※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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なんちゅーか、天中殺な最近…。
また久々に愚痴りますがご容赦を。

超厳しい上司に叱られまくるは、帰りに雨が思いっきり降ってて買ってきたばかりのシャツがびしょ濡れになるは、取り込んでなかった布団は濡れてるは、ヤバい故障が連続で沸くは、挙句店内に変質者まで出るは…。
んで対応間違えたら上司が心を圧し折りに来る。
ああ、家に帰ってだらだらしてる時だけが救いだわ…。
ちょっとエロい店でも行って来ようかな…。


第197話

凶星月

 

 

 とりあえず、昨日は3人を里に送り届けて依頼終了。ヒノマガトリを返り討ちにしたんで、ちょっとしたオマケも付きました。まぁ、晩飯に一品追加する程度だけどな。

 里の飯屋で適当に頼んで持ち帰ってきたんだが…まぁ、普通かな。専門の料理人じゃなくて、アルバイトの人が作ったんだろうか? ま、そういうチープな味も悪くない。ホロウと博士には不評だったが。

 

 

 ……うむ、やはり焼きナスは冷やすに限る。ポン酢があれば尚良し。

 

 

 それはともかく、昨日から博士は延々と唸り、手にした用紙に設計図らしき物を書き続けている。添削が何度も続いているらしく、一見すると何がなんだか分からない。殆ど真っ黒になった使用済みの紙が、何枚も落ちていた。

 

 それとは別に、壁に貼り付けられた大きな紙に、これまた大きい字でメモがある。…どうやら、これは考え抜いた末に導き出した、或いは決定した重要事項らしい。

 書かれているのは…。

 

 

 『カラクリ石を媒介とすれば、武器防具にも力を宿す事が出来る?』

 

 『力のあり方があまりにも異常。参考にはしても再現は考えるべきではない』

 

 『具現化に必要なのは、カラクリ石の力の量よりも、より直接的に思念を伝える手段』

 

 ……塗りつぶされていて読めない。……鷹の目! 『トキワノオロチが繰り返しに影響していたとすると、遠からず開放される事になる。居るのか?』

 

 

 

 …トキワノオロチ? なんか大物っぽい名前だな。オロチにもピンキリあるけど、ピンは本当にシャレにならんからな…。ヤマタノオロチを筆頭に、龍神の類だって乱暴に言えばデカい蛇、オロチと言えなくもないし。

 居るのか?って表現も、開放って表現も気になるが…ここで聞くのは無理だな。こんだけ考え込んでる博士に声をかけるなんて、撃ってくれと言ってるようなもんだ。

 暫く好きにさせておく。

 

 

 

 

 さて、それはそれとしてこれからどうしたものか。

 博士が作る鬼の手の成果を得たいところだが、そうなると俺に出来る事は無くなってしまう。頼まれた時に素材を取ってくるか、飯の支度をするくらいだ。

 俺自身は鬼の手の具現化に成功しているが、出来れば俺以外にも同様の事が出来るようにしてほしい。特にホロウは、同じイヅチカナタをターゲットにしているからな。

 

 後は……まぁ、これは仮定の話だが。博士が言うように、もしも異界の浄化をする事が出来るようになったなら、千歳・虚海の体も元に戻せるんじゃないかと思うんだよ。千歳にはもう一度会えるかも怪しいけどな。

 

 

 暫くは、博士のブレイクスルーを期待して待つ事になるだろう。待つのはこの際構わんけど、その間に何をしようか。

 暇な時にやる事と言ったら狩りだが、この辺の鬼はそこまで強くない。…異界の中に潜っていけば、手応えのありそうなのも居るが、入れてくれないんだよなぁ…。異界への入り口は鬼内達が管理していて、相応の実力者であると認められなければ通れない。

 

 

 まぁ、忍び込めばいいだけですが。ぶっちゃけ、鬼内連中ってそこそこ程度の戦力が揃ってるだけで、突出してるのは八雲のにーちゃんくらいだからな。それにしたって、意識とか太刀筋とか色々荒い。これからの成長に期待ですな。

 

 

 

 

 …鬼内の戦力はそうだとして…サムライはどうなんだろう? 戦闘要員には、まだ殆ど会ってないんだよな。刀也さんと神無と……一緒に稽古していた数人くらいか。

 サムライは奴隷状態だった一般人達を開放して回ったそうだが、どれだけの人数でそれをやったのか。

 戦闘要員の割合はどれくらいだ? 助けた一般人達をそのまま放り出すような事はしてないだろう。徐々に人が増えていくんだろうが、戦える人間はそうそう居ないと思うが…。

 

 よし、明日はサムライ連中の見物に行ってみるか。

 

 

 

 

凶星月

 

 

 …夢見が最悪だった。サムライの見物に行くのを辞めようかと思うくらいには。

 丸一晩、のっぺらミタマの夢に魘され続けたよ。SAN値直葬一歩手前だ。

 ええい、それもこれも、ホロウが余計な事言うからだよ! 俺のミタマはどんな英雄なのか、って。…のっぺら連中の事だけは、出来る限りボカして説明してたのに…。

 ゲームと違い、モノノフが宿しているミタマを聞くのはマナー違反(確かのっぺらを宿して間もない頃にそういう話があった)だったから油断してた。ホロウはもっと前のモノノフしか知らないからな…現在のモノノフの常識とズレがあるらしい。

 

 俺のミタマが何なのか、聞いて来るのはいい。マナー違反だが許す。

 

 

 

 だが、「カラクリ石の力を使えば、ミタマを具現化する事も出来るのでしょうか?」ってなんじゃい!

 いやそれ自体は別に問題ねーと思うが、俺の場合は問題だらけじゃ! あの連中を一匹でも具現化なんぞさせてたまるか!

 

 全力で荒ぶって拒絶しようとしたが、飯の最中だった事と、博士から「そいつが出来るかは知らんが、可能だったとしても、私の研究している鬼の手では無理だな」と物言いが入った為中止。

 

 

 …あれ、どーゆー事? カラクリ石を取り込んだ俺が出来れば、鬼の手でも出来るんじゃないの?

 そう聞くと、博士はシジミの味噌汁を啜りながら、「どうしようもないなこのバカは」みたいな目を向けてきた。

 

 

「お前、自分で脳天を吹き飛ばして頭を新しい物に作り替えた方がいいんじゃないか? 他人にやらせると殺人になるから、気を効かせて自分でやれよ」

 

 

 …もっと酷かった。しかも解説せずにそのまま飯を食い続けた。甘い物が欲しいとデザートまで要求する始末。

 (忍び込んだ武の領域から拾ってきた)万年氷を使ったカキ氷を喰らうがいい。シロップは適当な果汁を使いました。頭キーン。ちなみに鬼祓いで浄化・消毒済みである。

 おい、悶えてないで話せよ。

 

 

「ふぅ…美味いが、一気に食べると危険だな、これは…。で、何の話だ」

 

 

 俺が出来ても鬼の手でできないって話だよ。率直に言ってしたくもないが。

 

 

「ああ、それか……したくないなら別にいいだろう、と言いたいところだが、いい加減貴様には物申すべきだと思っていたし、気分転換に説明してやろう。…まったく、モノノフにこんな講義をすることになるとは思わなかったぞ」

 

 

 いいから解説はよ。

 

 

「どうもこうもない。お前はいい加減、自分が他のモノノフと違うと言う事を自覚しろ」

 

 

 自覚はしてるよ。ハンターだしゴッドイーターだし触鬼だしアラガミだし…。

 

 

「そういう事を言ってるんじゃない。お前が霊力と呼んでいる力は、一般のモノノフとは一線を画している、という事だ」

 

 

 …? どういう事だ? 霊力は霊力だろ。モノノフなら誰でも使える力だ。

 

 

「いいや違う。あのな、確かにモノノフはミタマを宿す力を持ち、それを扱う事が出来る。だが、それは幽霊と対話したり、成仏させたりするような力ではないんだよ。鬼祓いだって、瘴気…鬼の体から出る毒素を濾過する力はあるが、それも所詮は物理的な話だ。加えて言えば、お前が言っていた…『ぶらっどあぁつ』だったか、そんな使い方は夢のまた夢なんだよ。ミタマの力を使い、タマフリという決められた手順を辿って、追駆や連昇のような決まった現象を起こす事しかできん。増して、自分の意思と力だけで形を変える攻撃なぞ、夢物語としか思われまい」

 

 

 …は? いや、でも少なくともミタマと話す事は出来るだろ。ウタカタの里の樒さんとか、普通に話せてたぞ。煩すぎて夜が眠れないくらいに。

 

 

「それは特別な素養を持ち、それを伸ばした者だからだ。ホロウの話にもあっただろうが。死者と会話する特別な能力を持つ、オビトという人間の話が。繰り返すぞ。モノノフが持つ力・技術は、宿したミタマの力を引き出す為のものでしかない。ついでに言えば、幽霊を信じているモノノフは……まぁ、そこは個人の領分だが、それも『否定できない』程度だな」

 

 

 何故? ミタマだって幽霊だろう。

 

 

「ミタマは彼らにとって、あって当然の存在だ。その身に宿す事で存在を証明できる、存在を信じられる。ちょっと珍しい隣人のようなものだ。実在する事に疑いは無い。が、その身に宿せない幽霊は違う。…大体、幽霊が実在していて、霊力に長けていればそうなるのであれば、戦死したモノノフの殆どが幽霊になっているだろうさ。ちなみに、鬼は平気だが幽霊は怖いというモノノフは結構いるぞ」

 

 

 むぅ………納得いかん。

 

 

「納得いかなくても、モノノフの認識は大体そんなものだ。道理が通ってない事は、人の認識の中では珍しくも無い。ミタマはミタマ。幽霊は幽霊。…話が逸れた。幽霊への干渉に限った事ではない。お前が使う霊力は、汎用性が高すぎる。鬼杭千切とやらへの使用法に始まり、食べ物の消毒に使うわ、『のば』とやらを支配下に置くわ、交合を通じて他人の力を増幅するわ…。はっきり言うが、普通のモノノフはそんな事は出来ん。そこまで自在に霊力を操れないし、操られたとしても彼らの霊力にそのような性質は無い」

 

 

 だったら、俺の霊力は一体何なんだ? 少なくとも、この力を自覚して使い始めたのは、モノノフ式の訓練を受けてからだぞ。

 

 

「さてな。お前の体から生み出される、形の無い力…という意味では霊力か。単純に、霊力の亜種なのかもしれんな。お前の訳の分からん体の影響を受け、元は普通のモノノフと同様だった霊力が変質したのか…」

 

 

 話が支離滅裂だぞ。これは霊力じゃないんじゃなかったんかい。

 

 

「私は、他のモノノフの力とは違う、と言っただけで、霊力でないとは言ってない。…いい加減説明も面倒になってきたから締め括るが、とにかくお前という存在は何から何まで異質だ。鬼の手を具現化する様は参考になったが、その通りにやってもお前以外では決して同じようにはならん。同様に、仮にお前がミタマを具現化できたとしても、鬼の手では同じ事はできん。以上だ」

 

 

 

 それだけ言うと、博士は立ち上がってさっさと何処かに行ってしまった。腹ごなしの散歩かな。

 

 

 

 …そういう事らしいが、ホロウ、そうなん?

 

 

「はい。貴方のような力の使い方は見た事もありません。最初は私も、現在のモノノフの技術が発達した為かと思っていたのですが、ここ数日間モノノフ達を見ていたところ、新たな技は生まれているようですが、力の操り方や使い方は殆ど変わっていないようです。やはり、貴方だけの特異な能力と考えるべきです」

 

 

 むむむ、驚愕の事実。

 

 俺はモノノフとしては…おかしな言い方になるが、モノノフのみとしての評価では、普通の腕利き程度だと思ってたんだが。俺が出来る事は、多少難しくても皆も同じことが出来ると思っていた。

 俺が色々おかしいのは自覚してるけど、それは後付けで色々突っ込まれた要素があるからだし。…いや、実際その為に普通じゃない霊力の使い方が出来るんだ、と言われるとそれまでなんだが。

 

 

「むしろ、性質的には鬼に近いのではないでしょうか。聞いたところ、腕を断ち切られても復元したのでしょう? そういった、物理的でない力の操作は、どうしても人は鬼に一歩も二歩も劣ります」

 

 

 まぁ、アラガミになってる上に触鬼になってる上に、それ以上にバケモノ染みてるハンターでもあるんだから、その辺は特にショックはないけど。

 ……うん、どう考えてもハンターの方が前者二つより驚異的だよな。俺の判断は正しい。Q.E.D。

 

 

 

 ま、どうでもいいか。ちょっと特殊な体質してるだけで、何が変わる訳でもなし。ただ、俺が出来て当然だと思ってた事が、他の人には出来ないかもしれない。その逆もあるって事だけ覚えておけばいい。そもそも、それが当たり前なんだけど。

 ただ、俺がサンプルとして使えないと言う事は、それだけ鬼の手の正式開発が遅れるって事でもある。それがちょっと残念かな。

 

 

 そんじゃ、飯も食ったし、そろそろサムライ見物に行くとしますか。ホロウはどうする?

 

 

「私は警備の依頼を受けているので、そちらに行ってきます。最近、この辺りに盗賊が出るらしいので」

 

 

 鬼が出歩く山中とかに盗賊ねぇ。よく生きてるもんだわ。

 モノノフじゃなくて、生き残った一般人かな。

 

 

「盗賊になる前なら、サムライとして迎え入れる事もできたかもしれません。紅月と一緒に行ってくるので、お弁当をください」

 

 

 残り物になるけどな。んじゃ、気ぃつけてな。

 

 

 

 

 

 …さて、俺はサムライ見物に行きますかね。

 

 

 

 

 

 

 …サムライ見物終了。残念ながら、あまり歓迎はしてくれなかった。俺は鬼内でも里の人間でもないんだが、彼らからしてみればモノノフ…いや、自分達を粗略に扱った連中と大差なく見えるらしい。

 仕方ないとまでは言わんが、まー一般人の生き残り連中からすれば、得体のしれない力を使う集団でしかないしな。モノノフの細かい分類なんぞ、さっぱり分からんだろう。

 オオマガトキが起こって、その時からその手のモノノフの連中の下で生きながらえたとして、約8年。多少はモノノフの内情を理解できたとしても、全て憎悪に流されるだろう。

 

 結局のところモノノフである時点で、流れ者である俺も、サムライから見れば潜在的な敵って事か。無理もないとは思うが…自分以外は全て敵、なんて考え方じゃ破滅するのは遠くないぞ。頭じゃなく心情を変えなきゃならんのだから、難しい話だとは思うが。

 

 サムライ達の屯所を訪れてみると、稽古の真っ最中だった。この前会った神無が連戦連勝状態。えらく活気に満ちてるが…稽古しているサムライ達は、やや過剰なくらいの気迫を持っていた。稽古じゃなくて…いや稽古ではあるんだけど、本気で戦ってるんじゃないかと思うくらい。

 その一方で、稽古に混じらない非戦闘員は殆ど見られない。訓練場の更に奥の方に、そこそこの人数の気配はする。逆に、そっちは殆ど活気が感じられない。

 ……奥に行く道の途中に、誰か手練が一人構えてるな。

 

 どうなってるのかと思ってたが、刀也が飛ばす激のおかげで理解できた。

 

 

「どうした、そんなものか。お前はまた、家内共々囚われの身になって奴隷のように扱われたいのか。鬼達の腹に収まりたいのか! そうでないと言うなら刀を握れ!」

 

 

 …おいおい、そういう事かい。そりゃ確かに死に物狂いで鍛錬するようになるわ。それだけの気迫を持って鍛錬すれば、上達も速くはあるだろうが…。

 暫く見物していると、神無に稽古を任せた刀也が近づいてきた。

 

 

「…何の用だ」

 

 

 別に。サムライってのがどれくらい強いのか、見ておこうと思ったんだが…随分と物騒なやり方してるな。

 

 

「……不和の種を育てている事は、否定はせん。だが、こうでもしないと素人から半人前に育て上げるのに、時間がかかりすぎる」

 

 

 あくまで自衛の力を持たせる為、か。手綱を取り切れるのか? このやり方だと、心のうちに燻っている恨み辛みや心の傷を煽る事になるぞ。

 

 

「抑え込む。…まだ育ち始めだ。俺や神無なら、無力化するのにもそう手はかからんし、監視もしているさ。発散先もある」

 

 

 だといいんだけどね。ま、その辺は流れ者の俺が口を挟む事じゃないか。

 …で、今日の用事だけど、ちょっと様子見に来ただけだよ。この前は鬼内の屯所を見たから、今度はサムライってだけだ。

 

 

「…そうか。ならもう見ただろう。もう帰れ……いや、この際だ。神無と手合わせでもしていけ。ここの所、神無と戦えるのは俺しか居なくなっている」

 

 

 新しい刺激を、って事ね。…面倒だな。依頼って形なら受けるが? 無償でやると、神無から延々と挑まれそうだし。

 

 

「…否定できんな。報酬はハクでいいか?」

 

 

 ん。で、今からでいいのか?

 

 

「ああ。…総員、今日の鍛錬はそこまでだ。神無、お前は残れ。こいつがお前の相手をする。希望者は残って手合わせを見ていろ」

 

 

 刀也の一声、殺気立っていたサムライ達はすぐに動きを止めた。…ナルホド、言うだけあって統率は取れているようだ。

 神無は傍目にも嬉しそうと言うか楽しそうと言うか、のっけから気迫をぶつけてくる。…そんな目で見るなよ。興奮……しねーよ、どこぞの殺人ピエロじゃねんだから。

 

 依頼を受けたの早まったかな、と思っていた時。

 

 

「刀也」

 

「…む」

 

 

 涼やかな声。美人か! ズギューン!

 おおう、クールビューティ! サイドーテール! …が、なんかちょっと影があるな。それはそれで色っぽいが。あと、ちょっと目つき悪い。

 

 

「真鶴、どうした」

 

「愚弟がまた面倒を起こしそうだから、止めに来ただけだ」

 

 

 愚弟? …ああ、そういや神無に姉が居るって言ってたな。紹介してくれって言ったらスゲェ嫌な目されたけど。

 …神無の気迫がなんか増した気がする。俺とこのねーちゃんが会ったからか?

 

 

「さて…君が新しくモノノフになった流れ者か。噂は聞いている。私は真鶴。サムライの副長を務めている。稽古の申し出はありがたいが、愚弟は今まで何度も稽古でやり過ぎてしまってね。怪我をさせた事は片手では数えられん。悪い事は言わないから、止めておけ」

 

 

 御心配はありがたいが、多少の怪我ならすぐ治るし、俺もサムライの強さには興味があるんで。少なくとも、手足が一本無くなっても、そっちの責任問題にするような事はないよ。

 

 

「そうか。君がそう言うのであれば、これ以上は言うまい。私には、君に対する命令権も無いからな」

 

 

 …心配はしてくれてるようだが、あっさり引き下がった。そこまで強く言う気はないらしい。

 それはいいんだが。

 

 …神無君、ちと疑問があるのだが。

 

 

「…なんだ」

 

 

 彼女、何故に俺の横に向かって話しかけておるのだね? そこには何もいないぞ?

 

 

「…真鶴は、生まれつき視力が弱いんだ。目付きが悪いのも、目を凝らしているからだ。なのに弓なんぞ使うものだから、先日は射抜かれかけたぞ…」

 

 

 …災難だったな。眼鏡でもつければ?

 

 

「…そうだな。オオマガトキの前は、金が無くて手に入れる事も難しかったが…。……いや、今はそれよりも手合わせだ」

 

 

 あいあい。おうおう、自信が漲ってるな。さて、どんなもんか。

 稽古場の真ん中に行く間にも、神無を観察する。構えに隙は無いように見える…が、考えてみりゃ人間相手の剣術なんぞ、殆ど分からんな。俺の技は殆どが人間以外用だし、アサシンは戦うんじゃなくて殺す為の技だし。

 …となると、俺の戦い方は決まってくるな。剣術じゃなくて、それ以外の部分で勝負。

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと……あっさり勝った。神無はかなりショックを受けた顔をしてたな。ここの所無敗だったらしいし、鼻っ柱を叩き折られたか。

 他のサムライ達も驚いたらしく、ざわ・・・ざわ・・・していた。

 

 ショック状態の神無を他所に、刀也から感想を求められたが……うーん、何だな。とりあえず、鬼との闘いの経験が少なそうだな。戦ってみて分かったが、神無の剣術は基本的に人間相手を想定しているものだ。フェイント、間合いの取り方、狙う場所、防ぐ場所、その他諸々。

 人間相手に斬った張ったするにはそっちの方がいいだろうが、デカブツ相手だと余計な縛りになりかねんぞ。実際、今回の稽古の敗因だってそれが大きい。

 

 例えば、最初に向かった時の間合いは、そことそこだろ? 確かに鍛えた人間同士なら、どっちかが仕掛けたとしても先読みするなり超反応するなりで対処は出来る距離だ。今回、俺が人間だからそう距離を取ったのも間違いじゃない。

 でも、鬼にはそれを覆すくらいの瞬発力や腕の長さがあるし、モノノフにはタマフリって普通じゃない手段がある。

 …いや、さっきは使ってないよ。俺は単に色々あって、普通の人より身体能力が高いだけだ。

 その辺に全然気付いてないみたいだったから…己惚れているような言い方になるが、「人間以上」の性能で押し切っただけだ。

 神無が想定してない速度と腕力と動体視力に反射神経で奇襲をかけ、対応される前に決着をつけただけだ。

 

 …言っちゃなんだが、足りてないのはその辺だろうなぁ。想定外の事なんぞ幾らでも起きるし、想定していた速度と腕力に抑えてたとしても、伏兵とか出てきたら同じだし。要はタイミング…機の問題なんだから。

 

 

「…そうか。確かに、人間相手の戦い方に偏っているのは否定できん。…最後に見せたあの技は何だ?」

 

 

 ああ、震怒竜怨斬な。簡単に言えば反撃技。あの程度の斬撃なら俺は肌で受け止められるから、その衝撃を上乗せして返した。剣の柄辺りで受け止めて返そうかと思ったんだけど、思ってたより剣筋が複雑だったんで諦めた。

 ミタマの防でも同じ事は出来ると思うぞ。タマフリ、使われる事も想定してないって事は…あんまり使ってないんじゃね?

 

 

「あの程度で複雑か…」

 

 

 あーほら、鬼とか相手だとそんな複雑な小手先の駆け引きってあんまりしないから。圧倒的な膂力と体躯で押してくるし、鬼の足を相手に無駄に剣筋捻っても意味ないからな。

 

 

「今回のお前と同じように、か。成程、確かに鬼を相手にした実戦が不足しているな。感謝する。参考になった。…神無、いつまで呆然としている。礼をしろ」

 

 

 刀也に活を入れられ、我に返った神無は立ち上がって礼をする。俺も細かい礼儀とか分からないが、稽古の後には互いに礼だよな。稽古の前は奇襲アリだが。

 

 

「…また頼む。次は勝つ」

 

 

 言葉少なに、それだけ言われた。ショックではあったようだが、我に返るとすぐに対抗意識メラメラな目になってたのはいい事だ。負けず嫌いはいい文明…なのか?

 報酬は、ハクはいいから真鶴さんを紹介してくれ…と言おうかと思ったんだが、なんかヤな予感がして止めておいた。神無、シスコンっぽいからな。

 

 

 

 とりあえず、今日確認できた事は…。

 まずサムライ達の数。人数的に見れば、鬼内の戦闘要員よりも若干少ない程度か。訓練を初めて間もない者も多く、戦力として数えられる者はもっと少ない。

 しかし、サムライ達の剣術は対人能力に優れており、そういう点では鬼内達……もとい、彼らを捕らえていたモノノフ達のような連中と戦う事になったら、幾分有利に立てるだろう。

 

 総合的に見れば、やはり鬼内達の方に分があるな。この里は元々彼らの地元だし、人数も鬼内の方が多いし、タマフリの使い方もよく分かっている。

 だがサムライ達は今でも、あちこちで生き残った一般人を吸収しており、徐々に戦力は増えて行っている。…モノノフ達に虐げられた人間も多い。それだけ不和の目を抱え込んでいると言う事でもあるが、そこは刀也が上手くやっているらしい。

 助けられた人達にしてみれば、言わば恩人でもある訳だからな。その人に「抑えろ」と言われれば、多少は大人しくもなろう。いつまで保つかは分からんが。それに、刀也に対して「この人なら自分達の居場所をどうにかしてくれる」という期待も集まっているっぽい。……身勝手な期待かどうかは、微妙な所だ。

 

 

 と言うか…刀也も神無も、何人か殺ってるな、アレ。実戦経験済みの強さだぞ。しかも鬼が相手の実戦じゃない、人間相手だ。

 やっぱり、奴隷扱い状態だった人達を助ける為に、モノノフとやりあったんだろうか。

 ま、殺しに関して何か言えるような立場じゃないな。毎回毎回、GE世界で一人は始末してる身だし。しかも実にお手軽に。

 

 

 

 

 

 

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