑問を持ってる。

 

 俺達が育った孤児院は、ラケル先生が経営してて、つまりラケル先生は俺達ブラッドの母親、育ての親みたいなものだ。その相手に疑問を持ったり、こんな感想を持つのは凄く恩知らずだと思うんだけど……その、ラケル先生が、人間とは違う『何か』に見えてしかたないんだ。

 そんな風に思い始めたのは、いつからだっただろうか。少なくとも、教官達と一緒に血の力の訓練をしていた頃には、微塵もこんな風に思ってはいなかった。

 

 思い返すと、小さな疑問が一つ一つ重なっていってたんだと思う。

 思い出せる限りで、一番最初の疑問はレア博士についてだ。教官と一緒に極東に向かった、という話は聞いたけど、途中で事故を起こして消息不明。その後は無事極東で保護されたらしいんだけど、そのまま全然帰ってこないし、ラケル先生からも連絡を取ったりしてないみたいだ。

 …無事だったか、の一言さえ。勿論、この時は「俺が知らない所で連絡してたんだろう」としか思わなかったけど。

 

 次に疑問を持った覚えがあるのは…部屋の片付けしてたら、昔の写真が出てきた時だっけ。孤児院でよく話した女の子…レヴィとのツーショット。

 最初に会った時は孤立してて、返事するようになるまで何度も話しかけたんだっけ…。でも、どうしてレヴィは孤立してたんだろう? あの時の話を思い出すと…それまではラケル博士に何かと連れられていたんだけど、そこを他の誰か…時期的に考えると、多分ジュリウス…に取って代わられて、「ラケル先生から見放された」という噂が流れてたんだっけ?

 ラケル先生は、それをどうして放っておいたんだろう? 全部が全部、ラケル先生が対処しないといけない訳じゃないけど…知っていたんだろうか? それに、ジュリウスが現れたからと言って、それまで『お気に入り』だったレヴィをポイッと放り出すような事をしたんだろうか?

 

 それから、俺が血の力の訓練をしている時、ジュリウスが一緒に来れなかったのは何でだろう。

 血の力は、ブラッドにとって重要なもの…単なる道具に過ぎなくても、ブラッドが特殊部隊である理由そのものだ。それを習得する事は、ブラッド隊長の最優先課題だった筈なのに。

 何処かでトラブルが発生して来れなくなったって聞いたけど……。そのトラブルも、ラケル先生が何かしたんじゃないだろうか?

 

 

 

 小さな小さな疑問があった。アラを探しているって言われれば、それで終わりのような、以前の俺なら「いいがかりだ」「ラケル先生を馬鹿にしてるのか?」って怒るような疑問だった。

 だけど、何時の間にかラケル先生の笑顔が、優しい微笑みじゃなくて、貼り付けた画像みたいに思えていて。それに疑問が幾つも結びついている。

 

 

 

(…ま、誰にも言えないけどね…)

 

 

 言っても不和が産まれるだけだ。俺だって、ラケル先生が人間じゃないおかしな『何か』だ、なんて思いたくも無い。ただ、顔を見るたびに違和感がチラついて、どうしても思ってしまうだけで。

 

 そんな事を考えてると、ジュリウスが到着。

 

 

「待たせた。そっちに異常は無いか?」

 

「何もないよー。強いて言うなら、フライアに通信が通じないくらいかな」

 

「機械の一部が正常に作動しないらしいからな…。隕石から電磁波でも出ているのかもしれん」

 

 

 仮にそうだとしたら、フライアに持って帰っても大丈夫なのかな。いきなり制御装置が壊れて、フライア爆走とかになったら洒落にならないよ。

 

 

「そうだな…だがまずは隕石なり何なりを見つけてからだ。行くぞ」

 

 

 了解。行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………なんだコレ。

 

 

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