凶星月
…昨日の日記以外にも記録しておきたい事はあったが、正直気力が尽きた。重要な話を思い出したら、また追記しておくとしよう。
なんやかんやあって、意見を出したり訂正したり飯食ったり酒飲んだりしている内に、俺は暫くマホロバの里に留まる事になった。
期間は長くて2か月程度。俺が遅れてウタカタに到着した場合、ストーリーがどうなるのかの実験も兼ねている。
ホロウはイヅチカナタの手掛かりがない為、俺についてくると言っている。別に不都合はない。むしろ、イヅチを仕留める一助になるなら大歓迎だ。
家はどうするのかっつーと、博士の助手扱いで工房に間借りする事になった。まぁ、別にいいけどよ…。狩場のキャンプに比べれば充分居心地がいい。いっそ、そっちの方が気分がいいと思わなくもないが。
ちなみに家賃代わりに飯作ったり、色々素材を取ってくる係に任命されました。…博士から留まるように言い出しといて、流石に無茶な言い分だと思わなくもない。
まぁ、ホロウに比べりゃマシだけどな。「人造人間、しかも魂を捕らえる能力を持つ実物が目の前に…!」とか言って、目がヤバかったもの。ホロウ自身も、冗談抜きで解剖される危険を感じているらしい。…榊博士と同類か。得体の知れなさは榊博士の方が上だが、マッド具合はこっちの方がヤバいかもしれん。
俺の神機も、放っておくと触りそうなんだよなぁ…。俺の一部とはいえアラガミはアラガミだし、そもそも適合者以外が触ると速攻で侵食されると説明はしたが、諦めていないようだ。「直接触らなければいいのだな」なんて言ってたし。
…とりあえず、神機はふくろにしまっておいて、当分封印。
あと、ホロウも危険だが、俺も危険だった。気配を感じて目を覚ました(目は閉じたままだが)ら、博士がメスとか持って近寄ろうとしてたもの。俺が起きたのを察知したのか、すぐ引っ込めたが。
…そーだよなー、ホロウは人造人間だが、俺は俺で色んな意味で意味不明な謎生物だもんな。アラガミ化、『里の中で妙な気配が漏れるとヤバい』と言って見せてなくてよかった…もし見せてたら、一服盛ってくる程度じゃ済まなかったぞ。
…で、俺達がそのよーな危険に晒されつつもここに留まる理由だが……博士の研究の成果を得る為、かな。
博士が言うように、異界を浄化する手段があるなら、これは是非とも確保しておきたい。鬼との闘いが楽になるだけでなく、上手くいけばオオマガトキを防ぐ手段にもなるかもしれない。
今回ループでその手段が完成しなかったとしても、その資料を持っていけば、もう一度マホロバに来た時に博士に渡す事が出来る。…素直に受け取るかは微妙なところだが。
ホロウにとっても興味深い実験である事は間違いないし、更には完成したらいい戦力になりそうだ。…博士が言ってる機能を実現できたら、だけどな。
博士はその機能を、「鬼ノ手」と呼んでいた。気分は某霊能教師である。ちなみに小学校生は、正しくは『児童』であって『生徒』とちゃうで。
形態は手袋のように手に嵌め、そこに埋め込まれたカラクリ石を使ってイメージを具現化するのだそうだ。文字通り手のように伸ばして、先にある物を掴み取ったり、逆にそこに自分を引き寄せたり、出力次第では対象物を完全破壊…鬼の場合は、再生さえできないくらいに破壊できるのだとか。
話半分として聞いても、あれば非常に有用なのは間違いないな。それに、再生させないくらいに叩き潰す…か。その発想は無かった。鬼との闘いって、削って鬼祓いして、の繰り返しだもんなぁ。それを省けるってのは非常に魅力的。しかも再生されない、具現化もできないと言う事は…例えばゴウエンマ辺りの足を完全破壊したらどうなるだろう? まともに歩く事もできなくなって、超戦力ダウン。いいな。
………あれ、なんかどっかで聞いた事ある能力じゃない? 具体的には、いつぞや夢に見たスタイリッシュなゲームの。
アレは確か…掴んで引き寄せ、伸ばしてキャッチ、それから超怪力で掴んで好き放題…だったよな。最後のはともかく、伸ばしてキャッチならもう出来たような…………今度異界で試してみるか。博士の研究の参考になるかもしれないしな。解剖の危険が増すが。
それはそれとして、マホロバの里に居座る以上、里長…お頭の許可を得なければならない。博士はその辺無頓着そうであったが、意外としっかりしていた。「すぐに済む事を怠って、後から研究の時間を削られるのは御免だ」だそうな。
…まぁ、付いて来る筈がなかったんですがね。
余所者がお頭に直接会えるのかという問題もあったが、今のお頭はえらくフランクな人らしい。西歌、という女だそうだ。ちょっと期待。美人だといいな。
…で、滞在の許可をもらいにきたはいいんだが…うーむ、やっぱちょっと不穏な気配が漂ってるな。里長に会うべく面会を求めたんだが、博士の客人って時点でかなり視線がキツくなった。尤も、それ以前に、余所者って聞いた所で値踏みするような視線を向けられたが。
前に来た時に世話になった家はどこかな……アレか。里長の家の近くか。結構好待遇されてたんだな。
…しかし、行き倒れにそこまでやってくれる里が、一体どうしてこんな不穏な空気を漂わせているのやら。
…どうにかできんか…いやしかし、俺が人間関係に首突っ込んでロクな事になった試しがないしなぁ。特に性的に。
凶星月
無事、滞在の許可は貰えた。お頭の西歌さんも結構な美人さんだ。熟女系…とまでは言わんが、こう、微妙な年齢の女性独特の色気と言うかね。
それに、相当強そうなのもポイントが高い。本気を出せば、ウタカタの大和のお頭とも渡り合えるんじゃなかろうか。オオマガトキでも相当暴れまわったらしい。当時はまだ一般兵だったらしいけど。
性格も気安いと言うか度量が大きいと言うか。滞在したい旨を伝えたところ、「構わない」の一言だけでOKが出た。…もうちょっとこう、身元調査とかしねぇの? 人物札すら要求されなかった。
ただなぁ…。一言で了承した西歌さんとは裏腹に、周囲の人達…本人達曰くの「鬼内」は不満そうだった。
別に滞在を断れとまでは言い出さなかったが、せめてもう少し調べてはどうかとか、住む場所がどうだとか、色々意見を述べようとしていた。…それを聞くべきお頭である西歌さんは、どこ吹く風だったが。あまり強く進言すると、お頭への反逆になる…と思ったのか、意見はすぐにひっこめられたが……。
その後、博士に用があるという西歌さんに連れられて里を歩いたのだが、里の空気が悪い理由を教えてくれた。
外様、ねぇ…。要するにオオマガトキを生き残り、集まった自称「サムライ」。時代を考えると、自称じゃなく侍だった可能性もあるが、そこは置いといて。
行く当てがない集団が居たので西歌が声をかけ、里に住まわせているが、あまり評判はよくないらしい。
サムライ達に、モノノフ…鬼内に対する隔意があるからだ。「それも無理はないのだろうな」と言っていたが…。
サムライ達は、オオマガトキを生き残った一般人が多くを占める。当然、鬼の事なんぞ寝耳に水、青天の霹靂って奴だったろう。ひいては、モノノフの存在も。
で、どうにかこうにか生き残ったサムライ達は、モノノフに…他の里のモノノフに、いいように使われていたらしい。コキ使われるだけならまだマシな方、人間と認められずに一方的に痛めつけられたり、凌辱しようとする者もいたそうだ。…既に、サムライの棟梁が斬り捨てたらしいが。
まぁ、そーなるよなぁ。モノノフの始まりは、千歳やホロウが言っていたような鬼を払う為の正義の味方だったかもしれないが、それらの殆どは異能の力を恐れられて、人の輪から弾き出された者達の集まりだ。一般人の為に戦う理由なんぞ、実は殆ど無いんだよな。
そこへ来て、オオマガトキで表舞台の人の世は滅び、裏に潜んでいたモノノフが台頭した。生き残っている人間達の数は少なく、また個人の武力についても鬼と戦うモノノフに比べると、どうしたって見劣りする。
要するに、モノノフにとって、生き残った一般人は……言ってみれば『劣等種』だったんだろう。ウタカタのような、お人よしが揃っている奇跡のような里を除けばな。
その劣等種に対して、人間が何をするか…言うまでもないだろう。オオマガトキが起こらなくても、人の世で世代年代問わず行われてきた事だ。胸糞悪い話だがな。
そんな状況から、サムライの頭…刀也というらしい…が反逆し、同じような境遇の外様を救い出し集めてきたらしい。
それは結構な事なんだが、そんな風に集められたサムライ達だから、自分達に寝床を提供してくれているとはいえ、鬼内に対して良い印象を持っている筈もなく。
そのような感情と警戒を向けられ、経緯は分かっているとしても鬼内達もいい気分である筈がない。同じモノノフがやった事とは言え、自分達の所業ではない。そんな連中と一緒にされたくない、とも思っているだろう。
更には、里の結界で守れる範囲にも限界があり、当然中で暮らせる人数にも限りがある。結界内は既に鬼内や…元から居た一般人(と言っても、彼らもモノノフでないだけで普通の人とは言い辛いが)が住んでいる為、後から来たサムライ達は無防備な結界の外で暮らさざるを得ない。先住権とか主張しても、命がかかった事だけに素直に頷ける筈も、『どうぞ』と譲歩できる筈もない。
結果、まだ表立ってはいないが、徐々に対立が深まりつつある…か。
うーん、以前に来た時は全然気付かなかった。よくもまぁ、ああまで親切にしてくれたもんだ。…ひょっとして、博士が言っていたように、よく似ているだけで別の世界…変化している世界の一部だったんだろうか。
分からん。
それはともかく、西歌はどうしてサムライ達を受け入れたのか。ただでさえ人間が追い詰められ、マンパワーが削れている状態だから、助けられるものなら助けた方がいいのは分かる。だが、それで里に不和が出るようでは本末転倒だ。
サムライだけでなく、怪しげな技術を研究している自称医者(博士の事だ)まで受け入れているし、何ぞ考えでもあるんだろうか?
「何、大した理屈ではないさ。彼らサムライは、モノノフのように鬼と戦う術を知らなかった。だと言うのにオオマガトキを生き延び、頭の刀也に至っては非道を行ったモノノフを打ち倒して、仲間を開放してサムライを増やしている。それだけの実力があるのさ。その戦力を放っておくのは、惜しいとは思わないか?」
「敵を作るのではなく、自ら里に迎え入れる事で味方を増やそうとしたのですね。合理的だと判断します」
「そういう事だ。…その為に軋轢が生じるのも覚悟の上さ。これを乗り越えれば、単純計算して戦力は2倍になる」
…つっても、大人しくしてるような連中か? 人間、やられた恨みはひ孫の代まで忘れねーぞ。
鬼だの異界だのの強敵が目の前に迫ってるからって、一致団結呉越同舟して立ち向かうなんて夢幻だ。むしろ、そういう状況だからこそ、目の前の脅威から目を背けて身内同士で争うのが人間だ。
現に今でも、結界の中に住んでるか外に居るかで、軋轢がどんどん増していってるんだろう?
「…ああ、耳が痛いな。正直、思っていたより厄介だったのは認めるよ。結界の許容量も見誤った。食糧事情に余裕があったのは、本当に幸いだったな…。今、サムライ達が大人しくているのは…己惚れた事を言うようだが、私への義理のようなものだ。仮にも居場所を用意し、また鬼と戦う術を教えたのは私だからな」
「結界の大きさは変動しないようですが…」
……見誤るってーか、ひょっとしてあまり深く考えてなかった?
…オイ、目を逸らすなよ。
「…損得計算が丼勘定だったのは認める」
大丈夫なのかよお頭…。まぁ、そういう決断を迷わず出来て、ある程度形にできてるのは凄いと思うけど。
何処の里からも拒絶されたサムライが、野盗と化す可能性を考えると、どっちにしろ放っておけなかったのは確かか。モノノフに恨みがある連中だし、追い詰められて統率を欠くか食い詰めれば、復讐と称して見境なく暴れだしても不思議はない。
「だろう? 話が分かるじゃないか。だと言うのに、時継も雷蔵も無茶だ無謀だ考え無しだと散々…」
「根本的な問題を考えていなかったのは事実では?
「うぐ…」
…本当に大丈夫かな、このお頭…。器量はイイ方だとは思うけど、ドジッ子というか、微妙にポンコツ臭が…。まぁ、人望でそれをカバーする人材が集まってくるタイプだと思うけど。
…それも、これから通じるかは不安がある。サムライを受け入れようとしている事で、鬼内からの反発が強くなりつつあるようだし…これをどうやって乗り切るかが、里の未来を決めそうだな。
ところで、時継と雷蔵って? 里の重鎮?
「いや、私と同期のモノノフだ。訓練兵時代は、結構有名だったんだぞ。西の三羽烏、なんて呼ばれてな」
「それは褒めているのでしょうか?」
「ああ。格好いいだろう?」
…恰好…いいか? いや確かにそーいうネーミングが流行った事もあるし、今でも聞かない訳じゃないが。俺のネーミングセンスだって似たり寄ったりかもっと酷いくらいだし、ああそもそも時代を考えるとまだ平成になってもいないだろうし、過去のネーミングが流行最先端って事も?
「今はそれぞれ別の活動をしているが、近いうちに里を訪れる事になっている。…そうだな、一度くらいは会ってみてもいいんじゃないか? 君達も、腕に覚えはあるだろう」
そーゆー言い方をするって事は、手合わせを挑まれる可能性が高いって事ね…パスパス。
ホレ、博士の家についた。用事があるんだろ? その間、俺達はこの辺を散歩でもしてるよ。
「いや、君達も入ってくれ。最初は博士だけのつもりだったんだが、戦力は多い方がいい」
「戦力? 何かと戦うつもりですか?」
「それも含めて話すよ。何、そう悪い話ではないと思うよ」
凶星月
西歌のお頭の話は、俺達3人に証の儀…モノノフの試験を受けてくれ、というものだった。
まー受けるの自体は構わんし、モノノフ合格試験だけあってそう難しそうなものでもないが、一体なんで? と問い返そうとしたが、博士が先に応じた。
「断る。私が里に居付く条件は、先日の交渉で全て完結している。怪我人や病人を見ろという程度ならともかく、それ以外の事に関わっている暇はない」
「そう言うな。君にとっても、悪い話ではない筈だ」
「ならば先に利点を述べてみろ。余計な時間を取らすな」
博士の態度を見ても、まったく笑みを崩さない西歌のお頭パネェ。
…傲岸不遜と言うか御無礼と言うか。相手は一応この里の頭だぞ、険悪になったらただでさえ面倒な里がもっと居辛くなるじゃないか。せめて社交辞令とか礼儀ってものをな……俺がこんな事言っても説得力無いか。
だがその辺を博士に期待するのは無駄の一言。数日の付き合いだが、もう覚えた。
ホロウは…意外としっかり話せるんだが、飛び飛びの時代の人間と付き合ってきたからか、イマイチ価値観がよく分からんのだよな。
「君がモノノフとして合格する事で、里の一員として扱われる。里の一員であれば、依頼を出せし、受ける事も出来るんだ。あの鬼の素材が欲しいとか、異界に散らばっているこれらを集めてほしいとか。当然、報酬は必要だけどね。博士、貴方は研究の為、何度も異界に出向いているだろう。その時、出現しそうな鬼に関係している依頼を受けていけばいい。勿論、貴方がこの工房に居ながらにして、素材を集めさせる事もできる」
「今までならともかく、後者は不要だ。コキ使える助手1号2号が居るんでな」
「私達は、一月ほどするとウタカタへ向けて出立する予定ですが」
「…ホロウ、余計な事は言わず黙っていろ。少なくとも、今受ける必要はない」
…それを俺らに持ってくる理由は…。
①人手と戦力が足りない。
②鬼内が自分達で凝り固まってるから、一度鼻っ柱を叩き折れ。
③外様が活躍する事で、サムライ達の居場所を作りやすくする。
さぁどれだ。
「どれも大体当たりだな。ま、あまり期待はしてないが」
文字通り余所者の力をアテにしたやり方は信がおけない、か。まぁ道理だな。
どうする?
俺は特に問題ない。助手はいいけど、狩りをせにゃ体が鈍ってしまう。幸い、この辺はまだ自然も残ってるから、魚釣りから猪狩りまで何でもできそうだ。
「私も問題ありません。依頼をこなせば、報酬が得られるのですね? 金銭は大事です」
…人生の割に世知辛い事言うな。
「だからこそです。何処に行って何をするにも対価は必要でした。それなりの額だった筈のお金を見せたら、黙って白湯だけ出された時の衝撃は筆舌にし難いです」
「…この二人がこう言ってるんだから、私は別にいいだろう」
「却下です。働かざる者食うべからずです。貴方の研究は興味深いですが、収入を生む物ではありません。私達が出発し、助手が居なくなった時の為にも、働ける場と実績を作っておくべきです。お金がなければ研究どころか生活もできません」
お、おう……えらい饒舌だな、ホロウ。
「昔はこうやってモノノフの仲間を増やしたものです。オビトはもっと強引に勧誘していました。反発を買う事もありましたが、そこを理屈で丸め込むのが私の役目です」
理屈っつぅか屁理屈っつぅか…。で、どうするよ博士。
「…面倒だが…助手2号がそこまで言うなら、吝かでもない。研究もある程度形にしたら実験せねばならんし、カラクリ石も不足しているしな…」
「では、交渉成立と言う事で。早速だが、証の儀の説明をしよう」
…そういう訳で、試験を受ける事になったのだ。
内容は至極単純。マホロバの里を出て、どんなルートを通っても、途中で寄り道してもいいので、西にある監視小屋に到達する事。その間に、鉄鉱石を集め、ガキの討伐をしてくる。
…寄り道してもいいとの事だったので、盛大にサバイバルするつもりだったんだが…制限時間を付けられた。チッ、お頭やるだけあってカンがいいと言うか人を見ていると言うか。
まぁ、内容自体は簡単だな。あの辺はまだ瘴気に呑まれてないし、大型の鬼も……一匹二匹くらいは居るっぽいけど、その程度だ。残っていた瘴気の痕跡からしても、精々下級のデカ蜘蛛くらいだろう。
ただ、ウタカタ近辺では見かけなかった鬼の痕跡もあった。こっちは見つけてみないと、どんな奴なのか分からない。とりあえず分かるのは、足跡からして中くらいの大きさで、二足歩行だけど手も使って歩いて、餓鬼を従えている事くらいか。ああ、重心からして、腹なり頭なりがかなりデカくなってるっぽいな。…餓鬼の親玉って事は、それを大きくしたような感じだろうから腹だと思う。…あれ、大分姿が想像できてしまったよ?
凶星月
証の儀はサクッとクリア。一応、一人ずつ行く決まりだったんで、博士が最初に行った。面倒事はさっさと済ませたいらしい。博士は問題なくクリア。まぁ、地形とかも既に把握してたからな。
二人目、ホロウ…を行かせようとしたんだけど、俺。「お前を最後にすると、夜中まで粘りそうだから」だそうな。…まぁ、実際サバイバルを諦めてなかったけどさ。
俺も特に問題はなかったなぁ。ちょっとウロウロして時間は食ったし、途中で遭遇した中型鬼…ヒダルと言うらしい…もあっさり始末した。
そうそう、途中で碑文を見つけたんだが、読めなかったっけ。鷹の目も、流石に未知の言語までは読めないらしい。…先行者達の文字なら読めるように、遺伝子とかに細工されている可能性もあったが。
これ、本当にエピタフプレートの文字と同じなのかね。
監視小屋に辿り付いた後、ホロウを待ちながら博士とちょっと話をしていた。さっさと終わらせろ馬鹿者、と小言も言われたが。
見つけた碑文だが、既に博士も見つけていて解読済みだった。と言っても、文章が途切れ途切れになっており、意味は全く分からなかったが。恐らくは同じような碑文が何処かにあり、それと合わせる事で文章として成立する…らしい。どんな書かれ方しとんじゃい、と思ったが、横書きで書いた文章を縦に分割したようなものらしい。
まーそれはともかく、エピタフプレートを手に入れた場所で、他にそれらしい手掛かりは無かったか、と聞かれた。
手がかりっつってもなぁ…。そもそもMH世界は色々な意味でおかしい物ばっかりだし。モンスター達の生態からおかしいし、それを狩るハンターは…特に上位レベルは更なる化け物揃いだし…。あの世界の人間って、アサシンの血筋みたいに妙な改造でもされてんじゃなかろうか。
エピタフプレートだって、元は火山で掘り出した太古の塊だし。
あの辺、何か遺跡あったかな…。
他に遺跡……と言ったら、やっぱ古塔だよな。古龍が度々襲来する、魔境ポッケ村の中でも特に呪われた魔境である。実際、俺もアマツに襲われたし。MH世界に無い筈だった霊力が大量に残ってたし。
……あ。
そういえば、別の塔でなんか壁画と言うか床画が残ってた。
「…それを何故真っ先に報告しない…?」
博士ストップ、ステイステイ。銃は人に向けるものじゃありません。いや人を殺す為の物なんだから、人に向けるのはある意味間違ってないが。
絵にして記録しようかと思ったんだが、原型がまるで分からなかったな…。確か日記に描写していた筈…。
「字だけでは分からん、再現しろ」
無茶言うなっつの。どんな形だったかは、日記を見れば思い出せるけど…ええと、どこ書いたっけ。アマツに襲われたループ…だと、確かベルナ村で各種スタイルの研究手伝いとかやってた時か。と言う事は前のMH世界だな。
探すのに時間がかかるから、見つけたら報告するわ。
「でしたら、口頭で説明してくれれば、私が絵にしましょう。それを見て、何処が違うか修正してください」
お、ホロウ、お疲れさん。証の儀は全員終了だな。にしても、えらい早かったな。
「高速移動は得意分野です。鬼疾風という移動法なのですが…かつてモノノフに伝えた技の一つだったのですが、どうやら失伝しているようですね」
「…揃いも揃って、使えそうな情報を出し惜しみしおって…」
「聞かれていませんし、失伝しているとは思っていなかったので」
今までの繰り返しの事、全部覚えてられる訳ないだろーが。
「あって当然だと思っている物の有無を、一々確認してはいられません」
「貴様は一度日記を全て読み返せ…いや、私に寄越せ。ホロウも覚えている限りの技術が失われていないか確認しろ」
俺の日記、別の世界の言葉も使って暗号調に書いてっから読めないぞ。まぁ、忘れてる手がかりがないか、確認はするけど。
「全く…。貴様らとは一度…いや、二度三度、徹底的に話をせねばならんようだな。ああ、苛々してきた。帰って飯にするぞ。糖分多めで作れ」
へいへい。