※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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最近、FGOのSSを読む事が増えました。
型月は月姫とメルティブラッドくらいしかやってなかったけど、エロカワイイキャラも居るみたいだし。
討鬼伝の設定もなんか応用できそうだし。
具体的には、主人公が宿す複数のミタマが英霊で、脳内で常にサーヴァント達がバカ騒ぎしているとか。無論実体化もアリ。
討鬼伝のミタマをサーヴァントにするか、FGOのサーヴァントをミタマにするかは悩みどころ。
いっちょやってみようかな。



PCでのプレイ不可。



スマホがポンコツ。



そっ閉じ。



ペルソナ5は気になるが、先に討鬼伝2の残りをやってしまおう。
もうちょっとでトロフィーコンプリート…。


第189話

神戻月

 

 

 フライアがまた極東に寄って、更に旅立った。また患者を連れてきてるんだが…あんまりホイホイ連れてくるなよ。処理能力低いんだぞ、今の治療法。

 あれから何度か、赤い雨を貯めたモノを使って試してみたが、やはり全員は治療しきれない。雨が降ってない時でも治療自体はできるようになったものの、その効率は良いとは言えない。やはり天然の赤い雨が降っている時の方が、治療の速度も速い。

 …まぁ、効率の悪さに反比例するように、患者に要求される体力も減少していく傾向があるが。

 

 それに、やはり赤い雨をタンクとして貯めておいても、中の力がどんどん流れ出て消えていくようだ。何もしなくても数日、治療に使えば数回で中の力が消えてしまう。つまり治療に使えなくなる。

 …そもそも、貯めてた量自体があんまり無いからな、今は。赤い雨もどこかで四六時中降ってる訳でもない。降ったとしても、貯めておく為の設備が間に合うかは分からない。

 そもそもからして、赤い雨が降ったら、大抵感染者が増えてしまう。

 

 …やっぱ、どう考えても処理と言うか処置が間に合わんなぁ。これがラケルてんてーの狙いなんだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と思ったら、ジュリウスてめぇ何やってやがる!

 いきなりフライアに乗ってどっか行ってんじゃねえ!

 

 

 …完全に不意を突かれた…。いや、これは俺が間抜けだっただけか。ラケルてんてーの狙いなんて、最初から最後までジュリウスに決まってるじゃねーか。『俺』はラケルてんてーにとっては単なるイレギュラー、障害物。俺を妨害するのは手段であって目的じゃない。

 黒蛛病患者の搬送とか、ちょっとフェイクをかけられただけで、簡単にジュリウスからマークを外してしまった…。アホウドリより阿呆だな。

 

 

 自虐はともかくとして、支部長曰く、これはラケルてんてーが施した誘導の結果だろう、との事。

 ジュリウスが感染した時…黒蛛病患者を搬入中にアラガミ(ラケルてんてーの『お人形』)に襲われて死傷者を出した時から…いや、それよりももっと前から、下手をするとジュリウスの人格形成の頃からずっと仕込みをしていたのだろう。

 ノブレス・オブリージュ…明確に口にはしないが、ジュリウスの根幹にあるのはそれだろう。社会全体へ、或いは弱者への奉仕。

 だが、ジュリウスはそれが出来なくなった…少なくともゴッドイーターとしては。

 

 それでも、ジュリウス程に能力があれば、もっと他の事は出来ただろう…黒蛛病で動けなくなるまでは、という条件がつくが。

 しかし、ラケルてんてーが…或いはジュリウスを取り巻く状況が、焦りを増幅させた。自分だけ黒蛛病の治療が全く効かない、というのもその一つだろう。

 

 長年かけて刷り込まれてきた価値観、守れなかった黒蛛病患者達への罪悪感、そして目前に迫りつつある避けられない死…これらを纏め合わせると?

 

 

 

 黒蛛病患者達への償いの為、自分の命を最大限有効に使う為、ラケルてんてーが研究している無人神機兵の礎になる。

 

 

 …ところどころ、「なんでそうなるのん?」みたいな理論展開があるが…煽られた焦りと罪悪感の代物かな。

 

 

 

 ちなみに、この推論については俺ではなく、支部長がジュリウスの性格と状況から予測したものだ。俺が考えるよりずっと正確だと思う。

 

 

 

 しかし…そうなると、クジョウ博士はどうしたんだろう? ぶっちゃけどーでもいい人ではあるんだが、気にはなる。

 結局、無人神機兵が事故や不具合を起こしたという話も聞いてない。

 確かあの人、無人神機兵の利点を、人が死なない…危険に晒されない、という点を特に重視していたと思う。そんな人が、無人神機兵完成の為、生きた黒蛛病患者を犠牲にするような案を出すとは思えん。

 と言うか、未だに無人神機兵の何処に黒蛛病患者が必要なのか、よーわからんのだが。

 

 

 …誤動作の件が無くても、始末するのは簡単だろうしなぁ…。物理的にも社会的にも。

 …まぁ、生きてどっかで会ったら、飯でも奢ってやろうかな。

 

 

 

 話を戻す。

 

 とりあえず、ジュリウスが黙ってフライアに乗ってどっか行った事に、ブラッド達は……あまり混乱していなかった。

 違和感くらいは感じているようだが、ジュリウスって元々隊長としての任務(書類とか外交的な意味で)の為に別行動する事が多かったからね。それこそ、ロミオが隊長って言われても違和感ないくらいに。

 今回の遠征もその類だろうと思っているらしい。…信用があるのか無いのか…。

 

 

 

 

 しかし、俺にそのよーな事は関係ない。経緯と思惑はどうあれ、ラケルてんてーのもくろみ通りに動くなら、あらゆる意味で妨害するだけである。

 

 と言う訳で、ジュリウス黒蛛病感染のお知らせです。

 

 

 

 …阿鼻叫喚。

 

 

 

神呑月

 

 

 前回の日記から、少し間が開いた。

 

 

 ウソだウソだと大騒ぎしながら、新たな月に突入。なんか先月が妙に長かったような…まぁ、日記を一日に複数回つけたりもしてたからな。気のせいか。

 ともかく、流石にジュリウスが感染したというのは相当にショックな話だったようだ。

 

 …おいロミオ、お前気づいてなかったのか? …怪しいとは思ってた? 最近は全然顔を見せないし、極東に来ても銭湯に行かない。…そこで気づくのかよ。そうなった時期が、黒蛛病患者の輸送任務前後…。

 まぁ、それでも信じたくはなかったってのもわかるけどな。俺が治療できればそれが一番よかったんだが…。

 

 

 で、これからどうするって話である。

 ジュリウスもラケルてんてーも、仕事を理由に音信不通。メールを送っても返信ところか着信報告も無し。…ジュリウスが自分から連絡を絶ったのか、それともラケルてんてーがブロックしているのかは微妙なところだ。

 

 ジュリウスの特異点化が始まり、更に手の内にある以上、恐らくブラッド達は用済みだろう。ジュリウスの決意を固める為の生贄だっただろうからな。

 …なんて事を言っても、信じられる筈がない。ロミオ以外はラケルてんてーの本性に気づいてないんだし。そもそも、ジュリウスが黒蛛病に感染した事と、ラケルてんてーの陰謀を明らかにする証拠がない。

 現在のブラッドの認識は、病気になったジュリウスが、治す方法を求めてラケルてんてーと一緒に旅をしている…くらいのものだろう。虫も殺さないような無表情の下で、終末捕食第二弾…第三弾?…や人体実験やら生贄やらを企んでいるなんて、誰も思ってない。…ああ、今までほとんど関わりがなかったギルは…まぁ、それでもすぐには信じられんか。

 

 ブラッド隊の希望としては、とにもかくにもジュリウスに一回会いたい。治療できない患者に会って何をする、という意見もあるが、とにかく会ってから考える、だそうだ。まぁ、一言も何も告げずに唐突に縁切りされて、納得できるヤツの方が少ないわな。

 しかし音信不通、何をどうやったのかフライアも行方不明状態ときた。

 

 

 差し当たり、ブラッドは極東組に編入される事になった。フライアに連絡しようとしても、全く返答がないからだ。隊長やスポンサーからの指示もなく、明確な指針も無い為、とりあえずって事で………まぁ、実際は支部長が取り込み工作したんだろうけども。

 

 

 ゲームじゃこの後どうなったっけなぁ。ラケルてんてーの所業を語る人………レア…だけど、レアはもう極東に居るし。

 …自分が今まで何をやってきたのかの懺悔? 自分から語るならともかく、語らせるのは尋問、或いは誘導尋問と言うんだ。

 ………本当なら、黙っていていい問題じゃないとは分かってるんだが…レアの負担になるような事はさせたくない。だからと言って、一生黙って一人で抱えているというのも…。

 

 ううむ、やっぱ俺ってこういう事になると、途端に情けなくなるなぁ。少々歪な愛情とは言え、惚れてる女と正面切って語り合う事もできないとか…。まぁ、今回は問題が重すぎるってのもあると思うんだが、そこを言い訳にしちゃアカンよな。

 それに、『お人形さん』の事とか、色々知ってるってのはもうレアにも知られている事だ。ジュリウスが『お人形さん』に襲われたというニュースが入った時に、ちょっと零したし。

 

 

 

 

 うむ……とりあえず、ラケルてんてーの所業を明らかにせにゃならんか。レアにまで追及が及ぶかは…可能な限り隠蔽するか、訴えられても負けないくらいの材料を集めておきたい。

 ぶっちゃけ、ラケルてんてーは叩けば埃が山脈を作るレベルでやらかしてるだろう。それを探り出して証明するのが難しいだけで。どーせ、レアみたいに誰かを操ってやらせてるか、証拠は徹底的に始末してるか。

 となると…現在進行形の犯罪行為を探す訳ね。尤も、それを探り出したところで、ラケルてんてーにはどうでもいい事だろう。単にブラッド達の決意を固めさせる一助にしかならない訳だ。

 

 

 さて、どこから探るかな…。ダイヴ・インも、相手がどこにいるのか分からない状態では試したくないし。

 

 

 

神呑月

 

 

 ゲーム通り…なのかな? ちょいとキャスティングは変わっているが。

 

 音信不通だった筈のフライアから、来客…逃亡者だ。しかも4名。

 ゲームではレアだけだったのが、フランさん、ユノ、サツキさん。そして黒蛛病患者の、意識不明なままの女の子…ナニコレ、何がどうなってそうなったの?

 

 今更シナリオがどーのと言っても無駄なのは分かっているし、世界の因果関係を全て知れるとも思わんが、ホントに理解できない。

 まぁ、本人達から話は聞いたんですけどね。

 

 フランさんから齎された情報は、フライアの現在地と、そこで何が行われているか…だった。両方とも、何とか調べようとしていた案件だ。まぁ、渡りに船だな。

 後者については省く。経緯の差はあっても、大体ゲームシナリオと似たようなものだ。違う点があるとすれば、どこから患者を集めたかだろう。これまで極東に連れてくる間に、何人かちょくちょく拉致っていたっぽい。

 

 前者…フライアの位置についてだが、あー単純だけど盲点だったな。赤い雨の中だ。四六時中降ってる筈がないのだが、それでも降りやすい場所はあるらしく、そこで身を隠している。

 赤い雨が降ってる間は誰も近づけないし、雨自体に妙なジャミング効果もあるらしく、レーダーも殆ど効かないようだ。雨が降ってない間だけなら、ラケルてんてーの手腕なら誤魔化せる訳だ。

 

 

 

 

 で、本格的に予想もしなかった、ユノとサツキさんの件なんだが。

 そもそもフランさんは、フライアから脱出する機会を伺っていたらしい。ブラッド達を極東において、フライアが単独行動するようになった頃から、どうにも雰囲気がおかしくなりはじめた。

 薬品やら食料やらの支出・仕入れが明らかに帳簿と合わなかったり、記録に乗ってすらいない機材が幾つも搬入されていたり。元々搭乗していたスタッフもいつの間にか姿が見えなくなり、フライアはほとんどオートで動いているようなものだったとか。

 そもそも、赤い雨が降りやすい場所にずっと留まる理由が分からない。

 まさかと思いつつ、身の危険を感じ始めたフランさん。

 

 そこへやってきたのが、ユノとサツキさんなのだという。

 ある晴れた日の事、フライア近くを偶然通りかかったらしい。ブラッド隊が居ない事も知らなかったし、黒蛛病患者を搬入して極東に運んでいるという話は知っていた。ならば、ブラッド隊への挨拶と、許可が出るなら一曲歌って、黒蛛病患者の容態を少しでも軽くしよう…と思って、フライアに接触した。

 

 許可が下りたので、フライアに乗り込んだ二人だが…違和感を感じたのはその辺りからだ。フランさんが言うように、異様に人が少なく静まり返っている。

 出迎えさえ居らず、入ってこいとばかりに開かれる扉。キナ臭いと感じつつも、進んだ先で見たのは……妙な機械に接続されている黒蛛病患者達と、まるでアラガミのような気配を持った無人神機兵。

 

 何がなんだか分からない所に、二人の来訪を知ったフランさんが咄嗟に乱入。オペレーター権限…と言ってもハッキング染みた事をやってようやく発動できたらしいが…でフライアの動作を混乱させ、二人を…その時咄嗟にユノが機械から引っ張り出した女の子を含めて3人…を誘導し、脱出した。

 

 

 

 …えらい急展開だな…。何と言う面倒な偶然。いや、偶然なのはフライアに遭遇した一点だけか? それ以外は、ある意味自然な成り行きと言えなくもない。

 顔見知りに会っていこうとするのも、患者の助けになるなら一曲披露しようと思うのも……そういう能力を持っているユノを、ラケルてんてーが始末しておこうと考えるのも不思議ではない。

 後は…フランさんのファインプレーだな。よく逃げ出せたもんだ。『お人形さん』に追撃とかされなかったのかね。

 

 まぁ、色々と考えるべきこと、思うところはあるが、まずやるべき事は決まっている。

 

 

 

 

 ユノとサツキさんの検査だ。

 

 

 

 

神呑月

 

 

 黒蛛病患者の子を二人係で担いできたんだ。まず間違いなく感染している。ゲームだって、少なくともユノは感染していた。

 実際、感染してたしな。

 

 

 …サツキさんも。まさか二人ともとは…。

 いやまぁ自然な成り行きではあると思うけど。

 

 

 

 …治療を頼まれると思うが……治せるかなぁ。ジュリウスの治療が出来なかったのが、特異点候補であるから…ならば、恐らくユノも治せない。

 

 …………いや、出来なくはない…のか…な? 本気で判断できないんだが…まぁアレだ、要するに体の中から余計な霊力を奪って、それを浄化してしまえばいいんだ。

 今までは治療のために、タマフリとか使ってたが…相手の中の霊力を吸い取る、という事ならもっと使い慣れた手段がある。

 

 

 そう、毎度お馴染み、またそれか馬鹿の一つ覚え的な、オカルト版真言立川流である。

 房中術の基本は、互いのエネルギーを循環させ、それを増幅するものである。循環させるという事は、相手に俺のエネルギーを送り込むと同時に、相手のエネルギーを俺の中に取り込んでいると言う事でもある。

 であるなら、相手側…感染しているユノの中の霊力を、こっちに取り込んでしまう事も出来るだろう。

 

 問題があるとすれば、あくまでこれは机上の空論に過ぎない事と。何より、一方的にエネルギーを搾取する形になってしまう為、相手の消耗が桁外れに激しいと言う事だ。

 

 

 

 …根本的に、乙女心とかそーいう問題があったよな…。『死にたくなければヤらせろ』って言ってるようなもんだし。正直、下心無しの治療法だと考えてもらえたとしても、受け入れられるかと言うとな…。

 男の立場に言い換えれば、ケツをエグられるか死ぬかの二択。選択の余地がないとしても、心理的に受け入れられるかってーとな…。

 

 サツキさんなら、多分自分の事なら受け入られると思う。尤も、サツキさんの場合は普通に治療できると思うけど。

 だが、事がユノさんとなると……どうだろうなぁ。死んでほしくはないけど、枕営業染みた事を許容できるとは…しかしやらなきゃガチで死ぬんだし。

 

 

 ま、とりあえずあの二人の性格からして…最初に連れてきた嬢ちゃんの治療。それからユノの治療…が効かないので、先にサツキさんの治療…かな?

 やれやれ、治療ができないってのはなんというかもどかしいな。医者ってのはいつもこんな気持ちを抱えてるのか? やってられんな。胃に穴が開くぜ。医者の不養生って言うけど、その原因って無力感じゃないのか。

 

 

 

 

 ともあれ、治療しようにも赤い雨の水が無ければやろうったって出来ない。手配はしてくれてるから、到着待ちだな。

 その間、逃げてきた3人(一人は眠ったままだから)から、色々と話を聞いている。主に支部長と榊博士が話を聞いて、俺はその付き添いみたいなもんだ。

 …サツキさんが意外と協力的だったな。フェンリルに対してまた噛みついて来るかと思ってたんだが。それだけ、初めての鉄火場が堪えていたのか、それとも極東市民の生活でも見て思うところでもあったのか。

 ………単純に、意外と打たれ弱いだけのような気もする。極東市民の生活を見た時も、割とあっさり黙ってたし。

 

 とりあえずフライアの状態は、ラケルてんてーの独裁状態。もう殆どスタッフも居らず、どうやら無人神機兵を完成させる為だけの研究所状態となっているようだ。

 外部からの通信も、ほぼ遮断状態。…これについては、どうやらラケルてんてーが何やらやっているかららしい。ジュリウスと音信不通状態なのは、本人の意思ではないっぽい。

 そのジュリウスの姿も、フランさんはここ最近全く見ていないし、黒蛛病に感染している事すら知らなかった。

 

 どういう事にせよ、とにもかくにもフライアに押しかけ、敵対する理由は出来上がった。

 無人神機兵の為の人体実験…そうでなくても、異常な機械に患者を繋いでいる事への尋問。アラガミのような無人神機兵についての調査。それを裏付けるような、音信不通とフライアの行方不明(実際に隠れていた)。

 状況証拠止まりだが、突撃するには充分すぎる。

 

 問題はブラッド達の心境とモチベーションか。

 ギルはまぁいい。ロミオも…薄々感づいていたから良しとしよう。シエルは俺の言葉とラケルてんてーへの信頼の板挟み。ナナは反発するだろうな…。

 …やっぱ、レアに色々語らせるっきゃないか?

 

 或いは、詳細は隠して、ジュリウスが黒蛛病になってヤケ起こしてバカな真似しようとしてるみたいだから止めに行く、とだけ伝えて…ああダメだ、現場でラケルてんてーが出てきたら士気が下がる。口先三寸で誤魔化されるな……無視がいいか。

 

 

神呑月

 

 ユノ達がフライアと遭遇していた場所には、もうフライアは居なかった。逃げ足が速いな。本人の足は動かないというのに。

 まぁ、今回は何とか追跡できそうだ。発見次第カチ込みをかけるので、それまでにブラッド隊の説得とか、サツキさんや連れ帰った女の子の治療をやっておきたい。

 

 ブラッド隊の説得に関しては、レアがその役目を買って出た。頼むべきか頼まないべきか葛藤していたが、本人の意思で決めたようだ。…いつまでも黙って逃げ続けられない、か。

 

 

 

 

 

 しかしその話の内容は、ゲームとほぼ同じである。ぶっちゃけ全部知ってます。いや、ラケルてんてーが思ったより悪どい事やってたのは確かだけどね。どんなに空想を捻っても、現実の悪事に追いつかないっていうけど、アレ本当だわ。尤も、ここが現実なのかフィクションなのか、或いはその両方なのかはよーわからんけど。

 レアが色々と話し辛い事を、歯を食いしばりながら話しているのを、ノホホンと見ているのもなんだが…後ろでこっそり背中に手を添えるとか、そーいう事はしてたんだけどね。助力になってるかは怪しいもんだ。

 

 結局、ナナとシエルはレアの言う事であっても受け入れきれず、しかし何かしら異変が起きているのは理解した。それを確かめる為に、少々強引な手も使う…という結論に達したようだ。

 やる気になってくれてるんならそれでいい…とは言えないのが、今回の相手の厄介なところだな。人の心なんぞ理解してないだろうに、利用するのは異様に上手いんだから。口先三寸で混乱、最悪寝返りって事もある。…こういう疑いを捨てられないのが、俺の性格というか器を表しているね。

 

 

 

 さて、ブラッド隊はとりあえずこれでいいとして。もう一個の問題の話に入ろう。

 ユノ達の黒蛛病治療についてだ。連れて帰ってきた嬢ちゃんについては、赤い雨のタンクが到着し、無事治療できた。

 残りの二人については…サツキさんは他の患者や自分よりもユノを優先して治してくれと言いだし、当のユノは自分だけ優先的に治療を受けるのは躊躇われる。…気持ちはわかるし、リアルに命がかかっている状況で他の人間を気遣ったり、平等・公平を意識できるのは素直に称賛するが、これはサツキさんの方が正しいよなぁ。

 命に貴賤や値段があるかは置いといて、人命救助にも優先順位が付く事はどうしようもない事実。増して、この場合ユノには黒蛛病の進行を遅らせる事が出来る、という何者にも代えがたい付加価値がついている。贔屓がどうのと言うのでなく、効率面から見てもユノを最優先で治療するべきだ。

 

 

 

 

 治療できれば、だけどな。

 

 

 うん、予想通りできませんでした。んでサツキさんが狂乱した。いや、言いたい事は分かるけどね。何でユノだけ治療できないんだって。

 でも出来ないもんは出来ないんだよ。理由なんぞこっちが聞きたい。……いや、特異点候補だからって事は分かってるんだが、それを治療するにはどうすりゃいいのだ。

 今までやってる治療法が効かん。最終的には水着姿でタンクの赤い雨に浸かりながら治療したり、赤い雨を飲ませて治療も試したけどもダメだった。

 その間にも、何人も同時に治療した。そっちは問題なく治療できた。

 

 でもやっぱりユノが治せない。ついでに言うと、ユノが治らない限り自分も治療を受けないと言い出すサツキさん。それだけマジなのはわかるけど、その意地にはあまり意味は無いぞ。

 まぁ、ユノと違ってサツキさんの黒蛛病進行は遅いし、最悪気絶させてから治療すっけど。

 

 

 この一件を受けて、サカキ博士は……ちょっと自重しろと言いたくなるくらいに楽しそうだ。オメー、人の命賭かってんのにさぁ…それを俺が言うのも噴飯モノだけど。

 と言いつつも気持ちは分からなくもない。

 サカキ博士曰く、「ジュリウス君同様、ユノ君のみが治療が効かない。となると、二人の間に何か共通点がある筈だ。それさえ解明できれば、治療が効くようになるかもしれないよ。ジュリウス君だって戻ってくるかもしれない」…だそうだ。

 ジュリウスが戻ってくるのは、正直あんまり期待できないけどな。もう大勢を巻き込んでエラい事やっちまってる訳だし。治療法が確立され、冷静になったとしても、そのまま汚名を背負って死んでいくくらいの事は考えそうだ。

 

 

 

 さて、共通点っつーても、サカキ博士はアレだよね、黒蛛病が特異点を作ろうとする働きだってのはもう知ってるよね。つまりユノが特異点候補だってのも理解してる訳だ。

 

 

「うむ勿論。その上で言っているのさ。新たな特異点の出現は、終末捕食の再来に直結する。だが、その特異点出現を防ぐ事が出来たら…その手段である黒蛛病をキャンセルする事ができれば、どうだい?」

 

 

 特異点は出現せず、終末捕食も起こらない…が、多分次の手段を持ち出してくるぞ。自然だか地球の意思だかって奴が。

 

 

「その時はまた新たな対策を作り出すさ。人間はそうやって進歩してきたんだ。まぁ、確かに泥縄なのは否定できないがね。そういう訳で、ジュリウス君とユノ君が特異点候補とされた理由を解き明かし、治療すると同時に未来の危機を防ごうという訳さ」

 

 

 その為には、まず血の力を理解する事から始めなけりゃならんと思うのだが…。レア、データまだ残ってる? フライアでロミオを鍛えてた頃のヤツ。

 

 

「いやいや、確かにデータは欲しいが、残念ながらそうやっていられるだけの時間がない。ユノ君の黒蛛病は急激に進んでいる。と言う事は、ジュリウス君の黒蛛病進行はそれ以上だろう。ここは、恐らく世界で最も血の力を理解している君を使おうと思う」

 

 

 俺を? 確かに、この世界だと有数の使い手だと思うし、それを使って治療もやったが、結局治せなかったぞ。

 

 

「ああ、普通の方法ではそうだね。だが、まだ手はあるんだろう? そう、例えば…君のもう一つの姿を使った治療などはどうかね?」

 

 

 …ああ、そりゃ確かに試してなかったな。戦闘にばっかり使って「やっぱり他に方法があったんじゃないの!」……どっから聞いてたんですかね、サツキさん。

 

 

「どういうつもり…いえそれはいいわ、吐け、吐きなさい! すぐにユノを治しなさい!」

 

 

 落ち着けっておい…ちょっと榊博士、アンタ何か煽ったでしょ。

 

 

「いいや? むしろ、友人や本人の死を目前にした人間なんてこんなものじゃないかな」

 

 

 それ以前に、黒蛛病で隔離されてるこの人がここに居るって時点でおかしいわ。先日までは、ここまで狂乱してなかったぞ。絶望しかけた矢先に希望の糸が垂れてきたっつってもな…。……ああ、わざわざ煽らんでも、蜘蛛の糸見つけたカンダタみたいに必死になるか。

 この際、俺の首元ひっつかんで狂乱するのはいいから、他の人に触るなよ。治療も結構手間なんだから。

 

 

「どうでもいいから早く治しなさい! 私はどうでもいいからユノを! ハリー! ハリーハリー! ハリーハリーハリー!」

 

 

 いうのがアンタじゃ旦那のセリフも迫力無しだな。そこまで追い詰められてもユノ優先なのは凄いが。

 ま、いいか。どっちにしろ、治ると確定した訳じゃないし。…一応言っておくが、治らなくても喚き散らすなよ。方法は……ああ、まだ他にない事もないし。

 

 

「それなら全部試しなさい。そもそも、何で最初から試さない!? 人の命賭かってるのよ、出し惜しみしてる場合か!」

 

 

 金が無くて治療を受けられない人が聞いたらブチ切れそうなセリフだね。アンタ達を優先的に治療しようとしているから特に。

 まぁいいや。とにかく試してみるしかない。

 とは言え、無条件に出来る手段でもないんでね。治療の時は目隠ししてもらう事になる。覗き見も厳禁。オーケイ?

 

 

「…変な事をしないでしょうね」

 

 

 人を守ろうとするのはいいけど、そこまで猜疑心を持つと醜く見えるぞ。それだけ追い詰められてるって事にしておくが。

 んじゃ榊博士、悪いんだけどセッティングをお願いします。

 

 

「ああ、もう部屋の準備は出来ているよ。カメラも無い、防音、入口は一つだけ。…それにしても、君にしては珍しいというべきか…あちらの姿での治療は考えてなかったのかい?」

 

 

 アレは戦闘にばっかり使ってたし、こっちに戻ってきてからは使う機会もなかったからなぁ…。すっかり忘れてました。

 

 

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