※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

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ようやくVita版のアップデートが出来ました。
家の無線では結局何処が悪いのか分からなかったので、Wi2に契約してアクセススポット。
皆様、本当にありがとうございました。
次のアップデートに備える為、これからも原因は追究していく所存であります。

Vita版の画像があまりにきれいなので、現在そっちをやり直し中。
初回はキークエストばかり進めて梃子摺りまくったので、ちゃんと防具を調えながら進めます。


第20話

 

外伝月百鬼隊相馬視点ただし少佐シーンは無いよ日

 

 

 俺の名は相馬。

 百鬼隊の三番隊隊長、死んでいった仲間達の願いを背負い、鬼と戦う英雄だ。

 

 オオマガドキの戦いから、もう8年。

 あれから俺は、鬼と戦いながらも異界に沈んだ隊員達を探し回り、同時に外の世界の生き残りを探し続けている。

 

 7年かけて、見つかっていない隊員はあと一人…というところまで辿りついた。

 しかしその一方で、外の世界の生き残りは痕跡すらも見つからない。

 

 生き残りは絶対に居る。

 そう信じて探し続けた。

 だが、何処に行っても見えるのは、鬼達に荒らされきった異界の廃墟のみ…。

 

 居ないのか?

 生き残りは居ないのか?

 オオマガドキを生き延びていたとしても、外の国が異界の中に沈んで、もう8年。

 鍛えられたモノノフでさえ、異界の中に居られるのは半日が限度。

 生き延びている可能性は………いや、0でない以上はまだ目はある!

 

 異界の中で時間を越えた例もあるし、同じように飛ばされているかもしれん。

 ひょっとしたら、奇跡的に瘴気の免疫を作る事に成功し、鬼達から隠れて生き延びているかもしれん!

 だから俺は生き残りを探す。

 

 

 あのオオマガドキで、皆が死んでいったのが無駄ではないと示す為にも。

 

 

 

 

 

 そう信じ続けて、8年間異界を彷徨ったが……キツいな。

 誰にも言えんが、最近は心が折れかけているのが自分でも分かる。

 最初は「次の異界こそは!」と思っていたが、「ここもか…次もなのか」と、諦観気味になっていた。

 

 …次の里は、ロウマンの里か。

 願わくば、痕跡の一つでも捕らえられるように…。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな事を考えて、異界に赴く前に旅の疲れを癒していると、ロウマンの里が突如騒がしくなった。

 鬼の襲撃……ではないな。

 殺気立った気配が無い。

 

 何事か?と思った時に、慌てた部下から報告が上がってきた。

 

 

 

 

 異界から脱出してきた生き残り…!?

 

 

 疑問を抱くヒマすらなく、俺はその場に駆けつけた。

 そこに居たのは、見慣れない洋風の格好をした、一人の男。

 体のそこかしこに汚れの後や血の後が見える。

 

 

「療養中に済まない。

 俺はモノノフの、百鬼隊の隊長を勤めている相馬という者だ。

 失礼だが、異界から逃げ延びてきたと言うのは本当か!?」

 

 

 面食らった様子だが、頷かれた。

 …この時の俺の醜態は、あまり思い出したくない。

 思いっきり殴り飛ばされたようだし…。

 

 と言うより、さっさと忘れろ。

 

 だが、それだけの感動があったのも事実だ。

 

 

 無駄ではなかった。

 俺達が見つけ出して助けたのではないが、生き残りは確かに居た…!

 一人居るなら、まだ他に居る可能性はある。

 

 諦めかけていた心に、力が漲ってくるのが分かった。

 ああ、これでまた俺は戦える。

 折れかけた剣ではなく、皆の願いを背負う英雄として戦える。

 

 

 とは言え、最近強行軍ばかりだったのも事実。

 霊山からも少しは休めと指示が来ていた事だし、この里で少し休ませてもらうとしよう。

 

 他の隊員達にも、彼と話す機会を与えてやりたい。

 自分がやっていた事は決して徒労ではないと、実感させたい。

 その達成感は、何よりも人間を動かす動力となるだろう。

 

 

 しかし、気になるのは異界の中でどうやって生き延びたのか、だ。

 異界の中は瘴気に溢れ、生物にとっては息をするだけで毒を取り込むのと同義の世界。

 モノノフでさえ、瘴気に耐え切れず、鬼祓による浄化も間に合わず、体調を崩す者は珍しくない。

 それが8年間も?

 ……何か理由があるのだろうか。

 

 

 

 

 

 そう考えていたら、彼のほうから相談してきた。

 そもそも一体、これはどういう状況なのか、と。

 成程、彼は中つ国の外…というより、元はモノノフが表舞台に立っていない世界で生きていた住人だ。

 鬼だのオオマガドキだの、想像すらしなかっただろう。

 

 会話の取っ掛かりとしては丁度いいし、色々と教え込む。

 …随分素直に信じるな……まぁ、鬼を何年も見ながら生き延びたのであれば、それもおかしくはないが。

 その時にどうやって生き延びたのか聞いてみたのだが、これが仰天。

 

 

 モノノフの技を会得しているのを見せ付けられた。

 しかも、名前は分からないがミタマまで宿している。

 外の世界の人間が?

 何故?

 

 詳しく聞いてみたが、実家にモノノフの技が伝わっていたらしい。

 成程、いかにモノノフと言えど、ずっと表舞台と交流が無かった訳ではない。

 何かと閉鎖的だったのは否定できないが、過去には外の世界に流れていった者も居たと聞く。

 何を隠そう、俺の2~3代前の家長の兄も、外の世界の人間の婿になってモノノフを引退したとか何とか…。

 

 という事は、存外コイツは俺の従兄弟なのかもしれないな。

 …流石にそれは夢を見すぎか。

 

 

 

 

 そこまでは良かったのだ。

 驚きはしたが、疑念を持ってはいなかった。

 

 

 

 そう、疑念だ。

 ようやく見つけた生き残りに、今の俺は疑問を抱いている。

 見つけた生き残りが、モノノフの血筋だったから?

 違う。

 確率的には確かに天文学的かもしれないが、有り得ない話ではない。

 むしろ、そうであるからこそ生き延びられたのではないか、という論が成り立つ。

 

 では何が問題だったのか?

 

 少し見て欲しい、と言われた、彼の実家に伝わっていたというモノノフの技が問題だった。

 聞くところによると、彼の実家には幾つかのモノノフの技と、それに由来するものと思しき道具が幾つかあったらしい。

 

 道具の方は、この際いい。

 よく分からない代物が多くあったが、外の世界にはこういった物が結構あったと聞いた事がある。

 なんと言ったか………たしか、『こすぷれいあ』だったか?

 『こすぷれいあ』は、国の中心近くで主催される大きな政(マツリゴト)に密かに参加し、秘伝の装備を身につけその威を振るう世間一般のニンゲンには縁遠い者達の事だったと聞く。

 非常に大きな集団で、全国各地にその関係者が居るにも関わらず、その実体は一般的には知られていないとか。

 彼の実家とやらも、その『こすぷれいあ』であるなら、これらの道具にも納得がいく。

 

 

 

 

 だが、あの武芸は何だ?

 彼の習熟度は、別に構わない。

 荒削りな部分は多いが、独学で学び、異界で磨いてきたと思えば、おかしい程ではない。

 

 何が問題なのかというと……『新しすぎる』のだ。

 

 俺達モノノフが使う武芸は、鬼を相手にする為のものだ。

 『鬼』というと、外の世界の人間は古風な印象を抱くかもしれないが、とんでもない。

 

 確かに古い鬼ほど強力な力を持つ傾向にあるが、鬼は常にその姿を変え性質を変え、進化を続けている。

 それに対抗する為、我々モノノフの技も常に進化を続けている。

 

 彼が見せた技の幾つかには、つい最近普及した独特の技が、幾つも盛り込まれていた。

 あれが2~3代前の先祖から伝わった技?

 

 

 

 馬鹿な。

 

 

 

 あの型は2年ほど前に、オオマガドキの激戦の中で急激に磨き上げられたモノノフ達の技を結集し、分析して作られた最新の武だ。

 もし本当に、2~3代前…つまりは10年以上前にあの型が普及していたのなら、オオマガドキの被害がどれだけ抑えられた事か。

 

 あの時に、あの時に、あの………時に……この技術を、俺が知っていれば……あいつらは、少なくとも6人死なずに済んだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 取り乱した。

 以上の事から、俺は疑念を持った。

 

 最初は、実は何処かの里の生き残りなのかと思った。

 だが、彼の服装を見るに、俺が知る限りの里の中で生きていた訳ではなさそうだ。

 

 彼が外の世界の生き残りである事は、間違いないと思う。

 だがその反面、彼は俺に何かを隠している。

 疑いたくはない。

 疑いたくはないが、目を逸らす事のできない矛盾を目にしてしまった。

 

 ならば、彼を見ねばならない。

 疑いもあるが、彼に対する疑念を払拭する為にこそ、彼を観察せねばならない。

 …俺は、百鬼隊の部下達に、密かに彼を監視するよう命を出した。

 

 

 

 

 

 暫くの間、彼を見続けたが、やはり怪しいと言えば怪しい。

 日記を付けているようだが、この国の言葉ではない……いや、これは別におかしくは無いのか?

 異界に沈む前の外の世界では、異国の言葉を皆が学んでいたと言うし…。

 

 それに、奴の体の中にある妙な瘴気は何だ。

 普通、鬼祓をする事で完全に払える筈なのだが。

 

 俺の金砕棒の扱いに興味があるようなので見せてやったが、モノノフになるつもりなのだろうか?

 本人はそう細かい事まで考えてないと言っていたが、まぁ普通は確かにそうか。

 訳も分からず異界に沈められ、ようやく脱出してきたのだ。

 今後の事をすぐに考えられる筈も無い。

 

 

 …ふむ、ならば、暫く生活の面倒を見ることを条件に、霊山に連れて行くのも有りか

 不審な点はあるが鬼の回し者という訳ではないだろうし、会議で生き残り本人を見せれば、探索を中断しろという上層部への牽制にもなる。

 彼を利用する形になるが………借りはいつか返すとしよう。

 

 

 

 

 

外伝月霊山新聞社美麻視点日

 

 

 ども、霊山新聞社の青いのこと美麻っす! 

 妹の赤いの、もとい美袖共々お見知りおきを。

 

 …って言っても、正式な新聞社の記者じゃなくて、お手伝い扱いっすけどね。

 まぁ、そっちの方がいいのかもしれないっすね。

 というのも、そもそも私達のお父さんが霊山新聞社の社長なんすけど、これがどうもおかしい。

 最近、急に会社も大きくなって、新聞も沢山売れ出しました。

 

 でも、その記事が何処かおかしい。

 以前のように、霊山であった小さな出来事や、霊山の幹部がやらかしたあれこれを載せるんじゃなくて、とにかくモノノフさん方の活躍ばかり。

 いや、それが本当の事なら、別にいいっすよ。

 こんなご時勢っすから、暗い話よりも英雄譚が欲されるのは分かりますし、新聞社としても売上げを確保できないと倒産してしまいます。

 

 だから、モノノフさん達の記事ばかりになるのは、ちょっと残念だけといいんっすよ。

 でも、最近はそれだけに留まらず、「これ、本当なの?」と思うような記事ばかり。

 私と美袖も、お手伝いとして記者の真似事をする事もあるんすけど、私達が聞いてきた話と食い違うような記事が多くある。

 

 これは……何すか?

 お父さんが作る新聞は、変わってしまったんすか?

 新聞に、嘘を載せているんすか?

 

 そんな疑問を抑えきれなくなってきた頃、美袖がちょっとした情報を持ってきたんす。

 用事があってお父さんの部屋に行ったら、偶然、霊山から来た伝達事項を聞いてしまったとか。

 

 何でも、『霊山のモノノフ筆頭部隊である百鬼隊が、異界を彷徨っていた外の世界の生き残りを発見した』という記事を載せるように…という命令だったとか。

 ……これは、本当の事っすか?

 オオマガドキで世界が一変してしまってから、もう8年。

 中つ国以外の国の生存は疑問視され、今となってはもう諦められていた程っす。

 それが、今更見つかった?

 

 

 普通に考えれば、嘘っすね。

 でも美袖は、『これは本人から言い出した事だ。 奴がモノノフとなる事も、己の情報を使ってモノノフの士気を上げる事も、だ。 あの男は只者ではない。 凄まじい気迫、堂々とした振る舞い……まるで歴戦のモノノフを相手にしているようだった』という言葉も聞いていたんす。

 少なくとも、外の世界の生き残り…と主張している人は存在する。

 

 となれば、確かめに行くしかないっしょ!

 美袖と一緒に、その生き残りに取材に出かける一団を尾行して(こういう時の美袖は異様に頼りになる…)、居場所を突き止め、翌日に突撃する。

 

 幸い、取材は受けてもらえたっす。

 いい人っすね、この生き残りさん。

 

 

 

 

 

 でも、分かった事は……やっぱり、お父さんは新聞に嘘を載せているって事でした。

 外の世界の生き残りなのは本当だったみたいっすけど、それ以外は嘘っぱち。

 …情報操作を自分から言い出した、って所も聞いてみたんすけど……今思うと、なーんか反応がおかしかったっすね?

 

 でも、あの時はお父さんの新聞が変わってしまった事が哀しくて、それどころじゃなかったす。

 ついその場で涙を抑えきれなくなってしまって……気がつけば、朝になるまで泣きとおしていたようっす。

 …生き残りさん、女の涙を見ないフリするのはいいんすけど、流石に放置はどうかと思うっすよ?

 

 

 

 

 ま、それはそれとして。

 お父さんの新聞が変わってしまったのは分かったけど、それで何ができる訳でもなく。

 美袖と一緒に、何か出来る事はないかと頭を悩ませ、時々彼の家に押しかける日々を送っていたっす。

 取材のお礼に彼の相談に乗ったりもしましたが……なんでウタカタに行きたいんすかね?

 

 

 …近い内に大騒動が起こるかもしれない?

 何すかそれ?

 どういう意味っすか?

 嘘を吐かなかったのはありがたいっすけど、それはそれで意味が分からないっす。

 

 

 でも、ウタカタっすか…。

 あそこなら霊山の手も及びにくいし、本物のモノノフ達に触れるのも難しくない。

 ……なんて事を考えていたら、美袖の方から「ウタカタに行こう」と提案。

 いやぁ、血が繋がってなくても姉妹っすね。

 考える事は似たようなものっす。

 

 

 しかも奇遇な事に、彼も希望通りにウタカタに行くって話しを聞きました。

 これは何という渡りに船!

 旅は道連れ世は呉越同舟、折角だから一緒にいかせて貰うっすよ!

 

 

 

 

 

 

 

 この後、旅をナメてたツケを受けて蛇を食べるハメになったり、何故か彼と同居する事になったりしたんすが…それはまた別の話で。

 

 

 

 

外伝月大和視点日

 

 俺は大和。

 ウタカタの頭を務めている。

 

 ここ、ウタカタは最前線だけあって、鬼の襲撃が無い日の方が珍しい里だ。

 それでも里の皆は逞しく生きているし、それを守るモノノフ達も手練が多い……俺にしてみればまだまだ未熟者ばかりだがな。

 

 さて、この度霊山から指示を受け取った。

 新人をここに送るので鍛え上げろ、という旨だ。

 

 こちらとしても、人手が増えるのはありがたい。

 というより、以前から増援を要求してはいたが、正直な話通るとは思っていなかった。

 霊山の連中は、頭が堅いからな…。

 ウタカタを捨ててでも霊山を守り抜こうとしているのが透けて見える。

 

 馬鹿者共め。

 確かに霊山はモノノフの本拠地であり、あそこを潰されれば全ての里が瓦解する。

 だが逆に、周囲の里があるからこそ、霊山を含む一帯の結界が守られていると何故理解できんのか。

 

 …話が反れたな。

 ともかく、問題はこの新人だ。

 

 新人が突然最前線に放り込まれて生き延びれるかという問題もあるが、それ以上によく分からないのがこの新人の素性である。

 伝令では、「外の世界の生き残り」「異界の中から自力で脱出してきた」「モノノフの血筋を引いており、家に伝わっていたモノノフの技も一通り習得している」「小型の鬼の相手なら充分戦える」とある。

 ……生き残りがいたのは、別にいい。

 確か相馬が、8年前から生き残り捜索の任についていたしな……一人とは言え、生き残りが居たのは喜ばしい。

 それが何故モノノフとして戦おうと思ったのかは知らんが…。

 

 とにかく、話に聞いただけではとても信じられん内容だ。

 事実、話を聞いた桜花も「本当なのですか?」と首を傾げたくらいだ。

 これが事実なのか、それとも霊山の阿呆共が「そういう事にしておけ」と言っているのか…。

 後者だとすれば、その意図が掴めん。

 

 

 何れにせよ、戦力が増える事自体は歓迎だ。

 現在、里に居るのは桜花だけなので、教育を任せる事になるが……暫く気にかけておくとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新入りがウタカタに到着した。

 なにやら二人ほど連れが居る。

 特別な関係という訳でもないようだが……単に道連れになっただけか?

 わざわざ霊山から最前線に来るとは物好きな。

 

 新入りは相馬から手紙を預かっていた。

 幾分懐かしく思いながら目を通すと……新入りに気をつけろ?

 

 …ほう、外の国の生き残りなのは事実……しかも自力で異界から脱出したのか。

 だが、モノノフとしての技術を受け継いでいて……しかしそれが新しすぎる。

 

 ふむ……相馬が態々手紙を送ってきた理由はこれか。

 確かに明らかな矛盾がある。

 しかも、ようやく見つけた生き残りを相馬が疑っている辺り、他にも根拠はあると見た。

 

 確かに、俺としてもおかしいと思う点はある。

 桜花は気付かなかったようだが、外の世界の人間にしては、あの新入りは鍛えられすぎている。

 オオマガドキ以前、何度か外の世界の人間と触れる機会があったから分かるのだが…彼らは言っては何だが、とにかく貧弱だ。

 鍛えられている『ぼでぃびるだぁ』なる職種の人間も、殆どが戦いに耐えられるような鍛え方はしていなかった。

 あの新入りが例外なだけという見方もできんではないが…。

 

 

 まぁいい。

 どちらにせよ、援軍としてよこされた事には違いない。

 暫くはその働きを見て、奴の本性を見極めるとしよう。

 

 桜花には知らせない方がいいだろう。

 芝居は苦手な奴だし、余計な疑念は剣を曇らせる。

 

 やれやれ…見方を疑いたい訳ではないが、これも頭の務めか。

 願わくば、奴が敵でない事を祈る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 奴がウタカタに到着してから、暫くが過ぎた。

 働きは上々と言っていいだろう。

 怪しげな行動を取っている訳でもないし、里人に何かする事も無い。

 強いて言うなら、神木に祭られている社の手入れをしているくらいか。

 …神木はウタカタにとって生命線と言える木だ。

 近付いた時には最初は警戒したが、不自然な動作も見受けられん。

 ……単に社を掃除するだけか?

 それはそれで感心な事だが…。

 

 それはそれとして、天狐が怯えているのはいただけんな。

 あの食料を見る目をどうにかした方がいいか…。

 天狐だけならともかく速鳥辺りが暴発しかねん。

 

 

 

 

 

 

 

 更に暫く時間が流れた。

 正直、警戒するような事は無い…と結論が出かけているが、最近になって妙な動きをし始めた。

 化けの皮が剥がれた…という事ではない。

 妙に長時間、異界で戦っていたり、鬼達から取れる素材を集めているようなのだ。

 素材を集めて鍛冶等に使う事もあるが、奴にそのような技術は無いし、依頼が出ている訳でもない。

 何に使うつもりなのやら。

 

 いや、それよりもおかしいのは、奴が異界に潜っていられる時間だ。

 鍛えられたモノノフでさえ、1時間も潜っていれば限界が来るというのに、奴はその2倍も3倍も潜り続ける。

 しかも、戻ってきたら戻ってきたで、異界の瘴気を体の中に宿している。

 

 瘴気は常に完全に祓っておかねば、その身を蝕む毒と化す。

 これはモノノフの常識だ。

 

 

 何を考えているのか問い詰めたが………長い異界暮らしを続けていたので体が慣れた?

 瘴気が無いと逆に力がわかない?

 あと、『ひゆんける』とは誰の事だ。

 

 

 …そういう事もある、のか…?

 常識では考えられん事だが、そもそも異界で何年も生きた時点で常識外れだ。

 免疫の一つでもできない事には、生き延びるどころか逃げ惑う事すらできんだろう。

 

 判断しかねる。

 とは言え、里の中に瘴気を持ち込むのが好ましくないのは変わりない。

 任務帰りのモノノフ達は必ず鬼祓を徹底し、体を浄化してから里に入るし、瘴気を孕むような鬼の素材は厳重に管理されている。

 

 ………ここで止めさせるのは簡単だが……何かが引っかかる。

 俺の勘に過ぎないが、無理にやめさせると、とてつもなく厄介な『何か』が動き出すような…。

 

 気のせいと切って捨てるのは簡単だったが、どうしてもそうする気になれなかった。

 …俺が危険と判断したら、理由と状況を問わず止める事を条件に、続行を許可した。

 

 暫く泳がせる。

 俺も、相馬同様あの新入りに疑念を持ち始めていた。

 

 

 

 

 

 

 それから暫くして、奴が初穂や息吹と共にミフチを討ち果たし、一人前と言えるようになって。

 富獄、那木と共に任務に向かうようになってからも、特に怪しいと言える挙動は見せず。

 

 なにやら新たな武器の使い方を試行錯誤しているらしい、と聞いた頃だった。

 

 

 

 里の鐘が鳴り響く。

 それも、いつもとは違う…普段以上に大規模な襲撃を知らせる鐘が。

 

 …疑念やらなにやら、小難しい話は棚上げだ。

 生きて帰れ、

 必ず、全員で。

 

 




少佐は…少佐シーンは俺には無理ッス。
ネタで書いた事はありますが、手に負えませぬ。
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