アサクリ新作が今年でないのは残念だけど仕方ない。映画化っていつだったかな…。
そして、ついに出たかVR…。
これって要するに、大画面・至近距離でのプレイなんだろうか。専用の視点とかあるのかな。
興味はあるが、どうしたもんか…注目のタイトルは、調べた限りではユービーアイソフトのイーグルフライト。これの開発の為にアサクリ出なかったんじゃなかろうか。
発売日未定でシリーズ未プレイだけどエースコンバット。
リズムゲーやった事ないけどTHUMPER。
東方紅舞闘V …は動きが鈍そうだけど気にはなる。
しかし、今回のペルソナ…妙に攻撃が外れるなぁ。とどめの一発を避けられて、そこからタルカジャ付のクリティカル連続喰らって雑魚相手に昇天。
…ガチギレしたくなったが、これでこそのアトラスか…。
凶星月
殆ど徹夜だった。ホロウだけスヤスヤと眠りやがってこん畜生め。
まぁ、ハンター式熟睡法で体力はばっちりなんですが。代わりに生活リズムが狂うけども。
何をやってたかって…まぁ、例によって俺の不注意と言うか無謀な行動の結果と言うか。まー博士的には大歓喜大狂気ちょっと悔しかったみたいですが。
大体予想はついてるかもしれないが、事の始まりは昨日の朝に採ってきたカラクリ石だ。…正確に言うと、カラクリ石…モドキと言うか成り損ないと言うか…博士曰く、これは『万能の石』と呼ばれ、大抵の素材の代わりになる物………の、これまた出来損ないなんだそうな。成り損ないで出来損ないとか、これはハズレか一発逆転超級レアキーアイテムのどっちかですねぇ…。
……前者だったようだ。素材的には。
だが、博士的にはかなりの大当たり。夜中だっつーのに高笑いが里に響き渡った。何事かと飛び出してきたモノノフ達に、ホロウが頭下げに行ったよ。その後もう一回寝てた。
俺? 博士にとっつかまって尋問されてたんだよ。何処から持ってきたのか、どういう状況で見つけたのか、何故自分を連れて行かなかったのか………アンタが人形弄りに夢中で飯も食わんとガチャガチャやってたからだよ。正直、俺だって見つかるかどうかは不明だったし、何より根の国に俺以外の人間が入ったら5分も保たんかったわ。
さて、そんじゃ昨晩の尋問で判明した事だが……この万能の石とやら、カラクリ石の亜種である事が分かった。万能の石と言うだけあり、素材に使えばそこらの餓鬼の牙の代わりから、理論上ではゴウエンマの数珠の代わりまで、何にでも使えるそうだ。尤も、秘めているエネルギーに限度があって、一定以上…ゲーム的に言うなら、上位かレア度がある程度以上の物の代用は無理なようだが。
何で一見すると単なる石なのに、そんな真似ができるのか?
簡単な話だ。この万能の石…多少ではあるが、カラクリ石の性質を受け継いでいるのだ。人の想像やイメージを具現化する力により、作り手の意思を反映させて素材の代わりになる。
恐らく、遺跡の何処からから漏れ出したエネルギーが地脈を伝って何処かに集中し、それが万能の石になるのだろう。
なら、逆に万能の石を幾つも集めれば、カラクリ石に……は出来ないっぽい。やるなら、少なくとも専用の施設が必要になるそうだ。何れは作るつもりだが、今は鬼の手の作成を優先するらしい。
それでもカラクリ石の性質について、色々分かった事があるらしいので、無駄ではなかったかな。
…で、そのカラクリ石の成り損ないだが、博士には不要だった。サンプルとして珍しくはあるが、資料としての価値は無し。
俺が採ってきた物なんだから、俺の好きにしろ…と言っていたが、捨てるのが面倒だったから押し付けただけじゃなかろーか? 別に面倒でもないか。カラクリ石の性質も殆ど無く、万能の石としても使えない、事実上単なる石だ。その辺にポイッと捨てれば終わりである。
さて、ここで俺は考えた。例によって余計な事を考えた。
石を捨てるのは簡単だ。しかし、それでは朝っぱらから出かけて採掘してきた甲斐がない。
一見すると役に立たない石だが、これを何らかの形で利用する事はできないか? 完成している物ばかりを使うのではなく、使えない物を集めて有効活用できるようにならないか?
創意工夫と未知への探求はハンターの必須科目。出来そうだったらやってみて、出来そうになかったら他の方法を考える。
…これに則って考えると、だ。
①俺も何か作ってみたい。出来れば俺にしかできないような、オサレかつスペサルな奴。
②でもカラクリ石の性質とか理論とかさっぱり分からないし、勉強している間に熱意が尽きるのは目に見えている。
③だったら今ここで、普通じゃできない事やってみればいいじゃない。
……うん、完全にアカンパターンだコレ。素人が『俺は詳しいんだ(キリッ』と抜かしながら、安全もルールもマルッと無視してとんでもない事やらかすパターンだ。
で、結局何をやったかってーと…普段は使ってない能力を、一つ使っただけですよ?
蝕鬼の能力を。
博士の目の前でね、不要と言われた石を取り込みました。こう…手に持った石が、分解されて手の中に染み込んでくるっつーか……まぁ、見ててあまり気分のいい光景ではなかったと思う。博士はガン見してたが。
で、その後集中してみると…目論み通り、体内にカラクリ石っぽい力を感じる。力としてはあまり強くないけど………ふむ。
ほいしょ。
おお、出た出た。これが鬼の手か。霊能力教師っぽいのでもよかったが、えらくデカいな…デカブツの手をイメージしちまったか。
「な……な…な…」
思った通りに…動かせはするが、それが狙い通りに行くかっつーとまた別の話だな。にしても「なぁあああぁぁぁぁあああ!!!!」
絶叫2回目。ホロウが飛び起きて謝罪に出て行った。
そして博士は「解剖させろぉぉぉ!」と叫びながらメス持って飛び掛かってきた。目がラージャンみたいだった。
工房の中でドッタンバッタンして、実際片手を切り落とされそうになりつつも(気迫で押された…)、何とか沈静化。戻ってきたホロウが、博士の後頭部に一発やってくれて助かった。眠っている所を叩き起こされて機嫌が悪かったのか、俺にも一発蹴りをくれていったが。
何とか落ち着いて。
「ほう、あれが触鬼とやらの力か。触れた物を取り込んで、体と能力の一部にする…確かに鬼が使うと厄介な力だな…。それを人が使うとは…」
肉体的には人かどうかも怪しいからな。
「一度、変身した姿も解剖してみたいものだ…。それはともかく、もう一度鬼の手を出してみろ」
絶対一度じゃ済まないだろ、アンタ。ほれ、これでいいか?
「そのまま暫く動かすな。……見事に実体化させているな。だが、人の手で触れると、抵抗はあるが素通りする…水のような感触だ。いや、それよりも気になるのは、出来損ないのカラクリ石を取り込んだだけで、こうも安定した形を出せる事か。…他の部分からは出せるか?」
やってみる。まず左手……出た出た。
「…出たが、右手に比べると安定してないな。触れた時の抵抗も弱い。それだけ実体化が不完全と言う事だ。よく見れば、力が纏まりきらずに拡散している……それでもこれ程の具現化が出来ると言う事は…よし、次は両足と頭と腹から出せ」
一辺にやれってか。そりゃどんなバケモノよ。ヘカトンケイルじゃあるまいし。
「一か所ずつでいい。……む、やはり実体化は出来ても、両手に比べると薄い…そして纏まらない力が拡散し続けている。と言う事は、何処から出しても使用する力の量に大差は無い…。しかし、現在の実験結果によると、石から遠ざかればそれだけ力が弱くなる……体内に取り込んだから? だとすると、具現化に必要なのは…そう、十分な量の力の供給と……より直接的な想像をカラクリ石に伝える端末…。体の中に埋め込む事で、それが可能となった? いや、触鬼とやらの能力故か。文字通り体の一部と化したからであって、埋め込むだけでは…」
なんか博士が全身にカラクリ石を埋め込んだ改造人間的な計画を立てつつあるが、とりあえず朝日を浴びつつ俺はそのまま寝た。解剖の危険があるから、適当に囮作ってな。
…今朝起きたら、囮が爆発して博士がぶっ倒れていた。ホントに危険だなこの人!
さて、それは置いといて、今日は紅月さんとサンバ鴉の二人を迎えに行くことになっている。ワスレテナイヨ?
特に必要な物はないと聞いてはいるが、遠くからやってきてくれる人の出迎えなんだし、弁当くらいは用意していくかな? 時間的にも昼飯の頃合いだ。
生憎と、工房にある食材は切らしていたので、買い出しにやってきたんだが、集合予定の場所で八雲のにーちゃんを見かけた。「ほぅ…」って感じの、なんかこう…ハーレクィンでお耽美な漫画に出てきそうな感じの溜息を吐いていた。何やってんだ。
気にはなったが、何となく鬱陶しいので放置。
…そして弁当(と博士のエサ)の準備をして、集合地点に来たんだが……まだ「ほぅ…」してた。微動だにしてない。足元を見れば分かるが、ガチで一歩も動いてない。それどころか足の組み換えすらしていない。…おい、あれから2時間近く経ってんぞ。
一体何やってんだ。視線を辿ってみると、その先にあるのは神垣の巫女の屋敷。恋煩いでもしてんのか? もうすぐ現在の巫女が足抜けだから、そっちとラブストーリー……そういや、かぐやにエラい反応してたな。…そっちの趣味…か?
Noタッチを貫くなら俺は何も言わんが。貫けなかったからな、俺は。シモ的な意味では貫いたが。そうです私が最低です。
ま、タチの悪い冗談だけども。
「あの方は何をやっているのでしょうか?」
時を忘れて浸っているのだよ。何にかは知らんが。ともかく、依頼は依頼だ。道案内は必要だし、叩き起こすとしますかね。
おーい。
「…なんだ…私はかぐや様の将来を憂うのに忙しいのだ…」
…やっぱそっち系かよ…。冗談じゃなかったよ…。
憂うって、何ぞ心配事でもあるん?
「…神垣の巫女は、その激務故に短命な者が殆どだ。現在の巫女様が、無事に任を終えられるのが奇跡と言っていい程にな。いや、無事ではないか…まだ幼いかぐや様に、その任を引き継がせなければならないのだから」
「無事ではない…本来であれば、代替わりはもっと先であったと?」
「当然だ。体もまだ出来上がってない幼子に、大役が務まるものか…。幸か不幸か、かぐや様は非常に優れた素質を持っておられる。もう暫しの修行で、幼い身でありながら神垣の巫女が務まってしまう程に。だが、当然それは寿命を削る行為だ。…それでも、これ以上結界を広げるような事をしなければ、大過なく任期を終える事が出来るだろう……いや、私がそうさせる。だが…今はサムライという厄介な連中が居る」
サムライ? …厄介って、えらい言いようだな。
「……………貴様ら、いつからそこに居た…」
あ、起きたか。
「いつも何も、貴方が神垣の巫女の将来を憂いている時からですが」
そういうあーたは、一刻以上前から微動だにしてねーな。それはともかく、サムライが何だって?
この際だから言うてみぃ。
八雲のにーちゃんは、我に返ってバツが悪そうだったが、若干早口で…或いは言い訳っぽく?…話を続けた。
「…彼らが害悪とまでは、言わん。別の里の事とは言え、オオマガトキで生き延びた彼らを奴隷のように扱ったのはモノノフの恥だ。我らモノノフは、始まりこそ石持て追われた異能者だが、オオマガトキまでは人の世を守って戦うのが使命だった。思うところが無いとは言わんが」
まぁ、迫害された奴らが迫害した連中を守って戦う理由なんぞ無いわな。
「だがそれも昔の事だ。伝統や理念を受け継ぐ事は重要だが、過去の遺恨は過去の遺恨以上にしてはならん。先祖が受けた恨みは忘れぬが、それを我が事として、我が恨みとしてはならん。…話が逸れた。私は、サムライを歓迎しない。彼らが鬼内に恨みを持っている事もそうだが、それ以上の理由がある」
「勿体ぶった話し方をしますね。子供に退屈させる人種です」
「………」
八雲のにーちゃんの眉が、何かを我慢するよーにピクピクッと動いた。
「…里の結界の内では、もうこれ以上人が暮らせる余地はない。サムライ達を収容できん。…かぐや様が知れば、きっとお嘆きになる。そして自分の命を顧みずに、結界を広げようとするだろう」
「だからサムライは不要ですか? 里に居る事を認められないのですか?」
「……そこまでは言わん。言わんが……」
そっから先は口にできない、か。悪かったな。突っ込んだ所まで聞き出しちまって。
「…フン。そう思うなら、忘れる事だ。どうせ、貴様らは遠くない内に里を去る流れ者。そのような路傍の石に憂いを零すとは、私もまだまだ未熟だな。…時間だ。出発するぞ」
最後までやや早口に言い切って、八雲のにーちゃんは合流地点に向けて歩き出した。
ふぅむ、面倒な話だ。八雲のにーちゃんは、少なくともサムライを排斥しようと思っているのではない。
ただ、彼らを招き入れる事が物理的にできないと考え、そこから生じる怨恨や不満を予測し、そしてそれ以上にかぐやを重んじている訳だ。
物理的な問題ってのは、解決策が無ければどうにうもならんからなぁ…。特にこの手の奴は、八方丸く収める展開でないと。
おいホロウ、なんかこう…都合がいい技術とか無いのか。鬼疾風みたいに、失われた結界技術とか。
「記録にはありません。私が覚えているのは、単独で戦う技のみです。里に結界を張っている技術も、モノノフが結成されて時が経つうちに開発されてきたもののようです。私の専門外ですね。ただ、住む場所についての提案なら出来ます」
横に伸ばせなきゃ、縦に伸ばせってか。住みやすい土地の問題は、どの世界になっても同じと見える。駅や商店街の近くにアパートが出来るのと同じ理由だな。
「貴方の世界にもあったのですね。問題は、住むに堪えうる物が出来るかどうかですが…神垣の巫女の社を見るに、二階で騒いだりしなければ大丈夫だと思いますが」
他にも問題はある。サムライと鬼内の溝がな…。恨みと特権意識と恩と不安と、その他諸々がゴッチャになって暴発する。絶対ひでぇ事になる。
…まぁ、これについては一旦ここらで切り上げよう。俺達は所詮流れ者だ。西歌さんに提案でもしておいて、後は…まぁ、出来る事があれば手伝う程度か。
「何をしている貴様ら。これは貴様らが受けた依頼だろう。よもや、お頭からの依頼を投げ出そうというのではあるまいな」
「この里の行く末について、少々議論していたまでです。言われずともすぐ向かいます」
さて、長話したおかげで、若干急いで合流地点に向かう事になった訳だが……ヤバイ、スゲェ楽しい。
何がって、鬼疾風が。
先日、ホロウから理論だけ教えてもらった技だが、割とすぐ再現できた。それはもう、熟練者であるホロウが呆れるくらいにスムーズに。なーに、この程度のスピードなら慣れたもんよ。
「急ぐぞ」と言う八雲のにーちゃんに追従してたのはいいんだが、ちょっと遊び心が出てね。追い抜いちゃったのよ。
唖然としてた。まーそうだよな。普通の走り方じゃ、タマフリ使ってもこれは追いつけんわ。それでもアラガミ状態での全力ダッシュには追いつけないけど。
この手の術は、真っ先に検討するべきだったよなぁ…。足に力を込めてのクイックブーストは、各種バトル漫画の基本です。
まぁ、鬼疾風はやり方がちょっと違うみたいだけど。どっちかと言うと…リニアモーターカー? ただし線路は自分で作る、みたいな。
なんつーの……まず足元に線路を作るじゃろ? 一本レールの、行きたいルートを辿る線路。その線路に対し足元に集めた霊力を反発させ、自動で進むようにするのが鬼疾風だ。
そーさな、スケート…と言うよりは、ジェットコースターに乗りながら、その行き先を自分で作っていると思えばいいか。
別に、単純に足に霊力を纏わせて脚力を上げるだけでもいいんだが、そうなるとどうしても動きが直線的になるし、それ以上に移動の後に動けない時間が出来る。クイックブーストの後のエネルギー切れだな。
それに対し、鬼疾風の方法なら一定量の霊力消費はするものの、コツを掴めば曲線を描いて移動する事も簡単だし、長時間の移動も難しくない。また、移動先を上に向ければ多少の段差は簡単に乗り越えられる。
で、これを俺がやると、冗談抜きで立体起動が可能になる。いつ何処で身に着けたのかイマイチ自分でも分からんが、俺は壁を走るような技術も身に着けているのだ。
その辺の木々や崖や壁を足場にし、駆け上がって宙返りして枝を伝って、更にゴッドイーター式二段ジャンプ(バースト状態でしかできない筈だけど、まぁ俺の謎ボディだし)やら空中ダッシュやら…。アサシンクリードのフリーランニングを、空中も可、超スピードダッシュも可にしたらこんな感じか。
八雲のにーちゃんが、呆然とした後「こいつは鬼なんじゃないか?」と真顔で呟く程だった。
「あの移動法は、かつてモノノフに伝えられた鬼疾風という歩法なのですが」
「…聞いた事がない…いや、確か近年、古文書から幾つかの失われた技術が発見され、それを再現しようとしていると聞いた覚えが…」
「それかどうかは分かりませんが、理屈はそう難しくありません。双刀を使っているのなら、疾駆は使えますね? 体裁きは同じです。……尤も、それだけではあの動きはできそうにありませんが」
…ああ、そういや疾駆に似てるっちゃ似てるな。移動スピードと安定感は段違いだが。前者は鬼疾風、後者は疾駆だ。
ま、それはともかく、ハシャぎ周るのはこの辺にしよう。周囲は異界だし、勢い余って突っ込んだ先で、大蛇が藪から出てくるのも何だ。具体的にはミズチメ。
はいはい、ハシャぎ周ってすいませんね。落ち着いたよ。
「猿のように木々を飛び移っていましたね」
せめてモモンガで頼む。鬼の手を上手く使えば滑空も出来そうな気がしてきた。
「それはまた今度試してください。八雲に鬼疾風のやり方を教えました。このまま合流地点まで走りますよ」
「理屈は分かった。モノノフとしての基礎さえ出来ていれば、技量的にはそう難しくない。後は慣れの問題だ」
ほほう、お手並み拝見させてもらおうか。道案内なんだし、先導は任せる。転ぶのはいいけど、後続の俺らを巻き込まないようにな。
「誰に物を言っている。では行くぞ!」
…八雲のにーちゃんは転びはしなかったが、曲がり損ねて2回程壁に激突した。ま、スピードの桁が違うし、カーブはちょっと難易度が高くなるからね、最初は仕方ないね。
八雲のにーちゃんの先導で合流地点に到着したが、既にそこには3人組が待機していた。
一人は年頃…をちょっと過ぎたおねーさん、後の二人は…まぁ、おっちゃんだな。見た所、西歌さんより年上っぽいが…同期じゃなかったのか? 単に訓練が同期なだけで、年齢は違うんだろうか。
おっちゃんの片方…ガッシリした体付きで、ヒゲはやしてる人が俺達を見て声を上げた。
「おっせぇぞ八雲! 師匠を待たせるとはいい度胸じゃねえか」
「何を言う、むしろ刻限よりも早く到着している。そちらが早く来すぎたのではないか?」
「ハッ、到着は正午と手紙にはっきり書いたぜ? もう半刻近く過ぎてらぁ」
「…いや、雷蔵、八雲…これはいつものアレだろ。西歌のうっかりだ」
「「「…………」」」
「お頭…」
投げやりに告げられた一言に黙り込む2人、頭を抱える紅月さん(らしき人)。
どうやら、度々ある事らしい。それでいいのか、西歌のお頭。
「あー、ところでこの二人は? お前もえらい勢いで走ってきてたが。鬼でも突進してきたのかと思ったぜ」
ああ、俺達の事はお気になさらず。西歌のお頭から、あなた方を迎えに行ってほしいと頼まれただけの新参モノノフなんで。ちなみに鬼内でもサムライでもなく流れ者です。
正午からずっと待ってたなら、腹が減ってるでしょ。よければ持ってきたオニギリどーぞ。
「おっ、ありがたくいただくぜ。聞いてるようだが、俺ぁ時継。とびっきりの勇者だぜ」
「不肖の弟子と違って気が利くな…。雷蔵だ。霊山で禁軍に所属している。八雲の師でもある」
「ありがとうございます。マホロバの里の紅月です。…あら、いい塩使ってますね」
あっという間になくなるオニギリ。ま、一人につき2個しかないからね。
はいお茶。
「私はホロウです。マホロバへの滞在予定は一か月程ですので、あまり長い付き合いにはならないと思います。その間はよろしくお願いします」
「ほぅ………勿体ないな。見た所、二人とも結構な手練のようだが」
「時継、飲み込んでから喋れ。まぁ、流れ者だってんなら仕方ねぇ。…いや、どうせだから、一度八雲と手合わせでもしてやってくれねえか? どうにも、鬼内だけだとやり方や力量が決まっちまっててな」
ヤだよ面倒くさい。…依頼だってんなら考えない事もないけど。
「ふぅ…お三方、お話も結構ですが、そろそろ出発しないと。ただでさえ、到着時刻が遅れているのです……お頭のうっかりで」
「本当にあいつはなぁ…。これさえなければ、お頭としても女としても格別なんだが」
…西歌のお頭ってそーゆー認識なのね。うっかり系ドジっ娘だったとは。
「間が抜けてんのは否定しねぇが………娘…?」
「時継さん、女性の年齢について踏み込む勇者の末路は決まっていますよ?」
「おお怖…。まぁ、ちょいと急いだ方がいいのは事実か。八雲、さっきの移動法は何だ? 俺達にも出来るか」
「…理屈が分かれば、難易度はそう高くない。走るだけならな」
「…お前はどうして、師匠に対して言葉遣いを改めんかな…まぁいい。その辺も、帰ってからじっくり扱いてやる」
「では、私が教えます。あの走り方は鬼疾風と呼ばれ…」
やり方を教わった3人は、実にあっさりと鬼疾風を習得した。マホロバの里に戻る間も、それなりのスピードで走っていたにも関わらず、曲がり角もしっかり曲がり、段差は軽々飛び越える。
…来る時に壁にぶつかってしまった八雲のにーちゃんは、結構悔しそうだった。技量の差と言うか、地力の差が明確に出たようなもんだしな。ちょっとした事だが、妙に負けず嫌いなこった。…紅月さんに対抗意識でも持ってるのかもしれん。
そんな具合に帰り道は順調だったが、一つ問題発生。
鬼が出た。と言っても、見慣れたヒノマガトリだが。どうやら雅の領域から流れ出てきたらしい。鬼疾風なら、逃げ切るのはそう難しい事じゃなかったが、そのまま里までついて来られても困る。
停止・反転して迎撃しようとしたんだが……他の皆に声が届かない。世界記録もメじゃない猛スピードで走ってるから、耳元の風で上手く聞き取れないらしい。身振り手振りで伝えようにも、余所見運転ならぬ余所見鬼疾風してたら何処かにぶつかる危険大。同様の理由で、肩を叩く等の接触も難しい。
仕方ないんで、一旦先頭に躍り出て、足を止める。全員、一拍遅れて同様に足を止めたんだが、それだけでも大分距離が離れた。
おかげで、皆がヒノマガトリの結界に阻まれてしまった。結界内に残れたのは、俺、ホロウ、雷蔵のみ。
…まぁ、ソッコーで潰したから問題はなかったけどな。具体的には、立体起動鬼疾風からの疾斬っぽい攻撃で翼を切り落とし、落下したところをフルボッコ。
勝つには勝ったが、鬼疾風にもちょいと改良の余地アリかな。移動が早くても連携が取れず、情報の共有ができないんじゃ危なっかしくて仕方ない。
後は…鬼疾風からの疾斬だけど、こんな話が出た。
「おお、見事だったぜ。勇者の一撃だった」
「勇者はともかくとして、鬼疾風の速度をそのまま攻撃に転用したのか。…残念だが、今の私では不可能だな。出来ない事はないが、武器が折れてしまいかねん」
「ホロウさん、あの技にも名前はあるのですか?」
「いいえ。あのような攻撃方法は初めて見ました。鬼疾風は足元が不安定になるので、無理に攻撃すれば反動で体勢を崩します。お勧めできません」
「なら、完全に新しい技が出来た訳だ。改良の余地はあるだろうが、技の名前もつけておいた方がいいかもな」
名前ねぇ…。疾斬の上位技と考えると、疾風斬とか? 鬼疾風前提の技だし。
「いやいや、もうちょっと捻ろうぜ。そうだな…。お前が鬼に飛び掛かった後、流れていくように淀みなく擦れ違いながら斬ったから………流し斬り?」
不吉だからヤメロ。