※この作品はR-18です。

狩りゲー世界転生輪   作:時守 暦

205 / 611
帯状疱疹もほぼ治り、昨日から出勤です。
長期休暇をいただきましたが、こんなに嬉しくない休暇は初めてだったよ…。

ゼノバース2もクリアし、エキスパートミッションもすべて終了。
楽しくはあったんだけど、流石に飽きるなぁ…。パラレルクエストは約70%です。
トロフィーコンプを狙おうかと思ったけど、エンドレスバトルとか相手がなぁ…。

新しい暇潰しとして、Gジェネ買おうかな…。でも原作追体験型か…クロスは無いのか…。
それともウォッチドッグス2…アサクリはまだだしなぁ…。




…気が付けば、体験版と間違えてDestinyを購入していた…うぼぁ
まぁ、タイムアベンジャー辺りじゃなかっただけマシか…。




第205話

凶星月

 

 異界を歩き回って、適当にその辺で狩りをしていた。ここの所、神機を全然使ってなかったので、動作チェックも含めて。

 それは別にいい。神機にも問題は無かったし、さしたる強敵も居なかった。

 

 

 …だが、妙なストーカーが出来てしまった。そいつの名は清磨。出会った時は、自称『最強天才鍛冶師』。…鍛冶師が最強って、殴り合いが強いのかね?

 そして今は、『最強の武器を目指す天才鍛冶師』だ。

 

 事の起こりは、よくある話だ。適当にウロチョロしていると、小型鬼の群れに襲われている人を見つけた。珍しいな、と思ったのは、襲われている人がモノノフではなかった事だ。武器こそ持っているが、護身用以上の意味は無いらしく…或いは、鬼を追い払う事はできてないから、護身にすらなってないが…また動きも明らかに戦う訓練を受けた者ではない。

 放っておくのも気分が悪いので、サクサク助けた。

 

 

 ここで神機を使ったのが間違いだったなぁ…。いや、使ったって言っても、普通の武器と同じ扱いだよ? 銃形態も盾形態も使わなかったし、プレデターフォームなんて見せてもいない。当然、リンクバーストだって使ってない。

 形は珍しいけど、単なる太刀みたいなもの……だったのに。

 

 

「その太刀は一体なんだ!?」

 

 

 …助けられた礼も無しに、第一声がコレだったよ。見せろと神機に触りにくるけど、それ触ったら侵食されて死ぬぞ? 俺のカラダの一部みたいなもんでも、そこまでコントロールできるか分からないしな。

 とりあえず張り倒して、俺以外が触れたら速攻で死ぬ呪いがかかっていると説得。納得してなかったようだが、プレデターフォームを見せたら嫌が応にも理解したようだ。見慣れない人間からすればグロテスク極まりないし、何より捕食者のプレッシャーが強いもんな。

 

 で、清磨と名乗ったそいつは、上記にも書いた通り、最強天才鍛冶師…と名乗り、すぐに最強の武器を目指す天才鍛冶師、と名乗りを改めた。

 とりあえず異界から連れ出して話を聞いてみると、名乗りの通りに鍛冶師であり、強い武器を作る方法を求め続けているらしい。本人の腕前も…少なくとも、持っていた武器を見るに…かなりのものだ。この若さで、そんじょそこらの鍛冶師より、ずっといい仕事をしている。

 

 だが、それ故に学べる相手も居らず、更なる上達が見込めず、やがて自分こそが最高の鍛冶師なのだと思うようになり始めた。勿論、それが己惚れである事は自覚していたが、実際に自分以上の鍛冶師が居ない状況では、その思い上がりを払拭するのは難しい。

 せめて更なる領域への手掛かりを得られないかと、異界を彷徨っていたところ、見た事もない金属で構成されている俺の武器…神機を目にした。

 

 カルチャーショックってレベルじゃなかったようだ。使われている金属は完全に未知で、作り方も加工の仕方も分からない。武器の形状は複雑で何かしらの仕掛けがあるようだが、形状の一つ一つに意味があり、今まで自分が作ってきた武器とは比べ物にならない技術が使われているのが分かる。

 鍛冶師の頂点を見たと思っていたら、それはそこらへんの小さな丘でしかなく、突然目の前に断崖絶壁が現れたような…。

 

 

 

 

 うん、その辺の語りには興味ないわ。好きなだけ、ヤックデカルチャーと叫んでくれ。

 まーとにかく、そーいう訳で清磨とやらは、俺の武器に執着して里までついてきてしまった訳だ。

 結構な有名人らしく、里では歓迎も受けていた。里の鍛冶師に技術を教える事で、里に定住する許可も得て、更にそれで給料まで出るとか。

 

 サムライにも歓迎されてた。まだ彼らがマホロバに来てなかった頃、武器を作ってやったことがあるとか何とか。うーむ、意外な繋がり。

 

 

 とりあえず、今は呪いがあるからって事で神機には触れていないが、正直時間の問題だ。あれはリスクとか考えずに我が道を突っ走る人種だ。

 俺の神機に勝手に触って勝手に死ぬのは知った事じゃないが、それで管理責任って事になるのも面倒だしな。

 

 

 …と言う訳で、神機以外の武器を渡してみた。MH世界で作った古龍素材の武器と、前の討鬼伝世界でウタカタのタタラさんに作ってもらった武器。

 これまた二つ共にショックを受けていたようだが、より興味を惹かれたのはタタラさん作の武器らしい。MH世界の未知の素材も気になるが、タタラさんの武器は作り方も理解できるし、素材も分かる。しかしそれに使わている作り手の技量が、明らかに自分よりも一つ二つ上を行っている…らしい。

 よーわからんけどな。武器についての知識もそこそこ程度にはあるが、専門的なのはサッパリだ。精々「このハサミ、よく切れそうだな」くらいの事しかわからん。

 

 

 

 

 

 まー野郎の事はどうでもいい。ウタカタまでついてきそうな勢いだが、そうなったらタタラさんに押し付けりゃいいか。見た目も中身も職人気質な人だから、会わせてどうなるかはわからんけども。

 

 

 

 

 

 さて、話は変わるが、マホロバの里に滞在して一か月が経つ。それでもウタカタの里で大きな戦が起きた、と言う話は聞かないから、やっぱり俺が…或いはゲームシナリオの主人公格を務められる誰かが行かなきゃ、イベントは起きない…いや、違うな。異界の侵食は進んでいるだろうし、オオマガトキを起こす為の鬼達の動きだっておきている筈。

 正確に言えば、『主人公が居なければ、問題が明るみにならない』…そこまで争いが激化しないって事かな。

 たぶん、大物の鬼達は、オオマガトキを起こす為の準備を主な任務としているんだろう。前線でのモノノフ達との闘いは、下級の鬼に任せたかった。しかし主人公がやってきた事で、モノノフに押されないよう、大物達も前線に出る必要が出てきて、その結果…と言う事か。

 

 まぁ、所詮は単なる想像だが。

 しかし、もしそうだとするとヤバいな。俺らがウタカタに到着した時には、オオマガトキは既に発動寸前って事もあるかもしれない。しかし、ここまで来たらもう仕方がない。実験と、今後の戦力増強の為に割り切るしかない。

 

 

 でもそれも、もうすぐ終わりだ。博士の鬼の手はもうすぐ完成する。着脱機能の何処が悪いのかも、実験台を(不本意ながらも)務めた焔のおかげで大体わかり、後は大きなカラクリ石さえ手に入れば完全な鬼の手が完成する。その大きなカラクリ石も、手に入れる目途が立ったと西歌のお頭から連絡があった。

 …ちなみに、現在で鬼の手を装着しているのはホロウのみ。

 完成品は、出来上がったらまず里に一つ納品して試験させ、それでゴーサインが出たら大っぴらに量産に向けた体制を整える。俺らが鬼の手を受け取れるのは、それからか…。

 

 …もうすぐ終わり、と言ったけど、想像してみると意外と長いな。まぁいいけど。

 

 

 

 ともあれ、大きなカラクリ石だが、こっちに手渡すのに一つ条件があるそうな。

 俺が以前に提案した事を実行に移してほしい、と。

 

 

 …ああ、アレね。マジでやるの? 

 

 

 …やる気はなかったらしい。焔の裁きの時までは。

 里人が…鬼内もサムライも、自分の所業を隠そうとしているのには気付いていた。やった事はどうあれ、当事者ですでに決着…と言うには曖昧だったが…をつけ、なかった事にするならそれも有りか、と思っていたらしい。

 

 尤も、その考えはすぐに吹き飛んだが。紅月と真鶴によって暴かれ、読み上げられる罪状の前に、彼らは無様な程に動揺していた。暴れだしたり喚き散らしたりはしなかったものの、ちょっとした切っ掛けがあっただけで、その場から逃げ出していたかもしれない。

 その姿を見て、西歌のお頭は自分の考えの甘さを突き付けられた気分になったらしい。

 

 ま、そうだろうなぁ。サムライには、他のモノノフがやった非道の負い目があって。鬼内には、サムライを無理に迎え入れた事による引け目もあって。

 普段はそうは見えなかったが、信賞必罰の罰を下す事を躊躇っていたようだった。

 だが、それで通る程、組織というのは頑丈に出来てはいない。多少の潤滑油は必要であっても、歯車が勝手に回ったり位置を変えたりしたら、間違いなく組織は、里は崩壊する。

 

 

 

 …その為、最近手放し気味だった手綱を改めて手にする事にしたのだが…西歌のお頭は、「この際だから徹底的にやってしまおう」と(余計な事を)考えた。

 

 

 

 つまり、信賞必罰なんて生ぬるい事を言わず、鬼内とサムライの間で争うような根気を、根こそぎ奪ってしまえ、と。

 

 

 

 

 

 

 

凶星月

 

 

 西歌のお頭の取引を受けた事で、鬼の手(完成版)の作成が時間の問題となった。数日もすれば出来上がるだろう。

 随分張り切ってカラクリ石を探してきたらしく、これなら4つくらい一度に作れそうだ、とは博士の談。

 

 とは言え、その全てを俺達が貰える訳じゃない。取引相手である里に、少なくとも3個納品しなければいけない。

 仕方ないね、取引で依頼だからね。

 

 

 なので、俺達が貰えるのは残った1個のみなのだが…着脱機能無しにしたら、2個にできないかな? …できないか。まぁ仕方ないか…。

 

 

 代わりに、博士から手紙をもらった。ラヴなレターではない。それどころか、宛先・差出人共に博士本人である。

 何の遊びだ?と思ったら、「もしもまた繰り返しが続くようなら、私にこの手紙を届けろ」だそうだ。手紙の内容は、鬼の手に関する研究資料と、カラクリ石の分布図。

 それから、次回ループ時に博士に協力してもらえるよう、色々と書き込んでいるらしい…が、その内容は流石に教えてくれなかった。

 

 …で、それ以降も更にループが続く事を想定し、GE世界で手紙を複製しておけ…という指示まであった。指示の内容はともかくとして…こりゃ確定かな。今は痕跡しか残ってない旧文明の、更に複数の国の文字を読める事といい、別世界の文書をコピーする技術を知っている事といい…。

 まぁいいか。博士は協力者であって、上司部下の関係じゃない。別れ際に一言聞いてみて、それでトボけられたらそれまでだ。知ってどうなる事でもないだろう。

 

 

 

 さて、話は変わって西歌のお頭だが、本格的に動き出したようだ。里長として、里の戦力に…それこそ鬼内もサムライも関係なしに、一つの命令を下した。

 現在動ける全戦力を使っての模擬戦。模擬戦なんて謡っちゃいるが、当然それだけで済む筈がない。使う武器は本物だし、タマフリだって有りだし、オマケに互いに苛立ちや鬱憤が溜まっている集団同志のぶつかりあいだ。ヒートアップするのは目に見えている。

 トドメに、模擬戦は本気でやらないと意味がないから、怪我はもちろん『事故』まで想定の範囲内ときた。

 

 

 これってアレだよね、明らかに「これから殺し合いをしてもらいます」状態だよね。と言うかむしろヤレって煽って唆してるよね。提案した俺が言うのもなんだけど、大丈夫なのかコレ…。

 いやまぁ、大丈夫にさせるのは俺の役目なんだけども。

 

 この通達を受けたサムライと鬼内は、それはもう困惑していた。お頭の意図が読めないし、先日なんぞ私闘をやった若者達がどんな制裁を受けたか、知らない者は居ない。それを公認でやれ、と言っている訳だし。

 勿論、勝者には景品もある。限度はあるが、里長としての権限で、出来る限り望みを叶える…というものだ。

 例えば、鬼内を排除してでもサムライを結界内に住まわせるとか、サムライを追放するとかな。

 

 

 お頭の意図がどうであれ、互いに刃を向ける事を許され、景品までちらつかされて、既にこの段階から里の内圧は高まっている。紅月が戸惑い、何のつもりか問い質しにいったくらいだ。

 

 

 

 

 まぁ、お頭の意図なんて一つだけなんだがね。

 鬼内もサムライも、互いにのみ目が行っていて、一つ忘れている事がある。この模擬戦は、里の全戦力…あ、里の守りを担当する連中は除くか…を使った模擬戦だ。そう、全戦力。

 

 鬼内と、サムライと。

 

 

 そして俺達…流れ者。

 三竦みの戦いってやつだ。ついでに言えば、こいつに一石を投じなければならない。具体的には、俺達VS鬼内・サムライ連合って状態で。連合とは言わないまでも、先に俺達を潰そうとするようにね。

 ま、それについては問題ない。タマフリ挑発を使えばいい。普通なら鬼にしか通じないけど、GE世界でノヴァと繋がって3年かけて力を増大させたからな。人間にだって通じるよ。

 ついでに、一言とある名言も添えるし。いい塩梅に怒り狂ってくれ。

 

 

追記

 久々に博士が解剖させろと迫ってきた。その隙を突いて、清磨が神機に触ろうとしていたので蹴っ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

凶星月

 

 

 性欲を持て余す。

 

 

 いや別に何かあった訳じゃねーのよ。禊場上がりの真鶴とすれ違った訳でも、俺の名前を呼びながら布団の中でモゾモゾする紅月を目撃した訳でもない。

 是非あってほしかったが、真鶴はどーもその辺、ムッチャガードが堅いんだよな…。やっぱ神無が言ってた、慰み者だか晒し者だかにされそうな経験からか。

 

 いやまぁ、その辺の事は置いといて。

 考えてみりゃー、一か月近くも二人の女と同居して、ナニもねーのだ。ナニがないのだ。Toでラブるなラッキーエロ学派すらなかった。うむ、俺にしてはかなーり珍しい現象といえよう。

 …こんな考え、ループ前の俺なら「なんだこいつ…」って気色悪く思うだけだったろうなぁ。

 

 しかし、何にせよ発散する暇もなく一か月を過ごした訳だ。成り行きとは言え、オ○禁してりゃームラムラもするわい。

 …いや、発散は出来ただろうけどね。博士もホロウも、ちょっと発散したいから、と言えば席を外すか、「適当にその辺で始末してこい」という程度の情けはある。

 ホロウに至っては、「妊娠しないのであれば構いませんが」とか言い出しかねん。今までの旅路で何度か似たような事をやった、って聞いてるし…。しかしそれはそれでどうかと。何だかんだで、今まで童貞を捧げた(そしてなかった事になった)水商売のおねーさん以来、それなりの情を通じた関係だったからなぁ…。いやサービスだと分かっててノレない訳じゃないんだが。

 

 

 …何を日記に書いてんだ、俺は…。仮にこのまま書き続けたとしても、エロ語りではなく俺の自己処理の事しか書けねぇよ。この日記破いてもそんなもん書かねぇよ。…いや待て、R-18と銘打って詐欺れば…………? ……俺の中ののっぺらミタマが、やったら自滅因子に変身すると大騒ぎしている気がする。

 

 

 

 

 さて、ツカミを大外ししたところで、本題に入る。明日、西歌のお頭発案の『怒気っ! 里内丸ごと総力戦! 鬱憤を叩きつけろ総合模擬戦(勢いあまると命がポロリ)』が開催される。ちなみに命名はホロウだが、俺以外誰一人として呼ぼうとしない。

 ルールは単純。里の手前の森の北に鬼内、南にサムライが陣取り、夜明けと共に鏑矢で合図を出すので、動き出す。そんで互いに手段を選ばず殴り合い、最後に立っていた方が勝ち。タイムリミットは夕方。開始と終了の合図さえ守れば、何をしてもいい。鏑矢の合図は、圧倒的な寡兵である俺達が出す。

 これだけだ。

 

 

 

 

 

 ガバガバすぎィ!

 

 

 

 

 しかもギブアップ不可。むしろギブアップが不可能だからこそ、降参したフリして後ろから切りかかるとか、死んだふりしといて陰からテロに走るとか、何でもありである。

 

 お頭ァ、アンタ真面目に頭とっ変えた方がいいぞコレェ! と言うか、とっとと終わらせんとガチで死人が出る勢いだ。冗談抜きで怨恨が…。里を滅ぼす気か?

 そりゃ目的を考えれば、ここまでやるのも手だけどよぉ…。

 

 

 

 はぁ、もう何言っても仕方ない。鬼内もサムライも、既に北南に陣取ってしまっている。仮に今から西歌のお頭…おかしら、じゃなくてオアタマでいい気がしてきた…の説得に成功したとしても、その通達が間に合うとは思えんし、「偽書だ」の一言で片づけられそうな気がする。…実際、場合によってはやろうかな、と思ってはいたし。

 

 

 だから、俺達が…いや、俺がやる事は一つだけ。

 

 

 

 

 

 鏑矢を番える。開始の合図をする以上、俺達が陣取るのは森の中心…サムライと鬼内が激突すれば、間違いなくそのド真ん中になる場所。

 

 

 

 

 俺以外の全員に、自衛以外の戦いを禁じ、隠れての待機を命じる。

 

 

 

 

 

 

 日が昇る。

 

 

 

 

 

 

 弓を空に向ける。遠くからの視線を感じ、大きく息を吸い込む。宣言。創造。流出…させる気分。

 言霊にはタマフリ(ノヴァ版)『挑発』を載せて。だがそれ以上にこの言葉が奴らを狂わせる。

 

 

 

 

 

 日の出。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより。

 

 

 

 

 

 蹂躙を開始する。

 

 

 

 

 貴様らは武力を持って己を良しとする集団である。

 

 

 

 故にそこに差はない。

 

 

 

 

 

 俺一人に叩き伏せられる有象無象が、力によって立つ事は無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鬼、サムライ、鬼内、流れ者を、俺は見下さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 力の価値を説く以上、貴様ら弱者には」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆平等に、価値がない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鏑矢が、甲高く空気を切り裂いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まとめて潰す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凶星月

 

 

 

 ええ、勝ちましたが何か? いやぁ死屍累々ってああいうのを言うんだね。自分でやっときながら、戦争やった気分だよ。

 

 

 ぶっちゃけ余裕ですた。ですたですた。

 いくら何でも嘘くさい? 俺がそこまで圧倒できるとは思えない?

 まぁ、アラガミ化すら使ってなかったしね。神機は使ったけど。他所で見ていた清磨が、頭にタンコブつけて気絶しているが。

 

 

 何だな、言う事があるとすればだな…。

 

 

 

 多勢に無勢? そんな言葉は、戦力として数えられる者を連れてきてから吐く言葉だ。

 

 

 

 

 

 

 

 いや、真面目な話ね?

 こっちはただでさえ、装備によっては古龍すら相手にできるような叩き上げのハンターよ? それを、刀也が厳しく鍛え上げたとは言え、実戦経験もロクに無いサムライが束になった程度でどうにかできるとでも? 鬼内は鬼内で、弱者呼ばわりされて激オコだったし。

 最初の30分くらいは、挑発に乗って勢いのままに突撃してくる連中が罠にかかりまくったんで首に一撃。続いて、20分くらいはそれを助けよう、俺を先に潰そうとする連中を入れ食い。次の1時間くらいは、警戒しはじめた奴らを鬼疾風で奇襲しまくったっけ。アサシン技術との併用がホント凶悪です。超スピードで移動してくる相手が、ちょっとした遮蔽物で完全に身を隠す上、回避がほぼ不可避の一撃死技を放ってくるとかクソゲーってレベルじゃねー。

 その辺から、冷静な連中が多く残ったらしく、組織的に俺を狙い始めた。まーそこそこ手応えはあったかな。

 

 

 結局、暫くは俺を押しつぶそうとする連中をサムライ・鬼内関係なしにカチ上げまくり、他のヤツに叩きつける事数十人。

 全戦力の半分以上が行動不能になって、ようやく鬼内とサムライは手を組む…或いは互いを邪魔しない、狙わない…という協定にまで漕ぎつけたらしい。正確に言うと、俺から意識を逸らせば速攻で奇襲をかけられて犬神家みたいな状態になる、と理解したのか。

 機動力に全振りした状態だったからなぁ。かなり距離を取っていても、全力で駆ければあっという間に追いつける。俺とは関係のないところでサムライVS鬼内やろうとしても、あっという間に駆け付けられて叩き伏せられる。複数の場所でやっても、2~3合打ち合えるのが関の山。

 

 ひでぇ話もあったもんだな。

 

 

 結局最後は、最高幹部クラスのみが残り、最後の大攻勢(と言うには人数が少なかったが)に出ようとしたところを、俺が奇襲をかけて一気に潰した。

 先に潰したのは鬼内。炭鉱に籠って戦いの準備を整えていた。まー確かに、狭いところでの戦いなら鬼疾風も封じやすいし、悪い手じゃない。神機の銃形態を使って、「汚物は消毒だ~!」みたいに火炎放射でもやられなければね。…いややってないよ、神機は使ってない。

 鬼内の最後の連中の敗因は……八雲のにーちゃんの髪型かな…。暗い炭坑内でも見分けやすいんだよ、あの髪。

 最高指揮官クラスになってたのは予想できてたから、八雲のにーちゃんだけアサシン式に潰し、混乱から立ち直らないうちにさっさと逃げた。

 

 で、次はサムライ。神無と刀也が同時に待ち構えてたのには、ちょっと苦労した。いいコンビネーションしてるじゃないか。

 先日指摘した、人間相手の戦い方に傾いてるって点もかなり改善されている。…いや待て、今回の相手は俺なんだから、前のような戦い方の方がいいような…でも今のやり方の方が正解なような…。

 まーいいか。

 

 厄介だったのは刀也だな。ミタマスタイル防を使っているから…なのか、それとも命を賭けた戦いならこれくらいやって当然と思っているのか、こっちの攻撃を避けようともせずに拘束しに来た。

 男に抱き着かれるなんぞ御免だが、それ以上に気迫がヤバかった。アレは上手く俺を拘束できたら、自分ごと神無に斬らせるつもりだったな。神無もそれ前提で動いていたようだ。

 事前の挑発の事もあったし、何よりほぼ俺一人にここまで戦力を減らされて、もう引っ込みがつかなくなってたんだろう。

 

 

 尤も、それも防いでしまったけどな。俺の一撃を受けながら、刀也は腕に絡みついた。関節技か。よくこんな技知ってたな。

 で、動きが止まった一瞬を狙って、神無が本当に刀也ごと一刀両断にしにきた。実際、動けずに直撃した。

 

 

 

 

 

 がッ、ハズレッ…! 平然と刀也の顎を打ち抜いて無力化し、返す刀で神無と斬り合う。

 必殺の策が破られて、動揺していた神無。惜しかったな。

 

 俺を捕らえるまでは予定通りだったが、タマフリ『変わり身』までは予測してなかったらしい。はっはっは、色々勉強はしているようだが、まだ意識が斬り合い寄りだな。

 

 

 で、後は残党潰しと…紅月だ。

 残党探しは士気も下がり切ってほぼ無力だからいいとして、問題は紅月。今回は随分と強かったなぁ…。先日の戦いも結構強かったが、技量が一つ二つレベルアップしていた。純粋な技術で言えば、俺を超えるんじゃないかってくらい。俺に負けて、それでも褒められたのが相当に悔しかったんだろう。そういや、最近は久音さんの所の料理修行にも来てなかったような…。

 だがそれ以上にヤバかったのは気迫の方だ。一皮むけたってレベルじゃねえ。何をそんなに気負ってるんだって言いたくなる。

 

 が、考えてみりゃあ当たり前か。戦う前に言われたが、俺はマホロバの里全土のモノノフに向かって「弱いお前らに価値はない」と言い切った。紅月にとっては許せる事ではないだろう。

 鬼内のみとか、サムライのみとか、そんな事はない。次期頭領候補である紅月にとって、里に住む者は全て仲間だ。それが全員侮辱されて怒らない筈がない。

 

 何だな…かなり冷静に戦うように見えて、実際は精神が肉体を凌駕するタイプだったらしい。何度も打倒したが、FF5のガラフお爺ちゃんをホーフツとさせる勢いで何度でも立ち上がってきた。

 そしてそれに充てられたように、立ち上がって挑んでくる里の戦力達…撃破判定とかしてないからね。死んだふりした後で立ち上がるのもアリだもんね。

 最終的には紅月との闘いの場所付近の連中が、ゾンビの如き足取りで迫ってくるようになった。サムライも鬼内も関係なく、取りついて動きを封じ、紅月に最後希望を託す気で。

 

 感動的だな。無意味だとも言わん。だが相手の俺は堪ったもんじゃねーよ。悪役ムーブだなぁ、俺…いや最初の挑発をした時どころか、その前の西歌のお頭と話をした時点で分かり切ってた事だったけども。

 うーん、倒した人間が蘇ってきて主人公に力を貸し、理不尽なパワーアップを遂げた主人公に倒される…ラスボスポジか俺。

 

 いや、倒されなかったんだけどさ。空気読まなくて悪いね。

 最終的には周囲に人が居ない所まで誘い出し(意味深は無い)、紅月の薙刀を破壊。呆けた一瞬の隙をついて、鳩尾に一発、首筋に一発。そこまでやってようやく止まった。

 紅月が倒れた事で、脅威となる相手はほぼ居なくなった。残りは残党が少しだけ。

 また目を覚まされても困るので、紅月は運んでいく事にした。実際、何度か目を覚ましそうになったんで、その度に締め落としました。

 

 

 

 

 で、日が落ちてくる頃になって、ようやく終了。起きている者達総出で倒れている連中を里に運び込みました。この辺にも鬼は出るからな…。特に夜は。

 点呼もやって、参加者全員…多分、申請してなかったゲリラ参戦も居る…が揃っている事を確認して、ようやく一息ついた。

 よく全員回収できたなー、なんて思ってたが、待機を命じられていたホロウと焔がいい仕事していた。観戦しながら、倒された連中の位置や、鬼が沸いてこないかなどを確認していたらしい。焔に言わせると、「恩を売る好機だった」だそうだが。

 

 ま、一息っつっても、その表情は惨々としたものだったが。

 そりゃそうだよなぁ。お互い睨み合ってた二大勢力が、たいして警戒していなかった…それもたった一人に纏めて叩き潰されたんだから。

 彼らは自分達の力に自信を持ち、それによって集団となっている。鬼内は、鬼を討って里や人を守る守護者であり。サムライ達は、鬼や圧政を敷くモノノフ達からの解放者であり、そして自分達の力で自分達を守れる自警団でもあると自負していた。

 その自負の源である強さを、完全に否定された。敗北感、屈辱感、無力感なんて言葉では収まらないだろう。

 

 

 ここまで心を圧し折って、それを改めて統率する、というのが西歌のお頭の考えだ。無茶するっつーか、意外と酷な事をするっつーか…。いや、俺も誰かの訓練する時は、似たような事やりましたけどね。アリサとかコウタとかロミオとか初穂とか。

 

 

 まー多分うまく行くとは思う。現状の里の戦力では足りてない、というのは証明されてしまった。してしまった。

 どれだけ「俺達なら大丈夫だ」と叫んだところで、今回俺一人に全て叩き伏せられたという結果は消えない。

 そこを突いて、西歌のお頭の元で戦力を再編し、一から叩き直す。

 

 

 

 

 

 …そう、そこまでは聞かされていた。提案したのも元は俺だったし。

 

 

 まーなんだ、勝つには勝ったし、予定通りだったし、後は西歌のお頭に丸投げ…でいいんだが、一つ大きな反省点がある。 

 完ッ全ッにしてやられた。

 

 策謀を仕掛ける人間にとって、一番警戒しなければならない事とは何だと思う? 情報の漏洩? 計画の破綻? 予定外の要素? 確かにそれらは驚異的だが、何よりも忘れてはいけないのは…『策を仕掛ける人間は、自分が策に嵌められているとは想像もしない』だ。

 特別な力を使っての策でも、基本に忠実で念入りに準備された策でも、一方的に策を吹っ掛け続けていると、いつかそれが自分に向けられる可能性を忘れてしまう。誰かを散々利用して捨ててきた者は、何故か自分だけは捨てられないと思い込む。或いは思っていても直視しない。

 

 

 

 

 何が言いたいかって?

 

 

 

 

 紅月を押し付けられました。

 

 

 

 

 いや、別に要らないとも不愉快とも言わないけどね。ウタカタに行く時、一緒に連れてけと言われた。紅月は紅月で、「不束者ですが」なんてまたしても言い出す始末。

 

 …この際連れて行くのは構わんけど(戦力が大いに越した事は無いし)、こっちは大丈夫なのか? 使える戦力が丸ごと自信喪失状態だし、そもそも紅月は次期お頭候補として育てていたんだろう?

 これからどう立て直していくにせよ、紅月が居ないってのは里にとって都合が悪いんじゃないか?

 

 

 そう聞いてみると、確かにその通りではある、と西歌のお頭は頷いた。しかし、今回の戦いを鑑みても分かる通り、紅月にも鬼内にもサムライにも、実力は足りてない。今でも十分猛者と言える者はいるが、これから鬼達との闘いはもっと厳しくなっていくだろう。その為、紅月を里の外に送り出し、伝手を広め、多くの戦いを経験させたいのだと言う。

 「特に君の周りだと、激しい戦いには事欠きそうにないしな」だそうな。うっせい。ま、確かにそういう戦いに首を突っ込みに行くんだが。

 

 ちなみに、これを納得させる為、今回の戦いで紅月にはちょっとしたドーピングをしていたそうな。薬物的ではなくて心理的な。

 …つまり、紅月が俺に負けるようなら、嫁なり従者としてなり、俺についていけ、と最初から告げていたらしい。最初はとても頷けなかった紅月だが、流石にこれだけの戦力差で負ける事はないと考えていたし、そもそも万一負けたら(実際負けたが)里から出ていく行かない以前の問題だ。

 で、実際負けたから、俺について行って徹底的に鍛えてもらえ、という話だとかナントカ。

 

 …全然聞いてないんですけどネー。まぁいいけど。

 

 

 

 真面目な話、これから西歌のお頭は、里に対して『聖域なき改革』って奴を始めるつもりらしい。サムライと鬼内が項垂れている間に、一気にやっちまおうってハラだ。しかしそこに紅月が居ると都合が悪い。

 別に紅月が邪魔になるって事じゃなくて、お頭を交代した時、余計な悪感情を引きずらせない為だ。…西歌のお頭が彼らの悪感情を引き受け、そして機を見計らって交代…か。そう上手くいくもんだろうか。

 

 ま、押し付けられてしまった物は仕方ない。精々鍛えてやるとすっかね。

 

 

 

 …不束者云々は、今後の紅月次第って事で…。

 

 

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