※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

193 / 611
超厳しい鬼上司が異動してくるは、最近大人しかったクレーマーがまた喚き始めたはで、ものすごーくテンションsagesageです。
執筆の影響が出かねない上司なんで、マジで滞るかも…。
リアル大事にとは言うけど、メールを見るのも怖い上司だから、むしろ逃避していたい…。
とりあえず10月分の投稿は、4日毎に予約しておきました。
そっからどうなるか…。


第193話

凶星月

 

 

 

 …なんか今回は怒涛の展開だなぁ。

 

 とりあえず、異界を抜けたはいいんだが……何処だここ。人里…じゃないけど、討鬼伝世界なのか怪しいくらいだ。

 だって、とても人里とは思えない規模の町があるし。討鬼伝世界は、一部の霊山や人里を除いて、全て異界に沈んだ筈。なのに、眼下に広がる町には、多くの人が暮らしているようだ。

 そもそも海と船が見える。異界に呑まれてない海なんぞ、まだ残ってるのかね。

 それともアレか、実は討鬼伝世界で異界に沈んだのは霊山を中心とした一部だけで、それ以外…具体的には北海道とか沖縄とかは、普通の暮らしが続いているとでも言うのか。

 

 

 …いや、これは多分それ以前の問題だな。

 よく見てみれば、町を歩く人は、時代錯誤…むしろ討鬼伝世界に特に違和感のないような恰好で、帯刀している人も多くいる。

 陣笠、鎧、刀に銃、その他諸々…。ま、少なくとも俺が元居た世界の、元居た時代じゃなさそうだ。観光客向けの日光江戸村みたいなトコでもなさそうだし。

 

 

 …む、何人か屋根の上に人が………およ? 船が騒がしい…大砲を撃った?

 揉め事…じゃない、戦……でもない? 船は他に居ないし、陸にも被害はない。と言う事は、閃光と煙の具合からして、海の上の『何か』に向けて撃った? …お、着水音。何を標的にしたかは知らんけど、外したようだ。

 

 爆発。…助けに行けばよかったかな。どっちにしろ、この距離じゃ間に合わなかったろうが…。

 今からでも助けに行くべきか、それともまずは爆発の原因を見極めるのが先か。…悪いが後者。二次災害は避けるべし。

 

 

 

 …で、鬼の目と鷹の目を使って目を凝らしたんだが…やっぱりここは討鬼伝世界だったようです。アレ、カゼヌイじゃん。海の上を走れたんだな、あいつ。

 …どうすっかな。水の上でも走れない事(海水は浮きやすいしね)はないが、はっきり言って非常に不利だ。走りながらタマフリって、やった事あったっけ…何度かあったな。だが鬼祓いが出来ん。相手の強さによっては、部位祓いもせずにそのまま仕留めきる事も出来るが…。

 

 とりあえず、神機の銃形態で牽制するか。そんで救助活動だ。

 

 

 

 

 と思ってたら、それより先にカゼキリに銃撃。しかも効いてる…と言う事はモノノフか?

 さっき見かけた、屋根の上の人…おお、金眼四ツ目の仮面もしてる。ふむ、モノノフが居るなら話は早い。指揮官級は……あ、居た。鷹の目が必要ないくらい分かりやすい。一人だけ軽装で偉そうな恰好してるし、モノノフに囲まれてるし。

 

 …後は物分かりのいい指揮官である事を祈るだけ、か。

 

 

 

 結論から言えば、物分かりは非常によかった。悪人面だったが。

 唐突に現れた俺を平然と戦力に組み込み、尚且つ裏切られても問題のないポジション…海から迫る鬼を、銃(に見えるが、彼らからすれば普通の銃とは明らかに違うナニカ)で迎撃する役目を与えられた。

 こんな感じだったかな。

 

 

 俺、指揮官…軍師のオッサンの前に立つ。

 

 

「何処の隊のモノノフか」

 

「フリー…いや、流れのモノノフだ。鬼との闘いがあるようなんで、急遽駆け付けた。手助けは要るか?」

 

「流れだと…? よかろう、何者かは知らんが、戦力はあるに越した事はない」

 

 

 …即断即決だったよ。大丈夫なんかな。

 

 しかし、ちょいと気になる事もあったなぁ。

 会った時に2,3会話したんだが、『横浜を防衛する』とか、『鬼が人の世の歴史に姿を現した』とか。…ここが横浜だってのも驚いたけど、鬼が歴史に姿を現す? だから自分達モノノフも隠れる必要はない、とか…。

 モノノフって隠れてたっけ? むしろ人の世の防衛ラインだから、前に前に押し出てなかったっけ?

 

 …横浜…って事は、少なくとも討鬼伝世界で、異界に沈まず残っていた土地ではないと思うが……。これは、一段落したら色々話を聞いた方がいいかもしれない。あの軍師のオッサン、悪知恵が働きそうだから色々聞き出されそうだなぁ…。

 

 

 

 

 

 

 まぁ、そんな機会は訪れなかった訳ですが。

 

 

 

 港付近で防衛線(たった一人でも線は線!)を張り、2時間程か。軍師のオッサンから招集がかかった。

 どうやら一端、退避するようだ。どこに、と言うのはよくわからんかった。だって横浜近辺の地名なんか知らんし。

 

 とりあえずついていこう……とした時に、大物出現。

 過剰なくらいに筋肉が盛り上がった、白い、デカい拳を持った鬼。見た事ないヤツだな…。

 

 

 まぁ、とりあえず叩き斬った。今までの戦闘で鬼千切放てるくらいに気が高ぶってたから、速攻で拳を吹っ飛ばしました。やったね鬼千切! 出番があったよ!

 とは言え、逃げられたけども。地面に潜っていった後、気配が消えた。…海の中にでも出たかな。流石にそっちまでは追えないな…うーん、水中戦か…MH世界なら出来そうな人も居るだろう。次はフロンティアに行くつもりだったけど、機会があれば会得したい。

 

 その後、流れのモノノフやってるくらいなら、自分の部隊に来いという軍師のオッサンからの勧誘を受け流しつつ、撤退についていこうとしたんだが……。

 

 

 

 見覚えのある燐光が。

 

 

 

 気づいた時には、もう遅かった。どういう訳だか、もうクサレイヅチが出てきやがったのだ。

 出てきた場所は空の上…あんにゃろう、そこに居れば手が届かないとでも思ったか。

 

 

 だが、アレが出てきたならやる事は一つ。なんでもいいからナマス斬りにしてくれる。

 スマンが軍師のオッサン、勧誘はパスだ。とりあえずあっち!

 

 地上に居るなら鬼杭千切一択だが、空の上じゃ反動を上手く処理できん。鬼千切はさっき使った。ぬぅ、雑魚相手に使って一番の山場を逃すとは! やはり鬼千切は不憫な技。

 だったら、杭じゃなくてもあらん限りの狩り技で叩き落してくれるわー!

 

 

 沈没しかけていた船を適当に見繕い、アラガミ化してマストの上まで駆け上がり、そのまま大ジャンプ。空中での交差の間に、『3本』の触手を斬り飛ばしてやった。

 

 

 

 のはいいんだが、着地どうしよ。思いっきりジャンプして斬ったのはいいんだけど、その先は大海原だよ。いや死にはしないけどさ。ハンターたるもの、どんな高さから着地しても着水しても無傷で当然だし。

 

 

 

 

 そんな事を考えていたら、唐突に空中に空いた穴に呑まれ、気が付いたら今いる場所で突っ立っていた。

 

 

 

 

 

 

凶星月

 

 

 …頭に血が上りすぎたなぁ。イヅチを斬れる機会がすくないからって、自殺染みた事してどうすんのさ。いや死んでも次に行くだけだが。

 

 にしても、今回のイヅチは妙だった。

 前から、僅かに残る記憶で妙に苦しんでいるように見えたが…やはりアレは間違いではなかったようだ。今回も著しく不調だったように見える。いつものアレなら、ジャンプで向かってくる俺を迎撃するか、さもなきゃ逃げてスカかますくらいの事はやると思う。

 と言うか、そもそもあいつの触手って2本だけじゃなかったか? はっきりと、3本斬り飛ばした感触と記憶が残ってるんだが。

 

 イヅチが出てくるタイミングもおかしかった。今まではデスワープ寸前、或いはその瞬間だったのに、今回はワープした直後。…どうなってんだ?

 

 

 

 …とりあえず、次に遭遇した時に備えるか。

 さっきの戦闘では、海、空と不利な戦場が続いたからな。まずはそれをどうにかしようか。イヅチは空を飛べるみたいだから、逃げの一手を打たれるとどうしようもなくなっちまう。

 やれやれ…真っ向斬って狩る事ばっかり考えてたからなぁ。この柔軟性の無さはそのツケか。

 俺も若いな…強さにばかり拘った結果だ。

 

 

 さて、まずはここが何処かっつー話だが……見覚えがあるような無いような。

 森…の異界か。瘴気はあまり濃くない。だが人の足の形跡は無い。

 

 人里がどっちにあるかもわからんな。やれやれ、1回のループの中で、2度も異界を彷徨い歩くハメになるとは。

 ま、異界の毒を無効化するする装備もあるから、単なるサバイバルと変わらないんだけどね、俺の場合。

 

 

 

 とりあえず、寝床に丁度いい洞窟か、或いは地祈石とかの近く…と考えてたんだが。とびっきり妙なモノを見つけてしまった。

 

 

 でっかい塔……いや、この形は……突き立った船? ……遺跡…? こんなモノが討鬼伝世界にあったのか。

 表面はぶっとい草木で覆われているが、素材自体は全く劣化してない。よく見れば、部位によっては明らかに人工的な光が点灯している部分さえある。

 明らかに百年以上は放置されているのに、エネルギーがまだ生きている…?

 

 

 

 ………好奇心がムクムクと湧き上がってきた。よし、今日はこの辺一帯の鬼を掃除して休み、明日は遺跡の中を探検してみよう。

 

 

 

 

凶星月

 

 

 気分はインディージョーンズ……するつもりだったんだが。

 またしても怒涛の羊より怒涛の展開があった為、今はマホロバの里の外れにある家屋で日記を書いています。

 なーんか見覚えがあると思ったら、そうかマホロバの里付近だったか。前に来た時は、里の周りなんか殆ど見れなかったしな…分からなかったのも無理はないか。

 

 

 まーなんだ、遺跡の探検するつもりだったんだが、連れてこられたんだよ。…ホロウと名乗る通り魔ごと、博士と自称する名称不明の少女に無理矢理引っ張ってこられた。

 

 

 

 

 …ここだけ書いても何がなんだか分からんな。正直、今でも展開に頭がついていってないんだが。

 そうさな、今朝の事から書いていこうか。

 

 

 

 寝床から出た俺は、昨日見つけた遺跡を調べる事にした。やはりエネルギーや一部の機能は生きているらしく、実にあっさりと……面白味もなく……中に通じる扉は見つかった。謎解きもクソもない。

 …いや、この遺跡は船か何かの残骸のようだから、暗証番号とかのロックがかかってたら完全にお手上げだけど。RPGや脱出ゲームじゃあるまいし、パスワードのヒントとか人の目につく所におかないっての。

 

 中は…予想はしてたが荒れ果てていた。でもコレ、人が争った後って感じじゃないな。殆どが自然劣化とみた。古い血痕だとか、風化しきった骨とか、そういうのも無い。

 何人かがここで生活していたか……は、流石に分からんな。推察しようにも時間が経ちすぎてて、手がかりが完全に消えている。部屋もいくつかあったようだが、そっちは扉が壊れているのかロックの為なのか、入れない。

 

 暫く歩き回っていると、広い空間に出た。

 

 

 

 そして鬼が居た。まぁ、ミフチとアマキリ程度だったから瞬殺できたけど。しかも下位だな、この脆さ。……いや下位にしてもちょっと脆すぎないか? なんつーか、暫く飯を食ってなかった野生生物のようにフラフラな印象を受けたんだが。

 だがこれも弱肉強食の摂理である。何となく大剣の気分だったんで、前回MH世界で作っていたエピタフプレートでデンプシー。

 あっさりと仕留めて、さぁ探索の続きを…と思った瞬間。

 

 

 気配。火薬の匂い。銃声。

 

 

 咄嗟に大剣の陰に入って銃撃を免れる。銃って事は鬼じゃない、人か? いや遺跡のトラップでも動いたか?

 

 人だった。広間に入ってきた入口に陣取り、俺に銃口を向けている。

 何だか知らんが、いきなり攻撃されて黙っている気はない。話は無力化してから聞き出せばいい。

 

 と言う訳で戦闘突入。…さっきは大剣のお陰で銃撃を防げたが、正直武器選びを失敗したかとも思う。既に5回発砲されているが、コイツの銃撃、早いわ狙いは正確だわで、迂闊に納刀できない。つまり素早く距離を縮める事が難しい。

 本人の身のこなしも非常に軽く、斬りつけようとしてもアッサリと距離を離される。間合いの取り方や押し引きのタイミングも上手い…相当戦い慣れてる。 

 

 それでも完全無欠ではないし、あまり広くないスペースを使って角に追い詰めていったんだが……壁を走って更に三角飛びという軽技で斬撃を回避、再び入口近くに陣取った。…俺を部屋から逃がさずに狩るつもりか? ナマイキな。

 しかし、このままでは俺を仕留められないのは理解したらしく…同時に俺もこのままでは仕留めるのは難しい。膠着状態が出来上がった。

 

 銃を俺に向けたまま真っすぐ立っているのは…女。まず真っ先に目についたのが、緑色の目。僅かに青みがかった銀髪。そして妙に硬直した表情だった。

 …こいつ、何者だ? 鬼じゃなさそうだが…どうにも人間にしては…何と言うか不自然だ。表情も、無表情という意味でなく、何も浮かんでいない。ラケルてんてーとは別の意味で、人形臭さを感じる。

 

 

 とりあえず、どうすっかな…モノノフじゃなさそうだが、あの銃の扱い方はモノノフの戦い方にも通じるように思える。どっかの集団の一員だったら面倒だし、アラガミ化は見せない方がいいか。このまま戦っても……自重を捨てれば、勝てない相手じゃないと思う。

 『自重』を捨てて、大剣を握りなおそうとした時、女が口を開いた。

 

 

 

「………貴方は何者ですか」

 

 

 おい、よりにもよってソレかい。生憎と、いきなりブッパしてくるような通り魔に名乗る名は無い。

 ついでに自分から名乗れと皮肉ってやろうかと思ったんだが…次の一言で、それが全部吹っ飛んだ。

 

 

「その剣に見覚えがあります。それに何故、貴方からイヅチカナタの気配がするのですか。貴方は奴の眷属ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 あ゛? 俺がクサレイヅチの眷属…だぁ? ………いかん、日記だってのに思い出したら腹立ってきてしまった。

 とにかく、俺にとってコレは看過できない一言だった。

 千歳を喰らいシオを喰らい、俺をこのループに閉じ込めている(多分)あのクソッタレが、俺の何だって?

 

 その一言だけで俺はブチギレしてしまった。…人間相手との闘いの経験が少ないとは言え、たった一言で平常心が失われるとは…つくづくアホウか。

 冷静さを完全に失って、とにかくブン殴ろうと…女なんだけど人形めいてるからか、こういう発想に抵抗がない…した。相手もそれを察知して、問答は止めて引き金に指をかける。

 

 

 

 一触即発、多少のダメージを負ってもまず攻撃…を決意した瞬間。

 

 もう一発銃声が響いた。通り魔の背後からだ。

 またも、ただの人間とは思えない身の軽さで離脱しする通り魔。着地際を狙おうかと思ったが、こっちに警戒を向けたままだったし、何より第三者から狙い打たれる可能性もある。牽制に石を蹴りつけておいたが、これはあっさり防がれた。

 

 

「全く…この遺跡で暴れるな。宝が壊れたら、貴様らを一生ただ働きさせて償いをさせるぞ」

 

 

 …エラそうな口調と態度で現れたのは、これまた銃を持つ女。泣き黒子、頭にかけたゴーグル、ぶっきらぼうな表情と声。

 こいつは普通の人間っぽいな。

 

 

 とりあえず、水が刺された事で俺の頭も幾分冷えた。通り魔の正体は分からないが、イヅチカナタの眷属疑惑を持っておきながら攻撃してきたと言う事は、少なくともアレに敵対する者だと思っていいだろう。

 …眷属扱いしたのは許さんが、その怒りの矛先は(自主検閲)イヅチにぶつけるべきだな。

 

 これ以上の戦意無し、の意思を示す為、大剣の切っ先を下げる。同様に、通り魔も銃口を下げていた。…俺も通り魔も警戒は続けているが。

 それを他所に、乱入者は無造作に部屋に入って俺達の間を横切り、部屋の奥にあった何かを操作する。…更に奥の扉が開いた。

 

 

「おい、何をしている。お前達も来い。放っておいて暴れだされたら堪らん」

 

 

 …エラそうな態度だが……ここは従うか。この辺の地理も分からないから、人里に連れて行ってもらえるならありがたい。通り魔は…突っかかってきたら正当(過剰)防衛すればいいか。

 と思ったんだが、通り魔は既に銃を納めていた。…むぅ、何を考えてるのか分からんヤツだ。

 

 仕方なく、付かず離れずついていくと、間もなく小さな小部屋に出た。…なんか警備が厳重っぽいな。重要機関か?

 その中心にある、結界(SFチックにバリアと言った方がいいか?)に守られている何かの力の結晶。そしてその傍で倒れている……なんだこりゃ、ロボット? 人形?

 

 

「ふむ…大当たり、か。全く、これが壊れていたらと思うと肝が冷える。こっちは…完全に停止しているな。だがそれならそれで……む、重い。おい助手一号二号、こいつを運んでおけ」

 

 

 いつの間に助手になったんだ。

 

 

「そもそも何処へ運ぶのですか」

 

「決まっているだろう、マホロバの里の私の家だ」

 

 

 …マホロバ? ここ、マホロバの里の近くなのか。

 

 

「なんだ、迷子だったのか貴様? そういえば間抜けそうな顔をしているな。まぁいい。だったら猶更運ぶ事だ。ついでに里まで連れて行ってやろう。感謝してただ働きしろよ。ああ、道案内するからただではないか」

 

 

 …色々納得いかんが、ゴネた所で意味は無いか。里までの道が分からないのも事実だし。しかし、マホロバの里にこんな女居たっけか? まぁ、あの時はあまり人と接する機会はなかったから、気付かなかったのも無理はないが。

 

 通り魔は、素直にエラそうな女に従っている。…なんだろ、命令されている姿が妙に慣れてるような…誰かに仕えてたのかもしれない。

 む…この人形、小さい割には重いな。飛竜のタマゴとか抱えてる気分だ。

 

 

 

 

 

 

 そして、通り魔と二人係で人形を運び、異界の野を超え山越ええっちらおっちら、途中で会った鬼達は3人がかりでフルボッコ。

 …通り魔も強いが、エラそうな女も結構やるな。ミタマも、俺の知らない使い方をやっているようだ。式神みたいなモノを具現化させて、勝手に戦わせている。

 

 マホロバにこんな技あったのか…。まぁ、前に来た時は、まだモノノフのイロハ…経文唱も使えなかった頃だし、知らされてなくても不思議はないか。

 と言うか、正直言ってどんな場所だったか、今一つ覚えてない。

 地理的に言えば、霊山を挟んでウタカタのほぼ反対側だった筈。…ウタカタに到着するまで、かなり時間がかかるな。いっそ、久しぶりに霊山に行ってみるのもアリかもしれない。

 そういえば、ここで相馬さんに会ったっけ。今回も居るのかな。……初対面で抱き着かれるのは勘弁だが。

 

 

 さて、日が暮れた頃にマホロバの里に到着したんだが……なんか、この女、嫌われてないか? いやこんだけ大上段に構えて身勝手な態度してりゃ、嫌われるのも無理はないと思うが。

 それだけじゃなくて、なんと言うか…怪しまれているような、疎まれているような…。

 

 とりあえず、この女が使っているという家(本人は工房と言っている)は崖の上の一軒家だった。景色はいいが、立地的には不便だな。と言うか、明らかに人里のハズレ…遠ざけられている?

 まぁ、そういう状況なら、前回来た時に会わなかったのも無理はないか。

 

 

 …それに、気のせいか……里の中で微妙に剣呑な雰囲気を感じるような気がする。こんな里だったっけ? 少なくとも、病人扱いされている俺を手厚く看護してくれた里だったと思うんだが。

 見慣れない余所者(戦闘能力アリ)に警戒するのも分かるし、村に入る際に軽くとは言え尋問されるのも仕方ないが…うーん、雰囲気が…。

 

 

 

 

 さて、そんな訳で、丘の上の一軒家という、表現だけは優雅な家の中で、俺達3人は向かい合っている。

 

 

「ご苦労だった。言うまでもないが、ここでの戦闘はご法度だ。暴れだすんじゃないぞ」

 

 

 分かっとるわ。好き好んで人に危害を加える理由はない。…反撃時を除いてな。

 

 

「そういう貴方は本当に人ですか? 先程から観察していましたが、身体能力が明らかに人間の範疇にはありません。貴方は何者ですか?」

 

「つまらん揉め事を起こすな! 全く…。どれ、文字通りのただ働きと言うのもなんだ。飯くらいは食わせてやろう。話はそれからにしろ」

 

 

 …む、ご飯食べられるならそっちが優先だな。…流石に作れとは言わんよな?

 

 

「何処に食料があるのかも教えてない状況で、言う訳がないだろう。さっさと覚えろよ」

 

「私に料理の技術はありませんが」

 

「ならこいつに任せるとしよう」

 

 

 ……まぁ、いいけどよ。自給自足は基本だし、下手なモノ食わされるよりはマシだし。

 

 とりあえず飯食って(あまり美味くはない)、自己紹介…エラそうな家主殿は博士、通り魔はホロウと名乗った。

 腹も落ち着いたんで、色々と話をせにゃならんのだが……博士、アンタも同席する気か?

 

 

「当然だ。何の為にここまで連れてきて、飯まで食わせてやったと思っている。単なる人間同士の揉め事ならどうでもいいが、お前達からは興味深い話の匂いがする。是が非でも聞かせてもらうぞ」

 

 

 …飯食ったのまで等価交換かい…。だと言うのに本人はただ働きただ働きと繰り返すし。やれやれ…。

 さて、ちっと腰を据えて話をするとしますかね。

 

 

 

凶星月

 

 

 通り魔と出会ってから、幾つもの夜を語りあかしたよ、ロマンフライアウェ~イでインザスカーイ。実際にはまだ4日くらいなんですが。

 ガチで徹夜で語り合い、飯食って(俺が作った)昼寝して頭の中整理して、博士の茶々だか考察だかを聞き流しつつもお互いの事情を色々話し込んだ。

 

 

 いやもう、何が何やら…。とりあえず敵ではないと言う事は理解した。だがその背景というかバックグラウンドがな…。

 まぁ、それはホロウも同じだったようだが。博士も博士で、何やら考え込んでいる。ぶっちゃけ、3人とも脳みそがフットーしている。

 

 

 …そうだな、まず俺が話した事だが…最初はイヅチの事程度にしておくつもりだった。

 が、もうほぼ全て話してしまったよ。ループの事からゲームの事まで、俺が分かっている事ほぼ全て。ただしのっぺらミタマの事だけはボカした。…説明したくない。

 最初はそこまで話すつもりはなかったんだが、話がどんどんエスカレートしていって…気が付けばこうだ。

 

 

 

 まぁ、俺が知っている事の8割以上が、博士に言わせると「根拠がない妄想が殆どで当てにならん」だそうだが。

 正直な話、そう言われても仕方ないし、そもそも信じてくれた時点で望外だってのは分かってるけどな。

 

 

 ホロウの身の上話も、似たようなものだ。他人に言わせれば単なる妄想、寝ぼけて昨日の夢の続きでも語ってるのか?てなもんである。

 特にモノノフにとってはな…。

 

 かつてイヅチに滅ぼされた文明が送り出した、イヅチを討つ為の人間……の形をした兵器。体の機能は人間よりも強いが、一点を除いてほぼ変わらず。その一転とは、人間の魂を体内に捕らえ、エネルギー源とする能力がある事。

 幾つもの時代を超えてイヅチを追いかけ、時に現地の人間と協力し、時に石を投げられ追われながらも戦い続け、かつてムスヒの君と称されたオビトと共にモノノフを作り上げた……『始まりのモノノフ』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …ここまで聞いて、俺は耳を疑った。ホロウの語りの最中だと言うのに、つい声を上げるくらい。

 

 

 ホロウ……『ホロウお姉ちゃん』か!?

 

 

「如何にも私はホロウですが、貴方にお姉ちゃんと呼ばれる筋合いはありません」

 

 

 そんな娘の彼女に反発する父親みたいなセリフはいいから。

 それよりホロウ、千歳って知ってるか? 動物と話す能力…モノノフ風に言えば異能か…を持ってる女の子で……ああ、本当に『ホロウお姉ちゃん』なら体が変わったのは知らないか…。

 

 

「千歳…。はい、覚えています。私を『ホロウお姉ちゃん』と呼んで追いかけてきた、仲間の一人です。…なぜ彼女の事を知っているのですか? 千歳が生きた時代から…少なく見積もっても、300年以上は経過している筈です」

 

 

 …今、この時代に居る。クサレイヅチの移動に巻き込まれて、呪いまで受けて。

 

 

「なんと…。では、今は何処に? それに呪いとは」

 

 

 体が半分鬼になって、歳も取らなくなってるらしい。今じゃすっかりグレちまって、元の時代に戻る方法を探している筈だ。今…はどうだか分からんが、近いうちにウタカタの里に来る筈だ。

 …ここまで知っている理由の説明は要らないな? さっき話した『繰り返し』の中で会ったんだよ。

 

 

 

 

 

 …こんな具合で、俺はホロウの言っている事が事実だと判断した訳だ。

 

 

 

 …いかんな、出来るだけ詳しく書いて記録しておきたいんだが、何せ4徹(休憩含む)の話し合いだ。一つ一つ書いてたら、いつになっても終わりはしない。

 そーだな、重要そうな話近辺だけ記録しておくか。

 

 

 

 

 

 

・ホロウが俺を襲ってきた理由について。

 

 

「今までイヅチカナタの居場所を感知して追ってきたのですが、現在この機能が故障している可能性があります。今、イヅチカナタが何処にいるのか全く分かりません」

 

 

 故障? それが治れば、居場所が分かって叩き潰しに行けるのか? 治る見込みは?

 

 

「不明です。今まで何度も時空を超えて転移してきましたが、このような事は一度もありませんでした。自己診断も試しましたが、不調は感知されません」

 

 

 原因も不明、何処が壊れているかも不明、治す方法も不明…か。それで、俺を襲ったのは何故だ?

 

 

「自己診断を試しながら待機していたところ、イヅチカナタと同じ気配を感じました。奴が力を使い、因果を喰らった際の残り香のようなものです。ですが、近くに本体の反応は無く、目視も出来ません。何かしらの手がかりになるかと追跡しました。その後、遺跡の中で鬼と戦い始めたので、必要であれば援護射撃を行おうと待機。戦闘は無事終了しましたが、貴方の身体能力は人間の範疇にありません。鬼なのかどうか判断が付きかねていると、見覚えのある剣が目に入りました」

 

 

 剣…ああ、そういやそんな事言ってたな。このエピタフプレートがどうした。

 

 

「わかりませんが、ひどく懐かしい感覚があります。動揺した所、貴方に気付かれて反射的に発砲しました。その節はまことに申し訳ありません。ですが…もう一度見せてください。気になります」

 

 

 …二心なく謝罪してんのは分かるが、無表情と相まって棒読みにしか聞こえねーな。…見せるのはこの際構わんから、後にしろ。場合によっては条件を付けるぞ。

 

 

「構いません。先制攻撃しておきながら、無理を頼んでいる自覚はあります」

 

 

 

 

 

・エピタフプレートについて

 

「いいや、それはすぐに見せろ。私にもだ」

 

 

 …何だよ博士、今まで黙ってたのに藪から棒に。

 

 

「いいから見せろ。黙って家主の私に従え。ぐだぐだ抜かすと、その妙な袋ごと奪い取るぞ」

 

 

 させねーよ。…そういや、このふくろだけは人に触らせた事が無いな…。

 見せろってんなら理由を言いな。これがアンタへの条件だ。ホロウに対しては、また別の条件を付ける。

 

 

「いいだろう。…………む、これは…? ………………お前は、石碑を見た事があるか」

 

 

 石碑? …何の?

 

 

「ここに来るまでに、幾つか境界石ではない石碑を見かけましたが、それの事ですか?」

 

「ああ。この辺りの異界に点在している石碑だ。現代の言語とは違う文字が書かれている。私のような天才ともなれば、その碑文を解読する事が出来るが…ホロウも言っていただろう、その武器に見覚えがあると」

 

 

 …ああ。しかし、こいつは別の世界で手に入れたモンだぞ。……いや、だが確かにこいつは発掘した妙な金属を鍛えて出来たもの。なんて書いてあるのかは誰も読めなかったし、俺も知らない…。

 

 

「そういう事だ。どういう経緯を辿ったのか知らんが、もし本当にそれがホロウと関係があると言うなら、見れば何らかの手がかりを掴めるかもしれん。どうだ?」

 

「………確かに、見覚えはあります……ですが、何と書いてあるかまでは分かりません。それ以上の事も思い出せません。博士、貴方は読めないのですか? 石碑の碑文を解読できるのでしょう」

 

「…石碑の文字は、な。しかし…この武器に刻まれている文字は、碑文に使われている文字とはまた別物のようだ。とは言え、ひどく近しい印象はある。文法もかなり近い…」

 

 

 そんなの分かるもんなのか? 俺からは、意味が分からん記号が不規則に並んでいるようにしか見えないんだが。

 

 

「流石に断言は出来んが、恐らくな。私が知っている碑文の解読法に当て嵌めれば、大凡の文は予測できる。だが、名詞、動詞の殆どが全く知らん単語だ。文法も崩されている部分が多い…。大方、同じ文明が残した文字だが、違う時代でもある…と言った所か」

 

 

 同じ日本語でも、平安京時代と江戸時代、明治平成で全く違うって事か。

 と言う事は、近しくはあっても読めないって事ね。現代文しか知らない人が、古文を予備知識なしで読もうとするようなもんだ。

 辞書でも持ってこねーと、未知の単語は流石にどうしようもなかろ。

 

 

「私を舐めるな。知らないならば、知っている者から聞き出せばいい。ホロウ、解読に協力しろ。覚えのある単語が一つでもあれば、何でもいいから報告しろ」

 

「わかりました。これが何かの手掛かりになればいいのですが」

 

「少なくとも、こんな頑丈な合金に刻んで残すくらいだ。お前達の言うイヅチカナタに関する手掛かりかはともかく、滅ぼされた文明とやらが残した遺志ではあるだろうさ。…それにしても、この合金…凄まじいな。私も知らない金属だが、何百年も埋まっていたというのに、錆びはしても劣化が殆ど無い…」

 

 

 見つけた時には、単なる汚れた板にしか見えなかったけどな。考えてみりゃ、よくそれをこうまで形を整えたもんだ。

 

 

「竜人族、だったか。作り手の端くれとして、その技術に敬意を持たずにはいられん…。一度話を聞いてみたいものだが…別の世界とあれば、そうもいかんか…。いや、だが…」

 

 

 

 

 

・ホロウの生い立ちについて

 

 

 で、結局ホロウとエピタフプレートの産地は同じなのかね。

 

 

「そうなのであれば、私はその文字を読める筈です。現に、ここに来るまでに見かけた碑文も、知らない言葉が多くあったものの、ある程度は読む事が出来ました」

 

「ほう、それはいいな。あの碑文は読むのが少々面倒なんだ」

 

「ただ、私に残されている記憶が間違っていないのであれば、あれは条件を備えた相手に、意味を伝える機能があった筈です。目にした者に、念話のように言葉を注ぎ込んだ筈」

 

 

 追い詰められている文明が、そこまで後世に気を使ってくれるもんかね…。まぁ、文章だけ残しても読めないんじゃ伝わらないしな。そういう機能を付けるか、絵で伝えるかの二択になるわな。

 古くなりすぎて壊れてるか、エネルギーが尽きてるんじゃないか? 

 

 

「かもしれん。……おい、そのイヅチカナタを追っているのは、ホロウだけなのか? 他に同類は?」

 

「記憶にありません。少なくとも、私と同様の機能を持ってイヅチカナタを追っている者は見たことがありません」

 

「いいや、確実に居る筈だ。気付いてないようだから言っておいてやるが、そんな状況でお前一人にイヂツカナタ討伐を託す筈がない。当時の文明がどれほどの技術を持っていたのか分からんが、自分達の国を滅ぼした鬼を倒す為、人造人間まで作り出したんだ。多大な労力と技術、資源がつぎ込まれているのは間違いない。それを孤立無援で送り出すか? 必ず、第二、第三の刺客が居る」

 

 

 それは…納得できる話ではあるが。逆に、ホロウ一人しか作り出せなかった可能性は?

 

 

「ないではないが、それならば古代文明人達は落ち伸びて生き延びる事を考えるだろう。それに、ホロウがイヅチカナタへの『追手』だ。つまりホロウが生み出された時、イヅチカナタはそこには居なかった。時空転移する能力があると言う事は、イヅチカナタが何処へ逃げたのかも理解していた筈だ。恐らくホロウが送り出されたのは、イヅチカナタによって文明の殆どが滅ぼされ、だが古代文明人達がそれなりに生きていられる状況で、かつ再来の可能性がある…」

 

「…私に……同族…」

 

 

 加えて、その為に限られた資源をつぎ込む事が許される状況? …なんか支離滅裂な状況だな。

 

 

「所詮は推測だがな。或いは逆に、どのみちもう生き延びられんと自棄を起こし、自分達の存続と引き換えにしてでもイヅチカナタとやらを始末しようとしたのかもしれん。その割には碑文なんてものを残す余力があるし…どうにも噛み合わんな。…ひどく単純な見落としをしている気がする…」

 

 

 

・イヅチカナタの現在の状態について

 

 

「あなたの言う繰り返し…が本当であるならば、恐らくイヅチカナタを追えなくなったのはその為でしょう。時空の法則に関しては私も理解していませんが、異変が起きているのは明らかです。『繰り返し』の為に、転移に必要な座標が狂ったのかもしれません」

 

 

 つってもな…。俺の行く先々で出てくるぞ。いや、実際に遭遇したのは数える程だが、別の世界でも出てきやがったし。この前なんか横浜で出たし。

 

 

「横浜? 何故そんな所に居た? 今はもう横浜は異界に沈んでいる」

 

 

 異界を抜けたらそこに居たんだよ。なんか…モノノフとは違う人達が沢山いたし、そもそも海に面してたし。ああ、鬼が隠れるのをやめた、とか何とか言ってたな。

 

 

「…横浜は、オオマガトキが始まった場所だと言われている。もう少し話を聞かせろ。……………ふむ、聞いた限りでは、少なくともオオマガトキ当時に思えるな。それで? その後どうなった?」

 

 

 触手3本斬り飛ばしてやったら、気が付けばまた異界の中に居た。記憶が途切れてるから、多分また因果を食われたな。

 

 

「私が関知した、イヅチカナタの力の残り香はその時のものですか。…ところで、奴には触手は2本しかなかったと思うのですが。再生されたのですか?」

 

 

 いや、同時に3本。以前からどうにも、出現した時に妙に苦しそうだったり、因果を食う力が弱ってるんじゃないかと思ってたんだが…奴自身にも異変が起きているのかもしれん。

 

 

「…イヅチカナタは時空の間を回遊する鬼ですが、異世界へ飛ぶような力は確認されていません。増して、同じ時間を繰り返させる事など…」

 

「後者はイヅチカナタの能力ではないだろうな。仮にそいつの時間移動に巻き込まれたとして、同じ時間に放り出されれば、そこには『前回』の自分が居る筈だ。前者はそうでもない。そもそも、鬼はこの世界とは全く別の世界で生きていた。それを…誰かが開けてはならない扉を開き、この世界に呼び込んだ。同じように、扉が開いたままであれば異世界へ移動する事も考えられる」

 

 

 扉ねぇ…。それって何だと思う?

 

 

「私が知るものか。……だが、案外お前自身かもしれんぞ。3つの世界を行き来しているのは、お前とイヅチカナタだ。お前が扉で、その鬼が追いかけているだけだとすれば説明もつく。お前がイヅチカナタに付き纏われている理由もな」

 

 

 

 

 

・イヅチカナタの目的

 

 

 そもそも、イヅチは一体何がしたいんだ? 仮に俺が扉とやらだとして、何で追いかけてくる。

 

 

「それなら推測はつきます。鬼と言っても、その本能は生物と変わりありません。即ち、生きて、食べて、増える事です。その点、イヅチカナタにとって、恐らくあなたは非常に美味しい存在に見えるでしょう」

 

 

 美味しい?

 

 

「お前の話が本当なら、どの世界に居ても大事に関わっている。つまり、それだけ因果因縁が増えると言う事だ。イヅチカナタは因果を喰らう鬼なんだろう? そいつから見れば、お前はどう見えると思う?」

 

 

 …食った果実が、放っておいても超速度で再生する? もう一回食えるドン?

 

 

「しかも、毎回違った味付けでな。いつ目を付けられたのかは知らんが、飽きられるまではついて来るかもしれんぞ」

 

 

 …ナルホド、GE世界で植物育ててた時にも何か引っかかってたが…そういう事か。イヅチにとって、俺は養殖されてる果物同然って事だな。

 …好都合だ。それだけあいつを仕留める好機が増える。

 

 

 

・3つの世界について、その証拠について

 

 

「…で、お前達…色々話に付き合ってきたが、そもそも証拠はあるのか? お前達の話が夢妄想ではないという証拠は」

 

 

 俺は幾つかあるな。別の世界の道具とか、素材とか、幾つか持っている。そうだな、コレなんかどうだ? 神機ってんだけど……ああ待った触るな。さっきの話の中でもあったが、適合者以外が持てば即座に侵食される。

 

 

「お前の一部のようなものなんだろう。制御できないのか」

 

 

 試した事がないから分からんが、髪の毛や爪が伸びるのを自力で止められるかって話だ。そこまで操作できる奴も居るとは思うけどな…同じ狩人でも、狩人狩人な世界観に。

 とにかく、確証がないから止めた方がいい。何なら、その辺の動物とか鬼とか使って実験すりゃいいんだし。

 

 

「ふむ…無駄な危険を冒すのは私の流儀ではないな。そちらはどうだ」

 

「私には、これと言った物はありません。強いて言うなら認識票でしょうか。人物札、と言った方が分かりやすいでしょうか?」

 

「見せてみろ。…生憎、これでは証拠にならんな。金属もありふれた素材だし、書いてある文字は読めんが、落書きと言ってしまえばそれまでだ」

 

「困りました。それでは信じてもらえる方法がありません」

 

 

 …あんまり困ってるようには見えないけどな。と言うか博士、アンタ事実だろうとそうでなかろうと、どうでもいいと思ってるだろ。

 事実であれば新発見の手掛かりになるし、夢物語でしかないなら手伝いとしてコキ使うだけ。

 

 

「その通り。代わりに、多少の事ならホロウに便宜を計ってやろう」

 

 

 

・千歳を初めとした、ホロウのかつての仲間について

 

 

 そういや、モノノフ結成当時の仲間ってどんな感じだったんだ? 千歳が天使だったのは分かるんだが。それがあんなにスレた上にポンコツになっちゃってまぁ…。

 

 

「ポンコツとやらが非常に気になりますが、最初に話を聞いて協力してくれたのは、オビトです。鬼を払う一族の出身でしたが、死者と会話する能力を持ち、それ故に恐れられ閉じ込められていました」

 

「モノノフの始祖……ムスヒの君、か。まさか本当に金眼四ツ目だったのか?」

 

「いえ、目は金でしたが、四ツ目ではありませんでした。閉じ込められて退屈だ退屈だと騒いでいた所に声をかけると、自分から協力を申し出てくれました。そのまま幽閉されていた地から逃れ、千歳を初めとした何人もの仲間…オビト風に言えば、友達を増やしていったのです」

 

 

 それで……あ、最後は…そうだな、すまん。

 

 

「お構いなく。そうやって仲間を増やし、いつしか千歳が自分達をモノノフと呼び始め、そして出現したイヅチカナタに戦いを挑みました。……激しい戦いでしたが、仕留める事はならず。深手を与え、追い返す事しかできませんでした。千歳はその戦いで、イヅチカナタが開いた鬼門に落ち、オビトは命を落とし、そして私はすぐにイヅチカナタを追いました。…その後どうなったのかは、私にはわかりません。ですが、イヅチカナタが出現したら、その場の因果は食い尽され、奴が去るまでの記憶・記録が失われます。…その戦いについて、モノノフの記録が残っているとしても、恐らくは当てにはならないでしょう。私の記憶も、イヅチカナタの能力に耐えきれず、一部欠損があるようです」

 

 

 失われた因果を、人が憶測で補って埋める…か。そう言われると、あいつが何処に居てもおかしくない気がしてくるぜ。

 

 

「…先ほども告げたように、私には人の魂を吸収して力に変える機関が内蔵されています。あの時、私はそれを使うのを躊躇った。あの時使っていれば、イヅチカナタを仕留める事が出来たかもしれない」

 

「たらればを語っても意味はない。それも、仕留められた『かもしれない』だろう。そんな不確定な方法に突き合わされては堪らんな。その機能は使うな。これは命令だ」

 

「命令を受ける理由はありません。私は貴方の部下ではない」

 

 

 それ以前に、誰の魂を食う気だよ。誰が一緒にいるかも分からないのに。

 俺は御免被るぞ。魂食われたら、流石に次の繰り返しに行けるか分からない。イヅチは憎いが、だからこそアイツなんぞの為に命をこれ以上くれてやる気はない。

 

 …にしても、これまた妙な話ではあるな。何でホロウにそんな機能を付けたのやら。

 

 

「鬼に対抗するつもりだったんじゃないか? 人の魂を奪って力に変えるのは、鬼も同じだ。鬼に食われるくらいなら、自分達で食って力に変えてしまえと言う訳だ。人造人間なんてものを作り出せる技術の割には、短絡的だな」

 

「…分かりました。能力を使うのは保留とします。何度死んでも続きがあるのなら、貴方はいつかイヅチカナタに届くでしょう。その可能性を摘むのは、効率的とは言えません」

 

 

 …やっぱ俺を食うつもりだったんかい…。

 

 

「ええ。聞けば、貴方の体は無数のミタマによる集合体。塵も積もれば山となります。まだ、元が塵であるが故に、半分くらい削っても壊れる事はないかもしれません」

 

 

 だーかーら! 博士も言ってたが、そんな不確定なやり方に突き合わされるのは御免だってーの!

 

 

 

・繰り返しについて

 

「しかし、何度も同じ状況を繰り返す…か。業腹な話だが、便利ではあるな」

 

 

 まーね。俺も割とアッサリ順応できたし。尤も、心残りも山ほどあるんだけどな。

 似たような失敗を繰り返したり、自分が死んだ後は何がどうなったんだろう…ってどうしても思っちまう。死後の世界では、こんな事を思うのかもしれんな。

 

 

「ミタマにも、自分の死後がどうなったのか、自分がどう伝えられているのか気になる、と言う者は多いらしいな。…だが、本当に『繰り返し』なのかが気になる…」

 

 

 ん? いや実際に繰り返してるんだが。

 

 

「そういう意味ではない。さっきも言ったが、本当に繰り返しであるならば、『前回』のお前が居る筈だ。例えばお前がここで死んだとしよう。これまで通りであれば、お前は二つの世界で再び…いや三度死んだ後、この世界の同じ場所、同じ時に戻ってくる。しかも、毎回毎回全く同じ場所にだ」

 

 

 ああ、それは分かるが…。

 

 

「いいや分かってない。仮にイヅチカナタとやらがそれをやっているなら、そこまで正確に同じ場所に移動させられるか?鬼とて生物だ。あまりに細かい動作が出来る訳ではないし、それ以上にそうする理由もないだろう。何よりおかしいのは、お前自身だ」

 

「置かれている環境も、肉体的にも明らかにおかしいです」

 

「それもあるが、時間…と言うより、因果因縁的におかしい。毎回同じ場所、同じ状況に出ると言っているが、明らかにお前自身はそうではない。記憶、肉体、所有物、その全てを持ったまま、同じ場所に出るのだろう」

 

 

 …言われてみれば。思い返せば、鎧来た状態のまま討鬼伝世界で死んで、MH世界の訓練所で一人前ハンターと間違われた事もあったっけな。

 

 

「同じ状況から始まる繰り返しの中で、お前だけが変化している。それまで持っていなかった物を纏い、話に効く限りではそれらは突然出現したように見える…らしいな。お前が言う、『もんはん』世界の訓練生や教官の証言くらいしか根拠はないが」

 

 

 うぅむ…それで、『繰り返し』ではないなら、他の何だと思う?

 

 

「…螺旋。或いは………『巻き戻し』…」

 

「螺旋…並行世界という事ですか。全く同じ状況に戻されるように見えて、その実少し違った場所に居る。貴方から見える範囲では全てが同じでも、目の届かない場所が違っているかもしれない」

 

 

 それはちょっと検証できんな…。今まで見てきた中では、ほぼ全てが同じだった。繰り返しが始まる瞬間に、人が何をしているのかから始まって、落ちている物の分布まで例外なく。

 …で、『巻き戻し』と言うのは?

 

 

「読んで字のごとくだ。お前は死ぬ度に、自分が過去に送られ、そこから同じ時間を送っていると思っているが、そうではない。お前は一切移動せずに、『世界の方が戻っている』…のかもしれん」

 

 

 世界が…。

 

 

「戻る?」

 

「所詮、根拠のない想像、屁理屈にすぎんがな。…分かりにくいか? これだから凡人は…と言いたいところだが、理解できない時空なんて代物を、無理に説明しようとしているのだし、無理もないか。そうだな、川の流れを想像しろ。幾つもの葉が流れている川だ。お前は川の中を下流に向かって一定の速度で歩き、それらを追い越していく。 だが、お前が死んで…歩くのが止まった。その間に追い越してきた葉が流れてくる」

 

 

 それが俺と並んだ辺りで、また歩き始める? ついでに言うと、川は3本あって、一度死んだら別の川に移る、と。

 

 

「そういう事だ。巻き戻しと言うよりは、一時停止と称するべきか」

 

 

 

 

 …で、それがどう話にかかわってくる?

 

 

「別に何も変わらんな。…少なくとも今は」

 

 

 

 

 

・持ち帰ってきた人形と結界石について

 

 そういや、担いで帰ってきたあの人形は何だ? 遺跡で会った時、宝がどうのと言っていたような気がするが。

 

 

「ああ、宝というのは…これだ」

 

 

 懐から小さな石を取り出した博士。…これが宝?

 

 

「今日遺跡から取ってきのはもっと大きな物だが、カラクリ石と呼んでいる。あの遺跡の原動力にも使われている石で、使い手の意思を具現化する性質があるようだ。人形は、それを守る為の警備兵…だったようなのだが、もう完全に機能停止しているようだな。話の前に少し弄ってみたが、相当弄り回さないと稼働させられそうにない」

 

「…あの人形にも、僅かですが覚えがあります。確かに、貴方が言うカラクリ石を使って動いていた筈です」

 

「ほう、と言う事はホロウが居た世界では、あの人形が稼働していたのかもしれんな。…案外、お前の体にも使われているんじゃないか?」

 

「それは…恐らく無いと思われます。私の体の構造自体は、ほぼ人間と変わりありません」

 

 

 …異常な筋力耐久力に加え、老いる様子も無し、更にミタマを捕らえる器官まであって変わりないって言われてもな。

 んで、そのカラクリ石でどーすんの。と言うか博士って、ソレの研究をしてるのか?

 

 

「鬼を撃退する為の研究だ。カラクリ石や人形に限った事ではない。…とは言え、ようやく軌道に乗り始めた所だがな。カラクリ石を初めとした現物を確保しようと、あちこち渡り歩いていたのだが、これが殆ど見つからん。…マホロバの里に来て驚いたぞ。異界に沈んだ辺りは幾つも遺跡があるそうだし、その辺にもカラクリ石が転がっている。挙句、古代文明が残した碑文まで幾つも見つかる始末。……この場所には、何かあるのかもしれん。それを調査するのも、研究の一環だな」

 

 

 古代文明か…ロマンだな。

 

 

「私にそんな感傷は無い。全ては手段だ。ともあれ、これから人形を分解して、カラクリ石の効果的な使用法を調べる。カラクリ石を使った武器を作り出し、最終的には異界を完全に浄化する」

 

「異界を…浄化?」

 

 

 …出来るのか、そんな事?

 

 

「私の記録にはありません」

 

「出来る出来ないではない。やると言ったらやるのだ。そうでもしないと、鬼との戦いに勝つ事などできん。今でさえ、異界の侵食は徐々に進んでいるのだぞ。それに対して、人間が出来るのは異界から出てくる鬼を討つか、少し異界に潜って鬼を討つか。分かるな? 人間は今この瞬間にも、じりじりと追い込まれているのだ。ここ数年、鬼との闘いが膠着状態にあると言っている阿呆も居るが、私に言わせれば見当違い、度を越した楽観論もいい所だ。このまま鬼を討ち続けても、それこそ鬼を全て切り捨てたとしても、異界の侵食が進めばやがて人が住める場所はなくなる。瘴気の中で、人は長く生きられん。人が生き残ろうと思ったら、鬼よりもまず異界をどうにかせねばならんのだ」

 

 

 

 …まぁ、理屈は分かるけどな。やろうとしたって、具体的な手段がなければ意味は無い。

 だが、異界をどうにかしようって試みは、それこそオオマガトキの前から続いてきた問題だ。それをどうにかするアテがあるのか?

 

 

「当然だ。…まだ研究を始められる段階になったばかりなのは、否定できんがな。瘴気は鬼が生み出す霧状の毒物だが、鬼自身が生み出す瘴気の量は、濃くはあっても多くはない。左程遠くに流れていく訳でもないようだし、その効力も長続きせん。それを鑑みると、異界の侵食の速度は明らかにおかしいのだ。大型の鬼が複数居るとしても、精々自分の住処の瘴気を維持する程度でしかないのだ」

 

「瘴気を生み出す原因が、鬼以外にある…と言う事ですか。それならば、心当たりはあります」

 

「本当か、ホロウ! それは何だ!?」

 

「正体は私にもわかりませんが、異界の中で瘴気を吐き出し続ける穴を見た事があります。地面に空いた穴ではなく、空間に空いた穴です。鬼の攻撃かと思って何発か撃ってみましたが、銃弾はその空間に飲み込まれてどこかに行きました。…今思うと、飛んで行った先で誰かに当たっていなければいいのですが」

 

 

 案外、どっかの時代に流れ着いて、影武者に騙された狙撃手の代わりに本物を射抜いてたりしてな。

 

 

「何の話かよく分からんが、その穴について詳細に話せ。…ああ、今日は実りが多すぎる日だな、喜ばしいがもどかしい! 調べたい物も弄りたい物も増えすぎる!」

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。