※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

202 / 611
寒くなってきました。
季節に合わせた格好をしましょう。


…いや、休日でコタツに入ってるからって、トランクス一丁でビール飲みながら窓開けてゲームしてちゃいかんな、と…。
微妙に風邪気味。当たり前かw


第202話

 

 

凶星月

 

 

 とりあえず、博士からの許可は出た。取引の詳細については俺に丸投げし、最後の纏めだけ見せろ、との事。そこで不備があれば指摘するそうだが…不安だ。

 やらかしてしまったのに加え、仮に取引が成立したとして、博士がそれにまともに対応するかが不安だ…。

 

 

 まぁ、ともあれ西歌のお頭との話し合いに入る訳だが、現状で完成している鬼の手が一つある。ホロウの手に装着されているヤツ。

 実物があるなら、使えるかどうか直接見てもらえばいいじゃない。

 という訳なんで、俺、ホロウ、西歌のお頭、そして紅月さんの4人で哨戒任務。里のお頭に哨戒なんて仕事をさせるのは恐れ多い、という声も上がったが、本人も乗り気だし、最近執務ばかりで戦ってないし、何より自分が治める場所を自分の目で確認しておく事は非常に重要な事だ。

 お頭の鶴の一声で、哨戒とそのお供は決まった。

 

 

 最近、問題になっている盗賊もまだ見つかっていない。頻繁に異界の中から出入りしているようだから、死んではいないと思うのだが。

 

 

 

 

 さて、いつの間にやら鬼疾風を身に着けていた西歌のお頭(ホロウと話した時に教えてもらっていたらしい)と共に、適当に異界を歩き回る。

 今回はお頭と一緒なので、鬼内しか通されない、武の異界にも行ける。…のはいいんだけど、寒いなオイ。延々と雪が降っとるわ。

 

 とりあえずホロウと一緒に雪だるま作って遊んでたら、紅月に怒られた。いや、単に遊んでただけじゃないんよ?

 具体的には、雪だるまの中に紅月が作った劇物…は言い過ぎだから、嫌がらせにもにも使える失敗作料理を仕込んだり、例によって大樽爆弾仕込んだりしただけだよ。

 

 

「劇物…嫌がらせにも使える…」

 

「しっかりしてください紅月。ご飯が不味いのは弁護のしようもありませんが、自覚して努力しているなら酌量の余地はあります」

 

「私としては、知らない間に大量の火薬が里に運び込まれていたと言う事の方が気になるんだが」

 

 

 西歌のお頭が知っている火薬とゆーのは、草とキノコ(火薬草とニトロダケ)で出来上がるものデスカ? ふつー、火薬って硝石とか硫黄とかで出来上がるモンですよね? ならば別物。持ち込まれていたのは火薬じゃない!

 

 

「原材料が違っても、性質が同じならそれは火薬だ。無断で里に危険物を持ち込むのは見過ごせん。出せ。無料でとは言わん、火薬は買い取ろう」

 

 

 ですよねー。まぁ、対価をもらえるだけマシか。

 …原料の草とキノコまでは別にいーよね、うん。

 

 

 …あ、雪だるまを壊した餓鬼が吹っ飛んだ。

 

 

「餓鬼1体程度に、大量の火薬を使うなんて勿体ない。銃弾一発、多くても2発分で十分さ」

 

 

 まぁ、確かにコスト的にどうかと思ったわ。もっと沢山引き付けてから吹っ飛ばさんと。

 それはともかく、そろそろ鬼の手の実験行こうか。適当な大物を探そう。

 

 

 

 そういう事になったのだ。

 ちなみに新発見が一つある。鬼疾風は、どうも足元の悪さに殆ど影響されないらしい。足元が雪で覆われてるから、すっ転ぶ可能性が高いし、踏ん張りも効きそうにないなー、と思ってたんだが、逆だ。

 鬼疾風の移動方法は、霊力を使って足元に作ったレールの上をすべるようなやり方だ。足元が幾ら悪路だったとしても、その上に移動しやすい道を一つ作っているようなものなので、逆に安定性が高いらしい。熱の問題さえどうにかすれば、マグマの上だって走れるんじゃないだろうか。

 

 しかし、空中を走るには…木の枝でもいいから、足場があればともかく…出力が足りんな。やっぱ、空中を移動するには縦方向…或いは斜めへの高い瞬発力、或いはそこそこ程度の出力と高い持続力が要る。………本格的に研究してみるかな、クイックブースト…緑色の汚染? とりあえず普段は霊力を調整して緑色に見せる。 何となく使えそうだけど使ってないアレに関しては、一番最初はAAとして使うと決めているでな。というか、異界の汚染を緑色の汚染で上書きしてやりたいものだ。間違いなく、今以上の大惨事になるが。

 

 

 だがそれがいい。

 

 

 

 …西歌のお頭とホロウに、「何か危険な気配を感じる」と睨まれつつ、手頃な大型鬼を探す事30分ほど。…デカい蜘蛛とかなら見かけたんだけどね。この4人だと実験の前に早々に潰しちゃうのよ。

 探し回った甲斐もあり、ミズチメを発見。こいつ矢鱈としぶとい上に鬱陶しいもんな。実験には丁度いい。

 

 

 鬼の手を着けている(俺は使えるけど、着けてはいない)ホロウを中心に立ち回る。

 俺に出来た事は、ホロウにも大体できたようだ。鬼絡、鬼返、鬼喰。これだけでも十分すぎる成果だろう。特に、鬱陶しい突進やら高速移動やらを潰せるのは本当に有難い。

 課題としては、博士が鬼の手最大の攻撃と称していた鬼葬だろうか。いや、発動自体は上手くできたんだ。こう、鬼返みたいな感じでミズチメの動きを止めて、鬼の手を拳のような形に変化させて、思いっきりブン殴る。大ダメージは与えられたようだし、部位破壊も出来た。

 

 だが、腕は吹っ飛びはしても、再生は可能なようだった。完全な部位破壊、消滅が出来ていない。いや、それにしたって効果は非常に高かったんだが。

 鬼千切と似たような成果しか出せなくても、リーチが違う。…益々影が薄くなっちゃうね、鬼千切ちゃん…。

 

 ホロウは右手をジロジロ見て、首を傾げていた。以前にもミフチを相手に鬼葬を試したらしいのだが、その時は完全消滅まで見事に持って行ったらしい。今回も同様の手応えで、確実に消滅させたと思ったのに、何故? 

 …だが、そんな不完全な鬼葬であっても、西歌のお頭と紅月には大絶賛。これは是非とも量産するべきだ、とまで言ってくれた。

 まぁ、問題はその量産が非常に難しいって事なんだけどね。取引が始まれば、カラクリ石を探してくれるモノノフも増えると思うが…。取引の為の最初の一つを作れないのがなぁ。

 

 

 …やれやれ、どっかにカラクリ石貯め込んでる人居ないかね。…そうだ、虚海とかどうかな。

 アイツ、一応陰陽方に所属してるんだし、なんかの理由で貯めこんでるかも…。

 

 

「…待て。今、聞き捨てならない言葉が聞こえたぞ」

 

 

 へ、どったのお頭?

 

 

「陰陽方、と言わなかったか」

 

 

 言った。

 

 

「…奴らに繋がりがあるのか?」

 

 

 繋がりと言うか、一方的に知ってる奴が一人所属してるよ。呪いで体を半分鬼に変えられて、一般人にはバケモノ扱いされる上にモノノフからもムラハチ喰らってグレてしまった。

 

 

「千歳の事ですか? …すみません、その陰陽方というのはどのような組織なのですか?」

 

「知らないのですか!? …あ、いえ、確かに陰陽方は、モノノフにもあまり知れ渡ってはいませんでしたね」

 

 

 まぁ、結構前に違法な研究やって、モノノフから追放された集団って程度しか俺も知らんが。

 ともかく、今現在繋がりがあるかって言うなら、それは無い。繋がりがありそうな伝手なら、幾つか心当たりがあるが…諸般の事情により、それは口に出せん。

 

 

「…そうか。いや、今現在、やつらの間諜でないなら構わない。最低限、サムライの一件が片付かねば、そちらにまで手を伸ばす余裕はない」

 

 

 さいですか。ま、妥当な判断ですな。

 そんじゃ、一旦帰りますかね。 

 

 

「…いや、少し聞いておきたい。体が鬼に変わったと言う事だが、それはどのような状態なのだ?」

 

 

 どのような、と言われてもな…。具体的に何が知りたいんだ?

 …シモから棒が生えた、って事は言わない方がいいかな…。

 

 

「里を訪れた時にすぐ分かるように、姿を知りたい。その他、瘴気を生むのか。鬼となった事による、人格への影響は? どのような呪いで鬼となった? 解呪…とは言わないまでも、その呪いを抑える方法はあるのか?」

 

 

 左半身が鬼になってる。右はクールビューティ……ええと、涼し気で冷ややかな「できる女」って印象なのに、いざ話してみるとへっぽこ。

 

 

「へっぽ……お、おおぅ…あの純真だった千歳が…」

 

 

 純真だったからこそ、悪党やろうとするとボロが出るんだよ…。

 瘴気は生まなかったな。人格への影響……も、話した分だと無かったようだ。どっちかと言うと、姿で迫害されてどんどんグレていったみたいだから、そっちのが大きい。

 

 解呪の手段があるなら、あいつの方が知りたいだろうさ。呪いは…ある鬼と戦った時にかけられた。その鬼は俺やホロウの怨敵でもある。呪いを抑えるのは……どうだろうな、少なくとも呪いを受けた時から、体はそれ以上変わらなかったようだが。(鬼化が進まなかっただけじゃなく、年齢が止まるし)

 

 

「……このような言い方をするのは憚られるのですが…体半分とは言え鬼となって、本当に大丈夫なのですか? 実は何かに操られている、とかは…」

 

 

 …次期里長候補は、慎重派でいらっしゃる。いや、皮肉じゃないよ? ムカッとは来たけど、確認しとかなきゃいかん事だろうよ。躊躇いながらもそれを聞ける辺り、いい育ち方してんじゃないの。ねぇ現お頭?

 

 

「皮肉るなぁ…。まぁ、無理もない事だし、本来私が聞かねばならん事だったが。それで、どうなんだ?」

 

 

 ねぇな。少なくとも、俺が知ってる虚海なら、って条件はつくが。あいつに呪いをかけたのは、特殊な鬼でな。ここ数十年はあいつに一切接触してない筈だ。本人に気付かれないよう、近くに行く…というのも含めて。

 それに、鬼と化しても平気なのかってんなら、実証する事も出来るぞ?

 

 

「実証? 君が私達に呪いでもかけるのか?」

 

 

 いーや、俺が鬼になる。なっている。

 

 

「…なって……いる?」

 

 

 ホロウや博士にも話しただけで、見せてなかったけどな。ホレ、これ見ろ。

 

 

 右手を前に出して…こう、何となく厨二っぽく手をカギ爪状に掴むような形にしながら、90度くらいに曲げてだな。言うなれば「あいにーどもあぱうわぁぁぁ」だ。

 

 

 

 変身!(右腕だけ)

 

 

「「なっ!?」」

 

 

 流石に驚いたらしく(無理ねーわ)、咄嗟に距離を取って刃を向ける二人。

 …俺も割と驚いたんですが。なんつーかこう、今までとはオーラが違うわ、オーラが。ドラゴンボールみたいに、燃えるようなオーラが沸き立っている。

 何の影響かって…考えるまでもない。取り込んだカラクリ石だ。

 

 

 若干予想外な部分はあったものの、ちゃんと制御下にある事には変わりない。むしろ、カラクリ石というイメージを具現化する道具が手に入った事で、霊力がコントロールしやすくなっている。ような気がしなくもない。

 

 

 …とまぁ、こういう訳だ。俺は別に呪いを受けてる訳じゃないが。

 

 

「…呪いでなければ何なのだ? 鬼が化けているんではないのか」

 

 

 違うよ。と言うか、一気に心の距離が離れた気がする。…こんなん繰り返してれば、そりゃ千歳もグレていくわな。

 

 

「無理もないでしょう。話を聞いていた私からしても、この変化は衝撃的です。鬼を討つべしと、幼い頃から教え込まれてきたモノノフにしてみれば、とても見過ごせるものではありません」

 

 

 ふむ…そういうもんか。とりあえず変身解除。だが微妙に距離を開けられたままだ。右手だけ変身にしといてよかったかな。全身を変えてたら…流石に攻撃されるとは思いたくないが。

 

 ま、とにかく…あいつは俺と違って制御はできてないが、性質的には多分似たようなものだ。呪いは既に安定してしまっているようだから、それ以上進行が進む様子もないし、何者かから操られる隙も無い。

 むしろ、今となっては鬼の体を活用する術まで作ってるみたいだぞ。…あまり好んで使う事はないようだが。

 

 

 

「……本当に、危険はないんだな?」

 

 

 少なくとも体質的な危険はな。悪意を持って何かやらかすか、って意味だと…悪いが保証はできん。かなり自棄になってる節もあったし。

 

 

「一方的に知っているだけ、というのには随分詳しいな」

 

 

 色々とややこしい事情があるんでな。まぁ…あいつがマホロバの里に来る事は無いと思うぞ。なんか色々やろうとしてる事があるみたいだから。

 

 

「そうか…。なら、これだけ聞かせてくれ。仮に誰かが君達と同じように、鬼の呪いにかかった場合、それを治療、或いは押し留める方法はあるか? 君はどうやって、姿を変えられるようになった?」

 

 

 …俺は、鬼になった切っ掛けも、制御できるようになった時の事も覚えてない。いや切っ掛けというか、どの鬼(と言うかアラガミと言うか神機と言うか)に呪いをかけられたのかは分かってるが。

 あくまで感覚で言うが…鬼と化そうとする力を、より強い力で押し留めている…ような気がする。

 あくまで感覚だぞ? 実際は、既に全身が鬼と化しているのに、上辺だけを幻術なんかで誤魔化している状態なんじゃないか、と言われると反論も出来ん。

 

 

「成程。わかった…これ以上は不問としよう」

 

「お頭!」

 

「紅月。彼は敵か?」

 

「い、いえ…敵とは言いませんが、しかし…」

 

「まぁ、お前の言いたい事も分かる。だが、人が鬼に変えられる、変わるという話は古今東西に例がある。…私達モノノフが変わった例も、幾つか伝わっている。もしもそうなってしまった時の為、経験者が居るのと居ないのとでは大違いだ」

 

「……ですが…」

 

 

 チラチラとこっちを見てくる紅月。…まー流石にこれは無理もないよな。隣人が人類の敵だったようなもんだし。

 …あと、西歌のお頭は口には出さないが、戦ったらまず間違いなく俺が勝つし。人間状態で神機無しの戦いでも、3対1でようやっと互角だったんだから。お頭達が切り札を使ってきたとしても、大抵のものは切り抜けるか耐えるかできると思う。

 

 

 ま、そっちの話し合いは気が済むまでやってくれ。とりあえず、鬼の手の検証は終わりって事でいいだろ。

 やれやれ、余計な事言っちまったなぁ…。

 

 

 

 

凶星月

 

 

 鬼の手量産についての協力を約束できたのはいいが、お頭と紅月と若干気まずい。まー、時間が解決してくれる問題だとは思うが。尤も、それまで俺が里に居続けるかは微妙なトコだけどね。

 

 博士の方も、基礎理論はほぼ完成し、後は作成に必要な材料を集めるだけって状態まで漕ぎつけたらしく、俺達が手伝える事もあまり無くなってしまった。

 現在、また一つ性能を追加する為に色々弄っているようだが、それを完成させれば、鬼の手の性能は全て発揮される…らしい。

 

 だが、肝心の異界を浄化する能力については行き詰っている。異界から適当に木の枝を取ってきて、工房の前の鉢植えに植えている(瘴気を含んだ物を無断で持ち込むのはご法度なのだが)のだが、それを相手に何度も実験し、頭をガリガリと掻き毟る博士を何度も見た。

 実のところ、異界を浄化するという話を大真面目に信じているのは博士くらいだ。俺とホロウは半信半疑、西歌のお頭は「できる物ならやってみてくれ」、他のモノノフ達に至っては鬼の手自体が胡散臭い代物にしか見えてない。

 

 …実際なぁ、どうやって広大な異界を浄化するんだよ…。いくら鬼の手がイメージを具現化するものだって、精々が目が届く場所の瘴気を散らす程度の事しかできないと思うんだが。

 ………アレか、異界を祓うと言えば、全く違うゲームだが、某ワンコの神ゲーみたいな真似すんのか。大神降ろしか? それは是非とも見てみたいな。

 

 

 

 まぁ、本格的に行き詰っているのは確かなようなので、飯時くらい頭を切り替えようぜ。

 全然違う話を色々振っていたんだが、その中で唐突な情報が出てきた。

 

 

「ああ、そうだ。お前が以前ホロウと描いていた、もんはん世界とやらで見た壁画の事だがな」

 

 

 うん?

 

 

「多分、この世界とも、もう一つの世界とも関係があるぞ」

 

 

 …なんぞ?

 工房の壁に貼り付けてある、俺提供・ホロウ画の壁画を見る。

 

 

「この部分を見てみろ。お前達の言う、イヅチカナタに文明が襲われたと思われる所だ。この後、地面が三つに分割されているだろう。これは地面、ないし国が分割されているのではない。世界が分かれているんだろうよ」

 

 

 …いやいやいや、ちょっと待てって。いくら何でも、話が飛びすぎじゃね?

 なんでいきなり世界?

 

 

「私も、最初は国程度の話かと考えたが…それにしては、お前から聞いた3つの世界で、結びつく点が多すぎる」

 

「それは…無理矢理結び付けた、という事ではないのですか?」

 

「そんな訳がなかろう、ホロウ。…詳細は省くが、私には古代文明…例えば、この近辺に散乱している碑文を残した文明だが…についての知識がある。それに照らし合わせての事だ」

 

 

 …具体的には?

 

 

「この絵にある…これとかな。お前が塔と言っていただろう。この先端から、棒が伸びているが、これはイヅチカナタを討伐する為の刺客…つまりホロウや、それに近い存在を送り出した事を記している。その後三つに分かれたのが世界。…恐らく、ホロウを送り出した塔と言うのは、お前がこの壁画を見つけた塔か…その一つなんだろう」

 

 

 …あー、確かに霊力が物凄い霊力の残滓が渦巻いてる塔があったわ。つまりアレか、あの霊力は世界を超えてホロウその他を送り出す為に使った霊力で、それが奇跡的に一つ残ってたって事か。もう思いっきりぶち壊しちゃったけど。

 

 

「もう一度その世界に戻れば、元通りになっているんだろう? 調査して…も、お前じゃ何もわからんか。世界を3つに割る力…。それがイヅチカナタが行った物なのか、それとも何らかの災厄から逃れる為に人為的に行った物なのか、或いは超自然的な何かの作用かは……む? どうした、ホロウ」

 

「………いえ、何か思い出しそうになっただけです。くしゃみが出そうで出なかったような気分です」

 

「…その例えはともかくとして、やはりこの推論で当たりの可能性が高いな。今の話の何かが、ホロウの記憶に触れたのかもしれん。…因果を奪う力…か。仮に、仮にだ。その力が最大限まで高まれば、組み合わせた木材の継ぎ目を引き千切るように、世界を無理矢理分けてしまう事もできるのかもしれん。…妄想の領域だがな」

 

 

 

 言うべきことは言った、とばかりに、知らん顔して味噌汁を啜る博士。

 

 うーむ。どうなんだろう。

 これが大正解とは限らないが、3つの世界に繋がりがある事は、薄々ながらもほぼ確定だろうなぁと考えつつやっぱ短絡的な妄想かなぁと二の足を踏んでいた訳ですが。

 

 

 しかし、これが本当なら…? 俺はどうして、この3つの世界を延々と移動しているんだろうか?

 ……まぁ、考えはある…あるんだが…やっぱ妄想だしなぁ。

 

 

 

 とりあえず、イヅチを斬る事だけを考えるかな。謎解きはその後だ。

 

 

 

 

凶星月

 

 

 博士が新しい鬼の手の使い方を発明してきた。

 その為に調節しているってのは聞いてたが、どういう物かは教えてくれなかったな。…ホロウには話してたのに。

 何で秘密にしとったん?

 

 …自分が必死に研究してたのに、俺があっさり実現させたからイラッと来た? 今度は先に実現してやると決意してた?

 …ああまぁ、気持ちは分からんでもないけども。

 

 

 さて、その新しい使い方だが…アラタマフリ、ニギタマフリと言う。…改めて思うが、タマフリって知らない人が聞いたら卑猥な連想せんかな。クレヨンしんちゃんのダンスをもっと滑稽にした感じの。だってタマを振るんだぞ、玉を。魂よりもボールが先に思い浮かぶわ。

 それはともかく、このアラタマフリ、ニギタマフリだが、武器や防具、そして鬼の手にミタマを宿して特殊なタマフリを行う事だと言う。通常のタマフリよりも効果が高かったり、普通ではない効果が出るが、アラタマフリは何かしらのデメリットが併発し、ニギタマフリは任意発動が出来ない半ばオートのタマフリだとか。

 

 武器と防具と鬼の手にそれぞれミタマを宿すって事は、最低でもミタマを3つ宿さなければいかんのじゃないか?と思ったが、そうじゃなかった。

 鬼の手に一体のミタマを宿せば、それを増幅器として武器、防具にもミタマが宿ったような状態になる…そうな。まぁ、ミタマ自体にも分霊みたいな性質はあるし、分身モドキしたとしてもそこまで不思議ではないか。

 

 

 

 でもさぁ、俺の場合はそれぞれにミタマを宿す事は出来る訳よ。ここんとこずーーーーっと無視し続けてた、のっぺらトリオが居るからさ。

 …で、仮にそれを実行した場合…。①鬼の手に宿るのっぺらミタマ(煽り芸)②武器に宿るのっぺらミタマ(戦ってる最中にも騒ぐ騒ぐ)③防具に宿るのっぺらミタマ(…防具に宿ってるって事は、抱き着かれているようなもの…?)…となる訳だ。

 正直、瘴気を保てるか怪しいレベル。クトゥルフ神話並みのSAN値直葬。

 

 …実際、GE世界の月で3年暮らした時は、動くものも無けりゃ退屈しのぎにできるような事もなくて、外的刺激(ある意味内的だが)がこいつらだけだったんだが…それでも一切を無視してたんだよなぁ。こいつらを見続けてるよりは、誰も居ない何も起きない孤独と退屈の方がまだマシだって。

 一時期、こいつらを見物してたんだが…うん、まぁ、やっぱどんな状況でも好き好んで見るようなもんじゃないわ。

 

 

 しかし、それはそれとして新戦術が欲しいのも事実。鬼の手や武器にミタマを宿したからと言って、それらが何かできる訳でもないし…気分の問題、なのかな…。 

 普通のミタマは時々…具体的には鬼に勝った時とかに一言二言呟く事もあるらしいが、あいにくのっぺらには口が無いし耳も無い。実のところ、今でも意思疎通はまるで出来てなかったりする。

 

 

 

 ………やっぱ好き勝手やりそうな気がするなぁ。鬼の手を具現化しようとした途端、いきなりのっぺらが具現化したらどうしよ。

 …金棒代わりにするか、囮にすればいいか。うん、そう考えると何だか気が楽になってきた。新機能とやら、俺にも使えるか試してみよう。

 

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