※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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浮気の末にナイスボートもどきした。
火山に落ちた。
津波に攫われた。
古龍に負けた。
蝕鬼の触媒に侵食された。
イヅチカナタに因果を奪われた。


…条件付きとは言え、真空空間も平気だった。
腕とか吹っ飛んでも簡単には死なない。
GE世界の敵では、相手になる奴の方が少ない。
毒の類もハンターには殆ど効かない。


…どうやってデスワープさせるか、本気で悩んでいる今日この頃。


第176話

神逝月

 

 

 ナナの件は、結局心労、命の危機によるストレスと、そこから開放された気の緩み、そしてオウガテイルから受けたダメージが相まってのものと診断された。

 診断者はラケルてんてーだが、まぁ妥当というか予想通りというか。診断結果も怪しいものに見えてくるけど、立証の仕様がないな。ラケルてんてーの行動が逐一嘘じゃないかと疑うのも面倒だ。

 

 

 改めて考えてみたんだが、俺はちょっと無用心な事をしてしまったかもしれない。いや、後先考えずに行動してる、考えたつもりで根本的に抜けているのはいつもの事なんだけど。

 あの時のミッション後の狩り、あの時のやり方が問題だった。

 

 何がアカンって、『挑発』を使ったのがまずかった。

 

 今の俺の挑発は、周囲の敵を惹きつけるだけでなく、MH的に言えば乱入をほぼ確実に発生させられる代物になっている…加減せずに使えばね。

 で、実際それでわらわらと集まってきたんだが…考えてみればコレ、ナナのトラウマにダイレクトアタックしていないだろうか。

 ナナの血の力は誘引。幼いナナはそれを制御できず…認識していたかも怪しい…、アラガミを呼び寄せ、母親や助けに来たゴッドイーター達を全滅させてしまった過去がある。

 トラウマに対する防衛本能の為か、今はそれを忘れているが…挑発でアラガミが集まってきたシーンを見て、それを無意識に連想してしまったんじゃないだろうか。

 

 だとしたら、どうなる?

 

 主人公の…なんだっけ、誘発?開発?とにかく血の力を引き出す能力なしに、ナナは力に目覚めるか? …うん、ありえる。というか既にロミオもブラッドアーツまでは体得しているし、あれは「あったら出来やすいけど、なくても出来なくはない」って程度の物なんだろう。

 ナナが記憶を刺激され、このまま誘引に目覚めたらどうなるだろう。

 

 …確か、ナナは母親に連れられて、あちこち逃げ回るようにして暮らしていたんだよな。つまり、どこに行っても誘引の力はついて回るが、場所を変え続ければ致命的な事態には繋がらないと思われ…いや、致命的な事態になったから、ナナの親は死んだのか。

 …惜しいなぁ。腕利きのゴッドイーターの上、アラガミを呼び寄せる子供を持っても見捨てる事をしない母性と精神力。その上、あのナナの母親だ。スタイルだって抜群だったろうし、服も親子で受け継がれているのだとしたら、相当なセックスアピールを持った女性だったろうに。なお、メシマズであるかは意見が分かれる模様。

 

 それは置いといて。

 

 このままナナが目覚めて、更にコントロールもイマイチだったとして……実を言うと、暫くは問題が無さそうだ。

 なぜって、ここはフライア…移動要塞だからだ。人間が歩くのとは比べ物にならないスピードで移動する、空にはそびえてないけど鉄の城。

 アラガミが引き寄せられたからって、追いつけるようなものじゃない。進行方向から向かってきても、プチッと轢き逃げして終わりである。

 何らかの方法でフライアに取り付かれると、少々アクロバットな戦いを展開しなければならなくなるが…。

 

 うん、とりあえず問題はない。問題が出るとすれば、極東等に向かい、長期間そこに留まる場合だ。

 …最悪、ナナだけフライアに残し、あっちこっち移動させ続けるという手もあるが、これはやりたくない。心情的にもそうだし、ナナの孤独を煽るだろうし、そうなったらラケルてんてーに洗脳されて敵に回る可能性すらある。

 やはり、目覚めさせてからコントロールを教え込むのがベターか。幸い、俺という教官役も居る。

 いっその事、ギルが所属する前に血の力を覚えさせてしまおうか。

 

 

 

 …でもナナに地獄の訓練させるのはなぁ…。教官なんぞ恨まれて何ぼだけど、あの可愛らしいナナに本気の憎悪の視線を向けられるのは勘弁だ。ロミオには何故か恨まれてないけど。…別に洗脳はしてない筈だが。

 

 

 

 まぁとにかく、ナナは今のところ問題無さそうだ。一晩眠ったらピンピンしていた。トラウマや恐怖のぶり返しで眠れないんじゃないかと思ってたが、予想以上に単純な生物だったらしい。

 ミッションにも参加し、今度は多少マシな動きが出来るようになっていた。本能だね、ありゃ。

 

 

 さて、ナナの事は追々対処していく事にして。

 フライアが物資補給のために、どこぞの支部に停泊したので、これ幸いとロミオを誘って飲みに行った。飲んでるのは俺だけだが。

 

 

「お疲れっす。んじゃ再会を祝って」

 

 

 ん、お疲れ。ああ、やっぱ酒はいいなー。人類が生んだ文化の極みだよ。

 

 

「その言い方、なんかBL臭いんでやめてくださいよ。飲んだ時に無闇に楽しくなったのは覚えてますけど」

 

 

 どっちかっつーとお前とジュリウスの方に疑惑あるけどね、名前的に。

 

 

「あれどっちも死ぬでしょ…一回読んだ事あるけど、ああいうのは趣味に合わないっす。もっと気楽なのじゃないと」

 

 

 何で読んでんだ…意外だな。やっぱアレか、バガラリーとかああいうのが好きか。

 

 

「いや、それは見た事ないです。熱心なファンも多いって聞いたけど、少なくともこの3年間、訓練にばっかり打ち込んでましたし」

 

 

 …それこそ意外だな。狩りや訓練に集中するように躾はしたけど、楽しみの時間まで使うようにとはしてなかった筈だが。

 

 

「いや、楽しみはあるっすよ。ただ一番の楽しみが…まぁ、あんまりメシ食ってる時に話すような事でも」

 

 

 ………話は変わるが、ブラッドアーツ使えるようになったんだな。特殊効果をつけたいって悩んでたが、いいアイデアはあったのか?

 

 

「ええ、我ながら結構凄いのが出来たと思います。ただ、実際に使ってみると使い勝手は悪いんですけど…」

 

 

 技なんて大体そんなもんだ。特に自分の作った奴は、どうしても贔屓目で見ちゃうからなぁ…。で、どんな技?

 

 

「毒とかホールドとかの効果を持たせたチャージクラッシュなんだけど、どれくらいチャージするかでどの効果が出るか変化するんすよ。チャージしてすぐならヴェノム、少し経ってからなら封神、視力や聴覚低下、他にもスタン、攻撃力や防御力低下、耐性の低下とか」

 

 

 ほぉ…そりゃ本気でスゲェな。極端な話、チャージ時間さえあれば大抵の敵に弱点付与とか、耐性の弱い状態以上を与えられるって事か。

 で、そのチャージ時間は、スタングレネードなりホールドトラップなりで幾らでも作り出せる。俺もその発想はなかったわ。

 それを当てたとして、何発で効果が出る?

 

 

「今まで当てた奴で、すぐ効果が出なかった奴は居ないです。でも、相手がもっと強くなると多分…」

 

 

 …極東、か。まぁ、今のロミオなら通用はするだろ。

 で、前から思ってて、そのブラッドアーツを聞いてほぼ確信したが…お前、血の力使えるようになってるだろ。

 

 

「…………」

 

 

 盗聴器の類も、聞き耳立ててる奴も居ないよ。

 

 

「…のようですね。大当たりです。何でわかったんですか?」

 

 

 お前を鍛えたの、俺だぞ? 一目見るなり気配で察しがついたわ。漏れてくる力の質が違うってーかな。

 と言うか、今さっきも力を使ったろう。誰か近くに居ないかを探る…のか? 探知系?

 

 

「ちょっと違います。誰にも教えてない力なんで、ジュリウスの『統率』みたいな名前はついてないけど…俺はこの力を『対話』と呼んでます…皮肉を篭めて、ですけど」

 

 

 対話…アラガミと話をするのか? 活性化状態を宥めるとか?

 

 

「多分、もっと訓練すれば出来ない事もないと思います。これで出来る事は…意思をぶつけて、強制的に反応を返させる…かな? さっき力を使いましたけど、もしあそこで誰かが聞いていれば、それが手応えとして返ってきます。使っている内に思いついた余技みたいなもんですが」

 

 

 本来の用途以外に使い道があるのはいい事だ。それだけ汎用性があるって事だし、何より力の使い方を研鑽してる証拠だよ。

 

 

「どうも。本来の使い道…って言っていいのかわからないけど、最初に覚えた使い方は、相手に意思を伝える事です。ただし、強制的にリアクションを取らせるから、例えば「あっちに行け」と伝えたら、その通りに行動するか、逆に「むしろお前の所に行ってやる」と近寄ってくるか。その場でそれまでと同じ行動を続ける、という事だけはありません。これを使えば、アラガミが作戦区域に入ってくるのを遅らせる事とかが出来るっす」

 

 

 …強制的にリアクションって、それとんでもなくタチが悪いぞ。「先に動いた方が負ける!」ってシーンや、機会をうかがってるスナイパーとかに使ったら…。

 

 

「相手は基本、アラガミですからそんな事は無いと思いますけど。ブラッドアーツにも応用してます。ブラッドアーツに篭める血の力を、こう…『毒!』ってイメージで当てると、アラガミがそれに強制的に反応して、本当に毒になる」

 

 

 プラシーボ効果の超強力版みたいなもんかな。普通なら、それだけで本当に毒になる事は無いだろうけど、チャージクラッシュのダメージと合い間って、敵の抵抗力が落ちた瞬間にそのイメージを刷り込んでるのかもしれん。

 強制的に反応を返させるし、『対話』っつーより『詐術』って言った方が正確かもしれんな。

 

 

「それだと外聞が悪いじゃないですか。と言うか、血の力って本質が出るんだとしたら、俺って相当な屑になっちゃいますよ」

 

 

 会った頃のお前のイメージとは、似ても似つかないなぁ…。俺の訓練で、本質捻じ曲げちまったかな。

 ああ、チャージクラッシュの溜め時間で効果が変わるって言うのは。

 

 

「お察しの通り、イメージしやすい効果ならチャージの時間は短くて、しにくいならイメージを強める上に血の力も強く篭めないといけないからですね」

 

 

 ふーむ、一人で考えたのか…。いや大したもんだわ。

 …で、どうしてこれを誰にも教えてない? ラケルてんてーにも秘密にしている理由は?

 

 てんてー? とロミオは首を傾げた後で、強張った顔つきになった。

 

 

「…前々から、おかしいと思う事は結構あったんです。でもラケル先生がそんな事する筈が無いって、ずっと気のせいだったり、間が悪かっただけなんだって思ってました。でも、この力を持って、ラケル先生を見た時……寒気がしましたよ」

 

 

 この力を…って、『対話』で?

 

 

「…俺がこれを『対話』と呼ぶようになった切欠でもあります。これを使ってると、誰かと話をしている時、この人は内心でどういう事を考えているのか、何となくわかるんです…心を読めるって事じゃなくて、なんというか…その…」

 

 

 …表情とか口調とか、そういうのをじっくり調べると「緊張している」「嘘をついている」と、そういうのが察せられるようなもの?

 

 

「そう、それ!」

 

 

 …内面観察術みたいなものか。俺でもまだ読心の領域は遥か遠くだしな。…フラウさんなら出来ない事もなさそうだが。それで?

 

 

「…これを使って、ラケル先生を驚かせようと会いに行ったんですけど…一目見ただけで寒気がしました。俺の言葉に、どんな反応が返ってくるのか全くわからない。育ての親にこんな事を言うのは恩知らずだけど…得体の知れない『何か』に話しかけているような、そんな気分です」

 

 

 ………。

 

 

「力を使うと、反応はあるんです。リアクションは返ってくる。『対話』が皮肉って理由はここなんすよね。俺が血の力で話しかければ、嫌でも反応せざるを得ない。俺が話しかけ続ければ、どんな形になるかはわからないけど、必ず反応が返ってくる」

 

 

 ロミオが話しかける限り、拒否していても会話が成立するって事か。話すのを強要する『対話』とは、また皮肉なもんだね。

 

 

「でしょ? …まぁ、それは置いといて。反応してるのが、ラケル先生…なのは間違いないんですけど、返答とそのリアクションが繋がってないって言うか…。そうだ、心の中と実際の態度で、180度違う人が居たら違和感覚えるでしょ?」

 

 

 ああ、顔がニコニコしてるのに内面は悪意満載とかそういう話か。いっそそれが違和感無い奴も居るけど。

 …とにかく、ロミオ。お前が言いたい事は大体わかった。ついでに言えば、俺もラケルてんてーには同じような感想を持ってる。お前は気付いてなかったろうけど、フライアで血の力の研究を始めてた頃からだ。

 

 

「そんなに前から…。確かに、ラケル先生と教官はあまり話をしてなかったように思うけど…てっきり、レア博士と仲良くなってたからだとばかり」

 

 

 まぁ、それもあるけどね。とにかく、ラケルてんてーと俺は、表面上はともかく、内心では敵対してると言っていい。

 

 

「敵対って…気に入らないとか、何となくソリが合わないとかじゃなくて?」

 

 

 ああ、はっきりとだ。お前だって、薄々気付いてたんじゃないか? だから俺を発見した後、付きっ切りでガードしていたんだと思ってたが。

 …まだ礼を言ってなかったな。

 おかげで助かった。ありがとう。

 

 

「い、いえ…教官に礼を言われると妙な気分になる…。……いやそれより、それなら教官はこれからどうするんです?」

 

 

 いきなりサクッと排除…はしないし、出来ない。何より、そうしようとしたらお前も阻止する側に回る。ぶっちゃけどうとでも出来るけど。

 

 

「…はい。正直、教官から聞かされても、まだラケル先生がそんな人だって信じきれないです」

 

 

 始末すれば終わりって単純な問題でもないんでな。暫くはこのままだ。

 暫くはな。決して長い時間じゃない。

 ロミオ、今の内に覚悟を決めとけ。ラケルてんてーを守るにせよ、俺に付くにせよ、そうなってる原因をどうにかしようと足掻くにせよ、キツい話になるぞ。

 

 

「…はい」

 

 

 …やれやれ、酒が不味くなる話だった。

 話を変えるか…。

 

 

 

 あー、ところでロミオ。

 お前、彼女できたん? ……あ。

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 …最悪の話題、振ってしもうた。

 

 

 

「…表行こうぜ…久しぶりに…キレちまったよ…」

 

 

 ……俺がやった事考えると、これはキレられても無理ねーよな…。

 

 

 

 

神逝月

 

 

 昨晩のロミオは強かった。ハンターに迫るんじゃないかってくらいの身体能力で、ガンガン殴ってくるし蹴ってくるし。

 それで俺に勝てる程のドーピングになった訳じゃないが。

 ワンパン捌きそこねて、ちょっと鼻血でた…。

 

 

 で、一昔前の青春漫画よろしく、適当な川辺で座り込んだり大の字になって倒れたまま話をしてたんだが……色々な意味で衝撃的だった。そしてアカンかった。

 

 

 えー、その内容ですが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロミオ君に彼女が出来て、童貞卒業したそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 でもケンカ別れしたそうです。

 

 

 

 

 

 彼女の名前? 教えてくれなかったよ。「…もう忘れたよ」なんて、無意味に哀愁漂わせて語ってた……いや哀愁漂うのも無理ないけどさ。

 

 事の始まりは、俺がフライアから去り、ロミオも血の力の訓練に明け暮れて半年程。血の力こそまだ会得してなかったものの、訓練方法も確立されてきており、ロミオもゴッドイーターとしての強くなっている手応えを感じていた。

 そんな折、ふと俺と連絡を取ろうと考えたらしい。だが、極東支部に連絡したところ、返って来たのは俺の訃報。

 

 ショック云々以前に、相当に混乱したらしい。俺が死ぬ筈が無い、死んだとしたら教官が死ぬ程の地獄なのか極東、とか色々と。

 暫く落ち込んでいたロミオだったが、ある日フライアにやってきたお偉いさんの案内を任されたのだそうな。で、その時お偉いさんと一緒に来ていた子が、ロミオの彼女になった子です。

 ロミオより1つ年上で、ショートカットの可愛い子だったそうな。

 

 で、お偉いさんがラケルてんてーと何やら話し込んでいる間に、ロミオが持ち前の馴れ馴れしさ…もとい社交性?でその子と話し始めた。

 話はそこそこ弾んでいたのだが、何が切欠だったのか、ロミオが空元気を出している事に気づかれてしまい、そこから「恩師が死んだんだ…」「かわいそう…元気出して、ね?」みたいな感じで友人付き合いが始まったのだとか。

 それから約半年、メル友みたいな関係が続き、めでたく告白+OK。ちなみにどっちからの告白なのかは語られなかった。

 

 トントン拍子に仲良くなり、お偉いさんも渋い顔はしたものの、配偶者として優秀なゴッドイーター…しかも当時注目を集めていた特殊戦技教導隊の一員であれば、決して悪い選択ではない…と認めてくれていたらしい。

 公認を取り付けた二人は浮かれに浮かれ、偶に直接会える日にはデートして……と、暫く「ぶん殴ってやろうか…いやそれよりも、聞いてると甘酸っぱさで浄化されそうなんですけど。性欲男でごめんなさい」と割とまじめに考えるような惚気を聞かされた。

 

 だが、ある日悲劇は訪れる。

 

その日は珍しく、連休で、更に珍しい事に2日続けて一緒に居られるスケジュールだった。

 デートもちょっと遠出して…ひょっとしたら、夜までに帰り損ねて『お泊り』になっちゃうのでは? もしそうなったら自分と彼女は? と言う、青少年としては当然の妄想と煩悶を抱くロミオ。彼女の方も、やっぱり意識していたらしく、色々準備していたのだそうな。…明言はしなかったけど、多分勝負服とか勝負下着とか、あと今度産とかかな…。

 

 で、実際に二人の想像通り、帰るのが遅くなり、どっかの宿(この時代にラブホなんて施設は無い)に泊まり、ドキドキバクバクしながらも、何とか大過…三擦り半とか入る前に暴発とか…も無く、お互いにフォローしあいながら大人の階段を上ったのだそうな。

 寄り添って眠る二人……だが、ロミオは眠れなかった。

 ドキドキしていたのではない。

 

 

 スッキリしていなかったのだ。

 

 

 確かにDT卒業はした。だが、なんかこう満たされない感じがして、眠るに眠れない。裸の彼女を抱いてて、生涯で一番と言えるくらいにいきり立っているのに、彼女にこれ以上触れたいとも思わなかった。

 

 

 

 …それがどういう事だったのか。ロミオは認めたくなかったが…俺としても恐れていた事態だったが……体は明確に理解していた。

 

 

 

 

 

 その子と抱き合うよりも、ソロプレイの方が気持ちよかったのだ。

 

 

 

 

 ある意味しゃーないっちゃしゃーない事だ。未経験者同士がヤッたって、それで得られる快感は男女ともに知れたもの。セクロス楽しむにも、それなりに研鑽とかノウハウが必要だ。勿論、精神的な高ぶりや幸福感を考慮に入れても、である。

 しかもロミオが、鍛錬の名目で普段からやってるのは、オカルト版真言立川流…の本の一部とは言え、尋常じゃない快感…エクスタシーを齎す一人遊び。どっちが気持ちよくなれるか、と言われると…認めづらい事だが、言うまでもない。

 

 で、彼女が寝入ったのを確認して…ムラムラとか欲求不満に耐えかねたロミオは、一人で弄り始めてしまった。

 

 

 

 そして、夢中になりすぎて、途中で彼女が起きていたのにも気づかなかった、と。

 

 

 …女のプライド、ガタガタってレベルじゃなかろうなぁ。仮にも相思相愛で、覚悟決めて純潔まで捧げたのに、すぐ後で「お前の体より自分の手の方が気持ちいい」みたいな事されれば。少女の今後が真剣に危ぶまれる。トラウマから逃げる為、同性愛に走ったり、セクロス系の行為そのものに忌避感を持ってもおかしくない。

 その日から、二人の仲がギクシャクし始めた。事がシモネタというか特殊性癖的な話だから、誰かに相談する事もできず、ロミオも経験した事でセクロスに対する憧れというか幻想も薄れ、より一層自己処理にのめり込み出した。

 彼女さんの方も、顔を合わせると色々思い出してしまうのか、中々会わないようになってきて…ある日、些細な切欠でとうとう仲違い、破局に至ったそうな。

 

 

「これでよかったんだよ…どうせ俺は、右手をパートナーにして生きていくんだ…。実際、こっちの方が気持ちよかったし。時々左手」

 

 

 と諦観を漂わせていたロミオ。

 …何と言うか、すまん。ホントにすまん…。血の力を会得する為とは言え、俺が余計な事教えたばっかりに、少年少女の未来がひん曲がってしまった…。

 

 しかもロミオは彼女と分かれてからというもの、完全に自己処理にド嵌りしてしまい、今では現実の女性に対してそこまで興味が持てなくなりつつあるとか…。

 そりゃ起き抜けにでも、性癖の恨みと叫びつつ殴りかかってくるのも仕方ない。もう一発くらい殴られてやればよかったか。

 

 自分でやっておきながら、これはヒドイ…。次のループでは絶対教えないようにしよう。全うなやり方で血の力を身につけさせ、彼女さんとも引っ付けてやるからな。

 しかしそれはそれとして、今のロミオを見捨てるのも忍びない。

 どうしたものか……。

 

 

 

神逝月

 

 

 ロミオにオカルト版真言立川流を本格的に教える…という事も考えたが、却下した。と言うか出来ないしやりたくない。

 俺もすっかり忘れていたが、俺が身に着けたオカルト版真言立川流は、全うな人間には仕えない。霊山で見つけたハウツー本も偽書、出鱈目の類と判断されており、俺が出来るのは…多分色々な意味で普通の人間とは違う体をしている為だ。

 ロミオに教えたところで、再現もできない。そもそも、霊力…血の力もそこまで自在に操れていないし。

 

 と言うか、男を相手にシモのレッスンとかやりたくない。

 

 

 となると、ロミオを全うな道に引き戻すのは非常に難しくなってくる。その為、発想を逆転させてみた。 

 

 

 

 ロミオが異常性癖(と言うほどのモノではないと思うが)を持っているなら、それに付き合ってくれる相手を見つければいいじゃない。或いは、付き合えるように目覚めさせてしまえばいいじゃない。

 

 

 幸いにして、ロミオの性癖はアブノーマル度で言えば低い方だ。自己処理をプレイの一環と考えてしまえばいい。

 要するにアレだ、女王様に見られながら自分でやるとか、或いはいつ何処でヤるかを管理されるとか。

 お相手の方にそういう性癖ありき…で探すか、それともロミオの元カノを精神的に誘導して、そっち方面に踏み込ませてみるか…。

 

 …とりあえず、ロミオの元カノの状態から調べよう。まだロミオに未練があるかとか、或いはもう新しいお相手が出来てしまっているかとか。

 決してロミオの元カノに興味があるだけではない。

 

 

 

 

 

 

 さて、ロミオの事は斯様に動くとして。

 

 アホみたいな事ばかりではなく、俺も仕事をしている。給料は出てないが、フライアで世話になってるからな。その分働かなきゃいかん。

 仕事の内容は、血の力の使い方の指導だ。ジュリウスは既にブラッドアーツも血の力も会得しているし、ロミオもブラッドアーツのみ会得している…表向きは。

 だから相手はナナ一択になる訳だが…うーん、今更ながらにジェネレーションギャップ。

 新型神機、もう行き渡るようになってるんだなぁ。俺が地球に居た頃は、俺とアリサくらいしか使えてなかったのに。

 

 詳しい話をちょっと聞いてみると、現在ナナ達が使っている神機は、俺やアリサが使っているモノともちょっと違うらしい。

 俺達から得られたデータを元に更に改良され、扱うのに必要な神機適合率のハードルが下がっているのだとか。そういや、新型神機って非常に高い適合率が必要だって話だったね。

 他にも幾つか機能が追加された他、感応現象を防ぐ為の安全装置が取り付けられたそうだ。

 

 何で感応現象あかんのん? と聞いてみたら、まぁ尤もな理由だったよ。互いに合意の上で現象を起こすならともかく、触れ合っただけで感応現象が起きると日常からして不便極まりないし、プライバシーの侵害にも直結するからな。確かに、当時は俺とアリサしか居なかったし、触れただけでは感応現象も起きなかったから気にしなかったけど…人が増えると問題だわな。

 …ひょっとして、アリサの夢に入っていけないのって、これが理由だったりするんだろうか。まぁ、直接会えばいいか…久々に触れ合うなら、夢の中より現実がいいしな。

 

 

 話が反れた。ナナの血の力を目覚めさせようと訓練している訳だが、見たところ以前のようにトラウマを刺激されている様子は無い。

 目の前で挑発とか使って見せれば、ストレスに反発するように発動する可能性はあるが…コントロールできないんじゃ意味無いしな。無理矢理叩き起こした力は、何かしら歪みを伴うのがオチだ。

 だもんで、まずコントロールの仕方を教えたい訳だが、ナナは良くも悪くも感覚派だった。実際に力が発動してるならともかく、「今は無い力だけど、あると想像して訓練しろ」と言われても無茶だろう。理屈で説明しても、基本がアホの子だからなぁ…。

 瞑想とかさせようにも、ロミオ以上に落ち着きが無くて、常時頭が空っぽ一歩手前(おでんパンの事だけは考えてる)だからか、瞑想の効果もあまり見られない。

 

 どうやって訓練すっかなぁ…。

 

 

 もういつもの通りにヤッて霊力叩き込もう、という発想も出たが、さすがにそんな理由で浮気したらアリサやレアに愛想を尽かされてしまいそうだ。

 

 

 一応、こういうタイプ用に有効な修行方法もある。曰く、「賢い者は考える事で悟る。バカは考えない事で悟る」。要するに、頭使うのが苦手なら、体動かしてりゃその内悟れるよ、という事だそうな。バカにはバカの道がある、という事だな。それでいいんか、とも思うが。

 少々荒っぽいやり方で、俺もやるのは初めて(と言うか霊力の使い方を教える事自体、ロミオが始めてだったな)だ。

 やり方としては、霊力を高めている俺と延々模擬戦する、と言うもの。プレッシャーをかけ続け、魂がそれに反発する事で霊力が少しずつ上昇していく。ただし、荒行なだけあって危険も高い。加減を誤ると、衰弱したり、或いは精神的にへし折れて再起不能になってしまう可能性すらある。

 なんで、霊力がある程度高まったらこの訓練はそこで終了。高まった力を操る事を重点的に始めよう。

 

 

 

 

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