※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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第187話

神戻月

 

 隔離病棟はまだ完成していないが、フライアが戻ってきた。

 割と大仰に出発して行った割には、一週間程度の別れだった。シエルは喜んでたけど。

 

 黒蛛病患者が複数居る訳だが、その受け入れ先で揉めているらしい。連れてくるなら来るで、病棟が完成してからにしろ、と。

 対するフライア側…ラケルてんてーの言い分は、黒蛛病患者の病状が思っていた以上に酷く、早く治療しなければ間に合わない可能性が高いのだそうだ。

 と言う訳で、黒蛛病患者を治す方法が唯一ある極東に、患者達を押し付けて、フライアはブラッドさえ置いて、また旅立って行ってしまった。黒蛛病患者を集めてまた来ます、だそうな。来るなと言いたいが、実際に言ったら患者を見捨てるのかと言われるから何も言えん。

 

 

 そうは言っても、現状では赤い雨が降らなければ治療できない訳で。だったら早く研究してどうにかしろと言われても、ブレイクスルーなんてそうそう出来るもんじゃない。榊博士は、何やら考えがあるみたいな事を言ってたけど。

 

 とりあえず、隔離病棟建設の予定より早く、しかも事前連絡も無しに戻ってきたフライアにも非はある…と言う事で、ここ最近のブラッドと俺は、病棟作りの手伝いをしています。

 俺とロミオは、簡単なテントや小屋なら一人で作り出せるんだけど、病棟はなぁ…。しかも結構な人数を収容する為の大規模なものであり、弱った体に負担をかけないような、熱すぎず寒すぎない家屋。しかも建築法に違反してないもの、なんてそうそう作れやしない。

 …そもそも建築を手伝う事自体、ルール的には割とギリギリらしいが。

 

 

 ダボダボズボンの荒っぽい大工さん(ゲームでも登場していた気がする)の指示に従って、ゴッドイーター複数名が動き回る。その大工さんは、何やら複雑な顔してたけどね。

 まぁ、ゲームでもフェンリルに対して色々反目というか不満を持ってた人だしな。今回ループでは、物資とかがかなり増えてるから、ゲーム程には不満はないようだが…それでも、病人受け入れてる暇があったら、他の事をしろ…という思いはあるんだろう。

 それでいて、病棟以外の仕事もゴッドイーターが手伝ってるから、助かるやら自分の領域を侵されたようで苛立つやら…か。

 

 

 まぁそれは置いといて、この作業にジュリウスだけは参加していない。別にお高く留まっている訳ではない。地位的な意味で言えば高くて、直接的な労働ではなく、資材の融通の為に色々掛け合っている。労働力でこそないが、管理者としての重要な仕事と言えるだろう。

 

 

 

 

 …と、いう事になっている。

 

 実際はもうちょっと厄介な話だった。先日、フライアが戻ってきた時、ジュリウスがこっそりと俺を訪ねてきた。色気のある話であってたまるかい。

 むしろ、ちょっと暗い顔してはいたけど。…やっぱアレかな、先日の患者防衛戦の失敗で、死傷者が出たのを気にしているんだろうか?

 

 …いやもう本当に厄介だったよ。いっそウホッな話された方が、蹴っ飛ばして「ロミオの方に行け、名前の元ネタ的に」で終わる分簡単だったくらいに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジュリウスが黒蛛病に感染していました。

 

 

 

 

 …おい、おい。よりにもよってお前か。何でそうなった。

 

 話をよくよく聞いてみると、結論は一つだった。つまりはラケルてんてーの陰謀。

 どこから何処までが仕込みで計算通りかは分からないが、ジュリウスから聞いた話を元に推測すると、以下のようになる。

 

 

 

①黒蛛病治療が可能だと判明した俺を、極東に置き去りにする。

 

②黒蛛病治療の為と銘打ち、患者を集めて回る。赤い雨に濡れて発症した人間を集める為、赤い雨の後を追う。

 

③赤い雨からの避難が間に合わなかった人達を助ける為、レインコートを着て作業。

 

④そこへラケルてんてーが仕込んでおいた、『お人形』の襲撃。

 

⑤何とか撃退するも、ジュリウス負傷、赤い雨に濡れて感染。

 

 

 

 ジュリウスの負傷も、患者達の救出ミッションが一部失敗して批判を受けた事も、ラケルてんてーにしてみれば安いものだったんだろう。

 

 …で、ここで極東に戻ってくる意味が分からないな。ジュリウスが感染したのは、ラケルてんてーにとっては計算通りだろう。今回が無理でも、機会は幾らでもあっただろうし。

 いや、ジュリウス的に戻ってくる理由があるのは分かるよ? 感染したなら、治療したいと思うのは当たり前だ。しかもその手段が身内…とまでは言わなくても、顔見知りに居る。

 ラケルてんてーも、流石にそれを止めるような屁理屈は出せないだろう。他にも治療を待っている人が居る、とかそういう事なら言えると思うが。

 

 …戻るのを止められなかった? 或いは……戻っても構わなかった?

 

 

 

 わからん。何れにせよ、本格的にラケルてんてーが活動し始めた事と、とにかくジュリウスを治さなければいけない事に変わりはない。

 が、赤い雨がなきゃ治せないんだよなぁ…。フライア使って、赤い雨が降りそうな場所に行くか、あるいは都合よく雨が降るのを待つか。可能性や確実性で言えば前者なのだが、俺は極東を離れられない。まだ治療を待つ黒蛛病患者が居るし、治療法も研究中だ。そもそも、フライアはラケルてんてーと一般職員だけ乗せて、どっか行ってしまってるし。

 

 …まぁ、大抵の所からは数瞬で行き来できる手段がある訳ですが。アラガミダッシュだけでも車より早いし、最終奥義・電脳空間ダイブだってある。使うべきか否か…。いや、俺以外の人間を連れてダイブなんて出来るのか? …ネズミでも使って実験してみようかな。でも混ざってハエ男みたいになったら…いやそれよりも、某宝探し的能力を持っている妖怪から連想する、あのヤバい国みたいになったら…? …やるにしても、ネズミは止めよう。

 

 

 

 

 差し当たり、榊博士が考案した、赤い雨が無くても治療できるという方法を試してみる。…が、失敗。

 博士も構想段階だったので、上手くいくとは思っていなかったようだ。それでもデータは取ってたが。

 

 となると、やっぱり赤い雨か。

 ブラッド隊長という立場にいる訳だし、いつまでも他人との接触を断っていられる筈がない。今は書類仕事やら何やらの為に、だれにも感染させずに済んでいるが…戦いに出れば、そんなにスムーズにいく筈もなかった。

 贔屓と言われようと、なんとかせにゃあな…。

 

 

 

 

神戻月

 

 黒蛛病の事だが、ジュリウスから「俺が自力で治療は出来ないのか? ブラッドが患者を治せるようになればいいんだが」と聞かれた。まぁ…無理だろうな。

 細かい説明は榊博士に任せておいたけど、現在の治療法は俺の特異体質(と言う事にしている)によるものだ。

 特異点候補であろうと、ジュリウスじゃできない……もっと特異点化が進めば、話は別かもしれないが…それだと猶更自分を治せなくなるだろう。

 

 他に手があるとすれば…シオか? でもシオに血の力…は、どうだろ、会得できるかな。前ループではエロゲ的な方法で覚えたけど、それやったらソーマが、下手すると子の嫁と言うか旦那に手を出された支部長が、更には何故かサクヤさんの事に気づいたリンドウさんが徒党を組んで抹殺しに来る気がする。だからと言って、シオに瞑想やら何やらは期待できない。

 覚えるとしても気長に待つ必要が…でもシオはあれで頭いいしな…ソーマの為だって吹き込んでおけば、なんか覚えてくれそうな気もする。

 

 よし、ものは試しだ。黒蛛病治療はともかく、血の力の覚醒までなら、ダメでも特にデメリットはない。ちょっと連絡して…なんすか、支部長?

 

 

 

 

 

 

 …孫ができるまで待ってほしい?

 

 

 

 「君のおかげで、大分ステップアップできたようだよ」って…ああ、上手くやったのね、シオ。アドバイスした甲斐があった。

 まぁ、妊婦(ロリ)に修行やら訓練やらしろなんて言えんしな。ただでさえ、特異点とはいえアラガミと人間(ちょっとアラガミ混じってる)のハーフとか、どんな問題が出るか分かったもんじゃないんだし。

 どっちにしろ、シオが霊力の使い方を身に着けるまで、ジュリウスの黒蛛病が保つとは思えん。

 

 やはり、赤い雨を待つしかないか…。それまでは、ジュリウスは別の作業に手を取られて出撃できないと言う事になった。副隊長のロミオが皆を纏めているが、多分あいつなら大丈夫だろう。コウタと仲良くなって、色々協力し合ってるみたいだし。

 

 

 

神戻月

 

 大人しく赤い雨を待っている訳にはいかなくなったようだ。ジュリウスの特異点進行が、異様に早い。

 そういや、ゲームでもそうだったっけ? ジュリウスはラケルてんてーサイドに行ってたから分からんが、ユノの進行が早いって話があったような。

 

 

 放っておくのは論外。このまま進めば、例えラケルてんてーの介入がなかったとしても、ジュリウスは死んでしまう。

 先日考えたように、ジュリウスを連れてダイヴ・インで赤い雨近辺に移動するのも無理だった。適当に捕まえた野良犬で試してみたんだが、どうやら俺以外の何かを連れてダイヴ・インしようとしても、そもそも発動しないようだ。それにしては、俺が持ってる私物とかは一緒に入って行ってるんだが…線引きがイマイチ分からん。

 何度か試してみたが、鬼祓いをスキルでより強力にしても治療は出来なかった。

 

 そこで、榊博士が一案を持ってきた。先日から「考えはある」と言ってたんで、それを実験する為に、何やら手を回していたようだ。

 ジュリウスと一緒に呼び出され、見せつけられたのは、デカいタンク。少なくとも、一辺の長さが人間一人分以上の大きさがあり、中からは水音がしている。…で、微弱ながら霊力を感じる。

 ジュリウスはジュリウスで、タンクに対して何となく嫌な感覚を感じていたようだ。…単に榊博士の実験に突き合わされるのが危険だったからかもしれないが。

 

 警戒心を露わにする俺達を他所に、いつも通りに極めて胡散臭い榊博士曰く。

 

 

「現状、赤い雨が降っていなければ治療はできない。なら、赤い雨を疑似的にでも降らせてみればいいじゃないか」

 

 

 ……つまり、何か? そのタンクの中身は…。

 

 

「別の区域で赤い雨が降りそうだったんで、タンク一杯に貯めてもらったんだ。尤も、降ってきた水がカギになっているのか、もっと別の何かがカギになっているのか分からなかったから、実験以上のものではないがね」

 

 

 ナルホド…単純な考えだけど、この発想はなかったわ。タンクの中にも霊力は残っているようだし、案外うまく行くかもしれない。

 

 

「しかし、具体的にどうするつもりですか? 赤い雨が近くにあれば、黒蛛病患者は苦痛を訴える筈です。ですが、俺は…どうにも嫌な感覚はありますが、痛みはありません」

 

「その嫌な感覚が、黒蛛病の症例かもしれないじゃないか。とは言え、確かにこれが近くを通る時、黒蛛病患者で反応した者はいなかったけどね」

 

 

 まぁ、それこそ量の問題って可能性はあるよな。デカいタンクだって言っても、雨の総量に比べれば、文字通りダムの中の水滴一粒みたいなもんだし。

 …で、ジュリウスで実験しようっての?

 

 

「どんなに完璧な理論を打ち立てたとしても、被験者は必要だよ。嫌な言い方になるが、既に感染しているジュリウス君は、これ以上悪化はしないだろうからね。病状が進行するかもしれないけど」

 

「…元より、このままでは死を待つ身。この命を公共の為に捧げる事に異論はありません…が、捨て石になるつもりもない。もう一度聞きます。どのようにして実験を行うつもりですか」

 

「捨て石とは結構な言い方だね。あながち、否定できないのも苦しいが。そんなに警戒しなくてもいいさ。まずは、この水の近くで治療を行い、反応を見る。次は水に触れながらだ。それでも無理なら、今度は部屋を一つ使って、雨のように水を降らせてみる。飲んだり注射したりという事も考えているが…それは最終手段だね。それに、ジュリウス君一人を被験者としても、的確な記録は取れないね。せめてもう一人、比較対象者が必要だ」

 

 

 雨水を注射で体内にとか、素人考えでも無いわ。…濾過とかもできそうにないしな。そうやってる内に、こいつの中の…こう、力が抜けていきそうだ。

 

 

「ふむ、力が抜ける…か。湯の熱が冷めて水になるようなイメージかね?」

 

 

 大体そんな感じ。水の中にあるのは、よくわからないけどエネルギーの一種である事は確かだし。ただ、熱と違って周囲に拡散しているかどうかは俺には分からない。

 

 

「質量保存の法則に従っているかすら怪しいな。我々ブラッドの力も、現在解明されている物理法則では説明できない部分が多い」

 

「それを解明する為の実験でもあるのさ。さて、取り敢えず、今この場で試してみようか。早速治療を頼むよ」

 

 

 へいへい…。さて、どうなる事やら。

 

 

 

 

神戻月

 

 

 …厄介な事になってきた。半ば予想はしていたのだが。

 

 ジュリウスの治療ができなかったのだ。…より正確に言うなら、「ジュリウスだけが治療できなかった」か。

 榊博士の目論見は成功した。症状が軽い人であれば、赤い雨を貯めたタンクの近くに居れば…多少病状が思わしくなくても、その場合は水に触れながらであれば治療は出来たのだ。

 だが、実際に雨が降っている時と比べると時間もかかるし、何より患者に要求される体力が非常に大きい。途中で治療を辞めると、逆に急激に悪化してしまいかねないので、苦痛や疲労に耐えながら最後まで乗り切るか、最初から挑まずにいるかの二択しかない。実際、3人目くらいの患者が苦痛を訴えて中断したんだが、いきなり蜘蛛の模様がデカくなり、慌てて治療再開。さらなる苦痛に苛まれ叫びながら、何とか治療が終わった。曰く、「歯医者にかかって麻酔が切れた時の事を思い出した」だそうな。そのような拷問だったとは…。

 これについての理屈や推測は、また後で記しておこう。

 

 とりあえずジュリウスの事だ。

 治らなかったのも厄介な話だが、病状の進行が深刻だ。それにも増して、妙に思い詰めているように見える。

 順風満帆なジュリウスに、いきなりこんな死の運命が見えれば…それも、普通の人なら治る筈が、自分だけ治らないとくれば、そりゃ焦りもするだろうけども。

 …いや、順風満帆じゃなかったな。割と悲惨でキツい人生を送ってるし、こいつ。

 

 

 理由はどうあれ、治療が効かなかったという事は、ジュリウスの行動はこれから大幅に制限される。他人に触れる事も出来ないし、遠からず痛みを感じるようになったり、体が上手く動かなくなってくるだろう。

 ゴッドイーターとして活動することもできないから、ブラッドの隊長でもいられない。副隊長だったロミオが繰り上がりで隊長になると思うが…。

 

 今まで積み上げてきたモノが、全て崩れ落ちるか、他の誰かに奪われそうになっている。…どう考えてもヤバい傾向だな。

 とにかく落ち着けとは言っているが、ジュリウスに効く治療法を見つけなければ。

 

 

神戻月

 

 

 レアとアリサで、ちょっとした小競り合いがあった。いや、大した事じゃないんだけどね。

 アリサ宛てに手紙が届いたんだけど、その相手がちょっと問題だったらしい。手紙の送り主は、アネット・ケーニッヒ。…なんだか聞き覚えのある名前だな。

 何でも、3年前…桃毛蟻の一件が起きる前後辺りに、極東に居た子らしい。アリサが研修担当となり、面倒を見ていた時期があったのだとか。今は研修を終え、極東でも何とかやっていけるだけの力をつけて、助っ人としてあちこちを周っているらしい。

 

 

 

 …で、そのアネットが、ちょっと過剰なくらいにアリサを尊敬していたようです。具体的にはアレだ、「お姉さま!」みたいな感じで。

 

 

 

 いつぞや聞いた、アリサの悪い噂…女の子を見る目が怪しいってのも、この子とどっかの支部で再会して、微妙に百合百合しい(アネットからの一方的なものだった、とアリサは語る)付き合いが元らしい。

 ……で、本当にそれは一方的なものだったのか? とからかっていたら、アリサがムキになってしまった。

 でもそう言われるのも仕方ないよなぁ。…リッカさんとシエルを煽った事、忘れてねーよな?

 

 

 

 ん、リッカさん? あれから何度か、リッカさんが(俺が、ではない)ムラムラした時にお相手してる程度だな。こういう気楽な関係も意外といいもんだ。

 それはそれとして、そのアネットってどんな子だったん? 多分、金髪でカワイイのに異様にパワーがある、小動物チックでミニスカート生足、おっぱいよりもお尻が気になる縞パンが物凄く似合う子だと思うんだけど。

 

 

「ま、正にそのもの…! 名前だけでそこまで当てられるなんて、ドン引きです…」だそうな。

 

 

 まぁ、ナニもないとは思ってるけどな。アリサがそうホイホイ、女とは言え肌を重ねるとは思ってないし。

 

 

「本当ですよ…」

 

 

 ちなみに希望プレイは?

 

 

「ずらしハメ一択で」

 

 

 …………ギルティ。

 

 

「あ〝」

 

「墓穴を掘ったおまぬけさんをフォローしてあげるけど、この子がソッチ系の趣味に目覚め始めたのは、あの子と別れた頃よ。あの子の方は、『その気』でアリサにアタックしてたみたいだけどね。アリサも満更じゃなさそうだったし。何度か羨ましそうな、妬ましげな目で見られたわ。別れ際に冗談めかして言ってたけど、アリサは待ってる人が居るって断ったわ」

 

「ちょっ、見てたんですか!?」

 

「お母さんだもの」

 

「それ関係ないですよね!?」

 

 

 …こんな塩梅の一幕でした。

 

 

 

 

 で、この件に関しては、実は話に続きがあったりする。ヒバリさんの事だ。

 さっきの話を、アナグラのロビーで話してたんだが、当然聞いてる人はいる。…人がいるトコで話すような話題じゃないのはともかくとして。受付嬢として、当然ヒバリさんも居た訳だ。部分部分しか聞こえてなかったっぽいが。

 どうでもいいけど、ヒバリさんの髪型は無印よりも2の方が好みです。

 

 

 

 

 その夜、アリサの部屋まで相談に来たそうです。で、それをアリサが「適任者です」と言い張って、俺の部屋まで連れてきました。

 どんな相談かって?

 

 

 

 ヒバリさん、レズでした。しかも真性の。

 

 

 …タツミさんからのアプローチが全然功を奏してないのは聞いてたが…そういう事かい…。タツミさんェ…。

 アリサやレアのような、後天的に目覚めた(目覚めさせた)のではなく、根っからのレズビアン…同性愛好者らしい。男性に対しては、日常では嫌悪はないが、裸の付き合いとなると嫌悪が来る。ついでに言うと、異性としてのアプローチをかけられると、やっぱり嫌悪感が沸いてきてしまうので、タツミさんに対しては悪感情が割と積み重なっているらしい…悪い人ではないから、好悪が相殺している状態っぽいが……哀れな…。

 昔ひどい目に合わされたとか、閉鎖的な女子寮に居たとか、トラウマが出来るような何かがあったとか、そういうのは一切無し。ついでに言えば、親のプロレスを目撃した事も無し。実際のプロレス観戦に連れていかれた事はあるらしいが。

 

 恋慕の対象も、初恋から今までずっと女性ばかり。色恋抜きにしても、性欲が向くのも女性ばかり。

 

 純粋に生まれてこの方、男性をそのような目で好意的に見れた事がなく、所謂同類も居らず、他人に悩みを打ち明けるのはこれが初めてだそうな。

 まぁ、そうだよな…普通に考えて、変な目で見られるもんな。見られなかったとしても、その後の付き合いは変わってしまうだろう。

 

 で、ようやく見つけた同類(だと思い込んだ?)がアリサで、今まで抱えてきた悩みをつい勢いのままに打ち明けてしまった…と。 

 よくもまぁ、そんな勢いがついたもんだなぁ…。少なくとも俺と付き合っている事もわかってただろうに。……忘れてた? まぁ、3年間離れてたし、その間は実際レア二人だったから、そういう認識なのも仕方ないか。

 

 

 まぁ、相談されたからには、受けねばなるまい。俺が人の心をどうこう出来るとは思ってないが。

 

 

 で、具体的に何を相談したいん?

 

 

 …今後の人生について、どう考えているか?

 割とガチな悩みだな…ナルホド、自分の性癖と常識の間でかなり悩んだタイプか。エロ的な意味で盛り上がりかけて申し訳なかった。性のコンプレックスは非常に重いからな…。

 

 

 その重いコンプレックスの相談を、躊躇いなく第三者である俺にバラすアリサ、そこんとこどう考えてるよ。…正座してヒバリさんに下座っても意味ねぇよ。とりあえず、この際とことん付き合え。素面じゃ語りにくいだろうから、適当に酒もってこい。

 

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